丹田呼吸法、鳥の声、蜂の羽音……
近頃、丹田呼吸法について調べたり考えたりしている。
ご存じの方もいるだろうが、丹田と呼ぶ胃の下の方の位置に神経を集中して呼吸する、腹式呼吸の一種なんだが、これが精神修養に結びつくとされているもの。ときにスピリチュアルな方向にも走ってしまうが、ここではあくまで肉体と精神の修養。一時期、流行ったんだけど。たくさんの流派があるので、それぞれやり方が違ったりする。
西洋医学的には謎の理論であるが、坐禅や瞑想、気功、それにヨガなどでもよく似た呼吸法を取り入れている。
別に、私がこの呼吸法で精神を鍛えようというつもりはないのだが、いかなる境地に達するのか説明できるようになりたいと思っているのだ。
呼吸とは、息を吸って吐くという肉体的な動きである。その呼吸の仕方によって体全体に何らかの影響を及ぼし、精神を操れるという発想をどこまで理解できるか。
ほかにもヨガなどでは、肉体を通常ではしないようなポーズに置くことによって、精神的にも変化をうながす。
丹田はともかく、腹式呼吸という行為は、肉体への酸素の供給に関わる。欠乏させたら意識が飛び幻覚を感じるのかもしれないし、酸素を行き渡らせることで心を安定させたり集中力を増したりする効果は見込めるのか?
想像以上に、肉体と精神は連結しているのかもしれない。たとえは森林セラピー(これは商標登録されているから、森林療法というべきか)も、森の中を歩くという肉体的行為から、精神的な効果を求めるものだ。
これまで森林を歩くと体調がよくなる……という理論を科学的に説明するのは難しかったが、こうした切り口から攻められるかもしれない。
そんなときに、こんな論文を読んだ。
日本の若い女性を対象に、森林動物の音が生理学的および主観的な応答に及ぼす影響を調査した研究論文の抜粋です。研究者たちは、鳥のさえずり(4種の異なる鳥)とオオスズメバチの羽音に対する参加者の感情(快・覚醒)と生理的反応(皮膚血流量)を比較しました。結果として、鳥のさえずりはスズメバチの音よりも有意に快く、覚醒度が低いと評価され、スズメバチの音にさらされた際には、交感神経活動の上昇を示す皮膚血流量の低下が観察されましたが、鳥のさえずりでは変化が見られませんでした。この研究は、異なる種の鳥のさえずりが同様にポジティブな影響をもたらす一方で、危険な動物の音に対しては適応的な生理的防御反応が生じることを示唆しています。
この実験、結果だけを見ると全然フツー。想定通りだ。鳥のさえずりは心地よく、大スズメバチの羽音は不愉快、というか危険を察知して緊張が高まる。なんだか当たり前すぎる。
ただ肝心の女子大生は、スズメバチ羽音はあまり気にしなかったそうだ。まあ、実験室で行ったのだから、本当にスズメバチが襲ってくることはないだろうし。だが、心は平気なのに、生理的には変化があったのだという。
続いてこんな動画も見る。「体に眠る太古の秘密」。
こちらは8分ほどあるが、見るのは4分くらいからでよい(笑)。だって「ここからが本番ですよ」とナレーションが入るんだもの。
ここで内容を全部明かすような真似はしないが、ようするに頭で(心で)感じる反応と、肉体の反応は違うということ。そして、こんな提起を行う。
私の執筆した森林セラピーの本でも、「木に触っても別になんとも感じないと言う人も、測定すると脈拍が落ち着いたり血圧が下がるなど、ストレス反応は減る」という実験結果を紹介したな。無意識に肉体から心へ影響を与えていることになる。
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