ウナギ規制報道における日本の体たらく
今週は、ちと時事ネタ、政治ネタを多くしているが、気になるニュースとしてワシントン条約締結国会議で「ウナギ取引の規制」を加えるかどうか、という会議の話。
ウズベキスタンで開催されたワシントン条約の締約国会議では、ニホンウナギを含むウナギ属全種を輸出入の規制対象に加える改正案が出されていたのだが、それを否決した。
ウナギの取引規制案、国際会議で正式否決 資源管理は引き続き課題
投票した143カ国・地域が投票し、賛成35、反対100だった。3分の2以上が反対したことになる。これは、主に日本のロビー活動の成果だろう。成果、と言ってよいのか、ようするにウナギ取引を規制されないように、農水省が各国に働きかけたのだ。ウナギには何の縁もない国が多数だから、比較的了解を得やすかったのではないかと思う。
鈴木憲和農水相も、各国大使館を訪問して成功したことを誇らしげに語っている。
そして報道は「よかった」の一辺倒。まさに「これでウナギが食べられる」「値段が上がらずに済む」といった意見ばかりを紹介している。
だが、なぜEUなどがウナギ属全種への規制適用拡大を提案したのか、をちゃんと解説した記事はあっただろうか。
すでにヨーロッパウナギは危険水域まで数を減らしている。そして「(日本に)輸出用の漁獲が個体数減少の主要因」と主張していた。それを抑えるためにウナギ種全体を規制しないと、「ある種の減少が別の種の過剰利用を誘発する」という考え方を取り入れたのだ。また「個別種だけを規制するのは困難」という意味もある。それに対して日本はニホンウナギはちゃんと管理していると主張したわけだが……。
それって、嘘。全然まともな管理はできていない。そもそもシラスウナギは暴力団の資金源になっているといわれるほど密漁されている。そしてニホンウナギも国際自然保護連合から絶滅危惧種扱いされているのだ。
もちろん、ウナギの減少とウナギの貿易の関係をちゃんと説明できるのかなど、疑問点はある。だから会議の結論はさておき、本当に生物としての生息数がどうなっているのかを心配する声が全然報道されないのは、おかしいのではないか。
それに、もともとウナギは稀少だから高価で、庶民が食べられるのは年に一度などと言われていたのに、今やスーパーで1年中販売しているのもおかしい。昔より多く捕獲しているのは間違いないのだ。
これはクロマグロの時もそうだったが、日本人は「食べられなくなる!」ことに過剰反応して、ことの本質を全然報道しない。記者も視聴者読者も、生物種の生存より自分の「食」にしか興味がないのだろう。いきなり日本人ファーストに陥るのである。
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日本人ファーストもそうですが、”人間ファースト”である限り本当の生物多様性は実現しないように感じます。
難しい問題ですね。
投稿: Lago | 2025/12/06 02:40
日本人がウナギを食えるならヨーロッパウナギが絶滅してもいい……それが本音でしょう。やはり日本人ファースト。
ちなみに林業振興のためには森林を破壊してもいい、という発想も日本の林業関係者には広がっているようで……。
投稿: 田中淳夫 | 2025/12/06 09:20
ウナギが食べられなくても別に困ってはいない。ウナギは高いので、もう15年以上食べてない。ウナギを食べたいなら完全養殖するしかないですね。木材を人工林から供給するのと同じく。
投稿: くま | 2025/12/06 10:11
私も絶滅危惧種になってからは食べていません。たまに幕の内のようなメニューの中に混じっていることはありますが……。
(報道は)ウナギにも、イヌやネコやクマに対する愛情と同じぐらいの熱量をかけてほしい。
投稿: 田中淳夫 | 2025/12/08 14:11