無料ブログはココログ

森と林業と動物の本

« 皆伐再造林は「ちょい悪」 | トップページ | 日本人の環境意識は…(泣) »

2026/02/13

「三年晩茶」と「風の森」

先日、「奈良から世界へ ネイチャーポジティブの輪(和)」というシンポジウムに顔を出してきた。

内容を一言では説明しづらいが、ようするに国際的に注目されている概念ネイチャーポジティブを推進しようと、奈良の事例をいろいろ紹介していたのである。私も、へえ、奈良にこんなグループがあって、こんな活動しているんだ、と思うところは多々あった。

2_20260212161501

その中でも紹介したいのは、健一自然農園というところが出した「三年晩茶」だ。これは伊川健一さんが高校生の時から手がけてきた放置茶園を開墾する事業なのだが、放置してもはや大木に育ったようなチャノキから茶をつくっている。それも茶葉だけでなく枝も幹、樹皮も混ぜた茶である。放置されていたからこそ、無農薬で育った木なのだ。

3_20260212161501
手にしているのが3年茶の枝

とまあ、これだけなら「頑張ってるね」というだけで終わるのだが……実は、この晩茶による抹茶ラテも販売しているのである。つまり放置茶畑からつくった抹茶(定義上は粉末茶になる)と牛乳の飲料だ。

日陰栽培など細かな規定のある、もっとも繊細な抹茶をあえて放置されたチャノキでつくる。今世界的に流行りの抹茶ラテの世界なら可能なのかもしれない。

同時に思い出したのが、奈良県の御所市、油長酒造でつくる「風の森」だ。この日本酒は、すごい人気でなかなか手に入らないことで知られている。多分、関東では手に入りにくいだろう。うちの娘が探していた(^o^)。

この酒で驚かされるのは、原料に使っている米が秋津穂という食米であること。しかも磨くのは65%程度なこと。これ、日本酒に詳しい人なら驚きだろう。銘酒と言われているのは、みな酒米と呼ばれる品種(山田錦とか五百万石、赤磐雄町……)にこだわり、ギリギリまで削る。35%まで磨いた大吟醸だぞ!と自慢するものだ。「獺祭」とか。

が、そうした風潮に棹さして、吟醸ではなく廃れた食べるための米を使い、あまり磨かず、しかも硬水を使う。社長に言わせると、「何を原材料にしても、それを個性に美味しい酒はできる」のだ。

そんな酒が、通に大人気なのだ。さらに、米が取れる棚田ごとに味が違うと、ボトルも分けている。

2_20260212163101

これって、ワインの世界でいうテロワールだ。農園ごとにワインは違うのである。

三年晩茶にしろ、風の森にしろ、世間の常識を覆したかのような商品である。そして放置茶畑、あるいは棚田を守る活動へと進む。
これぞ、ネイチャーポジティブを土地の活動へ引き寄せることなのかもしれない。

1_20260212172601
風の森をつくる葛城醸造所。棚田の中に建つ。

同じことを林業でできないのは、なぜだろうね。単に原木の産地銘柄ではダメなんで、エンド商品まで落とし込む覚悟があるかないか、だろうか。

 

« 皆伐再造林は「ちょい悪」 | トップページ | 日本人の環境意識は…(泣) »

地域・田舎暮らし」カテゴリの記事

コメント

先の「本多清六」の件ではお世話になりました。
趣味でカミキリムシの研究をしています。今日本で最も有名な虫はサクラを次々に枯らしているクビアカツヤカミキリです。聞く所によると、本種が日本に侵入してきた原因は「パレット用サクラ材」にあるそうです。検疫が甘かったようです。これは林野庁の不作為が招いた人災です。庁が国内のスギ・ヒノキの伐採を促し、用材に使えば花粉症対策にもなります。無能な役人は林野庁に限りませんが、作画も趣味とする私は情けない思いでいっぱいです。

外来種による多様性増加はネイチャーポジティブになるのか? という命題はさておき、これだけ世界中の物流が増加する中で、外来生物の侵入を防ぐのは不可能でしょう。
すでに微生物段階で外来種がどんどん入ってきています。園芸店で購入する腐葉土も、実は外国の落葉でつくっていますからね。我が家も庭の雑草を調べたら、ほとんどが外来種という驚愕の事実に突き当たりました。購入した花苗の土からかもしれません。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 皆伐再造林は「ちょい悪」 | トップページ | 日本人の環境意識は…(泣) »

July 2026
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

森と筆者の関連リンク先

  • Yahoo!ニュース エキスパート
    Yahoo!ニュースに執筆した記事一覧。テーマは森林、林業、野生動物……自然科学に第一次産業など。速報性や時事性より、長く読まれることを期待している。
  • Wedge ONLINE執筆記事
    WedgeおよびWedge on lineに執筆した記事一覧。扱うテーマはYahoo!ニュースより幅広く、森林、林業、野生動物、地域おこし……なんだ、変わらんか。
  • 林業ニュース
    日々、森林・林業関係のニュースがずらり。
  • 森林ジャーナリストの裏ブログ
    本ブログの前身。裏ブログとして、どーでもよい話題が満載(^o^)
  • 森林ジャーナリストの仕事館
    田中淳夫の公式ホームページ。著作紹介のほか、エッセイ、日記、幻の記事、著作も掲載。