書店、ゴルフ場、そして林業の宗教改革
日経ビジネス電子版に『書店再興 まちの本屋さんのゲームチェンジのために』という記事が連載されていた。
これは、近頃出版された同名の書籍の内容を紹介するものだが、その中で作家・今村翔吾さんへのインタビューがある。
本屋さんの閉店が百貨店の閉店よりシンパシーを呼ぶのはなぜ?
そこで私が、これだ!と思った指摘がある。
「書店が大変だ、大変だ」という割には、関係者の間で危機感を共有する意識は薄く「本」という商材の不思議。商品を売る“商い”なのに、数字ではなく、感情に置き換わっている。「本は文化だ」というドグマが、商売の周辺に色濃くある書店の存在意義を文化、思想、精神性に置いてしまうと、限界を超えてムリをしてしまう。
書店の現場がどんなに疲弊しても、書店の数が減っても、現状をきっぱり変えていこうという流れにならない。
書店業界には本を信じて、重労働にいそしむ人たちがいる。本に救いを求めて、ひたむきな信仰をささげる人がいる。一方で既存のシステムの中で、おいしい思いをしている昔の貴族みたいな人がいる。
この業界は外から見るには美しすぎる。
百貨店がどんどん店じまいをしています。書店に比べると、それらの市場規模やインパクトのほうがはるかに大きい。でも、まちの書店がつぶれるほうが、より強いシンパシーを呼んでいる。
この業界って、資本主義の中にいることは確かなのに、その原理は資本主義じゃなくて、宗教的感情だった。
書店がどんどん潰れていく現状は、私にとっても他人事ではない。ただ、それは私自身が本を出版している立場だからである。正直、リアル書店がなくなっても、Amazonなど電子書店がある。
ところがリアル書店の関係者よりも、むしろ外野から「(書店)文化が滅ぼすな」という声が大きい。
書店を何とかしようと「ルネサンス」のような大胆な改革を行おうとすると、それ以前に「書店は神聖ナノダ」という宗教的な思いが顔を出す。合理的な判断として書店の数を整理し、システムを再編する、という正論が成り立たない。さらに流通や価格設定、販売方法などを変えたがらないのだ。
これを正すためには「宗教改革」が必要ではないか……というわけである。書店、ゴルフ場、林業。いずれも同じ構造だと感じた。それは「ルネサンスより前に宗教改革が必要だ」という点である。
私は、日本の養蚕について取材したことがある。(森林林業ばかりじゃないのだよ。)
またゴルフ場業界の取材もしたことがある。(森林林業ばかりじゃないのだよ。)
そこで感じたこと。戦前から戦後すぐまで、日本の養蚕・生糸は世界を席巻していた。それなのに急に崩壊して消えていく。しかし、悲しんだのは業界人だけ。だから大胆に養蚕業界の再編を政府は行えた。
それに比べて林業は、やたら部外者、業界人以外の声が大きい。林業を守れ、という声が環境や地方社会を守るために必要という視点から論じられる。政財界からも鳴り響く。肝心の林業家よりも。すると、構造改革ができない。
私に言わせれば、日本全国どこへでも移動する素材生産業とか植林専門会社をつくったらどうか。森林組合などを解体して民営化してもよい。その上で造林から伐採、そして最終商品まで加工生産し、その利益を大所高所から再配分するコングロマリット企業とかをつくれないか、と思うのだが。
ゴルフ業界では、バブル崩壊以降、日本にゴルフ場が多すぎて供給過多だから経営が立ち行かない。ざっと500は閉鎖すべきだという指摘がある。実際、赤字のゴルフ場は多いののだが、なぜか潰れない。みんな必死で耐えている。そこには「ゴルフが好きで、ゴルフ場を持つことは(財界人の)ステータスだ」という感情が横たわっている。合理的判断以前に、ゴルフ場を潰したくないのである。
養蚕業には、「伝統文化を守れ」というドグマ、宗教的熱情はなかった。だから消えていった。悲しみの声もなかった。ほかの産業が勃興して儲かったからだ。ゴルフ場も、オーナーが身銭切って守りたいのだから好きにすればよい。
しかし書店も、林業も、まずは外野の宗教改革が必要となる。
既存の業界を守ろうとするから改革ができない。私は本を個人に届けるシステムを守る、多様な生態系と生物を保つ森林かから木材を調達する、という原則されあればよいと思う。新刊も古書もレンタルも、そしてネットも、みんな一緒くたに扱う。森林を守るためには林業も地域社会さえなくてもよい。木造建築にこだわる必要もない。それぐらいの宗教改革の覚悟が必要なのではないか。
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