『豪雨災害の水文学』を読む
まさに今、台風が日本列島をかすめつつ進んでいる。沖縄から始まった暴風雨は、四国から紀伊半島沿岸を抜けて関東へ、そして東北・北海道へも影響が出るかどうか……。
そんな時に手に取る本は、『豪雨災害の水文学』(谷誠著・鹿島出版会)。
もうタイトルだけで本日の様子を表しているではないか。……実は寄贈を受けたのだが、内容が難しくて(> <;)。まさにザ・専門書である。
それでも、今こそ目を通すチャンスだ(⌒ー⌒)。
帯文には、
「深刻さを増す水害・土砂害対策へのサイエンスフロント。
降雨条件が同じでも流量ピークを高くする上流域の条件は何か?
流出メカニズム解明によって物理的流出モデルを画期的に変革し、
豪雨災害対策に貢献する著者渾身の学術書。 」
「水文学は、陸地での水の動きを扱う地球科学の一分野を占める基礎科学であるが、同時に、水害や土砂災害の減災を工学的に支える社会的使命を持っている。
本書は、この重要な役割を果たそうとしてきた水文学の研究の歴史と現状を詳しく説明し、流域治水にかかわるすべての方々に水文学の最も新しい知識を共有していただくことをめざしている。」――「はじめに」より
目次
第1部 水害・土砂災害をもたらすメカニズムとその発生予測
第1章 豪雨と災害とをつなぐ水文学の概要
第2章 洪水流出予測とメカニズム解明に挑戦してきた水文学の研究史
第3章 豪雨災害の水文学に必要な運動法則
第4章 メカニズムとモデルの整合性をふまえた流出理解
第5章 水と土の相互作用から見た土砂災害
第2部 水文学的定常論序説
第6章 流出モデルの物理的根拠を探る
第7章 流域条件の洪水流出に及ぼす影響を解剖する
第8章 水文学定常論から見た雨水の流出プロセス
難しいが、各単元を見ていると興味深いところがある。滋賀県の田上山のはげ山の事例も出ているのだが、風化花崗岩がいかに崩れていくのか、という点は、同じ風化花崗岩の生駒山に通じるところがあって、他人事ではない。もし豪雨が降れば崩れる可能性がある。
それが生駒山系で進むメガソーラー建設を巡る差し止め訴訟を連想した。司法の場に持ち込んだのだが、果たして裁判官にこの水文学が理解できるだろうか? 無理だろうな。
原告側にはそちらの専門家が多く参加して、いかにメガソーラーで斜面を削ったことが危険か、しかも真っ当な排水・貯水設備もつくらないことが問題か、と数式混じりの訴状をつくって訴えているのだが、裁判官に理解させるのは至難の業である。多分、読まないで判決文を書きそう……。
ここでも、科学と、それを扱う社会の理解度の格差を感じざるを得ない。
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コメント
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ご紹介ありがとうございます。
地形学の最新調査によって、田上山のはげ山が8世紀の奈良の大仏建立にともなうヒノキ大木の伐採ではなく、17世紀の江戸時代における農村人口の増加にともなう薪炭利用による生態系圧迫にあったことも、第5章に書いております。
また、同じような強度の人為利用圧迫を受けても、はげ山になったのは砂質の風化花崗岩であること、南に隣接する信楽の堆積岩山地(粘土分が多く侵食や崩壊に強い)では、江戸時代以降も里山利用が続けられたことは、今後の森林・林業利用においても重要だと考えています。
私は、林業利用を森林荒廃につながると悪くいうのには疑問があります。地質や地形による立地条件をみきわめて、持続的な林業が可能だと思うのです。
引き続きよろしくお願いします。
投稿: 谷誠 | 2026/06/04 09:39
ついでに、森林を愛する皆様への「豪雨災害の水文学」の紹介を書きましたので、お知らせします。https://hakulan.com/wp/foresth/
ぜひご覧ください。
投稿: 谷誠 | 2026/06/04 09:41
著者本人が、ご登場いただきました。
谷様のホームページにある紹介文を読むと、少し理解が早まった気がします(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2026/06/04 22:03