イグ・ノーベル賞の毒蛇の「福祉」
今年のイグ・ノーベル賞が発表された。
「キスの起源」から「パンツ埋め実験」まで――2026年イグノーベル賞、全10部門の受賞研究
いやあ、楽しい。私は本家のノーベル賞より期待している。日本の科学者はこちらの受賞をめざすべきだ。科学って、このワクワク感が大切だと思うのに、最近はノーベル賞の研究分野も細分化されすぎ、わかりにくい研究が増えた。
で、今回の受賞作の中で私が興味を引いたのは、
生物学賞 ―― 毒ヘビ116匹で調べた「咬まれやすい条件」
である。マムシの仲間、毒蛇ジャララカを防護ブーツで頭、胴の中央、尾を柔らかく踏み分け、毒蛇の反応を調べたというもの。
反撃する……尻尾を踏まれたときの方が身体をくねらせて踏んだ犯人に襲いかかりやすいのでは、と思ったが、実は頭を踏んだときの方か反撃は多いのだそうだ。頭を踏まれると危険を感じやすいからか。しかし、頭を思い切り踏んづけて潰せば咬まれることはないぞ(⌒ー⌒)。
1回のテストでは、頭・胴・尾に10回ずつ、計30回の刺激を与えました。
体に触れずに足を近づける条件も試しています。
撤回前の論文は、ヘビが踏まれた場所によって、咬む確率が大きく違ったと報告しました。
頭を踏まれたときに咬む確率は約44%で、胴の約20%、尾の約11%を大きく上回りました。
さらに、生後まもない個体は成体の2.17倍咬みやすく、雌は体温が高いほど咬みやすい傾向がありました。
これはこれで興味深いのだが、もう一点私が興味を引いた点。それは、一度学術誌『Scientific Reports』に掲載された後に、論文を撤回している理由である。
撤回通知が理由に挙げたのは、データの捏造や解析ミスではなく、動物実験の事前承認の問題でした。
動物を使う研究では、どの動物にどんな操作をするかを事前に申請し、委員会の承認を得ておく必要があります。
著者らによると、承認されていたのは、金属のかぎ棒でヘビの体を地面に押さえる方法と、ブーツを履いた足を近づける方法でした。
ところが、かぎ棒はヘビの口を傷つける恐れがあるとわかり、ヘビを守る緩衝材を入れたブーツで柔らかく踏む方法に変えたといいます。
しかし掲載誌は、柔らかく踏む方法と、生後まもないヘビの使用が倫理委員会の承認に含まれていなかったとして、論文を撤回しました。
著者6人は全員、この撤回に反対しています。
踏むことが倫理規定に反したというのだ。それも明確な違反というより、承認を得なかったから。より優しい方法に踏み方を変えたことが承認に含まれていなかった。ようするにアニマルウェルフェア(動物福祉)の一環だろう。
日本人からすると、ヘビのような爬虫類にも実験動物にアニマルウェルフェアは適用されて、倫理委員会に申請しなくてはならないのか……と驚くが、手続きの煩雑さ・細かさも、想定外の規律である。これではクマなど害獣の駆除、いやイヌネコの飼育について議論するどころではない。
ちょっと行き過ぎ感のある動物福祉は、そのうちハレーションを引き起こして、危険な動物を殺して何が悪い、とかいう運動が出てきそうだ。人種差別、ジェンダーやLGBTQなどと同じように。
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