林野庁は、今月中に「森林環境教育」を推進するための有識者委員会を立ち上げる予定だという。これまでも、森林のガイドになる森林インストラクターや森林セラピストの養成など、多少は教育ぽい分野もあったが、今度はもう少し前のめりの様子だ。
どうも新型コロナウイルス感染(COVID-19)対策から「3密」回避を持ち出したら、自然の中の保育が推進できると思いついたのではないか。
森林を舞台にした環境教育は、これまでもあった。ただイマイチ広がりに欠いているうえ、国レベルの教育分野としては、ちょっと傍流というか白い目で見られてきたと思う。野外体験なんて本来あるべき教育から外れるという声があるようなのだ。
教育とは、ちゃんとした施設の中で席について学ぶもの、という概念が抜けない人たちが多い。森の中で行うなんて、お遊びで教育じゃねえ、というわけだ。たから環境教育というか、「木育の敵は、教育者」(某大学教授の言葉)というわけだ。
実際、林間学校、臨海学校などで野外に子ども達を出しても、単に遊んでいるだけ、何も学んでいない、と心の奥で思っている「教育者」は多いのだ。楽しく遊んでいては学べないという思い込みというか、自らの受験勉強で刷り込まれたのか。
林野庁としては、COVID-19が起きたのを機に「野外で教育しよう」という機運に乗ろうと考えたのかもしれない。ちょうど今年より始まった新たな学習指導要領でも、自然体験などの体験活動の充実が打ち出されている。
私は、林野庁よ頑張れ、とエールを送りたい。その代わり、もう林業に口を出さないでほしい。目先の対症療法的な政策を打ち出してボロを出すより、森林環境教育、木育を推進する方が似合っているし、効果的。深慮遠謀・長期展望を持って教育に取り組むのがよいのではないか。
そもそも絶望的な日本の林業だが、それを何とかする林業政策はあるのかと疑問に感じる。何をやっても上手くいかない。本気で建て直そうと思うのなら、遠回りでもよいから教育から始めないと無理ではないか、という思いがある。林業現場でも、(潜在的に)森林なんか愛していなくて林業を金づるとしか思っていない人が大半なのだから。打開策は、子どもたちから変えていくことだ。
実は、地方レベルではかなり進んできたのだ。森そのものを園舎とし、森で過ごすことから子ども自ら学ぶことをめざす「森のようちえん」も、全国に増えている。それを県あげて推進しているところも増えてきた。これまでの鳥取県や長野県、広島県に加えて滋賀県、岐阜県も動き出したのである。
面白いのは、これらの自治体では、いずれも最初は林務関係部署が動き出して実現したことだ。文科省につながる教育委員会がやろうとすると、必ず既成の教育者から横やりが入るから、外部の部署が手を出した方がよいのかもしれない。何より、森についての最低限の知識を持ったものがやるべきだろう。学校現場の教師には虫嫌い、土や泥嫌い、ようするに自然嫌い森嫌いが多いから。
もっとも、有識者会議の立ち上げねえ。森林教育の先進事例に関する文献調査や関係団体へのヒアリングから、効果や課題を検証するとか、具体的な教育プログラムの提案まで考えているらしいが……。
その時点で、なんだか自由度の低そうな内容になりそうだ。まあ、しぶしぶ取り組む学校関係者にとってはマニュアルがほしいのかもしれない。教科書なしでは教えられない教師も多いだろうから。
しかし年度末までに新たな教育プログラムを策定する予定らしいが、それだと実質半年、会議はせいぜい3回ぐらいしか開けないだろう。有識者の意見はアリバイ工作で、庁内で案をつくってしまう魂胆か。
なんだか自然観察会みたいな矮小化した森林教育に陥らなければいいけどなあ。思い切りはじけた内容を提案してくれたらよいが。まあ、「期待」しておこう(笑)。
最近のコメント