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森と林業と動物の本

2024/12/27

理想の林業~台湾の公有林がFSC取得

台湾は、公有林すべてがFSC(森林管理協議会)の森林認証を取得した。認証取得面積は160万ヘクタール近く、台湾の森林面積の71.5%を占める。つまり、台湾の森林の7割以上が認証されたのだ。これって、驚異的。

台湾、アジア太平洋地域初!公有林が100%FSC認証取得

もともと台湾は森林率が63.13%(2022年)と高いのに林業はほとんど行われていない。木材需要の99%は外材に依存している。だが、台湾にも人工林は相当ある。人工林率は20%程度だが、面積にして42万ヘクタールだ。適切に管理して木材生産を行えば、かなり自給できる。
ただ台湾社会では伐採に関する懸念が強いため、
伐採を始めるには、まず社会の信頼と支持を得ることが必要だった。その手段の一つがFSC認証の取得なのだろう。森林認証、とくにFSCは、森林の環境基準を審査する比較的厳しい認証だ。

森林認証だけではない。小規模でも美しい森林開発「里山イニシアティブ」を掲げているし、木材だけでなくキノコや森のハチミツなどの非木材林産物も生み出す、森林セラピーも推進する……と盛りだくさんの政策を掲げている。そして社会と環境のモニタリングデータを6か月ごとに公開し、一般の人々の意見を聞いて森林管理計画を見直し改訂しているという。

林業自然保護署の林華清署長は、すべての公有林がFSC認証を取得することは台湾林業の新時代の幕開けであると強調し、世界の林業のトレンドと一致していると唱えた。(どーでもよいが、林華清とは、なんと役職にピッタリな名前だろう!)

気づけば、台湾では、野心的で挑戦的、そして理想の林業政策を掲げていたのだった。

さて、私自身の今年を振り返ると、今年は6月と9月の2度も台湾を訪問した。とくに9月は阿里山の森を歩いてきた。

タイワンヒノキの巨木林を見たかったのだが、現状36本しかない(巨木はほとんど伐ってしまったことは事前に知っていた)。そこで実際に見たのは何か。そこで驚いたこと、それは……。

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これは28番巨木とナンバリングされたタイワンベニヒノキ。直径3~4メートル級なのだが、見てほしいのはその周辺の木だ。細いというだけではない。樹種はわかるだろうか。

スギだ。そう、スギ林と化していた。阿里山と言えばタイワンヒノキ……ではなく、今やスギなのである。それは伐採跡にヒノキではなく日本のスギを植えた林政があったからである。

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遊歩道沿いも、巨木の切り株は多数あるが、その周辺に生えているのは、多くがスギ。台湾にとっては外来種。

直径30センチ以上あるから、九州なみの成長速度として、樹齢は50年くらいか。ちなみに巨木を伐り尽くしたのは帝国日本ではなく、戦後の蒋介石の国民党政府。スギを植林木として選んだのも国民党政府だろう。どういう判断だったのか。スギの方が成長が早いから?タイワンヒノキの植林方法が確立されていない?
今後の台湾の林政はどちらに向かうのかわからない。原植生を重んじたら、ヒノキ植林に変えるかもしれない。

台湾を日本が領有してから、多くの林学者や林政担当者が渡台したが、そこでめざしたのは「理想の林業」だった。国内では往々にして地元の慣習や伝統に縛られるが、新天地なら科学的に理想の林業を実現できる、と考えたのだろう。それが成功したかどうかは微妙だが、現在の台湾は自らの意志で理想の林業をめざしているのかもしれない。

日本の林業は、今一度、理想を掲げて希望の林業をめざす志を持ってほしい。それこそ国有林全部にFSC認証を取って見せたらどうか。目先の数字を追うのではなく、樹木の時間で数百年先を見通すべきだ。さもないと、いつまで経っても絶望の林業のままだろう。

そう言えば6月の訪問時には、国立政治大学の王雅萍副教にお会いした。彼女は少数民族研究の関係から、土倉龍次郎の林業開発を取り上げている。台湾で唯一の土倉龍次郎研究者でもあった。その際に私が森林ジャーナリストであり、日本の林業についての著作もあると紹介されたので、「台湾で林業の講演をしてくれ」と言われた。土倉龍次郎ではなく、林業の話を(^^;)。

有り難い話である。実現したら楽しいだろうな。日本の林業を反面教師にしてもらいつつ、台湾林業の未来も語りたい。そのためにも「龍次郎伝」を早く書き上げたい。ついでに?『山林王』も台湾で翻訳出版されることを期待したい。

これを2025年の目標としよう。

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王副教授(左)と間を取り持っていただいた曽根さん(右)

 

 

2024/10/06

台湾の農作物と枯れる竹

台湾旅行中に車窓から見えた作物。まずは新幹線の窓から。

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これ、サトウキビ? そうか、台湾は糖業だった。もはや過去のものになりつつあるが、かつて砂糖生産で潤ったのだ。ちなみにサトウキビ栽培を提案したのは、土倉龍次郎説がある。実行しなかったけど。

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スピードが早いので画面が流れているけど、バナナ畑が見えた。台湾と言えばバナナ! これまた懐かしの産業ぽいが、今でも台湾バナナはフィリピンバナナより高く高品質とされる。

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阿里山にバスで登る途中(まだふもと)当たりに、檳榔ヤシの農園がいくつも目に入った。ビンロウの実は、タバコのような嗜好品として東南アジアではよく見かけたが、台湾でも原住民が好むのかもしれない。

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いよいよ高山地帯に入ると、茶畑が広がり始めてそれを干している現場も見られた。阿里山のお茶はお土産にもなる高級品だ。
でも、なんだか日本の静岡当たりの風景とダブる(笑)。
紅茶にするのなら暑い土地がよいはずだが、標高1000~2000メートル級の冷涼帯が合っているのは、烏龍茶系統なのだろうか。

そして、この上になるとスギが増えてくる。ただし、気になるのは竹林。

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タケが増えてくるのだが、やたら枯れているのだ。今年はタケの花が咲いたのか。
それも全山と行ってよい規模。バスからの撮影なので、じっくり観察できないが、何か不気味。

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2024/10/02

阿里山の林業史をたどるギャラリー

昨日は、嘉義が実は鉄ちゃんの聖地であることを紹介した。つまり林業より鉄道に力を入れているのであるが……。

「阿里山国家森林遊楽区」の入り口にあるバス停3階にギャラリーがあることは繰り返し触れてきたが、ここが阿里山の林業展示も行っている。

とくに目を奪われたのは、こちら。

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これ、木彫人形で表しているのだが、前半の人物は、阿里山に関わった日本人名が並ぶ。知っているかなあ。
長野義虎、斎藤音吉、河合鈰太郎、鳥居龍蔵、鹿野忠雄……。探検家であり学者であり、官僚であり。阿里山の巨木林を発見して、研究して、開発して。これらの名前が並ぶだけで、私は胸が高鳴ったのである(笑)。
長野義虎は、私がもっとも注目する一人。
さらに最後の2枚のように、人物というより林業の仕事を紹介する人形も並ぶ。樹芸師とか何するのか。導覧解説員とか、道班士とか、油壺とか、貯水池、人力集材とか。どんな職種だったのだろうと想像すると楽しい。

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ちなみに、当時の林業道具の展示も行われている。なおカフェコーナーもあるよ。

 

2024/10/01

東洋一だった嘉義製材所の目玉は

阿里山観光の基地でもある嘉義の町は、かつて阿里山から運ばれてくる木材の基地でもあった。だから「木都」と呼ばれたそうだ。

そこに残る「嘉義製材所」は、かつて東洋一の規模を誇ったとも。今は、博物館に隣接して展示しているのだが。そう聞けば、なんとか見たい。しかし最初に訪れた日は、なんと休館だった。そこで台北に帰るのを遅らせて、朝一番に製材所見学をねじ込んだのだ。

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嘉義市立博物館のジオラマでも、嘉義製材所は大きく描かれている。

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これが、かつて大木を運んだ阿里山森林鉄道の車両。これぐらいの木はいくらでもあったようだ。

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この鉄塔……と見せかけて実は木造なのだが、これが2基建っている。この間に架線が張られていて、丸太を運んだらしい。
そして、その間の窪地は、かつての貯木場。池があった。

このように、昔在りしの製材所風景と施設が残されているのだが……どうも展示を見ていると、それが目玉ではなさそうだ。

製材所前には阿里山森林鉄道車庫区があり、阿里山鉄道が走っているほか、過去の車両が多く展示されており、さらに博物館や製材所内の展示も鉄道関係ばかり。部品や路線や細かなルートまで、実に詳しい。どうも、これは製材所施設の保全展示をしているのではなく、鉄道博物館の様相を示している。

そうか、嘉義は、台湾の3つの鉄道が全部あるのだ。台鉄、高鉄(高速鉄道)、そして阿里山鉄道。つまり鉄ちゃんの聖地なのであった。

木材だとか製材とかに目を向けているのはマイナーなんだよ(-_-;)。世間は鉄道ファンの方が多いのであった。嘉義の自慢は林業や木材ではなく、鉄道であった。

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現役の阿里山鉄道。

2024/09/30

阿里山のスギ林

台湾旅行の本丸は、やはり阿里山。阿里山のタイワンヒノキの巨樹を見て、その森を歩いた龍次郎の気持ちを体感しよう……という心づもり。

もっとも、肝心の巨木は伐り尽くして、40本程度しか残っていない。それでもタイワンヒノキの森があるなら……。

ところが、阿里山を昇るバスから最初に見えた巨樹は、ちょっとヒノキぽくなかった。

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ん? これは……ヒノキというより、スギ。それも柳杉と呼称される日本のスギ。阿里山注目は、スギ林だった。

ようやく着いた阿里山国家森林遊楽区は、標高2000メートル地帯なのだが、そこでようやくヒノキが目に止まるようになってきた。ただし。

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これは、阿里山の保全区の一角なのだが……あきらかにスギ林。しかも人工林と記されている。よく見たらスギ林の中に巨樹の切り株が腐り掛けつつ残る。これは直径2メートル級だろう。つまり、ここにあった巨樹のヒノキ林は伐り尽くし、その跡地にスギを植えたらしい。

なんでかなあ。ヒノキ、それもタイワンヒノキかベニヒノキを植えるべきでしょうに。太さからすると、戦後植えたものと思われるが。

そんなこんなで、阿里山はスギ人工林も多いのであった。

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もちろん、こんな巨樹も残る。これは直径4メートル級の最大木(28号)。近くを歩く人の大きさと比べてほしい。

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龍次郎の歩いた時代は、こんな巨樹が文字通り林立していたのだろう。想像力をたくましく、こんな森を歩いている気分に浸ってきたのだ。

 

2024/08/30

ベトナム・アカシア林の伐期

昨日、地球・人間環境フォーラム主催のオンラインセミナーに参加する。これまで、あまり報告例のないベトナムの森林事情について知りたかったからなのだが、いやはや。

ベトナムの森林・林業政策と日本の木質バイオマス発電

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ベトナム中部の伐採跡地と(背景の)アカシア植林地。

以前はカナダの原生林を伐採して木質ペレットにしている問題を取り上げた。この点は、記事にもしている。ただカナダ以上に木質ペレットの輸入先であるベトナム事情を十分に押さえていなかった。これまで推測としては、同じ東南アジアのタイやマレーシアなどの事情を勘案しながら想像していたのだ。

バイオマス発電が原生林を破壊する

が、予想は裏切られた。

細かな点は、リンク先を参考にしてもらえばよいが、ベトナムで現在進んでいるのは圧倒的にアカシア植林なのだ。(ユーカリでさえあまり多いわけではない。)そして人工林から供給される木材需要に対応している。原生林も多少は伐っているが、目立って多いわけではない。森林率は47%だそうだで、森林の約3割がこうした人工林になっている。また家具製造で世界的なシェアを取り始めているが、そこで使われる木素材は、多くが輸入。日本のスギやヒノキも輸出されている。

そうか、人工林から木材を調達しているのか。それなら再生可能かな。。。。

そう思わせておいて、仰天したのは育てる期間。つまり樹齢と伐期。

なんと3年~7年だという。写真で見える伐採された木の太さは多めに見積もっても10センチない。
いくらアカシアが早生樹と言っても、7年では太くはならない。

なぜなら、需要のほとんどが木質ペレットとチップだから。チップは基本的に製紙だろう。細くてもいいわけだ。なんでも木質チップは3年生からよいという。

そして伐っては植えて、伐っては植えて……を繰り返している。これって再造林をしっかりしているのだから、立派な循環型林業。 (゚o゚;)エッ

そこで何が起きているのという問題はさておき、私が感じたのは3年伐採の場合、これは林業なのか、という根本的ですごく素人感覚の疑問だ。

農業と言っても、収穫するまで3年以上かける作物はわりとある。コンニャクイモ(球茎)もそうだし、アスパラガスも芽が出るまで3年かかるという。果樹に至ってはさらに長い。モモクリ3年カキ8年、である。

もはや農業と林業の違いがわからない。いや循環型の意味がわからない。

 

 

2023/09/28

台湾林業の不思議

こんな記事を目にする。

台湾産木材使用の体験施設、台北市内で除幕式 国産材の魅力を発信 

台湾産木材をより身近に感じてもらおうと、国産材を使用した体験施設「从森」が台北市内に設置され、22日、除幕式が行われた。来場者は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を通じて、国産材製品の魅力を体験できる。

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写真は記事より

別にどおってことない、日本でもよくある、ローカルニュースなんだが……台湾で台湾産木材を使って施設をつくることにニュースバリューがあるんだ、という点に目が止まったのだ。

台湾といえばタイワンヒノキなどを思い出して、森の深い山々を想像するのだが……、いや事実、かなりの森林率を誇る(59・18%)のだが、林業は極めて低調だ。ほとんどない、と言ってもよいほど。

台湾で消費する木材の99%が外材だなのである。ある意味、自らの森林は温存してきたということになるだろうか。なぜ、そんな政策を選択したのか。

2017年を「国産材元年」とし、建築物への国産材使用などを促進してきた。27年には国産材自給率5%の達成を目指している。これまでの自給率は0.5%にとどまり、2022年末時点で辛うじて1%超となった。

台湾を日本が領有した際の森林率はわからないが、実はかなりはげ山が多かったことが知られる。玉山、阿里山も、草原が広がっていた。それは原住民が焼き畑をやっていたからという説と、清国時代にひどい伐採をしたからとも言われている。日本も森林資源開発をして、阿里山などかなり伐ったのは事実だが、実は当時、台湾は日本から木材を輸入していた。そして造林を進めている。だから日本が台湾の森林を食いつぶしたという議論は、正確ではない。

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1900年ごろの阿里山の写真。禿げている。

戦後、国民党がやってきて、ひどい伐採を続けたらしい。よりはげ山を増やしたのだろう。そうした状態から、再び政策を改めて伐採禁止と、造林推進とともに森林保護策を取るのは、意外と最近の話となる。その政策転換の事情はよく知らない。

ただ林業も縮小したのだろう。近年、ようやく造林木を使えるようになったから林業復活をめざしている。ところが、そこに入ってくるのが、日本の安い木……。日本の木材が、台湾林業を圧迫しているらしい。

今回、台湾産材の建築を誇るところを見ると、台湾産材を本格的に使おうという気運になってきたということかな。

それにしても、写真の施設は、日本の古民家を思わせるな。

 

 

2023/07/06

中国の木材輸入元はどこ?

ネタがなくなると、林野庁のモクレポの統計を見る。

ウッドショック後の木材価格の動向を探る……なんてマジメなことはせず、何か面白い発見があればよし。

今回見つけたのは、中国の木材輸入動向だ。22年度は激減しているが、これはコロナ禍の影響で中国経済が沈滞したからだろう。

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中国の木材調達は、20年前までほとんど自給していたのが、今や世界一の木材輸入国だ。日本はあっさり抜かれた。では、どこから?

針葉樹丸太は、カナダが一番多い。そしてドイツなのである。3位がアメリカだが、一昨年まではロシアだったのが消えている。そして意外なのはウルグアイが入っていること。南米の小国が、針葉樹をそんなに生産していたっけ。牧畜の国のイメージがあるのだが。

というわけで、ウルグアイの林業について少し調べると、2000年以降、猛烈に植林していることがわかる。主にユーカリやテーダマツ、スラッシュマツなどのようだが、どうも排出権取引を意識しているようだ。持続可能な森林経営のための取組の一つモントリオール・プロセスにも参加していた。意外な新興林業国なのかもしれない。どんな森林ができているか。この国、もっと注目すべし。

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Googlemapで見ると、実に平坦で、ほとんどが農地と放牧地であるとわかるが、森林も点在する。そこを拡大すると、人工林ぽい木々の並びまであった。平坦で天然林もなく、農業不適地に植林しているらしい。ブエノスアイレスとも近いし、輸出しやすいかもね。

中国は、何を輸入しているのか? 20年生ぐらいで使える丸太になるのだから、早生樹なのだろうが、製材用とは思いにくい。チップにする?どうもボード類の原料のようだ。

そこで隣の製材輸入のグラフを見ると、なんと丸太で姿を消したロシアが圧倒的に多い。ロシア材丸太の輸入を止めたのであった。そしてフィンランド、ウクライナ、ブラジルという国が登場する。フィンランドはともかく、ウクライナは戦争が始まるまで輸出していたのか。ブラジルも製材輸出の国のイメージはないが。。

というように、統計からもなかなか楽しめるのである。ちなみに日本の姿はまったくない。「その他」である。日本は中国への輸出が伸びた伸びたと喜んでいるが、実は中国にとってもっとも近い国の一つである日本より、地球の裏側から輸入している方が多いことを認識しておこう。

 

2022/07/13

13年前の北欧バイオマスエネルギー事情

このところ、ブログのコメント欄によくスパムがつく。速攻で消して受信拒否にするのだが、今回ついた記事のタイトルは、

北欧バイオマスエネルギーの裏側 

消した後で、どんな記事だったかな、とつい読んでみる。

おおお。面白い(笑)。ノルウェーのバイオマス事情を記しているのだが、これ、いつ書いたの? と日付を見ると、またびっくり。
2009年3月5日だよ。。。。13年前!!

私がノルウェーを訪れたのは、ずっと先の2017年だ。つまり、現地で見聞きしたことを書いたわけではない。今夏出版のフィンランドの本とも何の関係もない!

それなのに、スゲエ面白い(笑)。たった1本の記事(バイオマス燃料を輸入するための船の話)から裏事情を読んで、バイオマスエネルギーの根本的問題を指摘した。それは今の状況と何も変わらず、バシリと押さえている。俺って、転載、いや天才\(^o^)/。

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北欧の空。トロンハイムからオスロへ飛ぶ途上。

すでにノルウェー、そして北欧はバイオマス用の木材を自給できなくなってきたのだ。
なぜって? 簡単。伐りすぎたから。もはやロシアや旧東欧諸国から輸入しないと木材産業は維持できなくなっている。フィンランドも、製紙産業のためにロシアから大量の木材を輸入していたはずだが、今のウクライナ戦争で輸入が止まったらどうするのだろうか。国内で調達しようとすると、さらに過剰伐採しなくてはならなくなる。仮に製材需要が落ちても燃やすために伐らないといけない。なぜならバイオマス発電所を止めるわけにはいかないからだ。

一度大量生産の産業構造を作ってしまうと、需要に合わせて生産を増減できなくなるのだ。無駄を覚悟で大量生産を続けないと、工場が止まり、雇用が失われ、社会が維持できなくなる。でも生産した分は過剰で在庫を積み上げる。それを処分するためには、安くて赤字で無駄なバイオマスエネルギーに回す。……でも、環境は有限。いつか底をついて破綻する。さあ、どうする?

日本も同じことが起きかけている。

 

2022/06/30

林業でフィンランドブーム?

ウクライナ危機のあおりでスウェーデン、フィンランドがNATO入りが確実になったからか、最近はテレビでフィンランドがよく取り上げられる。何といってもロシアと国境を接するからだ。

ところが、ぞさと関係なく、日本の林業界もフィンランドがブームのよう。先月は北海道フィンランドウィークが開かれて,北カレリア県と結びつきを強めていた。とくに北の森づくり専門学院は、フィンランドの北カレリア県教育訓練共同事業体・リベリアと提携しているらしい。

そこに、今度は長野県と伊那市が、北カルヤラ県から視察団が長野県を訪れ、意見交換などを行ったというニュース。来日したのは、北カルヤラ県のマルクス・ヒルヴォネン知事やカレリア応用科学大学のベッテリ・リュハネン事業部長ら16名。長野県と北カルヤラ県は、すでに3年前に林業分野での連携・交流を強化する覚書を締結、伊那市とともに取り交わしているとか。

ちなみ北カレリア県と北カルヤラ県は同じところだろう。発音的には、後者がフィン語なのかな。つまり北カルヤラ県は、日本と2か所で結びついているということだ。

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日本は長く海外に林業のロールモデルを求めてきた。ドイツに始まり、オーストリアやスイスと来て、次はフィンランドか?

思えば中欧の国々の林業は、基本的に択伐で恒続林に理想を求めているところがあるが、日本では最初からムリ!と拒否している感があった。なんか、皆伐をしなくちゃ林業じゃない、という思いが強いのだ。その点、フィンランドは皆伐-一斉造林スタイルの林業なので、日本にはなじみがあるというか、今のままでいいんだよ~と言われている気持ちになるのかもしれない。

ところで、私は今夏、次の出版としてフィンランド林業の本を出す予定だ。おかげでこの半年、フィンランドおたくになるほど、フィンランドの文献やら旅行ガイドやらムーミンやらサウナやらを勉強した。コロナ禍最中の私の(妄想の)旅はフィンランドだったのである。

いやあ、みんな林業先進国フィンランドのイメージ変わるんじゃないかな。

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楽しみにしておいてくれ。

 

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