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森と林業と田舎の本

2023/09/07

ジビエが売れない理由は?

ジビエで農作物の獣害を防げ……そんな声は今も強いが。

シカ1500頭で食肉200キロ… 進まない食肉生産の現実 ほぼ犬の餌「ありがたく食べ命頂いて」/兵庫・丹波市

こんな記事もあるわけで。

シカの有効活用処理施設「丹波姫もみじ」(同市氷上町)に搬入された約1500頭のシカのうち、食肉にできたのはわずか200キロ強

シカ1頭当たり平均重量30キロのうち、精肉歩留まりが3割とし、内臓や骨を除き、1頭当たり10キロの肉が取れる

丹波姫もみじに昨年度の狩猟期に推計45トン搬入されたシカのうち、食肉にできたのは224キロで、実態は肉のほとんどがドッグフードになっている

都内だったらソースと付け合わせを添え、ロースト肉2切れを9000円で提供する。

こんな言葉が並ぶのだが。

ここで、なぜ、獣害駆除の個体がジビエにならないのかを説明すると長くなる。この記事のとおりではないと私は思っているが、それはともかく私もジビエに貢献してみた。

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これは、某地に売っていたジビエ、つまり鹿肉缶詰を、ものは試しと購入したもの。オイルで低温処理したコンフェである。消費税を入れると880円になったかな。

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そして中身はこれだけ。キノコ(エンリギ)を除くと、本当に一口で食べ終わりそうだった。上記の記事でもレストランで2きれを9000円?
本気か (@_@)

まあ、そんな料理をどんどん売れるというならよいが、そもそも需要がないだろう。美味しい美味しいというが、やみつきになるものでもない。言っておくが、高すぎるというわけではない。捕る苦労、解体する苦労、猟にかかるコスト。衛生管理も大変だ。缶詰にするのも設備がいるからねえ。飼育している牛や豚、鶏よりいかに手間がかかるかと考えたら、こんな値段になってしまうのだろう。

私はドッグフードにするのが、もっとも適した利用法だと思うよ。愛犬家は金を惜しまないし(笑)。

 

 

 

 

2023/08/16

ヒツジとヤギ。どっちが有用?

台風一過。晴れた。昨日は、家から一歩も出られなかった。とはいえ、幸い生駒山はそんなに荒れていない。

ちょうど帰省していた娘が東京に帰る日なので、ランチに生駒山のスリランカ・レストラン「ラッキーガーデン」に行く。

ここのヒツジエリアと呼ぶ野外カフェテリアでカレープレートを食した。このエリア、以前は棚田だったが耕作放棄されたのでヒツジの牧場に変えられたのだが、だんだんバナナやパパイヤが植えられてスリランカの村落化しているよ。

で、そこで見たのは、ヤギである……。ヒツジではなくヤギ。まあ、ヤギは山羊と書くように山のヒツジなのかもしれんが。。。

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以前はヒツジを3頭飼っていたヒツジ牧場で、そこにカフェテリアを作ったので「ヒツジエリア」と呼ぶようになったのに、今はヤギばかり。ヤギは牧場というより周辺の雑地に点在している。ヒツジはというと、とうとう全部お亡くなりになったのだ。

その代わりににヤギを導入したのである。ヤギはヒツジより身体が強く、崖を登り、草は根っこまで何でも食べる。世界的な家畜なのである。ただヒツジは肉と羊毛という2大資源を生み出して有用だが、ヤギはそこまでいかない。毛や皮はあまり使わず、肉も乳も癖があるので万人受けしない(私はヤギの乳のチーズが好きだが)。また荷物を運んだり車を曳いたり人を乗せたりもできない。田畑も耕さない。まあヒツジより愛想はある気がする。無表情のヒツジより人に懐く。

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ここで野生動物が家畜になる過程を考えてしまう。ウシ、ウマ、ブタ、ロバ、ヒツジ、ラクダ……など家畜になる動物は、人に役に立つことが大前提だ。肉や乳、毛、皮革などが有用であるほか、役用になる。イヌなども狩猟を手伝ったりするから役用。ネコは、最初はネズミなど人間に害をなす動物を獲ってくれる役用があったけど、もう今はほぼ放棄して愛玩になってしまった。(家禽は外したが、卵や羽毛も有用。)
ヤギもかろうじて有用ではあるが、体格は小型だし、愛玩になるほど愛想を振りまかないし、なんとなく中途半端なのかなあ(笑)。

ヒツジとヤギ、どちらが家畜として進歩しているのだろうか?

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ラッキーガーデンのランチ。

……さて、台風一過のはずが、静岡で豪雨とかで新幹線が止まる。娘は帰れない(笑)。

2023/08/01

興福寺で特殊伐採

奈良公園を歩いた。暑い。今日の奈良は、おそらく38度超え。青空だし。

とはいえ、観光客はそこそこいる。やっぱり外国語が聞こえる。

そこで興福寺の五重塔。今夏より大修理が始まり、何年かは工事足場で包まれるのだが、まだ塔の上部は見えている。その周辺で働く人々がいた。なんとマツの大木の伐採をしていた。それも釣り伐り。いわゆる特殊伐採だ。全部伐り除くのか、大枝だけを切り落とすのか、まだわからない。いずれにしても、寺社の多い奈良では、こんな仕事が増えているようだ。

写真のマツの大枝には、立っている人物が移っている。知り合いかな、とも思ったが、近づけないし、顔をこちらに向けていないのでわからなかった。これは五重塔とは関係なく、危険だから伐るのだろうか。炎天下、ご苦労さまです。観光客も、五重塔は見づらいから、伐採見学をしている人が多かった(笑)。

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なお、暑さから逃げる場所として、地下通路がある。

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シカも、地下に入って、水を飲んでいた。外は暑いよ……。メスの若シカのよう。

それにしても痩せている。夏バテではなく、シカにとって夏越しは結構大変なのだ。葉っぱがいっぱいで食べるものに困らないように思えるが、実は餌となるものが少ないようだ。クマなどとは違って植物性のものなら何でも食べるが、夏の葉はあまり美味しくないらしい。暑くて観光客が少なければ、鹿せんべいももらえなくなるし。今、せんべいを持って公園をうろつけば、持てること間違いなし(シカに)。

夏の奈良公園、穴場ですぜ。皆さん、どうぞ。

 

2023/07/31

変わる常識~『罠猟師一代』を読む

古本屋で見つけた『罠猟師一代』(飯田辰彦著 鉱脈社)を購入した。

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豊富な写真で主にイノシシ猟を紹介しており、その後の解体なども記されているからだ。それに宮崎県の出版社という点も面白そうであった。
ただ出版年度が2006年で、その前年に雑誌『岳人』に連載したものらしい。つまり取材したのはさらに前、2004年以前となるから、今から20年近く前だ。それは気になったのだが、とりあえずリアルな獣害駆除の様子や山の狩猟文化に触れられるかな、という思いであった。

が、どうやら獣害駆除ではなかった。むしろ獣肉を売る、プロのハンターであった。シカ猟も登場するが、シカ肉は美味しくなく、高くも売れないとほとんど扱わないらしい。シシ肉狙いなのだ。

それはよい。

が、ちょっとなあ、と思わせる描写が次々に出てくる。それは著者が悪いのではなく、猟師の問題ということでもなく、時代の差なのであるが……。

たとえば、いきなり採れたイノシシの解体を山の中で行う。それも沢の水を使う。自家用なら自己責任になるが、売り物にする場合は、これは今ならアウトである。衛生面もそうだし、沢を汚すことはその流域の問題にもなる。内臓を持ち帰っている点はよかったが。

その後はすぐに料理になるのだが、そこで生肉を食べる。そして、これが一番美味い!と記されると……。今や生肉食はNGだろう。E型肝炎ウイルス媒介の心配もあるし、出血性大腸菌など危険な病原菌がいっぱいいるからだ。また寄生虫も馬鹿にならない。解体する最中にそれが人に感染する場合がある。

かくゆう私も、昔はシカ肉をいただくと刺身にして食べて、これが美味い! と言っていたものだが、今では怖い。

そして「あとがきに代えて」が問題だ。

日本の山の疲弊を訴えているのだが、それは林業や人工林ではなく、人工林を増やした天然林破壊のことである。「安い外材」で林業が衰退する話もあるが、林道建設や無茶な植栽などを批判する。針葉樹では保水力を失う、といい、野生動物の減少を愁う。獣害は人間側の都合とする。獣害は、天然林を減らして餌がなくなったから里に下りてきたからだ、とする。早晩、山からいっさいの野生動物が姿を消す、という。

今ならイノシシもシカも増えすぎて困っているが、餌不足どころか餌が豊富になったから数が増えている。里山の方が奥山より生活しやすいから出没することが知られてきた。

山の全面積の数%でもいいから、雑木の山を復活させろとあるのだが、もともと日本の山は60%以上が天然林・里山林なのである……。そして人工林の中にも、結構な広葉樹が生えている。完全にスギ、ヒノキだけの山など、まずない。むしろシカが増えて林床の草木を食べてしまうから、そうなった場合もある。

この20年の間に認識がガラリと代わり180度別の見解になったことを感じる。

 

2023/07/15

巨木の森ふたたび

川上村に山登り……というか、山歩き、森歩き。

そこで見たもの体験したことは、また改めてだが、そこまでの道筋に想定外のものを見てしまった。

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これ、1本1本が樹齢200年から250年、もしかしたら300年に達していると見た。直径は全部1m超え。吉野杉は見た目以上に年を食っているww
それが数百本は並んでいるのではないか。
さすがに、これだけの巨木は川上村でも少なくなっている。以前、わりと人里に近いところにあったのだが、伐られてしまった。が、人目に触れないところにまだまだあるんだねえ。壮観です。ようするに、これは人工林だからね。単木で300年以上、400年を超える木というのもあるが、これだけ文字通り林立していると、別の驚きがある。

ちなみに林床がきれいだ。まさかこの林齢の森で下刈りはしないから、シカくんのボランティアだろうか。舌刈りとか。

そして、もう一つ。

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車を走らせていると、突如飛び出したものが。これがシカなら珍しくないしクマなら怖いが以前見たことがあるのだが、なんとカモシカであった。実は、カモシカを奈良県では見たことがなかった。昔、カモシカを観察しようと山にこもったことがある。全然見つからない(> <;)。当時と違って今はわりと数も増えて見やすくなっているのだが、改めて見つけると、やはり感激。大急ぎで写真を撮る。

行けば、何かと出会えるのであった。

 

 

2023/06/12

ヘラジカを映すだけの番組があるなら…奈良は

スウェーデンには、森に約30台のカメラを設置し、ヘラジカをはじめとする野生動物の姿を24時間、そのままにライブ中継する番組があるそうだ。5年前に始まったこの番組は大人気で、今年も始まったとのこと。

魅力は「何も起きない」こと、超スローなヘラジカ番組 スウェーデン

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もともとは、ノルウェーで始まったスローテレビだ。延々車窓風景だけを映し続けたり、クルーズ船の様子を映したり。なんと5日間続けたという。さらに焚き火の薪が燃える炎を映し続けたり。

なんだか環境ビデオみたいで、それを見続けるのは瞑想みたいだそうだが、こんなに人気があるなら、日本でもやってくれないか。内容はヘラジカに対抗して奈良のシカ、ナラシカでいいのではないか。

奈良公園にカメラを設置して、ひたすらナラシカを撮影する。おそらくヘラジカより面白い。何もないということはなく、むしろ観光客との絡みはかなり面白い。
たとえば横断歩道の前にカメラを設置したら、赤信号では立ち止まるシカが映し出されるだろう。しかし、車が来ないと、そろそろと赤信号でも渡る。周りと見て、観光客の動きにも目を配る。また鹿せんべいをねだる姿もかいま見られるし、子鹿を守るべく高ぶる親シカも目にするかもしれない。逆になんとかナラシカと並んで写りたいと悪戦苦闘する観光客(とくに外国人)もいる。

私も奈良公園を訪れたらよく観察しているが退屈しない。かなり変化に富んでいるのだ。

ナラシカを映すと、そこに人が入り込む、許可なく人の顔が映ると肖像権だなんだと言われそうだが、最近はかなりAIで自動ぼかし処理できそうだし、ウケると思うよ。

それに、こうした研究もある。

奈良公園のシカ、コロナ禍で「おじぎ」をしなくなる、研究

テレビを見ているだけで研究ができる、かもしれない。

やるなら奈良テレビだな。だって、ナラシカが地元…というだけでなく、奈良テレビの放送欄を見てほしい。

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買物情報とテレビショッピングを除けば何がある? これらの番組の視聴者は、買い物するためではなく、ただ眺めているだけの人も多いはず。そこに差し替えると簡単。シカを眺めている方が健康的だろう。え、収入源? 視聴率が上がればCM代も上がるだろう。

 

2023/04/28

NZのノラ猫ハンティングは中止

子どもたちにノラ猫を捕まえさせて賞金も出す、そんなイベントがニュージーランドのカンタベリー地方で企画された。

これは子供たちに、野良猫を銃で殺すことを競わせるもの。最も多く殺した子どもには、124ポンド(約2万1000円)の賞金が出る。そんな「ノース・カンタベリー・ハンティング・コンペティション」というイベントだ。

が、案の定というか世間の反発で中止に追い込まれたという(^^;)。

なんというか、反発する人が多数出るだろうな、とは容易に想像できるのだが、こんな企画をしたことがすごい。

もともと猫は、生態系に及ぼす悪影響が高い外来種とされるが、子どもにノラ猫ハンティングとは過激……と思ってしまうが、若干事情はちがう。もともとニュージーランドはオーストラリア以上に生物層が特殊で固有種ばかりの島だが、そこに持ち込まれた旧世界(ユーラシアなど)からの動物が野生化することで大きな被害を出している。

とくにノラ猫は深刻で、在来(固有)の鳥類やコウモリ、トカゲ、ネズミなどに大きな影響が出ている。絶滅に追い込まれる種も多い。そこで従来からニュージーランドではノラ猫を、毒物や罠、銃を使って駆除し、個体数を抑えているそうだ。

だからこそ、子どもに銃を使わせて害獣を「殺せ!」と競わせる土壌もあるのだろう。市民の理解もそれなりにあると思われる。

……それでも、猫を殺すというと、反対意見が続出するのは、なぜ?

一応の理由としては、飼い猫と区別がつきにくいから。う~ん、苦しい言い訳だ。本音を言えばいいのに。

つまり、「猫はカワイイから殺しちゃダメ」と。カワイイものは守れ、カワイクなければ殺してもいいよ、と。ちょっと感情的、いや差別的な論理だ。もっと言えばレイシズムに通じる。嫌いな民族を浄化する!発想と紙一重。

今回のイベントも、猫以外、たとえば野生の鹿や野豚を子供たちに撃つ競技は、予定通り実施されるという。鹿もカワイイと思うけどね(笑)。ノブタだって……見様によっては(笑)。

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ボルネオの「猫の街」のお土産。この猫(の木彫り)はカワイイ?カワイクない?

 

2023/04/07

シカ生息数の増減を決めるのは何?

森林総合研究所の研究発表に、

ニホンジカの過去10万年の個体数増減を解明 人間の捕獲による管理が増減を決める

というものがあった。獣害の中心となっているシカの生息数の増減を調べたものである。それが過去10万年も遡っているのでびっくり。しかも方法はDNA解析だというのだ。なぜDNAから生息数がわかるのかという点については本文を読んでいただきたい。まあ論文そのものは英語なので、いよいよわからんのだが……(^^;)。

ともあれ結果、現在のシカの数は、過去10万年間で最⼤、あるいはそれに近い⽔準まで増加しているのだという。

北海道の有効集団サイズは、約2000〜3000年前と明治時代以降に⼤きく増加し、現在は過去最⼤の⽔準と⽐べるとやや少ないと推定されました(図)。⼀⽅、兵庫県の有効集団サイズは、約8万年前、約1500年前、及び明治時代以降に増加し、現在は過去最⼤の⽔準となっていると推定されました(図)。さらに、これらの増加したタイミングの多くは、⾷料としてのシカの利⽤が減少した時期や禁猟により捕獲数が減少した時期と⼤まかに対応する⼀⽅、気温や降⽔量が⼤きく変化した時期やオオカミが存在していた時期との関係は明確ではありませんでした。

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推定されたシカの有効集団サイズ(上段は北海道、下段は兵庫県の結果。左列のグラフは過去400年までの推定値を示す。右列のグラフは400年前から10万年前までの推定値を対数表示で示している)。いずれも、左ほど現在に近くなる。

そして、
シカが過去に⼤きく増加したタイミングの多くは⼈間による捕獲圧が低下した時期と⼀致していた
気温や降⽔量の変動やニホンオオカミの絶滅とは関係が明確ではない
シカによる影響を許容範囲に収めるためには⼈間による継続的な捕獲が重要であることを歴史的な観点から⽰した(人間によるシカ管理が必要)

と結論づけている。

ええと、内容に異論をつけるほど私も詳しく考察したわけではないのだが、シカの増減が人間の捕獲圧で決まるというのは、ちと疑問。

銃や車を持たない時代、シカの捕獲圧が今より強かったようには思えないのだ。とくに江戸時代は肉食も広がっていなかった。いや、その後もシカ肉需要は大きくなったことはない。やはり食うならイノシシかブタ、ウシだろう。捕獲は、あくまで獣害対策であったはずだ。

私の感覚では、人が与えた影響は、捕獲以前の生態系破壊ではないかと思う。森林をなくしたり疎林にしてしまえば、シカの生息条件は悪くなる。見通しがよければ狩猟でも逃げ場がなくなる。直接の捕獲よりも、その方がシカの生息数に甚大な影響を与えると思うのだが。すると現在の森林は、10万年間でもっとも健全ということになってしまうか。

ちなみに私が奈良のシカのことを調べた際に、実は江戸~明治の春日山原始林はかなり傷んでいて、スカスカ状態であったらしい。だから、ナラシカも今ほど生息数は多くなかった。春日山は神の山でナラシカは神の使いだから狩猟なんかとてもできない(でも、薪炭をとったり焼き畑は行われていたらしい)から捕獲圧はなかったはずだ。

いっそのこと、森林をどんどん破壊するのが、シカを減らすのに有効ではないかなあ。

ちなみに シカ個体数を減らすにはメスの捕獲が効果的

こんな研究もあるよ。

シカ生息数の増減を決めるのは何?

森林総合研究所の研究発表に、

ニホンジカの過去10万年の個体数増減を解明 人間の捕獲による管理が増減を決める

というものがあった。獣害の中心となっているシカの生息数の増減を調べたものである。それが過去10万年も遡っているのでびっくり。しかも方法はDNA解析だというのだ。なぜDNAから生息数がわかるのかという点については本文を読んでいただきたい。まあ論文そのものは英語なので、いよいよわからんのだが……(^^;)。

ともあれ結果、現在のシカの数は、過去10万年間で最⼤、あるいはそれに近い⽔準まで増加しているのだという。

北海道の有効集団サイズは、約2000〜3000年前と明治時代以降に⼤きく増加し、現在は過去最⼤の⽔準と⽐べるとやや少ないと推定されました(図)。⼀⽅、兵庫県の有効集団サイズは、約8万年前、約1500年前、及び明治時代以降に増加し、現在は過去最⼤の⽔準となっていると推定されました(図)。さらに、これらの増加したタイミングの多くは、⾷料としてのシカの利⽤が減少した時期や禁猟により捕獲数が減少した時期と⼤まかに対応する⼀⽅、気温や降⽔量が⼤きく変化した時期やオオカミが存在していた時期との関係は明確ではありませんでした。

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推定されたシカの有効集団サイズ(上段は北海道、下段は兵庫県の結果。左列のグラフは過去400年までの推定値を示す。右列のグラフは400年前から10万年前までの推定値を対数表示で示している)。いずれも、左ほど現在に近くなる。

そして、
シカが過去に⼤きく増加したタイミングの多くは⼈間による捕獲圧が低下した時期と⼀致していた
気温や降⽔量の変動やニホンオオカミの絶滅とは関係が明確ではない
シカによる影響を許容範囲に収めるためには⼈間による継続的な捕獲が重要であることを歴史的な観点から⽰した(人間によるシカ管理が必要)

と結論づけている。

ええと、内容に異論をつけるほど私も詳しく考察したわけではないのだが、シカの増減が人間の捕獲圧で決まるというのは、ちと疑問。

銃や車を持たない時代、シカの捕獲圧が今より強かったようには思えないのだ。とくに江戸時代は肉食も広がっていなかった。いや、その後もシカ肉需要は大きくなったことはない。やはり食うならイノシシかブタ、ウシだろう。捕獲は、あくまで獣害対策であったはずだ。

私の感覚では、人が与えた影響は、捕獲以前の生態系破壊ではないかと思う。森林をなくしたり疎林にしてしまえば、シカの生息条件は悪くなる。見通しがよければ狩猟でも逃げ場がなくなる。直接の捕獲よりも、その方がシカの生息数に甚大な影響を与えると思うのだが。すると現在の森林は、10万年間でもっとも健全ということになってしまうか。

ちなみに私が奈良のシカのことを調べた際に、実は江戸~明治の春日山原始林はかなり傷んでいて、スカスカ状態であったらしい。だから、ナラシカも今ほど生息数は多くなかった。春日山は神の山でナラシカは神の使いだから狩猟なんかとてもできない(でも、薪炭をとったり焼き畑は行われていたらしい)から捕獲圧はなかったはずだ。

いっそのこと、森林をどんどん破壊するのが、シカを減らすのに有効ではないかなあ。

ちなみに シカ個体数を減らすにはメスの捕獲が効果的

こんな研究もあるよ。

2023/03/19

カラスに襲われる女

近隣の森林公園を歩いてきたのだが、そこで見かけたのが「カラスに襲われる女」。

女性二人組なのだが、カラスはそのうちの一人を執拗に襲う。目の前まで近づき、ときに羽ばたいて襲いかかる。とうせんぼする。女性は、最初懐かれていると思ったみたいだ。しかし、凶暴なので持て余し、危険を感じ始めたみたい。私はというと、少し離れたところから見学(^^;)。

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さて、ヒッチコックの「鳥」のようになるか。。。。なんとかやり過ごしたかに見えた。

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カラスはハシボソか。森に棲むカラスだが、この公園では人になれているみたいだ。

が、この後、カラスはまたも女性に襲いかかり、手にしていたバッグの中に顔を突っ込んで袋をつまみ出した。そしてさっと高みに飛び去る。

どうやらごみ袋だったようだ。ペットボトルなどが散乱する。カラスがつまんだのは、オニギリの包み紙(プラスチック)のよう。中身は入っていなかったが、臭いがしたのだろう。なるほど、これを狙っていたのか。女性も、食べた後の品だから、狙われるとは思わなかったみたい。カラスだって、プラ包みを食べられるわけなく(食べたら死ぬ)、臭いを嗅いだだけで終わるだろうが。

しかし、ここまでカラスも増長しているだね。人を襲って餌を取ることを覚えているのだ。

ちょうど同じ日にテレビで人里出てきたニホンザルのニュースをやっていたが、カラスやサルだけでなく野生動物が頻繁に人里、というより人そのものを狙いだしたようだ。私の予言は当たっているぞ、と喜んでいる場合じゃないが、今後もっと厄介な事件を引き起こすかもしれない。獣害は、農作物や森林だけではない。人そのものを襲う確率は高まっていく。

もっとも、そのうちカラスもプラゴミを食べて苦しむ個体が増えるかもしれない。イタチごっこ? イタチは、どうだろうか。

 

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