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森と林業と動物の本

2025/03/17

獣害でそば屋が休業

奈良県天理市の高原地帯に「荒神の里 笠そば」というそば屋がある。

すべて自分たちで栽培したそばを使っていることが名物だ。それも挽き立て・打立て・茹がきたて 。それなのに、そばを出せなくなったため一時休業するという。その理由は、獣害だそうだ。

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詳しいことは書かれていないが、昨秋の収穫時期に獣害等により壊滅的な被害を受けた事から、皆様方に地元産のソバを提供する事が困難な状況となりました、とある。

獣害とは、イノシシなのか、シカなのかわからないが、壊滅的とは……。高原だからイノシシはこれまであまりいなかったと思うのだが、登ってきたのか。あるいはシカが柵をかいくぐったのか。いずれにしろ5月には在庫が底を突くのだろう。他地域からそば粉を仕入れてまで開業を続けないとは、思い切った決断。

ここは個人の店とは違って地域おこし的につくられた店だ。

もともと山の中の高原地帯で、1978年に始まった国営総合農地開発事業、つまりパイロットファームとして60ヘクタール以上の巨大農地を造成したのだが、このような国主導の農業は何を栽培するか、どうやって売るかを考えていない。栽培するものに困る例もよく聞くが、手間のいらない作物としてそばが人気。それはこの施設も同じだ。私も、よく似た事例を各地で聞くのだが、実は成功しているところは少ない。たいてい失敗するのだねえ(> <;)。

ここでも4分の1に当たる15ヘクタールでそば栽培を始めた。とはいえ、そば粉だけでは利益など出ない。輸入品にかなわないからだ。
だが1994年に結成された笠そば栽培促進協議会女性部が、そばの加工と販売、そば打ち体験教室……などを始めた。素人のそばうちからスタートしたのである。栽培から加工・販売まで一貫して地元で行うそば屋として、笠そば処がオープンしたのだ。

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かつてのそば畑と笠そば処。なかなか繁盛していた。私自身も、幾度も訪れている。名人級の美味いそば……とまでは言わないが、それなりに楽しめる。ほかにも農産物直売もやっていたはずだ。

それにしても15ヘクタール分のそばを食い尽くすとは、どんな獣害だろうか。

 

2025/02/21

住宅地で猟銃発砲法案、いよいよ

政府は、本日「住宅地での猟銃使用を可能にする鳥獣保護管理法改正案」を閣議決定した。とうとう出ましたか。

クマの人里出没がこれほど相次ぐと、こうした手段も取らなくてはならないのだろう。これまで一貫して、国民から銃器を遠ざける政策を推進してきた警察からすると忸怩たる思いかもしれない。

とはいえ、条件は甘くない。日常の生活圏(それはどこだ? 村役場の周辺まで許容? それとも農家が数軒ある集落も入れる?)に出現した場合、市町村長の判断で住宅地でも危険鳥獣の猟銃での駆除を可能にするとした。

猟銃使用の条件は、
①危害を防止する措置が緊急に必要
②地域住民に弾丸が達するおそれがない――など。

ただし、市町村長が現場で判断するわけはないので、代行する職員が状況を報告して決めるのだろうか。結局は警察官なのかもしれない。それでは、今とあまり変わらない。
物損が生じた場合は市町村長が補償する措置もあるが、これは保険を適用する。

なお「危険鳥獣」と定義するのは、ヒグマとツキノワグマ、イノシシの3種としている。鳥獣なんだから鳥も入れてほしいけどなあ。ワシ、タカは無理として、人を襲う鳥としては……カラスか(^^;)。ダチョウが動物園を逃げ出したら駆除できるだろうか。

住宅地のクマ、猟銃駆除が可能に 政府が法案を閣議決定

Photo_20250221163701 日経新聞より

 

 

2025/02/14

緊急猟銃対策と「生き物の憲法」

とうとう環境省が、住宅街に出没したクマに対する猟銃駆除を市町村長の判断で可能とする法律の鳥獣保護法改正案を通常国会に提出する

「緊急猟銃」という用語を使うようだ。

クマ被害の中“市街地で猟銃使用 市町村長判断で”改正法案へ

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条件は、こんな具合。

1、クマが住宅地など日常生活圏に侵入
2、人の生命、身体に危害の恐れ
3、猟銃以外では捕獲困難
4、住民に弾丸が到達する心配がない

これらを満たした場合に許可される。ほかに民間保険に入っておいて被害が出た場合は補てんするとか、出没周辺の通行制限、避難指示を可能にするなども入っている。これまでは要請だったのだね。なおイノシシも対象にするようだ。

ここまで出没が多発したのなら仕方がない。しかし、とりあえず……という感じの改正で、対症療法的なのは拭えない。もっと野生動物に対応するための基本法などがほしいと思う。鳥獣保護法ではなく、鳥獣管理法になるのか。本当は、植物の外来種対策も含んだ野生生物管理と保護の理念を示す法律が必要ではなかろうか。別に法律で縛れというのではなくて、基本理念がわからないかからだ。できれば生態系保全に関する日本の寄って立つ考え方が知りたい。

今の日本の法律では、生物に対する規定が弱くて、何をめざしているのかわからない。人じゃないから物扱いするかと思えば、やたら保護を唱えて被害対策をしづらくする。愛玩動物(ペット)と家畜家禽と研究対象、動物園などの鑑賞・保護、そして野生……と混在している。それらを広く識者とともに議論して、生き物の憲法のようなものを示してくれないかなあ。

しかし、納得できる法文で制定するには何年もかかるのだろうなあ。ようやくまとまった頃には、事態は一変しているかもしれないなあ。

2025/01/07

野犬は野生? それとも……

このところ朝日新聞には、よく野犬のニュースが載る。どうやら同じ記者が執筆しているようだが……。

家畜を襲う野犬、被害深刻化 北海道・道東の酪農家「放牧できない」  

野犬は愛護動物か害獣か 人へのかみつきも年数十件、牛も衰弱死被害 

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野生動物ジャーナリストとしてはコメントしないといけませんね(笑)。

この場合の「野犬」とは、ヤケンと読むのか、ノイヌと読むのか。前者は飼い犬が逃げ出すなどして飼い主がいないものを指すが、生活圏も含めて比較的人間社会に依存して、餌をもらったり残飯などを漁っているケースが多い。一般にはノライヌと呼ぶべきだろう。
後者は生まれも育ちも野生で、生活は人に依存しない。住まいも基本的に人のいない野山で、餌は自ら狩をして得る。

厄介なのは、日本の鳥獣保護法だ。ノイヌは狩猟鳥獣なのに対してノライヌは非狩猟鳥獣で捕獲することはできない。目的や手段は関係なく捕獲するには許可がいる。実際は狂犬病予防法などを根拠にノライヌを捕獲しているが。

なおノイヌは野山では鳥類もイタチなどの小動物を狩して餌にしていると思われるが、たまにはシカなど大型動物も集団で狩を行う。その点から、私はノイヌこそニホンオオカミの生態的地位(ニッチ)を確保したのではないかと思っている。いまだに獣害問題をタテに「オオカミを野に放て」とアホなことを言っている連中もいるが、その必要はないのである。

なおノイヌの元の品種によるが、シェパード系の狩猟犬の場合、その大きな体格からもニホンオオカミより強いだろう。狩猟能力も高い。

ちょっと驚いたのは、環境省のコメント。野犬は愛護動物(ペット)か害獣かの線引きは難しいとしつつ、「山野にいる犬でもその行動圏に人が居住などしている場合は、原則として愛護動物の犬として考えるべきだというのだ。

おいおい、慎重な官僚がそんなこと言ってもよいのかな。

そんなこと言っていたら、人里に居ついたサルやクマまで愛護しなければならないのかと言われかねない。イヌだけ特別扱いか。記事にあるような人里(牧場も含む)に出てくる野犬を駆除できない。これをノイヌ判定しなくてもよいのか。

奈良公園でも、ナラシカを襲う野犬が出るのだが、こちらはどう判定するか。ノライヌだとしたら、シカを守れない。徳川綱吉の「生類哀れみの令」の時代でさえ、シカを優先的に保護したのに。

2024/12/20

害獣より家畜

毎回、普段は行かないところを散歩することを心がけている。すると、何かと発見がある。

今回見つけたのは、こちら。

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ヤギ(^o^)。ヤギを飼っているところは、最近増えてきたように思う。しかし、里山の農地に草を食んでいる姿はなかなか愛くるしい。

野生動物はイノシシにタヌキ、キツネ、アライグマ、イタチ……と数多いが、飼育系も多いのだ。

生駒は、なかなか不思議な動物がいるところで、乗馬系のウマや養豚場のブタもいる。警察犬などの訓練施設もある。そこにヤギにヒツジのほかニホンザルやエミューまでいる。サルも首輪をしてつながれていたし、ペットホテルかのような施設もある。なお家畜という点では、ミツバチも家畜扱いだ。

森の中でエミューを見つけたときはビックリしたな。なんでオーストリアの走る鳥がいるのか。何か柵があると思って覗き込むとエミューが何羽かうろついているのだもの。誰が飼っているのか? 残念ながら周辺に人影はない。人影どころか人家さえないし、登山道ぽい道しかないから車も入れないところなのだ。餌などは通いで与えているか。

その写真は公開を控えたい(^^;)ので、先日の東京科学博物館の「鳥展」で見たエミューの剥製。

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思えば、野生動物の獣害が問題になっているが、家畜を飼えばいいのではないか。害獣の餌を先に食べてもらうほか、先に動物がいると野生動物は近づきにくくなる。本当はウシやウマなど大型動物がよいが、ヤギでも効果があると聞く。

イヌの放し飼いも獣害対策に効くというのだが、イヌの放し飼い自体が禁止されているから、ヤギやヒツジを放し飼いにする(笑)。ダチョウもいいかもしれない。

もともと人里とは、動物が多いところだった。いや動物の多いところに人は住みついて待ちをつくった。そして人が住む場所は、動物にとっても住みやすい。シカは森ばかりよりも、適度に切り開いた土地の方が好きだ。下手な野生地より人里の方が動物は住みやすいのである。1820年代のニューヨークには2万頭のブタと13万頭のウマがいたそうだ。
日本でも江戸の町は動物にあふれていたことを幕末に訪日した外国人の記録にある。

それを一時期は駆逐したが、最近またもどってきたのが、現在の獣害なのかもしれない。

2024/12/13

科博「鳥展」の見どころは……マンガ?

東京滞在中に、また2時間ほど空き時間が。どこに行くかと考えた結果、国立科学博物館の「鳥展」にした。

上野公園にはいくつも美術館があって、モネ展もやっていたんだけど、まあ~「睡蓮」はもうアチコチで見てきたしなあ、とパスしたが、前を通り掛かると、なんと、とてつもない行列でそもそも入れないのであった。

閑話休題。正直、動物の中で鳥はあまり関心を向けてこなかった。嫌いではないのだが、私のキャパには入りきらないのである。それでも恐竜の末裔だとか、最近何かと気にかかる話題もある。

さて入ると、初っぱなから鳥の科学的な説明(定義)がある。空飛ぶ動物の中には哺乳類、爬虫類、両生類までいるそうだ。もちろん翼竜や昆虫も飛ぶ。逆に鳥の中には飛ばないのもいるし……とまあ、科学色満載なのだが、それがなかなか面白い。
オオコウモリの剥製は、それなりに迫力。恐竜からの進化も紹介されているが、恐竜(獣脚類)が鳥に進化する過程では、翼竜のニッチを奪う意味もあったのかもしれない……とか考える。

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いきなり頭上に、世界最大の飛ぶ鳥だった(絶滅種)ペラゴルニス・サンデルシ の復原模型が吊るされている。なんと嘴に歯(正確には骨の突起だけど)もある。翼開長は6~7メートル以上あったらしい。約2500万年前に北アメリカに生息したとされる。

ほかにエピオルニスやジャイアント・モアなど身長2~3メートル級にもなった巨大走鳥類の骨格標本も展示されているし、なかなかテンション上がる。鳥も面白いじゃないか!
鳥をテーマにした記事、書籍も書こうかな。そうなれば取り扱うカテゴリーを拡大分散させよう……とスケベ心も湧く。

が、私が展示でもっとも面白く感じたのは、漫画だった(^^;)。

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最新の研究成果を漫画で説明してくれている。科学、科学とすると敷居が高くなるところを上手く抑えている。私にはピッタリだ。書きっぷりも面白い。ちゃんとテーマを抑えてオチのつく漫画にするのはたいしたものだ。

実は、美術館と博物館との差ということを考えていて、どうも美術館には「作品だけを見て!」という担当者の意志が漂っている。作家名や作品のブランドなどで注目するのではなく、一作品の良さを感じろ、という、いわばゴーマンさが臭う。説明は最低限の美術館展示が多いのだ。
だが、作品の鑑賞には、作家の素性、製作時の状況、背景の社会から感じるものもある。そこにストーリー性があることで、作品の魅力にハマることも多いのだ。凡人ほど、それが必要ではないか。

その点は、やはり博物館の方に軍配が上がるなあ……と私は思ったのであった。

それと観覧者に、女性の割合が高いことに気がついた。もちろん男女カップルもいるが、一人来訪女性がやたら目につく。年齢は老若さまざまだが、若手も少なくない。連れ立って来て話し込んでいる様子からは、研究者?学者?少なくても鳥ファンなのだろうと思わせる様子。

動物の中で鳥類は、女性ウケするのかもしれない。だから私も鳥の本を書こうと思ったわけではない、ないけど。違うけど。

2024/12/06

国会で獣害問題の質疑

国会の予算委員会中継を見ていたら、秋田のクマ騒動から、北海道の銃裁判にジビエに……と獣害問題の質疑が続いていた。

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なんだか、和気あいあい?な質疑が続いて、こういう国会もいいなあ、思った次第。

どうやら立憲の徳永議員と自民の江藤農水大臣は、一緒に現場視察も行ったらしい。さらに石破総理も、もともと農水大臣や地方創生大臣を務めたほか、防衛大臣の経験として「獣害駆除に自衛隊を出せないかという声がありましたが……」なんて答弁も出た。さらに「ジビエ議連の会長を長くやっていて……」とジビエカーの普及にまで言及した。

こういう話題は与野党が角突き合わせることもなく、むしろ方向性に異議はなくて合同で取り組むべき議題なのだろう。

ただ防護柵の予算増額関連では、農水省が「すでに農業を廃業するまでに追い詰められた地域では、柵をする必要がなくなっていたり、農業をやらないから被害額も落ちているのであって獣害が減っていることにならない」現状まで指摘。一方で徳永議員も、ハンターが駆除個体を埋めずに土をかけただけで済ます問題に触れた。それなりにわかってらっしゃる。

もっとも石破総理の「山が荒れているから動物が里に下りてくる」発言には異議あり。そういう認識では困る。「山が荒れている」という文言は林野庁が好きなのだが、この場合の「荒れている」のは林業地の問題であって、天然林、里山林はむしろ自然が豊富になっている。だから動物の数も増えたのだ。山で増えたから里にまで下りてくる……と考えてほしい。

さらにジビエカーも、現場ではまったく役立たずとされていることを知ってほしい。だいたい解体設備を持ったトラックは、駆除現場の近くまで行けないことが多い。連絡があってから、すぐ駆けつける体制をつくるのも難しい。
むしろ必要なのは、その場で解体せずに駆除現場から近くの解体施設まで速やかに運ぶことだ。たとえば軽トラのような細い山道まで入れる小型の車の方が役立つだろう。その車に冷蔵設備を備えていたら、運搬中の劣化を抑えることができる。巨大ジビエカーを欲しがるのは、補助金目当ての業者ばかりだ。

ま、そんなツッコミはあるのだが、聞いていて面白かった。

ちなみに、このところYahoo!ニュースのコメントを付けるのが動物関連、とくに獣害問題が増えてきた。本日付けたのはこちら。

「クマを殺すな」「山に返せ!」クマ駆除に抗議する人たちに「圧倒的に欠けているもの」の正体…昨今、クマ駆除に“ブチ切れる人”なぜ増えた? 

人々に愛されるネコ、実は世界最悪レベルの「侵略的外来種」

だんだん林業分野が減ってなってきた。でも奈良のシカにも正体不明の疫病にも広がってきた。

これは10年ぐらい前から仕事分野の多様化を心がけ、林業ばかりでなく、動物関係の著作を増やした努力の実が結んできたということかな。

2024/11/25

草食の肉食動物、肉食の草食動物……

こんな記事を読んだ。

花蜜吸う"甘党オオカミ"発見 

オックスフォード大学は、昆虫のように花蜜を吸う「甘党オオカミ」が発見したというのだ。このオオカミは東アフリカのエチオピア高地に生息する種で、大型の肉食動物による花蜜摂食の記録は初めてという。鼻先や口周りに大量の花粉をつけて花から花へと移動していたことから、受粉の媒介者としても機能している可能性もある。

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実は、私は以前より野生動物の食性に関して疑問を持っていた。どこまで草食、肉食、そして雑食と分けられるのか、と。

人骨かじるシカ、ベジタリアンのクマ……動物の食性は融通無碍 

実際に、多くの観察例がある。

ヒトの死体の骨を食べるシカ、はじめて観察 

小鳥をパクパク食べる鹿 

そしてパンダも竹しか食べないわけではなさそうだ。

パンダ、実は肉食?動物の死がいにかぶりつく様子を撮影 

これほど実例が増えてきたら特異例として否定するのも難しいだろう。これも、映像撮影が簡単になったからかもしれないが、続々と発見されているのだ。奈良公園のシカ、ナラシカも、ごみ箱漁りによって鳥のから揚げを食べている例が知られている。それでシカが腹下しする、というわけではない。ただ香辛料などは危険だそうだが。印刷された紙もいけない。

一方で森林総研の研究で、こんなものもある。

塩水でメスジカを引き寄せる メスの集中捕獲を目指して

これはメスジカはオスジカよりも塩水が好き、という嗜好の差を紹介しているのだが、何か意味があるのかもしれない。それが食性の問題にもなる。先の蜂蜜をなめるオオカミも、もし花粉媒介をしていたら、特異例ではなく生態系に組み込まれていることになる。

 

2024/11/04

シカのキノコ狩

奈良県宇陀市を訪れた際に、その庁舎で見かけた絵。

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宇陀は、萬葉の時代より狩りや薬草で有名な土地なのだが、推古天皇の時代に行われた「鹿茸狩り」の様子の絵である。

鹿茸(ろくじょう)を知っているだろうか。シカの頭に生えるキノコのことだヾ(- -;)。奈良公園のシカの写真で紹介すると、こんな感じ。だいたい春先、4~5月くらいの間に出る。シカの角は冬に落ちて、生えかわるのだが(奈良公園では、秋のうちに角を切ってしまう)、その生え始めの状態。

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こんな具合。ようは角の生え始め。正式には袋角というのではなかったかな。

角の上に皮膚がかぶっている状態で、触ると温かくて柔らかい(触ってはダメ)である。このぐらいの角なら怖くない(触ってはダメ。シカも嫌がる)。うっすら毛も生えていて、触ると触感が心地よい(触ってはダメ!!)

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すぐにこれぐらい伸びるから、キノコの期間は短い。

しかし、それを推古時代には採集していたのだな。なぜなら、クスリになるから。補精強壮薬となるとされ、中国の『神農本草経』や『本草綱目』 にも記載がある。そして 今の漢方薬でも使われている。本当に成分としてはどうなんだろう。

この鹿茸狩りは、『日本書紀』に記載されていて、西暦611年(推古天皇19年)、5月5日(陰暦だから、今の6月中旬だろうか)宇陀の菟田野(うだの)薬狩りを行ったと記されている。このクスリが、鹿茸だったらしい。

鹿茸は高く売れるそうだから、上手くこの時期にシカを仕留めて得たら、儲からないか……と思うそのためのシカ牧場も作られている。ただ、実際は量産が難しいらしい。

でもアンチエージングに効くらしいから、人気呼びそう。ジビエを超える商品化を考えてしまう。

2024/10/30

農家廃業の理由

先日、某所に鳥獣害対策の取材に行ったのだが……。

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これはナシ農家とのことだった。イノシシにシカ、そしてサルが出るというので、その対策の柵を見てきた。写真の背景に写る、上部に青の網が欠けられた柵である。高く、しかも青い部分は支柱がしなる。サルが柵を越えようとしたら、びよ~んと曲がって振り落とされる。完全ではないが、なかなかの仕掛けだ。また下部は針金の網。

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そこには秘策・ヘビがいる。サルはヘビが嫌いだ。多分シカも嫌いだろう。これは恐い……って、もちろん模型なのだが、非常にリアル。

が、先の写真を見て気づくだろうが、肝心のナシの木が伐られている。あれ?

そうなのだ、実際に果樹は全部伐るらしい。なぜだ。

「もう廃業するから」。

え、農家辞めるの? やっぱり獣害がきつくて……。 

違うのだ。問題のシカやサルは、この柵のおかげで随分防げたそうだ。ヘビも効いたのだろう。

ではなぜか。意外な回答であった。

「カメムシが出るのよ。防ぎようがない」。

ここ数年、爆発的にカメムシが発生して、ナシなどの果樹につく。一つの実に3、4匹もつけば、汁を吸ってもう傷だらけである。そうしたら、売り物にならなくなる。消毒、つまり農薬を散布するしかないのだけど、効かない。年間20回以上消毒したが、ダメだったという。

下手すると、収入ゼロになる。

そろそろ歳で、農薬散布も疲れるし、ほかの栽培作業もきつくなった。それなのに収穫できない。今更ほかの作物に転作するのもきつい。それで諦めたそうだ。

なぜ、カメムシが大発生したのか。防除手段はないのか。残念ながら、未解決のままだ。これが農家の現実か。収穫物の価格。肥料等の高騰。高齢化と人手不足。そして獣害。虫害。せっかく築いた柵も使わなくなりそうだ。

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