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森と林業と田舎の本

2020/09/15

どこでも起きる、無断伐採

久しぶりに健康診断を受けているのだが、私の行きつけ?いやホームドクターは無駄話ばかりする。

「妻の実家が龍神でな」。これ、和歌山県龍神村のことである。

「結構、山を持っているんだけど、久しぶりに見に行ったらバッサリ伐られているねん」。おや、それは盗伐か!?

どうやら山の管理を頼んでいた親戚が勝手に伐ったらしい。金が必要だった、と。まあ、在り来たりの言い訳である。そんな金ならいくらでも都合つけたるのに、よりによって山を伐ってしまうとは……と嘆いているそうである。つまり、現金より、長い年月をかけて育てた木に価値を感じているのだろう。(もっとも、最近は、伐採しても搬出に経費がかかって利益が出ないことも嘆いていた。)

身内で、しかも管理を委託していた相手となると、簡単に訴え出るのも難しいだろうが、やはりこれは犯罪行為、窃盗に当たる。こうした無断伐採は、表に出づらいだけに結構多いのではないか。

 

というわけで、手元に届いた「旬刊宮崎」紙の一面を紹介しよう。

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「旬刊宮崎」は、唯一宮崎県で盗伐問題を追及し続けている地域紙。今回は1、2面で盗伐問題を大きく取り上げている。これに目を通せば、今も続く盗伐と、それに対する役所や警察の対応もわかるだろう。
どうも、上は知事から、下は自治会まで、ほとんどグルで動いているようだ。告発したら、どうにも都合の悪いことになることを皆がわかっていて、握りつぶそうとしているのか。それだけ宮崎には林業に関わる人が多いのだろうが、網の目のように人間関係(というより盗伐ネットワーク)が築かれていると思うとウンザリする。

もしかして、宮崎は声を上げる人が出てきただけマシなのかもしれない。こっそり内輪で処理されて、泣き寝入りになっている山主も全国的には多いのではないか。

 

 

 

2020/09/13

宮崎の台風被害の原因は?

9月7日の台風10号では、宮崎県椎葉村に山崩れを発生させて、4人が行方不明になった。今も捜索は続けられているだろうが、事態は絶望的だ。

それに関する新聞記事。まずは朝日新聞だが、写真を見てほしい。

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いかにも山の斜面が中腹より崩れて麓の川沿いの民家を襲ったように写っているのだが…。

実は宮崎日日新聞の記事を送ってくださった方がいる。こちらは共同通信配信のようだ。どちらもヘリを飛ばして、だいたい同じ位置から撮影したように思える。ただし、違いがある。

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宮崎日日新聞では、崩れた起点の少し上も写っている。そこには、明らかに伐採跡地とそこまでの作業道が入れられていたことが写し出されている。崩れたのも、はっきりと道からだとわかる。

その点、朝日新聞側は、なぜかその場所を切り取っていてわからない。できるだけ崩れた場所を大きく載せるためにトリミングしたのかもしれないが、印象がガラリと変わるだろう。朝日の写真だと、山の中腹が崩れたのは仕方ないように思えるが、宮崎日日の場合は、林業こそが山崩れを誘発したと自然に感じるのだ。

まさか、伐採されている土地は、盗伐ではないだろうな、と疑ってしまうが、流れ出た土砂に丸太が混ざって見えることから土場があったのではと想像する。

宮崎の各所に続々と発見される盗伐地。それらが台風などの被害を増大していたら、もう誰が謝るのだ?盗伐被害者が、水害の加害者扱いされかねない。

2020/09/06

木質ペレットの生産量統計を読む

林野庁の統計発表。 「木質ペレットの生産状況」

令和元年における木質粒状燃料(木質ペレット)の生産量は前年から1.6万トン増加の14.7万トン(対前年比112.1%)となりました。一方で工場数は147工場で、前年から7工場の減少となりました。
生産された木質ペレットを用途別に見ると、燃料用としての生産がほとんどを占め、14.2万トン(構成比96.7%)となりました。
また、原料入手別に見ると丸太・林地残材からの生産が6.3万トン(構成比43.0%)、製材工場等残材からの生産が5.9万トン(構成比40.3%)、建設発生木材が2.4万トン(構成比16.4%)となりました。
丸太・林地残材から生産されたものの樹種別で見ると、スギが3.8万トン(構成比60.2%)、マツが1.9万トン(構成比29.4%)、ヒノキが0.5万トン(構成比8.1%)となりました。

この数字を見ていろいろ考えるのもよいが、問題は、用途。ほとんど燃料用とあるが、何の燃料だろうか。ペレットストーブがそんなに増えたとは思えないから、やはりバイオマス発電だろう。だが、発電用の燃焼炉はチップでもいいのじゃないか。わざわざペレットにしなくても……。ペレットにすると保管しやすいとか、何か別のメリットがあるのだろうか。そういや、バイオマス燃料として輸入されるのには、木質ペレットが多かった。

そして、本当の疑問はこちら。燃料以外の利用法は何か。3.3%を占める木質ペレットの用途は何か。単純計算では4851トンだ。燃やす以外の使い道は……ネコ砂とか(笑)。油の吸着剤なんてのもあるな。

ちなみに原料も、林地残材が4割以上と多いが、これって、わざわざペレットにするため伐採しているのか。そして粉になるまで粉砕する……。なんか「もったいない」。樹種は、マツが3割とわりと多い。そんなに建材としては出てこないマツが、こんなに多いのは支障木か。それとも、わざわざ伐採しているというのなら不思議。

地域別の生産量。

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生産地は北海道(約1万2000トン)が圧倒的に多い……と思っていたら、なんと岡山がその倍以上もあった。2万5766トンである。これは真庭地方のバイオマス発電のためだろうか。使い道も、工業用とか農業用がそこそこある。どんな使い方だ?
次が宮崎県で、1万9467トン。そして愛媛、高知、秋田、福島、長野、新潟……。
それぞれに、どういう背景があるのか、考えてみると面白いなあ。

2020/08/20

「見た目の伐採地」の研究

森林総合研究所のHPに、伐採後の「見た目」についての研究が発表されていた。

伐採地の「見た目」に抱く印象のズレを理解し森林管理に活かすために

サイトには7種類の写真があるから、見比べてほしい。見た目から伐採跡地を論じるのは、なかなか珍しいだろう。

森林の「見た目」の印象は立場によってズレがあり、その人にとっての価値を大きく左右します。したがって、利害関係者が伐採地にどのような印象を持つのかについて、伐採者がしっかりと認識していることが期待されますが、これまで特に伐採地の「見た目」の印象のズレについての研究はほとんど行なわれてきませんでした。

そこで私たちは、北海道のトドマツ人工林を対象地として、さまざまなタイプの伐採地を写真撮影し、専門家ではない人々(非専門家群)と森林・林業を専門とする研究者ら(専門家群)を対象にして、伐採地の写真の「見た目の印象」について調査しました。

その結果、非専門家は皆伐地と広葉樹老齢木が残された伐採地をポジティブに、トドマツを群状に伐り残した伐採地をネガティブにとらえる傾向があること等が明らかになりました。また、林業を行うための伐採への評価は両群で大きく異なっており、その解消には、伐採の必要性や生態系保全への配慮等についての情報提供が有効なことが分かりました。

本研究は、森林の持つ公益的機能(景観、生物多様性)と林業の折り合いをどうつけるのかといった課題を、非専門家の視点を中心に解析した点に新規性があり、今後、地域住民や旅行者等の目線や生態系に配慮した伐採計画を考える上で役に立ちます。

非専門家、というのは、ようするに林業に関わらない一般人という意味なんだろうが、「皆伐」を評価しているのか。これをどのように解釈するか。写真の撮り方? 斜面か平坦地か。見上げるか、見下ろすか。案外、そんなところも見映えの印象に影響する。

ちなみに私は、「中級保持」がいいかな(^o^)。それと、これって「保持林業」のことだと思った。これまでも幾度か紹介しているが、

ブログなら、保持林業の実践地!

フォレストジャーナルでは、主伐後の森林の生態系を守る! 欧米で提唱されている「保持林業」とは?(前後編)

皆伐時に木の残し方の見た目の評価にもなる。

見た目を重視するのは、たとえば恒続林のように「最も美しき森」をつくるというのにもつながるかも。美しいと感じるのは、実は生態系が健全な森なのかもしれないから。

日本森林学会誌に発表されたものらしいが、ちゃんと本文も読んでみたい。

 

 

 

 

2020/08/11

「中抜きの林業」のヤバい部分

ふとSNSで流れてきた「東洋経済オンライン」の『日本人を貧しくする商習慣「中抜き」のヤバい訳』を読んだ。

ああ、これだこれだ、と私の考えていた「林業がなぜ儲からないのか」理由を改めて振り返る。ただし、この記事の指摘する「中抜き」という言葉の意味は違う。

この記事の冒頭には、政府の持続化給付金事業を受託した組織が、業務を外部企業に再委託していた問題でが説明されている。まったく仕事をせずに請負額から手数料だけ抜いて(下請けに)丸投げしていることには激しい怒りを感じるが、この手数料だけを抜くことを「中抜き」と記している。この額、通常は約1割だが、ときに半分ぐらい搾取するケースもあるから恐るべき日本社会の構造である。

だが、私の指摘する林業の問題の「中抜き」は表面上は少し違う。山主から伐採業者(素材生産業者)、市場、製材所、プレカット工場、木材問屋、木材店から工務店、施主までの流れに幾度となく木材が動いているが、ここに問題があると指摘すると「中抜き」が行われるのである。たとえば市場を抜く、木材問屋を抜く……などである。ときに山主と伐採業者が一体化する「自伐」によるマージン削減も考えられる。この様な流通の一部の機能を飛ばすことを「中抜き」と呼ぶことが多い。

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私自身は、この中抜きに危険を感じている。なぜなら各ステージにある役割を誰が負うかはっきりしないからである。たとえば市場を外して、その移動などの手間と手数料を削減するとしても、市場の土場の仕分け機能や市場自体が持つ金融(ファイナンス)機能を代わって負うのは誰か。仕分けは、山主が指揮する?伐採業者がどこかの土場で行う? 資金の先払いを受けずに業者は仕事を回せるのか……もちろん、代わりを務められたら大いに結構。山主が自ら木を伐るのはそんなケースだ。まさに中抜きがコスト削減になる。
しかし、もし馴れないため仕分けが上手くなく、売れ筋を外したらどうするか。金融機関が適切な資金供与せずにショートしたらどうするか。いや仕分けが面倒だから、A材もみんなバイオマス発電行きだあ~! てこともある。中抜きによって得るべき利益を失っているのである。

一方で、多くの(独立した)業者が介在することで、確実に増えるものがある。それぞれのステージで管理部門の手数と人件費がかかるのだ。たとえば経理担当者も、営業マンも各自抱えている。材料の入荷と工場の稼働状況を管理する人がいないと、工場の常時稼働はできず、止まれば損害を負う。

これは、日本の多くの産業全般で行われる流通の細分化にも通じることだ。いくつもの会社を経由することで、仕分けなど機能は分担できるが、それぞれの会社の管理コストが膨らんでいく。しかも、それぞれのマージンもデタラメ。力の強いところが多く取る。ほとんど仕事をせず下請けに出しながらマージンを2割3割取る業者もいれば、要求に応えて細かな管理をしているのに数%しかとれないところもある。

私は、林業改革で最初に手を付けるべきは、この部分ではないか、と考えていたのだ。

管理部門をばっさり落とせば、随分経費が浮くはずだ。全体のコーディネートを行う会社が、流通過程のすべてを把握して、一括して管理(営業も、経理も、スケジューリングも)する役割を果たせば、1割2割のコストが浮いて、その浮いた金を適正に配分するだけで、随分業界は儲かるようになるのではないか。何より山主にまともな金額を配分できるのではないか。

……ということを考える、お盆のさなか。

 

 

 

 

2020/08/06

複層林・複相林の7年間

先に紹介した竜門の滝の近くには、こんな森がある。

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わかるだろうか。そう、複層林(複相林)だ。スギの人工林の一部を伐採して、その跡地に新植する。これで樹齢の異なるスギが並ぶ複層になる、という施業方法。林野庁が長く推進していましたねえ。
ちなみにこの場所は、1区画はせいぜい2~3アールかな。ただ幅は5mくらいしかないから、実質列状間伐をした跡地に植えたような感じ。

ま、始めたころから意識ある林業家には、「絶対に無理。失敗する」と言われていたのだけど、実際どうにも下層のスギは育たない。上層のスギがすぐに枝を伸ばしてしまって暗くなっているからだ。よほどこまめに上層を間伐して光を調節しないと厳しいだろう。

でも「一度上げた旗は降ろせない」(林野庁)ものだから、フクソウリンという読みを同じの複相林という施業法にこっそり切り換えたのだけど、いつのまにか、帯状皆伐を大々的に導入するのに利用してしまったといういわくつき(笑)。これは、複相林の方かな。

ちなみに、この下層のスギは何年生だろうか。細くてひょろひょろだけと、少なくても20年以上は経つはず。

参考までに、7年半前に撮った写真を。ほぼ同じ場所なのだけど、幹の太さは変わらない。7年間まったく成長しなかったのか。いや、枝葉の色が今の方が悪い。前回は3月だったのに青々としているが、今回は8月で下枝が枯れている……。ただ、紐打ち(初期の枝打ち)を施しているようらしいのは、さすが吉野だと感じる。初期の撫育はしっかりしている。

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なかなか林業における樹木の成長を考えるのによい(反面教師)場所であった。

 

 

2020/08/04

風の木

久しぶりに山に登った。それが、まあ、過酷な山(泣)。

登山口から頂上まで、距離は2キロもないくらいなのに、標高差は600m前後ある。尾根を張りついて登るルートで、道もよくなく、這うがごときの小道だ。とくにあと数百mの表示があってからの辛いこと。

ザックには水が詰めてある。もう少し平らなところに着いたら水を飲もうか……と思いつつ尾根に張りついていると、不意に風が吹いた。ずっと茂みの中だったが、ここだけ風の道になっているのか。

そこで目に入ったのが、これ。

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スギの幹。この見事な横線。見れば、周囲に幾本もある。

やっぱり風に揺らされたのかなあ。ぶちぶちと樹皮が切れている。さて、中身、つまり材はどうなっているやら。やはり繊維が切れているだろうか。伐ったらバラバラになるかなあ……。

と、見とれているふりして、休んだのであった。ま、単独行なんだけど。

ひいひい言って、なんとか山頂にたどり着いた。祠がある。ちなみに下りは登りの半分の時間で下りた。まったくきつい山だ。

そういや山の名を紹介していなかった。吉野の竜門岳である。

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まったくきつい、何もよいところがない山だ。あ、写真はハンモックだけど。

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きつくてきつくて、登山口までおりてから滝に浸かってしまった。あ、これは竜門の滝。まったく楽しくない山だ。

 

2020/08/02

対症療法で「治療」はできない

日本の「林業崩壊」が止まらない…救世主を目指すスゴい会社の「正体」

このスゴいタイトルの記事を読んでみた。なんだか出だしは、『絶望の林業』を読んだかな、と思わせる内容。「木余りで買いたたかれる日本の林業」といったスタンスだからだ。が、後半の「救世主をめざす」という会社はどこだ?

「MEC Industry(MEC社)」であった。三菱地所や竹中工務店など、木材に関わる企業7社の出資を受けて設立されたとあるが、同社のメイン商材は、木材を用いた新建材、そして「木造プレハブ」だという。

ふんふん。大手を礼賛するつもりはないけれど、巨大不動産会社やゼネコンが結託して林業に興味を見せるのなら期待できるんではないか。木造プレハブも伝統木工造より、普及しやすいだろう。

ここで社長の言葉。「これまでは、山林を伐採して市場に卸してから売却先を探すという、従来の『プッシュ型』の原木調達が主流でした。当社では、伐採前に山林に欲しい木材を伝える『プル型』のスタイルに変更することで、有効活用が難しかった、大きくなり過ぎた木も利用可能になったのです」

これもいい。が、新建材とは……なんのことはない、CLTなのである。ここで、一気にため息。

やっぱり、何もわかっちゃいないのだ。CLTは、建築業界からすれば魅力があるのかもしれない。が、林業とは何の関係もないのだ。いうまでもなく、CLT用の木材は買いたたかれるからである。買いたたきを止めずに、木材需要だけを増やしても、より木材価格を落とすだけ。林業崩壊を止めるどころか、林業を食い物にする会社になるだろう、MEC社は。

林業振興、林業再生のために、木材需要を増やす、だからCLTを使う。この方程式の矛盾がわからないらしい。

日本の林業危機を、木材需要が減って「木余り」がひどいからと決めつけているが、これは原因ではない。結果、現象だ。それに合わせて木材需要を増やそう、というのは対症療法だ。木材需要は増えても、林業界に金は回らない。目先の伐採代金だけが泡のように現れては消えていく。

実は、この記事はどうでもよい。私がこのところ考えているのは、対症療法は治療にならない、治療はできないということ。だが世間は、この二つを取り違えているケースが多い。


たとえば待機児童が増えたから保育所を増やすというのは対症療法。増やせば増やすほど、子どもを預けようとする親も増える。預けないと働けない職場は温存される。失業者が増えたから、非正規派遣業を解禁したのも対症療法。数カ月間だけの雇用では社会は安定しない。むしろち賃金の安い労働力が増えて不安定さを増すだろう。コロナ禍で働けず金がない人に金を配るのも、対症療法。配られた金が尽きたらオシマイ。とくに補助金バラマキは、たいてい対症療法だ。

対症療法を軽んじるつもりはない、とりあえず緊急事態に最低限の事態を抑え込む効果はある。が、問題の根本を見つめないと、延々同じことが続くだけ。無尽蔵に補助金を出してもらえると思っているのか。副作用ばかりが膨らむのだ。

同じく、林業界が苦しんでいるのは、木材需要がないことではなく、利益が出ないこと。前者に対応すると対症療法となり、後者に対応するのが本来の治療だ。

では、林業界の治療を行うためには、どうするか。まず山にお金が還元されないから林業が衰退していることを認識する。そして、たとえば「木質建材を2倍の価格で買い取る」と治療方針を打ち出す。そのうえで、建材が2倍になった場合に、増えた資金負担分をいかに軽減するかを考える。値上げするのか。あるいはコスト削減か。隠されている無駄を排除してひねり出すことを、プロとして考えるべきだろう。

実際に上記にあるプッシュ型をプル型に変更することで、流通の無駄をかなり省けるはずだ。在庫ロスはなくなり、流通業の営業の手間もいらなくなる。工場も計画的に稼働させられる。そうした工夫で浮いた資金を資材購入費に回すことで「2倍」を実現する。また数ある流通部門のどこかが、こっそり利益を抜くような真似ができないのも、プル型のよいところだ。その点も、記事の中に次のように書かれてある。

木材の選定から切り出し、製材、加工、組み立て、販売というMEC社1社で担うことができる。大幅な中間コストの削減が図れる

だが、MEC社は、浮いた資金を吐き出すようには見えない。そのまま自社の利益にするだけで、山元なんかに還元しない。本音は林業なんぞに興味はなく、自らが儲けることが目的だからだ。「林業振興のため」は、単なる看板である。そういえば世間の聞こえがいいし、もしかして国からの補助金も引っ張れるかもしれないからね。

そもそもCLTだって、林業振興を旗印に国から補助金を引っ張りだして工場を建てた。ところが売れないので補助金で穴埋めする。そのあげく、外材でCLTを作ろうとして顰蹙を買っている。

いっそ林業振興という言葉を使用したのだから、林業界は宣伝協力費を要求してもよいかもしれない。

結局、広い視点で病因をつかみ、根本的な治療方針を立てられる人がいないことが、林業崩壊を止められない理由だ。

2020/06/13

「山猫」の実験場、求む

 岩手の花巻市で取材したのは、小友木材店。ここで何を取材したのかはおいといてヾ(- -;)マタカ こちらを紹介しよう。

正確に言えば、これも取材の一部ではあるのだが、まったく別の扱いなのである。

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これ、何かわかるだろうか。一応は木材運搬機。丸太の片方を乗せて、引っ張るのである。人呼んでデジタル馬搬「山猫」という。馬搬というより山猫搬かもしれないが。。。

岩手では、馬搬がまだ残っているというか再興している。ウマならば作業道を入れていない山からでも木材が出せるし、山を傷めないですむという点から注目を集めているからだ。ただしウマを飼育するのはなかなか大変だから、それを機械化したものだ。動力は充電式電池。ベースマシンが除雪機というのは、さすが岩手である……。そして「山猫」という命名が、いかにも岩手らしい。賢治の故郷だねえ。

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ともあれ、通常4メートル材1本を引っ張って出せる力がある。道のない山の斜面を引きずっていける。見たところ下りは強そうだが、登りは斜度次第といったところか。搬出は基本的に下りだが、部分的に登りもあるだろうから、そこをいかにクリアするか。

これを使うのは、一般的な林業家ではなく、副業、それもたまに少量の木材を搬出したい林家だろうか。少量だけに道を入れるほどではない、しかし、出したい木がある。それは銘木級で高く売れる……などの状況が考えられるか。
といっても、用途はそれほど絞り込まなくてもよいはずだ。むしろ伐採現場に燃料、植林現場に苗木などの資材とか弁当を運ぶのはどうだろう。あるいは自家用の薪や椎茸原木にする木を伐って搬出するのも使える。私は、有害駆除したシカやイノシシを運ぶのに使えるのではないかと感じた。山中で倒しても、それを道路まで運ぶのは大変だからである。

開発者によると、これを全国のさまざまな実地で試してデータを取りたいとの意向である。どんな山でどんな用途に使えるか、あるいは使えないか。まさに提案によって改良も進む。

林業以外の用途でも使いたい人がいたら声を上げてほしい。道なき山中で何を採取する仕事や、ハンターに向いていると思うが。もともと4月以降に実験するはずだったが、コロナ禍で止まっていた。しかし、そろそろ動き出したいところ。今なら間に合うよ。

私も何軒かに声をかけたが、あまり乗ってくれる人がいない。とりあえず吉野の某山主にOKをいただいたが、林業関係者の引っ込み思案というか、新しいものへのとっつきの悪さを感じるのだが、もっとフレキシブルに動こうよ。

 

2020/06/04

ロボットのプロトタイプはSFにあり

最近、NHKの深夜でアニメ「未来少年コナン」が再放送している。1978年放映のテレビアニメだが、宮崎俊が演出をしていたことから改めて注目を集めているようだ。

さて、それを見ていて気がついた。当時、乗用型の土木機械、いやロボットが登場していたのだ。

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ようは人間が乗って操縦して動かすロボット。鉄腕アトムのような人工知能AIによって自分で考えて動くロボットではなく、また鉄人28号のような遠隔操作でもなく、人間が乗るものの車両型の重機ではなく二足歩行し、人間のように腕を動かすことで、現場の複雑な条件にも対応できるという設定。

この手のより具体的なロボットとして登場するのは、映画『エイリアン2』のパワーローダーだろう。コナン版とよく似て乗用で操縦する人間型重機といったところか。これでエイリアンと戦った。さらに映画『アバター』にも登場していた。

このパワーローダーを映画で見て、実際に作ってみようとした人たちがいる。それが株式会社ATOUN。そこで林業にも使える「着るロボット」を作っていることは、私も記事にした。これは山登りが楽にできるものだ。

この会社の発表会があったので行ってきた。

そこで見たのは、こんなもの。まずはプロトタイプNIO。パワーローダーそのものだ。まだコクピットはないけれど。こちらは「着る」のではなく、まさに装着してロボットに歩かせ人間のパワーを増大させる機械だ。これは100キロの荷物を持ち上げることもできる。巨大重量物を運搬できるから、建設現場だけでなく、災害現場でも使えそう。ただし操縦は難しくて、ニュータイプでないとなかなか習熟できないというのだが……。こちらはガンダムの影響? 

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さらに見つけてしまった。林業用ロボットTABITOを。

Tabito-2

急斜面をすいすい登り、重量物を運搬できるのだ。実は林野庁と組んで開発中。甲冑みたいに身につけ、足の力を増大させて急斜面を登れる。しかも背中の荷物の重みも下に逃がすから重くない。
ただTABITOくんは、まだ18キロあるらしくて、凸凹斜面を歩いたらバランスをとるのが難しいらしい。。。。ここにもニュータイプ人材が必要だ。ロボットより人間を進化させねば。

ATOUNでは、SCI-FIプロトタイピングという理念を打ち出している。サイエンスフィクション(SF)のアイデアを現実に、という発想だ。まさにコナンやエイリアン2で出たアイデアの実現を目指しているわけである。

これは、現在の科学技術を少しずつ改良したり進展させて新しいものを発明する(フォアキャスト)ではなく、先に遠い目標を設定してから、そこにたどり着くように今を進むバックキャストの手法である。その目標にSFを採用するのだ。

 

そこで、はたと思いだした。実は、60年前に同じことをやった科学者がいたことを。アメリカのラルフ・モシャーだ。軍用ロボットを作っていた男である。ちょうどテレビでも紹介されていた。

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1960年代に、装着型ロボットを開発し、人が重いものを持ち上げられるようにしたのだ。アイデアは古くからあったわけだ。現実はSFよりも早かったのか。モシャーのアイデアの元に何かSFがあるのかもしれないが、最初に思いついたのは誰なのか今となってはわからない。

ただし、モシャーのロボットはものにならなかった。巨大な腕は700キロもあって、とても装着して動けないから。当時の技術では軽量化も馬力増もできなかったのだ。しかし今なら……強力な電池と軽量マテリアルを駆使したら、かなりの線まで行くかもしれない。

とはいえSFの世界の実現をめざすのなら、もっとエネルギー源と素材を革新する必要がある。現在のリチウム電池では、まだまだ力足らずのように思えるし、もっと小さく長持ちさせてほしい。常温核融合による原子力電池……とかなんとか(笑)。素材もチタン以上に軽いものが求められるかも。炭素繊維やセルロースナノファイバーも候補だろう。SFだったら、架空の技術や素材が登場させられるのだが。

大風呂敷を広げないと、革新的イノベーションは起こらない。

 

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