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森と林業と動物の本

2026/04/02

紙か髪か、石油か木材か

トランプがイラン相手に馬鹿なこと……を通り越して下劣、暗愚なことを始めたおかげでホルムズ海峡が封鎖され、石油価格が高騰している。それに右往左往する世界。

そんなときに頭に浮かんだのが、小松左京の『紙か髪か』という短編小説である。

ある日、いきなり紙が世界から消えるのだ。書類はもちろん、電車の切符も紙幣も、みんな消える。いやテレビの音声が出なくなったと思えば、マイクは紙質だった。そのほか、意外な品、部品が紙製であり、世界中は大パニックになる。

1960年代の作品だ。つまり、まだ30代の頃だろう。

Sfmagazine1963january6 執筆当時の小松左京

石油が高騰すれば、ガソリン代が上がる。灯油も軽油も上がるだろう。そして、プラスチック製品も作れなくなる……ここまでは誰でも想像したはずだ。が、農業資材や肥料が高騰して農業が行き詰まる、医薬品、医療用、例えば手袋もなくなる、接着剤だって品不足。輸送費の値上がりは全商品に波及し、食品や建設資材も爆上がりする。銭湯が休業する。意外な品がプラスチック製で、石油に依存していた。

そして木材も。新たなウッドショックを心配する声も高まっている。

前回のコロナ禍におけるウッドショックは生産が滞り需給バランスが狂ったためだったが、今度は伐採・搬出などの燃料費が高まるし、製材も困る。輸入木材の輸送費も上がるだろう。いや、欧州材の海上輸送ルートはスエズ運河を通るはずで、不安定化が進めば、輸入できなくなる。今や欧州材抜きでは、日本の建築現場は立ち行かなくなるだろう。

そして接着剤がなくなれば合板、ボードだって作れなくなる。CLTだって。もともと建築費は高騰していたが、いよいよ暴騰するだろう。

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林野庁は、例によって「国産材シフトを」と言っているが、コロナ禍ウッドショック明けのことを思い出してほしい。

値上がりした分の利益は、木材市場や建築資材メーカー、つまり流通の川中や川下がごっそり取ってしまい、川上の山元に還元されなかったと林業団体が指摘している。それでも増産するか?

その後、木材価格は下落し、需要はあっさり外材にもどったから、木材を増産した頃には買手がつかず、安値で買いたたかれる……という目にあっている。業界が国産材シフトを潰したのである。

本当は、石油を高値のまま放置した方が、脱炭素、脱プラスチックを進めるチャンスかもしれないのだけどね。

ちなみに『紙か髪か』で紙が消えた理由は、火星からもたらされたウイルスが変異して紙を食べたからだった。

そこで、紙製品にある種の薬品を添付することで紙を守ることに成功。ところが、その薬品によって、ウイルスはまた変異して、次は髪を食べだした……というオチであった。全人類は、禿げ頭になるのである。

さて、今回の石油ショックと、それに連なる様々な商品供給不安(もちろん木材を含む)は、事態終了後に何をもたらすだろうか。木造壊滅、土壁復活…とか。

禿げ頭くらいならいいかもね。

2026/03/07

「木材活用」を論じる場の不可解

このところ、様々なメディア(紙に電波にシンポジウムなどイベント、そしてネット……)で「木材活用」が謳われている。ようするに木材をもっと使おう、木造建築を広めよう、というキャンペーンのようだ。それに対する違和感が拭えない。

たとえば、これ。2025年12月12日開催の「木材活用フォーラム2025~発注者は木造建築に何を求めているのか~」の一部である。

木材活用の普及はどうすれば加速するか

木造建築の正しい知識をどう伝えるか

日経クロステックという雑誌?記事で、フォーラムで話された座談会を取り上げている。そこに出席しているのは……。

CSRデザイン環境投資顧問代表取締役社長 堀江 隆一氏
三菱地所関連事業推進部木造木質化事業推進室統括 兼 三菱地所設計R&D推進部木質建築ラボ チーフエンジニア 広島大学客員准教授 建築材料学研究室所属 海老澤 渉氏
林野庁木材産業課課長 福田 淳氏
芝浦工業大学建築学部教授、ビルディングランドスケープ 代表 山代 悟氏
日本福祉大学工学部工学科建築学専修准教授 坂口 大史氏
シェルター常務取締役 安達 広幸氏
モデレーター:日経BP 総合研究所 小原 隆

あまりに長い肩書羅列はともかく、こうした集まりに登場するのは、いずれも経済、木材、建築畑の人ばかり。林野庁の人は、各部門を渡り歩いているかと思うが、今は木材産業課であり、森林部門ではない。

木材を活かしたり欠点を直したりする建築・素材加工技術だとか、環境に優しいとか、経済的に有利だとか語るのは、まあいい。が、その木材を生産する場である森林のことを語る人、その調達のための作業である林業現場を知っている人の姿が見えない。

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揚げ足取りをしたくはないが、森林が木材になる過程を把握していないのではないか、と思わせる発言も多数だ。

木を伐れば森林を破壊してしまうこと、そこで働く人の安全や健康、そして林業経営の問題点……そうしたことを念頭にした発言はほとんど見られない。それはソッチの分野で上手くやってくれ、としか考えていないのだろう。

しかも、そこでは論理重視だ。これこれの加工をすれば耐震・耐火にも強くなりますよ、価格も抑えられますよ……という話は出るが、人の心はそれだけでは動かない。

たくさん買ってやるから木を伐って持ってこい。こう加工したら高くなるから、それに合わせて木を伐れ。これこれこのように伐れば環境破壊にならない。そんなことを言われたら、つむじ曲げて「出荷してやるもんか」と応える林業家もいるだろう。

購入が安く済んでもイヤなものはイヤである。機能が高くても興味ないものはない。可愛いく感じると、欠陥があってもよい……。
面倒なことはしたくない。新しい方式で行うのは頭を使うからやりたくない。上から目線で言われたからやらない。
シャーロンフロイデ……「他人の不幸は蜜の味」のように、他人が失敗して苦しむのを喜ぶ気持ちだってある。

そんな不都合な点は、座談会で話していても、絶対に指摘しない(⌒ー⌒)。

 

2026/02/21

立木価格と製材価格の移り変わり

以前も紹介した、今年1月に開かれた小坂林野庁長官の講演データから、一つを抜き出してみる。

サステナブルな「森の国・木の街」の実現を目指して
林野庁長官 小坂 善太郎

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面白いよねえ。スギの立木価格も、丸太価格も下がり続けているのに、製材価格は上がっている。

この現象は、かなり前から指摘されている。私も『絶望の林業』に記した。でも2024年になっても解消される動きはなさそうだ。

なぜ製材価格は上がるのか。これは、いくらでも説明できる。諸物価、コストも上がっているし、木材の歩留りが落ちれば製材業者は減収になるから売れる部分に上乗せして上げる。別に否定しようとも思わない。が、問題は、山元が上げるどころか下がっている点だ。同じ理屈で上げたいはずなのに上げられない理由は何か。これこそ、適正な商取引とは言えまい。

そのあたりを経済学者はどのように分析しているのだろうか。

細かい分析は木材流通の専門家に任せるが、生産者より消費者の方が強いという傾向は世界的に広まっている。

いわゆるバイイングパワーだ。消費力が生産力より強くなっている。買手市場なのだ。アメリカが関税をかけると世界中がオタオタするのも、アメリカの消費力が大きいからだろう。ヨーロッパがEUDRで森林破壊をして生産したものは買わないと言えば、生産している発展途上国は追い詰められる。

その流れから反しているのは、中国のレアメタルぐらいか。生産国が「売らないぞ」と言えば消費国がオタオタする。

でも、これって代替商品があるかないかが決め手だ。中国産レアメタルの代替はないが、木材はあるのだ。なくてもいいし、世界的には生産量がだぶついているから、「高けりゃ買わねえよ」と言えるのだ。そして山元はしぶしぶ値を下げる。(アメリカは代替商品を国内に求めているが、アメリカの生産力は落ちて穴埋めできないから、逆に苦しんでいる。関税払うのは国内だ。笑える。)

ちなみに、話題の食品の消費税減税だが、これって政策的に価格を下げて買いやすくしようということだから、生産者にしわ寄せが行きそうだ。でも生産者は消費税分を下げることにはならず、実質値上げしてくるだろう。8%下げるつもりでも、おそらく2~3%くらいしか下がらないように思える。これで財政を悪化させて円安が進行すれば、値上がりになるかもなあ。

 

2026/02/12

皆伐再造林は「ちょい悪」

今どきの林業界で話題となるのは、再造林である。

林野庁が再造林率を3~4割と発表したのが大きかったのか(この数値にはいくらか疑問もあるのだが、今は置いておく)、どこも再造林を進めようという合唱が始まった。再造林を進めることこそ、林業界の善となった。率を上げることが喫緊の目標であり、100%達成すれば自慢だ。

が、こんなものクソだ、と思う。100%再造林するのが最低限なのだから。仮に天然更新だ、と言うのなら雑木林でもいいから成林していることを示さねばならない。まさにデューデリジェンスが欠けている。

皆伐して放置するのが「悪」なら、再造林は「ちょい悪」ぐらいか。少なくても「普通」ではなく、「ちょい良し」でも「良し」でもない。ましてや「秀」も「優」でもない。でも100%再生していないのなら「ちょい悪」の中でも「悪」よりである。

いわば林業界の成績表を5段階で示すのなら下から2つ目。1では落第だけど、2でも相当レベル低いでしょ。なんか底辺高校の生徒が、オレは九九を言えるようになったんだせと自慢しているような感じだ。恥じらいがない。

たとえば通常スギ林に生物多様性があるとは言わないが、林齢80年、100年、できれば200年ぐらいになれば生物多様性を含む公益的機能は高くなる。そうすれば「普通」ぐらいになるのではないか。

保持林業や択伐・傘伐林業で「ちょい良し」かな。森を傷めず抜き伐りして木材を収穫するような林業で「良し」。「秀」や「優」の林業とは何かは考えていただきたい。林業することで、生物多様性が増していく状態の施業を。

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そもそも皆伐とは森林破壊である。ましてや森林の公益的機能を主張するなら、量的な再生だけでなく、質的、たとえば生物多様性や保水力、土砂流出防止機能……その他も回復させねばならない。が、40年~60年で伐るということは、それらの機能を落とすということだ。

林野庁長官が1月に講演したデータの中に、再造林について触れている部分がある。

サステナブルな「森の国・木の街」の実現を目指して

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面白いから、目を通してみて。

 

2026/02/06

スルメイカで起きたことは森林循環経済に通じる(笑)

水産業界で、こんな取り決めが行われた。

水産庁は、2026年度のスルメイカ漁獲枠を、前年度の3.6倍となる6万8400トンにすることで合意したというのだ。

スルメイカ漁獲枠、「ばくち」の大幅増 資源回復に懸念

もともとの昨年枠は、1万9200トンとしていたところ、非常に豊漁で9月時点でこの上限に達したこと。そこで34%増の2万5800トンに仕切り直したのである。だから今年はさらに増やした……。

信じがたい暴挙だろう。水産庁は①3万1200トン②3万9千トン③6万8400トン―の案を提示したところ、漁業者と③で合意したという。漁獲実績を上回り、規制が事実上ない状態になる。

これを「漁業者の心配に寄り添い最大限出せる枠」と説明している。だが、そもそも昨年の漁獲量だって、10年前より8割少ない。資源が回復したわけではないのだ。水産庁は、一応取りすぎを心配しつつ、漁業者の要望を飲んで、規制を事実上撤廃した。

Photo_20260206204801日経新聞より

この記事を読んで、「林業と同じ、いや正反対か」と戸惑った。

林業界も林野庁が、ひたすら木材増産を訴えている。が、これは漁業者ならぬ林業者が求めたわけではない。それどころか腰が引けているのに、尻を叩いて(補助金ばらまき、森林計画で焚きつけて)増産させている状況だろう。

水産業界と似て非なる姿。が、結果はどちらも同じだろう。それは「林業者に寄り添って増やした」のではなく、林野庁の官僚が出世したいというワガママに林業者を寄り添わせる。

目先の豊漁と森林資源の充実を理由に、生産量を増大すれば、資源は回復しない。とくに林業の場合は、時間スケールが水産業と比べ物にならないほど長いのに。

一度生産量を上げれば、伐採業者も製材業者も、生産設備を増強するから、いざ規制しようと思っても止まらない。機械があるから伐る。製材する。それは市場でだぶついて価格を下げる……という循環に陥るだろう。安くなったから、より多く伐って量で利益を稼ごうとする。伐れば伐るほど補助金も出るし、また設備を増強する。その分伐る。伐る山がなくなる。盗伐する……。

これぞ森林循環経済だ(笑)。もっとも循環ではなく螺旋に降下して地獄に落ちるけどな。

 

2026/02/04

吉野杉⇒東濃檜⇒?

某者から聞いた話だが、「もう東濃檜は全然売れなくなったよ」。

うっ、と唸る。東濃檜とは、東美濃、裏木曽などと呼ばれる岐阜県の林業地で生まれたヒノキ柱の銘柄材である。一時は吉野杉・吉野檜より値が高くついた。実は格別歴史的に有名ではない林業地なのだが、それが昭和のある時期に、急速に姿を現し木材市場を席巻したのである。

それについては、『東濃檜物語 銘柄材はいかにつくられたか 村尾行一編著』に詳しい。

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ようするに、産地とか木材そのものの美しさで生み出された銘柄ではないのだ。しっかり製材をした結果としての銘柄なのである。だから林地、林業家ではなく、製材所が主役だ。

それまで優秀な銘柄材とは、吉野杉や天竜杉、木曽檜……といった産地銘柄であった。どこそこの林業地は、歴史もあって技術がしっかり根付いており、よい種苗、よい育林技術によって非常に素地のよい木材をつくっている……ことを銘柄材とした。よく言われるきめの細かい木目に色とか無節、同心円の年輪、干満差の小ささ……という木だ。

産地銘柄、木質銘柄だろう。

だが東美濃檜は、製材銘柄をつくった。しっかり乾燥させて、正確な寸法にこだわり、表面をモルダーで磨き上げてきれいにする。また出荷の迅速さなども重要だった。言葉は悪いが、材質がそこそこであっても製材をしっかりすると銘柄になる。

私は、この変遷にわりとショックを受けたのである。同時に産地にこだわると、ロットを増やせず安定供給できない。材質も数十年かけて成立するものだから、供給に難がある。しかし、製材ならばすぐできる。乾燥期間を含めても数週間で並材が銘柄材になる。

これは木材革命だ、とさえ思った。

ところが、その嚆矢となった東濃檜が落ち目……。

まあ、理由はわかる。だって現在の建築は、木材の質どころか見映えも求めていないから。だって大壁工法だもの。柱の上にクロスを張ってしまうから木材は見えない。いや、そもそも柱を使わない壁工法の建築も増えてきた。

吉野杉から東濃檜と移る銘柄の変遷は、山(川上)から製材所(川中)だった。次は、どこへ行くか。川下だろう。つまりエンドユーザーに合致させた商品。より消費者へと舞台は移っているのである。

昨日に書いた「デザインや機能重視」である。建築にしろ家具、内装にしろ、いかなるデザインで、どんな機能を発揮できるか。もっとも機能は木材であるかぎり、ほぼ皆同じ。むしろプレゼンで決まる。売れ行きも価格も決まる。いわばデザイン銘柄

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残念ながら、そこまで進歩した林業地を私はまだ把握していない。個人レベルで、優秀な建築設計士と組んで斬新なデザインの家づくりを始めた林業家や、家具の製造に進出した林業家や製材所は知っているが、点が線、面になっていない。流通は、常に末端を意識して動く。

思えば世界中のマーケットは、より消費者へと移っている。エンドユーザーが求めるものが売れる。

林業界のデザイン銘柄材づくり。できるかな。と、私が言い出して、早20年(笑)。

 

2026/02/03

先を見る目~吉野林業に寄せて

本日の朝日新聞にあった「多様性は未来の可能性 山守に聞いた森の時間と早回ししない仕事」。

これは有料で冒頭しか読めないが、紙面ではタイトルを変えている。「山守の仕事 忘れられる前に」。

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なかなか吉野林業のよい部分だけを抜き出したような記事だ(笑)。
まあ、バームクーヘンのような年輪と言われると、私は宮崎県の幅広年輪丸太を思い出すのだが。よりきめの細かい同心円の年輪こそが吉野材の特長。

そんなことより、ここで取り上げているのは(林業とは)山の時間と向き合って、成長を急がせない。多様性を選ぶ。長尺の目を持つ。ということだろう。吉野林業では、かろうじてまだ保たれている。

私は、(大学の授業以外で)林業の勉強を始めたのが吉野だったので、林業とはそうしたものだと焼き付けられたのだが、その後全国の林業地を歩けば歩くほど、全然そうじゃない林業ばかりを目にしてきた。吉野林業とは弧峰であり、連山・連峰ではない。だから日本林業を代表しているわけではないと気づいた。そして絶望へと転がっていく。今や吉野も、その流れに巻き込まれている。

長尺の目も、いきなり100年先を見てはダメで、まず5年、次の10年と積み上げていくものだが、最初の5年さえ待てない。同じものを整然と並べて同じように育てようとする。
人類は、初めて時間の観念を持って、未来を考えるようになった動物だとされるが、果たして現代人は人類足りえているか。

今は林業だけでなく、すべてが目先だ。スピード重視と結果を早く求め、多様性も効率悪いと求めず、将来を見る目を捨てる。目の前の餌を、ガツガツ食うだけの獣に成り下がっていないか。

どうすればよいのか。ただヒントも、この記事の後半にある。

世論調査で木材製品を買うときは「産地はとくに気にせず」「デザインや機能を重視する」という回答が多いという点だ。これを何か否定的というか残念そうに記事に書いているが、これでいいのだ。木材製品を売るときには「産地銘柄を売り物にせず、デザインや機能を磨き上げる」べきなのである。
それを5年先を見て実現させれば、10年先、20年先、そして100年先が見通せる。

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さて、選挙だ。先を見る目を持って投票に行くか。

2026/01/29

林業界の新タコツボ用語?

名古屋市のガス会社、東邦ガスが「森林価値の見える化」サービスの事業化をめざしているそうだ。

森林のCO2吸収量をJ―クレジット化して利益を得ようという発想らしい。具体的には、森林モニタリングをドローンとAIを活用して効率的な手法の確立を目指している。実際にやるのは、京都のディープフォレストテクノロジーズという会社で、ドローンで撮影した画像から森林の状態を解析し、CO2の固定量や吸収量を算定し、クレジットを創出するのだという。

森林計測技術も林業界だけでなく、こうした別分野の会社が別の目的で利用する時代になったんだなあ……と感じていたのだが、そこで私も勉強がてら新たな林業の技術を知ろうと読んだ本がひどい。

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何がって、言葉が。アルファベットの略号ばかりが頻出する。

IT、ICTぐらいならいい。社会的にかなり使われるようになっている。しかし、これ、何の意味?と思わせる言葉が並ぶ。
UAV、SCM、GNSS、MVS、SfM、DCHM……そのほかバリューバッキングとかオルソ補正だとか……。

無理して読んでいると、UAVは、ようするにドローンのことだった。私も、そこそこ知っているつもりだったが、ページをもどして、どこかに説明あるかと探したりもするが、それが大変。いちいち頭の中で、この用語の意味は何か考えながら置き換えなくてはならずうんざりした。これ、林業界なら通じると思っているのか。知らない人はどうでもいいのか。

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もともと林業界はタコツボに入っていると言われるが、スマート林業とか林業DXとか言い出したことで、さらにタコツボを細分化した新たなタコツボをつくっているような気がする。こうした仲間うち(もっとも、本当の仲間かどうか怪しい)の言葉は、社会との断絶を感じる。

私の著書では、素材生産業者といった言葉は絶対に使わないと決めている。素材生産って、何よ。素材と言えばありとあらゆる物質が含まれてしまう。読者には通じない。だから伐採搬出業者などと言い換えている。多少のずれはあっても、より理解の進むように心がけている。

タコツボ用語を好んで使う業界は、外野の人々を呼び込めずに、どんどん衰退していくと思うよ。


2026/01/11

無人伐採機は実用化するか

こんなニュース。

遠隔操作で無人伐採 東急建設がラジコン式伐倒作業車を本格導入
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写真は、当HPより借用。

ここまで来たか、という思いと、果たして成功するか、という疑問と。東急建設が開発しているもので、

ラジコン式無人伐採車「シン・ラプトルII」を本格導入したと発表した。

シン・ラプトルIIは、木を狙った方向にコントロールしながら切り倒して伐採する「伐倒」と、切り倒した立木の搬出を、離れた安全な場所から遠隔操作で行う無人作業車だ。伐採後の木を集めやすいように列を作って間伐する「搬出型列状間伐」にも対応。最大45度の傾斜地で運用可能で、ボタン1つで伐倒を自動実行でき、高い安全性と作業効率を両立している。

記事は全部読めないが、これは、たとえば遠く事務所内で操縦することも可能なのだろうか。それとも、実験の様子のように、現場に人が張りついて、リモートコントロールするのか。

たしかに安全になるのは間違いない。ただ、コストカットになるのかどうか。現場に人がいなくてもできるかどうかは怪しい。人がいるとしても伐倒技術よりコントローラー技術のある人を求められるかもしれない。途中でエンコした時は、誰が直す? 困るなあ。

これで思い出すのは、枝打ちロボット。今から数十年前に開発が行われた、自動枝打ち機で、人が木に登らなくてもセットしたら勝手にスギやヒノキの上部まで登りつつ、下部の枝を切り払うものだった。取材したなあ。

が、セットするのが大変。重い機械を、せっせと運んで根元に据えつけないといけない。途中で止まったらどうして回収する?という点もあった。結局、枝打ちそのものが流行らなくなったので、実用化まではしなかった記憶が。一応、販売は始めたはずだが……。

今回のものは自動で走るようだが、列状間伐地なら使えるかもしれない。が、完全な無人化は難しいだろうな。

いっそAIで完全自動で走り回りながら伐採し、それを土場まて引っ張りだす機能もあれば、もう林業界に人は必要ない?

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こういう職人芸も、今は昔。(吉野林業全書より)

2025/11/11

宮崎県盗伐被害、ついに裁判へ

このところ、裁判所に通ったり司法関係の書籍や資料を読んで勉強したりすることが続く。

もともと事件報道的なテーマは手を出さないと決めていた。目先の事件ものは一過性だと思っていたからである。だが、『盗伐 林業現場からの警鐘』を手がけたことや、地元のメガソーラー問題に顔を突っこんだことから、触れざるをえなくなった。そして日本の司法制度に絶望しかけている。

日本は「法の支配」ではなく「人の支配、法による支配」ではないか……と気づいたからである。冤罪事件の発生はおぞましいが、実は反対に事件にされない事件があまりに多いことにも気づいた。門前払いである。警察、検察、判事……らが、恣意的に取り上げない案件がいかに多いことか。それなりに理由はつけているが、まるで加害側を庇うかのよう。

とまあ、ぐだぐだ嘆いても仕方がない。まったく立件されない盗伐事件も、民事とはいえ、一部でついに裁判が始まった。宮崎地裁である。

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ここで盗伐内容を説明するのは差し控えるが、この訴状の請求金額を見てほしい。

かたや1953万6000円、かたや434万2800円。この金額。もちろん盗伐された森の面積は違うが、通常の業者が「誤伐の賠償金」として提示するのは、その100分の1ぐらい。通常の盗まれた材積の価値も、この10分の1くらいだろう。請求額とはいえ、ぐんと上げたのである。

もう一つ重要なのは、請求先(被告)の中に都城地区製材業協同組合が入っていることだ。つまり盗伐された木材を買った側の業者にも責任を追求している。この画期的なことがわかるだろうか。

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 ようするに「買っただけ」の業者でも真面目に仕事すれば、納入された木材が違法伐採の可能性が高い怪しい物件であることはわかるはず、と切り込んだ。グレーでもダメ、という論法だ。

これが疑惑の業者たちのプレッシャーとなるかどうかに注目である。もちろん判決を待たないといけないが、巨額請求を抱える被告になるだけでも心理的な圧力は発生する。

盗伐問題だけではない。私の見立てだと、宮崎県の林業はあと10年もすれば崩壊する。宮崎県の森林の可能資源量(経済的に採取可能量)が底を突くからである。今の伐採量とコストを維持できなくなり、機械化を進めた業者は小回りが利かずに採算が合わなくなる。倒産・廃業が多発するのではないか。おそらく補助金投入や違法行為で先のばしを図ろうとするだろうが、長くは持つまい。もしグレー木材への目が厳しくなれば、いっそう難しくなるだろう。

賢い業者は、今から転換を模索すべきだろうね。実は転換する方向はいくらでもあるのに、それに目を向けないことに絶望するのだ。

 

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