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森と林業と田舎の本

2022/06/12

中国の植林方法は、誰が教えたのか

梅田のサントリーウイスキーハウスで中国の専門家と会って、飲みながらいろいろ話を聞いたのだけど、こんな話題が出た。

中国の東北から西域では植林が盛んに行われている。日本人がわざわざ金を払って植林に行くツアーもある。ただ、見ると植林する予定地だけが砂漠になっていて、その周辺には緑が茂っているのだという。つまり日本人が来るところだけ、わざと砂漠にしている?

さらに植え方がヘンだと感じたそうだ。まず、すでに生えている在来の樹木や草木を全部刈り取り、何もない裸地にしてから苗を植える。
たいてい乾燥地帯なので、そんなことをしたら土地はますます痛めつけられる。半砂漠では、表土を少し掘ると、うっすら湿っていて水分があるものだ。ところが、その表土を耕してしまうと乾燥が進み、土が風に飛ばされて失ってしまうのだ。それが黄砂にもなる。

しかも植えるのが外来種であることも多く、必ずしもその土地に合うかどうかわからない。ポプラのような水を多く吸い上げる樹種だと、いよいよ環境破壊になるだろう。つまり日本人の植林ツアーは中国で砂漠を増やしているのだね( ̄∇ ̄) 。

ここで気になるのは、こんな植林の方法はどこから伝わったのか、誰が教えたのか、という点。その質問に驚くべき答が返ってきた。

日本人なのだ。それも戦前である。日本が満州国を作り上げ、大挙して移住したが、そこで森林を伐採して開墾して農地づくりが進められた。満州が原野という景観になったのは、この時代なのである。さらに日本人だけでなく、ロシア人や漢人も含めて、鉄道を敷いては、その線路周辺を切り開いた。かくして満州では、ほとんど森林が消えた。
ただし林業関係者もやってきて、伐った跡地に植林することを教えた。その方法が、従来の表土に生える草木を全部剥がして植えること。
その流儀が満州⇒東北部に残り、今の中国人も同じ方法で植林をしているのだという。つまり日本の植民地林業が、今も中国の自然を破壊していることになる。

では、日本人の行う植林方法はどのように身についたのか。それは明治以降に主にドイツから持ち込まれた技術だった。

いわゆる土地収益説に基づく法正林づくり、つまり木材栽培業である。

なんと、ドイツでは廃れた古い林学が、日本を経由して中国に残っているとは。日本も、いまだに法正林思想から抜け出ていないが、まだ湿潤な日本列島ならなんとかなる面もある。だが、乾燥地帯では恐ろしい結果を生むことにならないか……。

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燻製盛り合わせのオードブル。まったり飲みました。

2022/06/08

フィンランドの衛星画像で森を見る

フィンランド林業にハマっていることは前々から伝えているが、やはり彼の地の森を見たい。

現地に行くチャンスはあるかどうかだが、まずはGoogleearthに頼ってみる。で見つけたのがこれ。

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これはフィンランド中部の北ポポヤンマー州(県?)だが、正直、どこでも一緒だ。国土全体がこんな状態だった。

いやあ、びっくりだわ。どこに深い森と湖の国があるんだ? どこに森林率73%があるんだ?

このような森林開発を行ったのは、やはり林業なんだろう。人口550万人で都市開発とか農地開発がそんなに多いとは思えない。

もともと平坦な国だが、いわゆる奥地は存在しないのではないか。つまりたどりつくのが大変だから開発に取り残されるということが起こりにくいのだろう。拡大すると、実に細かく道が入っていることにも驚く。森林地帯でも網の目状だ。

せっかくだからストリートビューも見る。

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人工林の模様。若木ばっかりじゃん。おそらく4,50年生ではないか。

別に選んだわけじゃない。テキトーにいくつかの箇所を見たら、こんな森ばかりなのである。いや、森のない原野のところもある。伐採後に植えなかったのが、植えても育つのが遅すぎて見えないのか。もちろん北部のラップランドは、寒冷地でツンドラ気候ゆえに森林が少ないうえに人口もないという事情もあるが。

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とはいえ、景色としてはきれいである。青空に森が広がる景観ばかりだ。旅をして、こんな森の中に寝転がってオーロラを見てみたいなあ。

 

 

 

2022/06/02

下川町の法正林は循環型森林経営か

北海道の下川町が法正林を作り上げた、そうだ。

具体的には循環型森林経営を掲げて国有林の買い取りを続け、町有林は昨年度3000ヘクタールとなった。トドマツを60年伐期で施業していく計画から、年間50ヘクタールの伐採と植林を行うことで可能となった……そうである。

毎年森林面積を伐期で割った面積を同じように伐り植えていくことで循環する、という考え方は法正林そのものだ。

法正林は、18世紀ぐらいに今のドイツで唱えられたのではなかったか。初めて科学的な数値で計算された林業経営であり、長く世界中で支持されてきた。たしかに理屈はわかりやすい。伐った分だけ植えるわけだし、伐期の年数で割った面積なら、ちょうど一周したときに最初の伐採地に元と同じ木が育っていることになる。下川町のケースなら、60年かけて一周して60年生のトドマツを育てるわけだ。

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下川町の人工林。冬に行ったんだったなあ。。。

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日本は、今もこの法正林思想を守り続けているという点では世界的に珍しいのかもしれない。林野庁の好きなこの図も、基本的な考え方は法正林に寄っているのだろう。私はこの図を見て、森とは言えない時期が「循環の輪」の3分の1ぐらい占めているのに、森林の持続性を主張できるの?とよく問いかけているのだが。60年生人工林のうち20年間は、裸地、草地、灌木、低木林……の時代だ。その間は生態系も違っている。日照も土壌水分も変わり、同じ動物は住めないだろう。つまり森林は持続していないわけだ。

結局、法正林はなかなか上手くいかないことが指摘されるようになった。そもそも林地が違えば地形や地質も違うので木々の成長の仕方も違うし、地形によって伐採の手間も変わる。当然ながら毎年材価は変動する。つまり同じ面積を伐っても得られる木材量は変動する上に材価によって利益も上下する。そして風水害もあって、ちゃんと計算どおりに育たない。経営としては極めて不安定になる。雇用も困る。何より林家の都合もあって同じ面積だけしか伐らないとは限らない。

ただ下川町の場合は町有林だ。毎年度の収益に左右されず、決められた面積だけを伐る、必ず植えると役所ならではの硬直した(笑)考え方で続ければ、なんとか60年で一周するかもしれない。ときに十分に育っていない木を伐ったり、安値でも気にしないとか、逆に高値だから多く伐ろうという誘惑にかられないで行うという条件だ。もちろん植林しても育たないところは幾度も植え直しが必要で、それがサイクルを狂わせるかもしれないが。

施業も考えてみた。まず毎年50ヘクタール伐採と言っても連続した林地ではなく、たとえば1ヘクタール皆伐を50か所に分けて行う、その中には地形や育ち方のバラエティも混ぜる、といった工夫も可能だろう。伐採量を上下何割か材価をにらみながらブレも認める。利益の決算は5年10年単位で行えば、単年度の黒字赤字をカバーできるかもしれない。もちろん売り先も使い道も常に多様性を持たせる。高く買ってくれるから全部同じところに……といった商売をしてはリスクが増大するからだ。使い道も、製材・合板・木工・製紙・燃料・アロマ、そして割箸とかバラエティを維持する。

必要なのは、このための細かなマニュアル……ではなくて、人材だろう。北森カレッジは養成できるかな?

法正林という長期的思考にフリースタイルな出たとこ勝負的な短期的手法をいかに組み合わせるか。このように考えれば、時代遅れの法正林も、今風なビジネスモデルに変身するよ。

 

 

2022/06/01

北海道フィンランドのセミナーに参加してみた

今週、そして今日は、「北海道フィンランドウィーク~林業デイ~」なんだそうだ。北海道でセミナーが開かれている。

そこに参加してみた。「にわかフィンランドおたく」としては外せないではないか。もちろんウェビナーだが、午後5時間にも及ぶ長場である。パソコンの前で結構自由に振る舞っていたが(ストレッチしたり、せんべいとお茶をバリバリかじったり……)、ヘトヘトになった。

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しかし、北海道がフィンランドと連携しているとは知らなかったな。ただ気候は近いし、人口も似ている(北海道528万人、フィンランド550万人)。国土面積や森林面積などは日本と似ているといわれるが、北海道に絞るとより近いのね。
奈良県が、スイスと似ていると言って提携したが、北海道はフィンランドにロールモデルを求めたわけか。

セミナーの内容は、林業一辺倒ばかりではないのだが、最初に紹介されるフィンランドの林業は、機械化などはるか昔から行われており、今やデジタル化が進んでいる。ハーベスタが樹木を伐った途端に、その丸太の材質が工場に送られて需要のマッチングが行われる……なんて聞くと、日本の林業の決定的な弱点である情報ブツギリ流通をあっさり超越している。さらに大型パネルでコンテナの箱を積み上げるような木造建築やバークにリグニンまで徹底利用。日本より少なめの人工林で、日本の2倍の木材生産ができるわけだ。林業産出額は、GDPの2割を占める。
もはや、人類がゼットンの超科学兵器に挑んでも無理だって、という気持ちになる(笑)。ウルトラマンに任せておこうよ。

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だが。だが、だよ。こんな効率的な林業をやっていたら、結局は木材の過剰伐採につながる(はずだ)。効率がよくて、利益率もよくて、木材利用が徹底的に行われて……いるががゆえに伐採しすぎてしまうのではなかろうか。伐採量は成長量を下回っており、持続的林業を行っている、とはいうけれど。

効率も過ぎたるは及ばざるがごとし。「必要」以上に生産して、後から新たな需要を作り出していこうとする発想は、自然界の摂理から外れていくような気がするのだよ。(セミナーが5時間も続くのも人間の体力集中力の摂理から外れていると思う。。。)

北海道北の森づくり学院は、フィンランドの学校と提携して、この機械化の体制を見習うのだそう。さて。

2022/05/24

アーボリカルチャの先駆「木おろし」

香川に徳島、そして淡路島と巡って忙しいというか疲れているのに、あえて出かけたのが、国立民族学博物館。

前々から行こうと思いつつ、何かと雑用にまぎれて後回しにしていたら、もはや目当ての企画展が終わってしまう (゚o゚;) と気づいて、無理して行ってきた。

「焼畑~佐々木高明の見た五木村、そして世界へ」である。焼畑の世界には、まだ未練があるのだ(^^;)。

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これは主に五木村の焼畑を追いかけた佐々木高明の研究を紹介しているのだが、それについてはまた別の機会に。それよりも、焼き畑から若干離れるが、五木村にあった林業技術「木おろし」に驚かされた。

これは、大木などを切り倒さずに枝を打つことで焼畑を行う面積を確保する方法なのだが、人が木に登って枝を切り落としていく。が、それをいちいち登ったり下りたりするのは大変なので、次々と木から木へと飛び移りながら行うのである。朝登ったら夕まで下りてこない、なんてこともあったそうだ。そして使うのがロープではなく、返しのつけた木の竹竿。

ピンとこないかもしれないが、古文書の絵にも残されている。

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そして、会場にはミニチュアのジオラマがつくられていた。

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これって、今の特殊伐採、いやアーボリカルチャに近い。アーボリでは、枝だけ伐ることも多い。

まあ、今のロープテクニックを駆使したアーボリのような安全性はないのだが、伝統的な木登り・木渡り施業技術だろう。ぶり縄だけではなかったのである。むしろ棒で行うことに驚嘆する。
しかも、展示によると「木おろし」に近い木登りして枝打ちをする技術は世界中にあるらしい。日本だけではないという。大木を根元から伐るばかりが能ではないのだ。

調べてみると、なんと動画が残されていた。民族文化映像研究所の記録フィルムである。

なお、この展示では、焼畑とSDGsを関連づける説明もあった。焼畑は、森を焼くから自然破壊的に見られるが、実は木を伐って燃やして作物を育てた後は放置して元にもどす循環がある。常畑のようにいったん森を切り開いたら元に戻さず農地を続けるよりサーキュラーエコノミーであり、自然に優しいのである。私が追求したい焼畑は、こちらの世界観だなあ。
蛇足ながら、久しぶりに行った民族学博物館。結構、展示が変わっていてまごついたわ。そして、焼畑コーナーにやたら熱く、詳しく焼畑を解説している見学者がいて、どうも研究者かな。思わず口を挟みたくなった(笑)。

2022/05/20

「森林の境界明確化」記事の波及の裏側

以前、フォレストジャーナルに「森林の境界明確化」の記事を書いた。

富山発! 『森林境界明確化支援システム』で使える地図を【前編:境界線確定】

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この内容に関して、毎日新聞にも記事になった。富山県版であるが、内容はネットで全国的に読める。そして私もコメントを寄せている。

森林の境界明確化にデジタル技術を 富山のシステム開発者呼びかけ

なおYahoo!ニュースにも転載された模様。結構拡散されるのではないか。

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実は、この記事を書いた記者は、以前奈良支局にいて、私の連載(大和森林物語)の担当者だったのだ。

それが島根県を経て富山支局に転勤。そこで富山県のネタを探しているところで、私のフォレストジャーナルの記事に行き当たったという。そこで改めて取材してこの記事となった。実は、私は登場する小林さんには会ったことがない。私が記事にする際はメールのやり取りだけだったので、初めて顔を(写真だけど)見たのであった。

 

記事を読めばわかるが、古写真から森林境界線を割り出す技術は、約10年前に提唱されている。ところが、なかなか普及しない。もちろん、この技術で完璧に境界線を確定できるわけではないが、かなりの戦力になるはずだ。航空写真はわりと古くから全国を網羅しているから、たいていのところは可能なのだが。使うのもフリーソフト中心だから、手間も金もあまりかからない。

それでも、なかなか普及しないのは、まず行政や森林組合など、直接、森林境界線問題に向き合うはずの関係者のやる気の問題。まあ、面倒な仕事は増やしたくないのだろう。森林組合などは「そんなの自分たちの仕事じゃない」と思っているフシもある。

加えて森林所有者自身が、自分の土地の境界を確定させようという意志が薄弱だ。まあ、金になるわけじゃないし、隣の所有者といざこざ起こしたくないし……気持ちはわかる(^^;)。

10年前の技術が、フォレストジャーナル ⇒毎日新聞(富山版=ネット版) ⇒Yahoo!ニュースという流れで広まってきたわけだ。 

これらの記事によって、多少とも普及してくれたら、「とりあえず」でもいいから境界線を確定させておくか、と思ってほしい。さもないと、本当に将来に禍根を残す。子孫が迷惑する。


なお確定させたら、今度は自分の山の地図をつくろう。そうしたら楽しくなる。放棄しているような山林でも愛着が生まれるのではないか。その方法はフォレストジャーナルの後編に載せている。

 

 

 

 

2022/05/16

世界林業会議が開かれていた

5月2日~6日、ご存じのとおり韓国ソウルで第15回世界林業会議が開かれた。

……いや、知らない人の方が圧倒的に多いだろう。世界で最も影響力のある森林関連のイベントという位置づけで、今回もオンラインも含めると世界141カ国が参加したというから、なかなか大規模な会議だったようなんだが、正直、日本では全然知られていない。私も名前を聞いていただけだ。

ちなみに第1回目は、1926年にローマで開かれて以来、6年に一度開催されてきている。森林とすべての要素の組み合わせが「林業」という用語であると新しい概念を打ち出している。

さて今年の議題は、SDGs持続可能な開発目標、グローバル森林目標(GFG)、気候変動に関するパリ協定、国連生態系回復の10年、そして2020年以降のグローバル生物多様性フレームワーク……やはり地球規模の環境問題が多そうだ。もちろん全部読んだわけではないが……英語だし(^^;)。とりあえず「ソウル森林宣言」を出している。

サブテーマ1:潮流を転換する:森林減少と森林劣化を逆転させる
サブテーマ2:気候変動への適応と生物多様性保全のための自然に基づく解決策
サブテーマ3:成長と持続可能性への緑の経路
サブテーマ4:森林と人間の健康:つながりを再考する
サブテーマ5:森林情報、データ、知識を管理し、伝える
アブテーマ6:境界のない森林;管理と協力の推進

パラパラと読めるところは読んだのだけど、あまり林業というか産業経済ぽくない。上記サブテーマを見ても、ほとんどが環境だろう。林業会議というより、「地球環境と森林」である。逆に言えば、世界の林業に冠する意識はその次元に向かっていて、私がそのことに違和感を抱いたのは日本の林業がまったく置いてきぼりのためかもしれない。

一応、日本からも数人は参加したようで、そのプレゼンを探したら林野庁のToshimasa Masuyama氏が林業と気候変動について話した模様。森林の炭素貯蔵やバイオマスエネルギーに結びつくようだが……。誰か詳しく読んで教えてほしい(^^;)。

しかし会議全体が、なんとなく真正面から林業を語るのを避けたように感じる。たとえば世界の木材需要の削減とか、そもそも木材供給は需要に対して多いのか少ないのか、といったテーマはないのだろうか。そして人類の木材利用が環境に与える影響はどうなのだろう。

なお戦前は「万国森林博覧会」というのもあって、日本も出展した記録があるのだが、こちらは一般人向けの展示博覧なのかな? 日本が、こうした国際会議や森林万博を主催する話はないのだろうか。

と思ったら、2027年の国際園芸博覧会は、横浜市で開催することになっていた。こちらもテーマは気候変動らしい。園芸博といえば1990年の花博を思い出すが、林業とは近いようで遠いものである。担当も農水省の園芸作物課であった……。

 

 

2022/05/15

「伐採が活発な地域」地図

某要件で検索していて、たまたま引っかかった林野庁のパワーポイントデータ。

これ、何かのプレゼンに使ったのだろうが、その中に「伐採が活発な地域」の地図が載せられていた。私の要件とは離れて面白いので、保存してしまった。

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南九州4県(大分県含む)はもちろん、北東北、北海道までは、そうだろうなと私も感じていた地域だが、そこに栃木・茨城両県と、広島・岡山両県が加わっている。都道府県単位なので、北海道などは北方領土まで塗られているが、だいたいの感覚と合致する。むしろ宮城県も入ってしまうのかあとか、四国は入らないんだなとか。

「伐採が活発」という定義も問われる。「総蓄積のうち、伐採立木材積が1・4%以上」という定義はどんな基準なのだろう。森林計画抜きで伐っているところもあるし、令和5年時点の平均を推計って……。ただ、全体の傾向としては納得。

やはり大型製材工場があるところ、バイオマス発電が盛んなところ、という見方をすべきか。

いくら計算上は「森林の成長量以下の伐採量」を謳っても、必ず地域的には過伐となり、資源を枯渇させ森林生態系を破壊していくのは間違いない。統計上の数字だけだと、アマゾンやボルネオでも「成長量以下の伐採」になりかねないのだから。

 

2022/04/15

「広葉樹林化」という名目で

本日の静岡新聞の一面で大きく報道されて、さらにYahoo!ニュースにも転載されたから、すでに読まれた人もいるだろうが、静岡市で幅15メートルの「列状間伐」が行われてしまった。

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この記事の写真を見て、「間伐」だと言い切れる人は少ないのではないか。伐採面積にして2ヘクタールに及ぶという。これが静岡県が導入した「森林づくり県民税」を利用した静岡県の「森の力再生事業」だというから、余計に情けなくなる。事件の概要は記事を読んでいただきたいが、ここでは少し別の情報と観点を。

まず、この事業は県が提案して森林組合が実施したというのだが、当初は誤りを認めなかった。そこで当事者(安池倫成さん)は川勝静岡県知事に手紙を送ったところ再調査することになり、謝罪に結びついたのだという。トップの指導がよい方向に動いたという点では喜ばしい。本当は、トップが現場の判断に介入する形で左右されることはよろしくないのだが……。
それに謝罪したのは、十分に説明しなかったことのようで、作業提案については誤りを認めていないように読める。

さて「森の力再生事業」だが、今回はどうやら広葉樹林化を図るための事業という位置づけのようだ。記事では、獣害などがひどくてヒノキは十分に育たないと判断したから、広葉樹林に変えるということらしい。それが、なぜこんな施業となったのか。
まだ製材用に出荷できる太い木は生えていないように見えるから、ようは事業のための事業、補助金ばらまくための補助事業という意図が透けて見える。

たしかに針葉樹林(人工林)に広葉樹を生やそうと思ったら、光がたっぷり地面に当たるように広い面積を切り開くというのはわかる。しかし、小規模皆伐(たとえば15メートル四方)ならともかく列状に幅15メートルで何百メートルというのはいかがなものか。しかも写真をよく見てほしいのだが、伐採跡の左手には、ほんの1,2列のヒノキを残して、また15メートル幅の伐採地が透けて見える。全体を見たらほとんど皆伐と変わらないだろう。それを間伐だと言い張るのは、おそらく間伐補助金を使うためなんだろうが、これを実行するのは安易で勇気がありすぎる。

お膝元の静岡大学では、人工林の広葉樹林化を研究していて、私も触れたことがある。

広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発

これは「広葉樹林化研究プロジェクト」の一環で、森林総研主導で全国規模で行われているようだ。しかし、どこを読んでも幅15メートルの間伐は登場しないぞ。それどころか通常の5メートル列状間伐での効果が示されている。静岡県は、どこから「15メートル列状間伐」という技術?を引っ張ってきたのだろう。

広葉樹林化は未確定技術であることを認識しつつ、慎重に行うべきだ。もちろん、現地にも足を運んで。机上のプランニングでは、見えない。

ちなみに、ちょうど今こんなクラウドファンディングも行われている。主催者はドイツに留学して、多様な森づくりの方法を模索して研究しているのだよ。いい加減な方法を安易に取り入れないでくれ。

人工林の樹種多様性を向上し、持続可能な森づくりを目指す!

2022/04/14

衛星から見る伐採面積

森林総研のこんな研究を見た。

衛星画像から過去35年間の国内全域の伐採・植栽箇所を可視化

ようするに、衛星から地上を映した画像で伐採面積を調べたということだ。これまでのような届け出など書類上の伐採地の面積合計……みたいな統計とは違う。さらに再造林がされているかも読み取っている。

1985年から2019年までの毎年の伐採箇所を推定し、伐採後に針葉樹で植栽されているか、また、時系列的に伐採・植栽活動がどのように変化しているかを調べました。その結果、毎年の伐採面積は直近10年で増加傾向にあり、近年の伐採活動の活発化を裏づけました。針葉樹林が伐採された後、針葉樹が再植栽される割合は1980年代から減少傾向でしたが、2010年以降は下げ⽌まり、現在では5–6割程度は再植栽されていると判断できました。本研究成果は、各地域での伐採・植栽活動の把握と森林管理計画の策定に利用されることが期待されます。

伐採面積は、(2010年以降)年間約4万ヘクタールから6万ヘクタールへと増加傾向で、人工林(針葉樹林)が伐採された後、針葉樹を再造林されたと考えられる割合は、2010年以降は約5–6割でほぼ横ばい……という結果だという。

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わたしは年間6万ヘクタールぐらいかいな、とむしろ少ないと感じたし、再造林が5~6割もされているというのも意外。一般に3割ぐらいだろうと言われていたから。ただし、これは2010年以降だから、それ以前の伐採地を目にして、それも脳裏に残しているからかもしれない。

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それでも4~5割は再造林していないわけだ。植えたところも、ちゃんとした森にもどるかどうかはわからないし。森にはもどったが、木材生産できる山ではなくなっているケースもあるだろう。いっそ伐採跡地が広葉樹林(針広混交林)になっている割合も知りたいものだが。それは天然更新ではなかろうか。森づくりの指針にもなる。

ともあれ、書類上の数字は信用できない。かなりいい加減だし、再造林したというのも自己申告で、現地調査したわけでもないから。こんなデータを政策立案にも活かしてほしい。


(International Journal of Applied Earth Observation and Geoinformation 誌に掲載)

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