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森と林業と田舎の本

2021/10/16

誤解呼ぶ熱帯丸太の取引量

ITTO(国際熱帯木材機関、横浜市)の熱帯木材貿易(隔年発表)の最新版(2019-2020年版)報告書が出た。

そこでは、
2020年における世界の熱帯丸太生産量は3.3億m3。最大の輸入国は中国の858万m3で、世界シェアの70%を握っている。日本は、1998年まで世界最大の熱帯丸太輸入国だったが、現在のシェアは0.6%にまで低下している。
とある。

が、これ、かなり誤解を呼ぶというか、恣意的に誤解させようとしているんじゃ? と思わせる統計数字の扱い方だ。

熱帯丸太の貿易では、中国が全体の70%を握って世界最大……。そして日本はたった0.6%……。

数字そのものを疑うつもりはないが、これでは中国が独占していて、日本は熱帯材をほとんど使っていないみたいではないか。

鍵となるのは「丸太」という点だ。熱帯材の丸太の生産量のうち中国の輸入量を見ると、約3.85%にすぎない。それが7割ということは、貿易量そのもが生産量の5.5%程度ということだ。輸入しているのは、ほとんどが中国なのかもしれないが、そもそも貿易量が少ない。

実は熱帯諸国は、丸太輸出を止めて、製材や合板に加工して輸出する方向にシフトしている。

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今年の白書によると、日本の木材需要の内訳はこんなん。熱帯木材は、インドネシアとマレーシアがほとんどで6.9%。加えてベトナムはパルプやチップにして輸出しているようで、それが9.0%もある。合わせると16%近い。これを総需要から導くと、1140万立方メートルになる。中国の丸太輸入量より多くなる(-_-;)。ま、中国も製材や合板でたくさん輸入しているんだろうけど。

だいたい日本の南洋材輸入は、ほとんど終わった、と今年初めに紹介したばかり。丸太で輸入することはなくなったのだ。これまでも、これからも製品輸入が主流だろう。いや、資源量の減少から考えると、熱帯木材の製品そのものが減っていくかもしれない。そのうち熱帯産木材といいながら、樹種はアカシアやユーカリなどになっていくかもなあ。

2021年「南洋材時代」は終焉を迎えるか

 

2021/10/09

頑迷な「林業の常識」と新しい施業法

フォレストジャーナルwebに「病害虫対策や経営的リスクの分散、SDGs貢献も!? 世界で進む新たな森林施業法とは」を書きました。
と言っても、全然新しくなく、本ブログでは繰り返し紹介・論じてきたこと。

ようするに、現在の林業施業法の否定だ。今やってる一斉伐採-一斉造林は時代遅れの「法正林」理論ではないか。世界の潮流は変わっているのに。

それなのに、日本の林業関係者は、頑迷というか後生大事に、この“原則”を守るのが大切だと思っている。一斉に同じ樹種の苗を植えて、伐期を決めて、(間伐も交えるものの)最後は全部伐るのが林業の王道だ、と思い込んでいる。だから多少とも皆伐批判が(マスコミなどで)されると、それこそ一斉に批判する。なんでも一斉にするのが好きなんだなあ(笑)。

お山の大将で、自分の知る林業、自分のやってる施業が世界でもっとも正しいと思い込んでいるのかもしれない。いや、単に新しいことに取り組むのが怖いだけなのかもしれない。択伐だ、混交林だ、と言われても技術が確立していないし……と。そう言うのを、井の中の蛙、臆病風に吹かれる……というのかな。

しかし、世界中の知見は進んでいる。こんな論文があった。

Silvicultural prescriptions for mixed-species forest stands. A European review and perspective

英語読むの辛いので、機械翻訳した(笑)。すると、

混合種の林分のための造林処方。ヨーロッパのレビューと展望

単一種の林分については、これまでに開発された対策や方法と比較して、混合種の林分に対する造林処方は初期段階にあります。しかし、それらは、現在世界中の多くの国で推進されている混合種スタンドのよく考えられた確立、設計、および管理に不可欠です。ここでは、最新技術を確認し、実験のステアリング、スタンドモデリング、および造林用の混合種スタンドの造林処方をさらに開発します。

……この翻訳では、余計わからんようになった(泣)。誰か、訳してくれ。

ま、ヨーロッパの混交林施業に関する論文である。ただ混交林における間伐の方法論などを図解しながら説明しているようだ。

もちろん完全な施業法なんてまだ確立されていないし、ヨーロッパと日本は違う。でも、こんな図もある。十分参考にならないか。

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なんだか、よく似た図を見たことがあるなあ、と考えたら、『吉野林業全書』だった。明治時代の吉野林業は、スギとヒノキを混交させて植え、間伐の仕方などを説明している。また先輩が新人に教えるのに、碁盤を使って、白と黒の石でどゃに何を植えて、間伐はこの順序でやる……と教えたと聞く。

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ともあれ、混交林は日本にもあったのだ。いや、粗放林業による混交化も含めれば、日本の戦前の林業は多くが針広混交林だったのでないか。決してヨーロッパの新しい林業施業法ではない。硬い頭をほぐして、広く世界を眺めて、真面目に日本の林業、いや自分の山の将来を考えてほしい。このことは、フォレストジャーナルweb版の次号(13日公開予定)にも記している。

 

 

2021/10/08

新内閣の中で興味の湧く大臣は

岸田新内閣が始動した。さして期待するものがあるわけではないが、ちと興味を引く大臣と言えば、後藤茂之厚生労働大臣である。というのも会ったことがあるのだ。ただし、20年ぐらい前の話。その時、彼は(旧)民主党の代議士だった(^^;)。

現在の姿をテレビを見ると、わりとスマート?だが、当時は腹が出ていて、恰幅のよい姿のイメージがあった。今なら私も負けていないけど(^^;)。せっかくだから、顔写真を。オフィシャルHPから拝借。

P228

おそらく今の彼にとって最大のテーマはコロナ対策だろうが、私はてっきり、後藤氏を農林族かと思っていた(笑)。

一応、経歴を追うと、東京出身で東京大学法学部を卒業後、大蔵省に入局、そして米国ブラウン大学経済学部大学院に留学し修士号を取得。選挙で初当選したのは2000年(新進党⇒民主党)だが、2003年に自民党へ鞍替え。以後、国土交通大臣政務官、法務副大臣、衆議院厚生労働委員長、そして厚生労働大臣と歩んでいる。つまり法務や経済、国交省、最近になって福祉医療……が専門だが、全然農林関係ではない。
多少とも森林に関係する肩書は、所有者不明土地等に関する特命委員会幹事長と、地球温暖化防止のための森林吸収源対策PT事務局長だろうか。

それなのに勘違いしていたのは、民主党主催の林業勉強会の講師として呼ばれたから。その時の主催者が後藤代議士だったと記憶する。また選挙区は長野4区と木曽林業の本場ではないか。地盤が林業地だから林業政策にも熱心なのだろうと思っていた。もっとも、当時は新人だったから、なんでも首を突っこんでいたのかもしれない。私を講師にしたのは、林野庁内の人の推薦とか言っていた。へえ~。

著作で言えば、『「森を守れ」は森を殺す』、『伐って燃やせば「森は守れる」』、『日本の森はなぜ危機なのか』当たりを執筆出版していた頃だ。

で、そこで私は何を話したのか。当時はまだ林業に絶望しておらず(笑)、いかに林業を建て直すか、というのが主題であった。ただ、切り口は今と同じで、補助金がいかに林業を腐らせたか、また日本の森は十分に育っているのだから「伐採規制で守る」のではなく、ちゃんと経済ベースで木材を伐って、高く売れる商品開発をすることが林業再生に肝心だ……という話をしたと記憶する。

これ、当時は意外な意見だったようで、その場でも妙な反響?を呼んだ。会場がシ~ンとしてしまったのである(笑)。
「てっきり森を守るために、もっと税金投入を」と言うと思ったのに……という感想が、列席している国会議員から出たほどだ。実際、当時は切り捨て間伐が主流で、森林保全のための間伐だからと、伐った木を売ることさえ忌避されていたのである。とくに野党としては自然保護推進の方が売り文句になったのだろう。

ただ後藤氏は終わってから「これならやれるな!」とやたら喜んでいたのだった。正直、税金で森を守れと言われても将来が見えないし、効果も出にくい。しっかりビジネスしなさい、と言われた方が政策に結びつきやすいし、効果も短期間に出ると思ったのだろう。

ま、その後、この勉強会に出ていたメンバーの多くが自民党に移るか、知事に転出、あるいは落選して(´Д`)消えて行ったから、何か政策にまとめたようには思えない。ただ、その後菅直人代議士を中心として、まったく別の方向から「林業の産業化」政策が提案されていく。それが森林再生プランへとなって政権を取ってから推進されていくのだが……。まっ、私の影響は微塵もないと思う。

その後、自民党政権にもどってからも、「林業の産業化」という部分は強まる一方だ。自然を破壊しても金になればいい、補助金額より純益が少なくても売上を大きく見せたら成長産業ということにする、というのが現在の林業ではあるまいか。

しかし、結局は搬出間伐にも補助金をつけるなど、金のバラマキは強化されこそすれ、全然ビジネスにはなっていない。高付加価値商品どころか、燃やすのも燃料という商品だと促進する有様。私の主張とは似て非なる、いや正反対とも言える、まったくベクトルの違う方向に進んでしまった。

まっ、今の後藤大臣にはコロナ対策に頑張ってほしいが、たまには森林・林業政策も考えてくれたまえ(なぜか、上から目線)。

 

 

2021/09/30

皆伐-再造林の進め方?

奈良県の上北山村に行った際、道沿いに大規模な皆伐地が広がっていたので、パチリ。

だが写真を撮ってから、「ここで以前も写真を撮ったことがある」ことを思い出した。

そこで探し出したのだが、

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これだ。日付を見ると2019年の3月だった。何十ヘクタールになるか、奈良県内ではかなりの規模の皆伐地なのだが、このとき気になるのが、真ん中にわずかに緑がかっていること。なぜ、ここ1~2ヘクタールだけ再造林されているのか。でも、まあ、そのうち順々に造林していくのだろう、何かの都合でここだけ急いだのかな……と想像した。が。

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これが先日撮ったもの。造林したところは約2年分の生長をしたようだが、その周りはまったく何も変わらず。穴居ル、再造林しないのか。

想像するに、造林したところは所有者が違うのだな。この皆伐地の土地所有者は何人もいるのだろうけど、再造林するように主張したのは、真ん中のごく一部の山主だけだったのではないか。周辺の他の山主は「もう植えんでもええわ。どうせ林業やらんし」ということになったのではなかろうか。しかし、今後どうなるのだろう。植えたところだけ育って、その周りは雑木も生えていない。

そう言えば……こんな写真もある。

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これは、場所は少しずれるが、だいたい同じような上北山村。撮影は2010年5月と今から11年も前だ。ここは、逆に一部だけが伐らずに残されている。これは、この土地の山主だけが皆伐を反対したのだろうか。ここだけ残ってもなあ。いや、ここだけでも残ったおかげで、もしかして山が崩れずに済んだかもしれないし、あるいは周辺の天然更新が進んだかもしれない。

山主が反対しても、こっそり伐ってしまうような業者でなくてよかった(笑)。

 

2021/09/28

林業をテレワークで!

先日のNHK「サイエンスゼロ」で取り上げていたのは、テレワーク。

だが、内容は重機の操縦だった。

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このように丸太を持ち上げたり刻んだりする現場なのだが、

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それを事務所内(自宅でもいい)のモニターを見ながら行うもの。

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運転席を見てほしい。無人だ。誰もいないのに、しっかり仕事をしている。

これは実験なので土場だったが、そのうち林業現場にも普及するかもしれない。伐採や原木を玉切りして無人フォワーダに載せるぐらいならできるぞ。フォワーダも無人で走らせて、土場でトラックに積み替えるとか。山の中なら道路交通法も適用されないから、技術さえ開発できたら、すぐに実施できるんじゃないかな。
肝心なのは、完全自動運転ではなく、まずは人間が遠隔操作していること。その方が技術的には簡単で今すぐにでも実現するらしい。時間差は0,1秒以下で済む。

これで人手不足解消と、事故の安全性(人が死ぬことはない)が確保できるわけだ。

実は、私はこの実験を20年以上前に取材していた。雲仙普賢岳の火砕流跡地にスーパー砂防ダムを築く現場だった。あの時の写真などを探せば出てくるはずなんだが。しかし、残念ながら実験で終わったみたい。意外と進歩は遅いというか、長い雌伏期間があったのだね。建設現場と重機、そしてパソコンの性能の問題かもしれない。

 

2021/09/24

肉厚マダイと木づかい運動

一部で話題になっている「肉厚マダイ」。

ゲノム編集~ようするに遺伝子改変技術~で、通常のマダイの1・5倍肉厚、つまり太ったマダイが京都大学や近畿大学によって作られている。もうすぐ量産化が可能になって市場にも出てくると言うのだが……。

京大発、「肉厚マダイ」参上

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実はこのニュースをよく読むと、マダイだけではない。トラフグを短期間で育てる技術も完成しているらしい。

この手のニュースが流れると、即「気持ち悪い」とか「遺伝子改変なんて危険」という感想が飛び交うのだが……。まあ、食べ物が豊富な国の住人の我が儘みたいなものか。余っているから選べる。美味しい、美味しそうに見えるとか(気分の)安全・安心とか、ようは感覚的な面で選べる立場とだから言えることだろう。

昔から食料危機への対処は永遠の課題だが、実は今や「食あまり」の時代になっているようだ。

世界人口の伸びは鈍化しつつあるが、まだ当分は伸び続けるだろう。現在は70億人とか言われているが、100億ぐらいまでは行きそうだ。私が小学生の頃は30数億人ぐらいだったと記憶するので、もはや2倍になっている。当時から、盛んに食料危機が言われていた。マルサスの「人口論」を持ち出すまでもなく、食料生産は人口増に追いつかない……というのが定説だったから。

だが、実はその定説は崩れた。今は食料の伸びの方が人口増より大きいと言われている。

世界の穀物生産量は約22億トン。だが、およそ半分は飼料用とエネルギー用だ。穀物が余るからバイオ燃料に転換している。
同じく牛肉や豚肉、鶏肉などは、50年前の3倍も生産されている。それは養殖水産物にも言える。

別に農地が増えたわけではない。それどころか耕作放棄地が世界的に増えているのだ。耕地の5分の1が耕されていない。貧困国でも農民は農地を捨てて都会に出ていく現象が続く。実は、食料は生産過剰だから価格が下がり、農民たちは「やってられん」わけなのだ。
食肉も、家畜の飼育頭数が増えたのではなく、大きく早く育てる技術が生まれたからである。1個体から採れる肉の量が増え、しかも成長が早いから回転も速くなる。肉なんて切り身しか目にしないから気がつかないが、ウシもブタもニワトリも、ひと昔前より確実に大型化している。魚介類も天然ものよりずっと大きく早く育てているのだ。

もちろん品種改良や肥料、さらに病害虫を抑え込める農薬・除草剤、家畜用医薬品の発達も、寄与している。その流れの一つが、「肉厚マダイ」なのだろう。

今、世界では8億人が飢餓線上にいると言われるが、それは食料が足りないのではなく、届けないからだ。必要な人のところに食べ物が届かないことが引き起こすのだ。それは流通と政治の問題だろう。

そして木材も生産量が増えている。早生樹のような早く太く育つ樹種・品種づくりが進むだけでなく、これまで使えなかった細い木材も集成技術の進歩で太い建材にすることができるようになった。柔らかくて使えないと思えた樹種も、改質することができるようになった。木材が余っているから「木づかい運動」とかいう、奇天烈な木材もっと使え運動が展開されている。木づかいではなく、木あまりなのだ。

木材も、森林蓄積は世界的に増しているのに、需給バランスを崩した経営ミス、流通御簾、そして政治システムの問題だろう。ウッドショックは、木が余っているのに供給できずに価格が高騰するというおバカな事件であった。

さて、肉厚のマダイや、早生樹の建材は、世間に受け入れられるだろうか。

 

2021/09/03

林野庁の「盗伐」調査結果

民有林の無断伐採に係る都道府県調査結果について

林野庁が行った無断伐採の相談件数が公表された。令和2年の1月から12月までの期間に、森林所有者に無断で立木の伐採が行われ、市町村又は都道府県に情報提供や相談等があった事案について、都道府県を通じて調査を行ったもの。

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いまさらだから、こんなに少ないの? と思ってしまう。私の元にも何件か「盗伐にあった!」という情報提供が寄せられているのだが、はたして含まれているかな? 私の聞いたものでは、森林組合が山主に無断どころか伐採届さえ出さずに伐ってしまったとか。。。相談を受けたと言っても警察が無視したら数に入らないのかもしれない。宮崎県では、被害届をほとんど受理しないそうである。

加えて、「盗伐」ではなく、境界線がわからなくて「誤伐」だという言い分をどこまで信じるているのか。

まあ、林野庁としては、淡々と数字を公表したということなのだろう。

一応、このように記している。
林野庁では、平成31年3月に関係通知の改正等を行い、都道府県や市町村、警察庁等と連携しながら、無断伐採の未然防止に向けた対策の強化に取り組んでいます。
 また、これらの対策に加えて、衛星画像を活用して伐採状況を監視するプログラムの試行版を令和2年12月に全都道府県・市町村に提供したところであり、同プログラムを活用した伐採状況の監視が進むよう、更なる普及・改良を進めていくこととしています。


ところで、これは報道発表だから、今後、果たしてどこのマスコミが取り上げるかという課題がある。せっかく発表しても、ほとんど知る人がいないのでは可哀相……だから、私も取り上げるのだけど(笑)。

私がとくに興味を持つのは業界紙・誌だ。林業の業界を扱う専門紙・誌なのだから、林野庁の発表した項目はしっかり報道してほしい。ちゃんと記事にするかどうか……私がすべてをチェックすることは不可能というかしたくもないのだが、それは義務だと思うのだが。

そもそもこんな広報発表ではなく、盗伐問題そのものを論じてどんどん報道すべきだろう。業界の一大事である。ただ寡聞にして業界紙が盗伐を取り上げたという話を聞いたことがない……。ぜひとも現地取材をして、被害者の声はもちろん、できれば盗伐業者の直撃ルポでも載せてほしいのだが。

ま、無理だろうな。しょせんは……(笑)。

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2021/08/24

グリーンパワー9月号に「皆伐をしない林業」

CTNF、EFM、VRH、RIL……。何の略号かわかるだろうか。

グリーンパワー9月号の記事からの抜粋だ。執筆は柴田晋吾・上智大教授。詳しくは、この写真の中から見つけてくれ。

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自然に近い林業、生体的森林管理、多様保残伐、影響低減伐採。ほかにCCF(常時被覆林業)というのもある。

ようするに皆伐をしない林業、森である状態を持続させる林業ということだ。その源流は恒続林。今や世界的な広がりを持ち出したというのである。個人的には、以前より気になっていたスロベニアの恒続林について触れていることがツボ。スロベニアの林業に関しては日本語文献がほとんどなくて、誰か調べてくれないかなあ、と思っていた。どうやらプロシルバという組織ができて、それが恒続林を推進したらしい。それはフランスやイギリスにも伝播したという。フランスでは不規則森林協会(AFI)が作られ、イギリスではプロキシバ・イギリスとなってCCFを推進した。

これらの森づくりと林業に共通するのは、皆伐をしないことのほか、異齢林であり、こまかな林分による異種混交の不規則な樹木の生え方にある。そして豊かな生態系を維持しながら、しっかり木材生産もすること。

……と、記事を読みながら内容を理解しようとしたが、なんだ、これを詳しく記した本「エコ・フォレスティング」を私は持っていて、以前読んだことに気づいた。十数年前に購入したんだ。すっかり忘れているよ。しかし、林野庁は皆伐推進の旗を下ろさないし、言い換えると十数年の間、日本は進歩していないのか。

ともあれ、日本林業は相変わらず世界の潮流から取り残されているなあ、と再確認?したのだが、いやいや、奈良県を始め、いくつかの地域では、恒続林をめざそうとしているではないか。かろうじて世界の動きの端の方に引っかかっている。これが救いかな。

2021/08/10

混交林は木材生産性が高い?

「気候変動」と並んで「生物多様性」は、地球的課題として大きく取り上げられる。残念ながら日本では後者はあまり関心を持たれないようだが。実は両者は親和性があり、気候変動を抑えるには生物多様性を保全することが効果的だという。

ただ、生物多様性は経済的にはあんまり歓迎されないようだ。これを林業で言えば、さまざまな樹種が混在(加えて異齢)している森となるが、木材生産がやりにくくなる。同じ樹種の木材を大量に収穫できないからだ。それに皆伐などができずに作業効率も落ちる。スケールメリットがなくなり経済性を劣るように感じてしまう。

だから混交林や異齢林を嫌がり、スギ一色、ヒノキ一色の人工林をつくりたがるのだろう。

ところが、こんな研究が出ている。[Fores-Try

南ドイツを中心としたヨーロッパの単純林と混交林を比較した研究では,その最大本数密度が混交林で高くなることが示されました。

立地環境と樹木の平均サイズが同様である単純林と比較して,なんと混交林では平均16.5%も高い最大本数密度を示すことが分かりました。

どうやら混交林には樹木間の競争を緩和したり、成長を高め合ったりする相乗効果があるらしい。それは「すみわけ」とか「助け合い」があるからだという。つまり、混交林の方が、木材生産力が高いことになる。
同じ面積で16%以上も木材生産が増えるというのは魅力的ではないか? まだ作業効率の点は残るが、だいたい皆伐を前提にするのが間違っているように思う。

また植物の多様性は、農業生態系における殺菌剤耐性の進化的発達を改善する効果もあるらしい。ようするに、恐ろしい病害虫が出てきづらくする可能性がある、と考えていいのかな? 

たしかにスイスで見た林業地は、日本人には雑木林にしか見えなかった(笑)。だが、ちゃんと木材生産しているらしい。

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実は、日本でも戦前は一斉林はそんなに多くなかった。一斉林にするには密植しなければならない。一方で疎植にすると、間に必ず広葉樹などが入ってきて混交しだすからだ。また密植で有名な吉野では、スギとヒノキを混ぜて植えていた。生長速度が違うので、こまめな管理が必要だろうが、吉野はそれを苦としなかったのだろう。生産力を増す方が得だと見切っていたのかもしれない。
だいたい皆伐だって、そんなに大きな単位ではしなかった。1町歩単位なら、モザイク林になるから異齢林に近い。

それを戦後は全部ぶち壊してしまった……と思うと戦後の林政の大失敗の根源は混交林を止めたことにあるのかも。

 

2021/07/21

枝葉だけでも盗伐?

メールで問い合わせが来た。

四国の某県なのだが、ヒノキ林に漁協の軽トラが止まっていて、そこでヒノキの枝を高枝切りバサミで切り取っているというのだ。それも1ヶ所だけでなく、何カ所も。そして一度だけでなくここ数年続いているらしい。かなり組織的な収奪である。

その漁協の内部の人に聞いたところによると、ヒノキの枝葉は大型冷蔵庫に搬入されており、直販市に出す商品の陳列や商品発送時の彩りとして詰めているとか。つまりヒノキの枝葉を飾りとしているわけだ。

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こんな風に飾りつけている。

問題は、どうも無断で伐っているらしいこと。山の所有者に断りを入れた気配がないという。これって、盗伐?

さて、どうだろう。無断で他人の山の木を枝葉といえども勝手に伐っていたら、これは窃盗だ。しかも少量・その場限りではなく、定期的に商品として盗んでいる。

ただ、ここで難しいのは、ヒノキの枝葉に価値をつけることはできるか、という点である。昔は、それこそツマモノとして一定の人気があった。いや今も多少は需要はあるだろう。ヒノキもスギも、木材だけでなく、樹皮に枝葉に、なんでも商品として扱っている時代もあった。
しかし現在は、実態としてヒノキ丸太一本だって何千円しか値段がつかず、その枝葉は捨てている。つまり無価値扱いなのだ。

もしこれが、所有者の許可を取っていたり、伐って捨ててあるものを採集しているのなら問題にしづらい。ただ、生きて立っている木から切り取っているのは、樹木を傷つけたとして賠償責任を追求できるかもしれない。

法律的な判断もだが、林業家としての判断はどうなるだろうか。

 

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