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森と林業と動物の本

2025/04/09

吉野林業様変わり~驚いたのは…

先日訪れた吉野の林業現場では、驚いたというか、変わりつつある吉野林業を感じてしまった。

広がる伐採跡地。標高は800メートルを越えているようだ。

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ちょっといびつな形で連なるので、全体の面積を目測で読むのは難しかったが、おそらく10ヘクタールぐらいはあるだろう。ここはヒノキ林だったそうである。

ちょっと吉野としては皆伐規模が大きいかな、と思ったのだが、驚いたのはそこではない。

しっかり再造林している。いや、それに驚いたわけではない。当たり前だ。していなかったら驚くわ。

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切り株の配置を見ると、詰まっている。直径はそんなに太くないので60年くらいかもしれない(でもヒノキだからもっと長いか……)が、周辺には直径15~20センチくらいのヒノキ林も残されているんて、やはり密植した気配がある。

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さすが、よく手入れされている。いや、それに驚いたのではない。

驚いたのは、……跡地に植林するのがヘクタール当たり2000本だと聞いたことだ。

2000本! 九州などでは1000本、1500本が当たり前になっているのはわかっている。林野庁も、かつての基準だったヘクタール3000本植えから下げたことも知っている。

しかし。しかし吉野で2000本とは。かつてのように8000本、1万本を植えるのが無理になってきたと聞いているが、それでも5000本ぐらいは植えていると思っていた。これでは、育った後も吉野材にならないだろう。標高が高いから成長は遅くなり、年輪は詰まるかもしれないが……。

何も密植多間伐に縛られることはないにしても、2000本ねえ……。間伐もいらないかもしれない。伐期は何年に設定しているのか。

将来的には、どんな林業を展開するつもりなのか。いや、どんな吉野林業になるのか。一抹の心配を感じたのである。

2025/03/14

トランプは森のラストベルトを救うか

アメリカのトランプ大統領の言動と政策には、まったくうんざり来る。ときに反吐を吐きそうな気分になる。だいたい法律ではなく大統領令ばかりなのが恐ろしい。

が、今回の大統領令はどうだろうか。あまり大きく報道されていないようだが。

トランプ氏、国有林の商業伐採推進する大統領令に署名 関税対象のカナダ木材依存脱却

内容は、国有地での商業伐採の「即時拡大」を掲げたもの。

当局に、認可の迅速化や絶滅危惧種保護法などの環境保護規制を回避する方策を検討するよう指示している。「外国の生産者」に頼らないよう木材の国内生産を拡大するのが目的で、「米国には、国内需要を十分にまかなえるだけの豊富な木材資源がある」と説明している。ちなみに昨年、アメリカで消費された木材の23.6%は、カナダからの輸入だった。

アメリカは、木材輸出国である。ただ、国境を接しているカナダからの輸入も多い。それを国富の流出だとトランプは感じたようだ。アメリカ北西海岸地帯に森のラストベルトがあるように、仕事を奪われた林業労働者も多い。彼らは麻薬や酒に溺れていく。林業振興で、それらの問題をアメリカ国産材の増産で解決する!


しかし消費者に求められる木材は、丸太ではなく製品としての木材である。ちゃんと製材・加工していないと消費者は使えない。林業労働も高度化しており人材育成なしに使えない。そして森林は機械の並ぶ工場ではなく生物資源としての複雑さを持っていることも理解しているとは思えない。

仮にアメリカが木材生産を増やしても、それを即消費者に届けるのは難しい。製材をどうするか、林業労働力は足りているのか。価格は跳ね上がる、そして伐採のよる環境破壊や再造林など跡地問題の考えねばならない。さもなけれは持続性を失う。

ただ…これを読んで、日本でもやれと思う林業関係者は多いだろうな、と感じた。日本でも「豊富な木材資源がある」とどこかの省庁が連呼しているし、「外国の生産者」つまり外材ではなく国産材を使え、そのために国産材の生産を拡大しろ、という声が強い。国有林を伐ろうという動きが広がっているのも同じかもしれない。日本の林業家はトランプ主義者だった?

しかし、林業労働者が不足し、量も質も安定的に供給できない、乾燥・製材・加工も追いついていない。外材と国産材の材質が違って代替にならない、原木は安いのに製材品になると価格が跳ね上がる産業構造。そして再造林の低迷……などの課題が横たわる。そもそも木材需要が伸びていず、非木質建材もいっぱいだから、価格が上がれば木造建築は減るだろう。アメリカより厄介だ。

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アメリカの人工林

日本の森のラストベルトを救う政策とは何か。アメリカが反面教師になるかな。

2025/03/10

林業機械に林業3原則を植え付けろ!

林野庁が、「林業機械の遠隔操作に関する安全性確保ガイドライン」に関する意見を募集していた。つまりパブコメの募集なのだが。

意見公募の趣旨・目的・背景
近年、林業の安全性及び生産性の向上を目指した林業機械の遠隔操作技術及び自動運転技術の開発が進展しています。このうち、遠隔操作林業機械は実用化段階にあり、自動運転林業機械は開発・実証段階にあります。これらの新しい技術の導入により、林業の労働に関する諸課題の解決が期待されている一方で、その運用に当たっては、これまでにはない危害が生じる可能性があります。
これらの状況を踏まえ、林野庁では令和6年7月に「林業機械の自動運転・遠隔操作に関する安全対策検討会」を設置し、遠隔操作林業機械を使用することで新たに生じるリスクを回避・軽減することを目的としたガイドライン案の検討を行いました。本案について、広く国民の皆様から意見を募集し、提出いただいた意見を考慮しつつ、ガイドラインを策定することを目的として行います。

遠隔操作できる自動運転機械は、建設土木の世界では少しずつ導入が始まっているが、いよいよ林業界にも入ってきたか。

これが普及すると、もはや林業家の質がまったく変わってしまうような気がする。森の中で過ごしたいという人は求められないかも。もっとも、ここではあくまで「安全性」が課題なのだね。

私は、いっそ林業の基本理念を林業機械のAIに植え付けてほしいと夢想する。

かつてSFの世界でロボットが普及することを見越して、作家のアイザック・アシモフは「ロボット工学3原則」を提唱した。ロボットの開発には、この原則を守ることが必須なのだ。それは作品「わたしはロボット」の中の話なのだが、広くその原則はほかの作家の作品にも取り入れられている。

第1原則:ロボットは人間に危害を加えてはならない
第2原則:ロボットは、第一原則に反しない限り、人間の命令に従わなくてはならない
第3原則:ロボットは、第一、第二原則に反しない限り、自身を守らなければならない

それに匹敵するような原則を林業機械にも設定できないか。

第1原則:林業機械は森の生態系を破壊してはならない
第2原則:林業機械は森の資源を持続的に利用しなくてはならない
第3原則:林業機械は第1、第2原則に反しない限り、利益の出る作業をしなければならない

こんなん、どうかなあ。どれも、林学の世界では当たり前の原則だ。林業は保続にありと100年以上前から言われてきたし、資源を枯渇させてはならないのも決まりきったこと。そして儲からない作業をすることは経営ではない。

多分、今の林業家なら「ムリ!」と言って投げ出すかも(笑)。

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研究途上のロボット。人が操縦しつつ、何百キロもの物体を運んだりつかんだりできる。

2025/03/04

トランプ、木材にも関税か

連日、ニュースでトランプ米大統領の顔が映ると気分が鬱になる。

ゼレンスキー・ウクライナ大統領とのやり取りなど、下品なマフィアの脅しのようで、交渉手段としては下の下だ。(それにしても、大統領、副大統領が同席するのはいかがなものか。あそこに爆弾テロでもあったら、両者共倒れ。リスク管理はしないのだろうか。)

とまあ、ちゃちな外交評論がしたいのではなく、問題は脅しの手段に関税関税、と連呼する点だ。アホなんだなあ、とため息。

あまり話題になっていないが、木材にも関税をかけると言っている。

トランプ氏、木材にも関税検討 海外依存度の高まりを問題視

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毎日新聞によると、トランプ米大統領は、木材の輸入が米国の国家安全保障を損なっているというのだ。

アメリカは、いうまでもなく木材輸出国だ。日本もたっぷり買っている(建材だけでなく木質ペレットも)が、同時に輸入国でもある。近年は 国内の木材サプライチェーンが弱体化したため輸入量が増えていることを問題視しているらしい。
主に輸入先は、カナダや中国、ブラジルなど。これらの国は巨額の政府補助金で木材をダンピングしているというのだが……。

カナダは国境地帯で木材のやり取りをしているのだから、輸入も多いが輸出も多い。これを問題視するのが不思議だ。中国は、製品輸入だろう。中国産木材ではなく、何に加工しているのかを考えるべきだ。ブラジルから輸入する木についてよく知らないが、樹種が全然違うので代替できるのかどうか。

ちなみに日本も、近年はアメリカへの木材輸出が増えている。中国やフィリピンで加工してから輸出する分もある。それが関税で止まれば……。

まあ、大統領以下が森林はいうに及ばず環境全般に興味がない(というより環境保全を敵視している)のは想像できるが、国内の木材供給力を強化するため、森林伐採の許認可手続きを簡素化する命令も出しているそうだ。

ようするに、伐って伐って、伐りまくれ!……なのだろう。

仮にアメリカ国内の伐採量が増えたとして、それらが国内需要に回される保証はない。むしろ、だぶついた分を輸出に回す可能性も高い。日本にも米材が押し寄せる可能性もなきにしもあらず。今度は外材価格が暴落するウッドショックを招くかもしれない。

前回のウッドショック時では、せっかくの値上がり時期に増産せずにチャンスを逃した。遅れて増産した時には価格は下がっていた。今度はどうする? 国産材は、いかに対応すべきか早めに考えておかないと、また置いてきぼりだろう。

2025/01/13

見えないカルテルが、木材価格を下げる

面白い論文(のdigest )を読んだ。

建築資材の輸入規制緩和がもたらす原木価格の上昇について~竹中 昂平(帝塚山大)・都築 佑太(京大)

ものすごくかい摘んで私なりに要約すると、木材は商品としては非木質建材と組み合わせて存在することが多いが、その非木質建材(ガラスやアルミサッシなど)はJAS認定などで実質的に寡占状態である。実際に、ガラスでは旭硝子と日本板硝子がシェアの過半を占めており,アルミサッシではLIXIL,YKK AP および三協立山がシェアの大半を占めている……そうである。 ようするに、そこには目に見えないカルテルなようなものがあり、高価格維持戦略が取られている。だから価格は下がらない。すると木材価格が下がる。

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たとえば、このような木造建築物の建築コストは、非木質建材がごっそり建築費を取って、予算が足りなくなると、木材を安く買いたたいて成立させている……と見ることもできるわけだ。

だが、輸入品と競争を促せば、否応なく価格引き下げ圧力が生じる。その計算を住宅ローンの金利から導き出している。ローン金利も非木質コストの要素があるからだ。住宅ローンの金利が上がると、木材価格は下がるのだ。

輸入規制緩和による建築資材価格の下落は、製材品、ひいては原木価格を上昇させるであろう。

とある。つまり非木材建材に外国製品の輸入を緩和して競争を促すと、引き下げが期待されるわけだが、その場合に木材価格の上昇が期待できる、というのだ。

Photo_20250113155401木製サッシの価格は、何で決まる?

これって、すごいことではないか?

もともと木材価格は、極めて不透明だ。そして、この不透明さが、木材業界衰退の原因であると言っても過言ではない。

なぜ不透明かと言えば、小規模業者が多くて連係もしないから、大手業者に対抗できない。そのくせ業者間で足の引っ張り合いばかりして、ダンピング合戦をする。

逆に、銘木などは、仕入れコストや市場の需給など関係なく、業者が思いつきで価格を決める。同じような銘木が、業者によっては半額になったり2倍3倍になることは珍しくない。高い業者が吹っ掛けて儲けようとしているというよりは、ほかの業者がどんな価格をつけているのか知らないから、相場を無視した値付けをするのだろう。

では、どうしたら木材の価格は上がるか?

・非木質建材の競争を促して価格を下げさせることで木材価格を上げる。
・非木質建材部分で稼いで、その利益を木材調達に注ぎ込むことで木材価格を高くする。
・林業関係者が、非木質建材の販売を手がけて儲ける。木は捨て値でよい。

さて、どれを選ぶ? それとも、どれも選ばないという選択もある。面倒くさいから。

ちなみに、この論文を書いた竹中氏のいる帝塚山大学経済学部の東生駒キャンパスは、我が家からもっとも近い大学。10分くらいで着くのではないか。この大学に林業研究者がいるとは思わなかった。訪ねてみようかな。

 

2024/12/27

理想の林業~台湾の公有林がFSC取得

台湾は、公有林すべてがFSC(森林管理協議会)の森林認証を取得した。認証取得面積は160万ヘクタール近く、台湾の森林面積の71.5%を占める。つまり、台湾の森林の7割以上が認証されたのだ。これって、驚異的。

台湾、アジア太平洋地域初!公有林が100%FSC認証取得

もともと台湾は森林率が63.13%(2022年)と高いのに林業はほとんど行われていない。木材需要の99%は外材に依存している。だが、台湾にも人工林は相当ある。人工林率は20%程度だが、面積にして42万ヘクタールだ。適切に管理して木材生産を行えば、かなり自給できる。
ただ台湾社会では伐採に関する懸念が強いため、
伐採を始めるには、まず社会の信頼と支持を得ることが必要だった。その手段の一つがFSC認証の取得なのだろう。森林認証、とくにFSCは、森林の環境基準を審査する比較的厳しい認証だ。

森林認証だけではない。小規模でも美しい森林開発「里山イニシアティブ」を掲げているし、木材だけでなくキノコや森のハチミツなどの非木材林産物も生み出す、森林セラピーも推進する……と盛りだくさんの政策を掲げている。そして社会と環境のモニタリングデータを6か月ごとに公開し、一般の人々の意見を聞いて森林管理計画を見直し改訂しているという。

林業自然保護署の林華清署長は、すべての公有林がFSC認証を取得することは台湾林業の新時代の幕開けであると強調し、世界の林業のトレンドと一致していると唱えた。(どーでもよいが、林華清とは、なんと役職にピッタリな名前だろう!)

気づけば、台湾では、野心的で挑戦的、そして理想の林業政策を掲げていたのだった。

さて、私自身の今年を振り返ると、今年は6月と9月の2度も台湾を訪問した。とくに9月は阿里山の森を歩いてきた。

タイワンヒノキの巨木林を見たかったのだが、現状36本しかない(巨木はほとんど伐ってしまったことは事前に知っていた)。そこで実際に見たのは何か。そこで驚いたこと、それは……。

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これは28番巨木とナンバリングされたタイワンベニヒノキ。直径3~4メートル級なのだが、見てほしいのはその周辺の木だ。細いというだけではない。樹種はわかるだろうか。

スギだ。そう、スギ林と化していた。阿里山と言えばタイワンヒノキ……ではなく、今やスギなのである。それは伐採跡にヒノキではなく日本のスギを植えた林政があったからである。

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遊歩道沿いも、巨木の切り株は多数あるが、その周辺に生えているのは、多くがスギ。台湾にとっては外来種。

直径30センチ以上あるから、九州なみの成長速度として、樹齢は50年くらいか。ちなみに巨木を伐り尽くしたのは帝国日本ではなく、戦後の蒋介石の国民党政府。スギを植林木として選んだのも国民党政府だろう。どういう判断だったのか。スギの方が成長が早いから?タイワンヒノキの植林方法が確立されていない?
今後の台湾の林政はどちらに向かうのかわからない。原植生を重んじたら、ヒノキ植林に変えるかもしれない。

台湾を日本が領有してから、多くの林学者や林政担当者が渡台したが、そこでめざしたのは「理想の林業」だった。国内では往々にして地元の慣習や伝統に縛られるが、新天地なら科学的に理想の林業を実現できる、と考えたのだろう。それが成功したかどうかは微妙だが、現在の台湾は自らの意志で理想の林業をめざしているのかもしれない。

日本の林業は、今一度、理想を掲げて希望の林業をめざす志を持ってほしい。それこそ国有林全部にFSC認証を取って見せたらどうか。目先の数字を追うのではなく、樹木の時間で数百年先を見通すべきだ。さもないと、いつまで経っても絶望の林業のままだろう。

そう言えば6月の訪問時には、国立政治大学の王雅萍副教にお会いした。彼女は少数民族研究の関係から、土倉龍次郎の林業開発を取り上げている。台湾で唯一の土倉龍次郎研究者でもあった。その際に私が森林ジャーナリストであり、日本の林業についての著作もあると紹介されたので、「台湾で林業の講演をしてくれ」と言われた。土倉龍次郎ではなく、林業の話を(^^;)。

有り難い話である。実現したら楽しいだろうな。日本の林業を反面教師にしてもらいつつ、台湾林業の未来も語りたい。そのためにも「龍次郎伝」を早く書き上げたい。ついでに?『山林王』も台湾で翻訳出版されることを期待したい。

これを2025年の目標としよう。

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王副教授(左)と間を取り持っていただいた曽根さん(右)

 

 

2024/12/18

林野庁の考える「再造林」

林野庁の情報誌「林野」令和6年12月号

ここに「今後の再造林に向けて」という特集記事がある。

いやあ、これが興味深い……こういうのをマッチポンプとか、アクセルとブレーキを同時に踏むというのだろうか。

まず最初に、日本の森林資源がいかに充実してきたかを示す。世界的にも上位で、人工林面積や森林蓄積をグラフで現して、「現在は多くの森林で収穫作業としての伐採の時期を迎えています」。単に伐採と書かず、「収穫作業としての」をつけるなんて秀逸だ(笑)。

何がなんでも伐採を増やす、木材を増産するという立場は崩さない。そのうえで、木材価格が落ちたことや林業従事者が減ったことで再造林が進まないという。そして省力化、低コスト造林を進めています……との宣言。そして「省力、低コスト造林に取り組む事業者への支援を拡大しております」と結ぶ。

ドンドン伐採しろ、そして跡地にはちゃんと植えてね、という論法か。まず再造林は伐採とセットになっていることを示すべきじゃないの。再造林しないと伐採届は受け取ってはダメなんであって、伐採後放置しているのは違法行為なんだと伝えるべきだろう。再造林しないのなら伐採してはダメ、とはっきり言うべきだ。

まあ、私は、再造林以前に皆伐を減らすべきだと思うが……。再造林できるレベルに皆伐面積を減らせばよい。

最後に「各地で行われている試み」を囲みで少しだけ紹介している。

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盗伐天国の宮崎県が再造林条例で持て囃されるかあ。

ちなみに地方では、コンテナ苗使っても全然省力化にならないとか、植栽本数を減らすことに対する疑問の声が出ているんだが。もう林野庁の製作に対しての信頼感がなくなっている。銀行員が盗みをしたり、警察官が殺人を犯したら「信頼がなくなる」というが、林野庁は何をしたのやら。

 

2024/11/23

「林業と建築の勉強会 」から学ぶ

奈良県王寺町の「陽楽の森」で、 TREE FLAG FESというイベントが開かれた。これは森の中でアートあり、工芸品の販売あり、建築あり、木登りあり、サウナあり……というさまざまな行事が行われているものである(以前は「チャイムの鳴る森」という名で開催していた。)。

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ちなみに明日も開かれる。

今回はそこに幾つかのフォーラムも追加された。その一つが「林業と建築の勉強会 ヨーロッパの林業と建築の関わり」だ。講師は、法政大学デザイン工学部教授の網野禎昭氏。これに参加。

正直、始まる前は、建築家が林業を語ると、たいてい林野庁の回し者的な「木材を建築に行かして町の森を、そして脱炭素!」とか「CLTで木造ビルを」なんて話になるので、警戒していた。

ところが講演は、違った方向に。まあ、ここで全部再録するのは無理なのだが、バイオマス発電は、ヨーロッパの安全保障政策から生まれたこととか、中央ヨーロッパの4階建て5階建ての木造建築は木材不足の結果であって……といった話が続いて、なかなか目からウロコ的な面白さがあった。加えて興味を持っていた中世ヨーロッパの「フォルスト条例」のことも改めて知ることができたし、私も訪れたスイス・リースのフォレスター学校の建築も登場した。

さらに戦前日本の「山林都市」構想も紹介される。これは、かつてエネルギーを自給しつつ、職住近接の上品な小都市を森の中に建設することを論じた黒谷了太郎のユートピア構想である。

ちなみに山林都市の具現化の一つとしては、生駒山の山上地域に建設された別荘小都市も含まれるのだよ。これはブルーノ・タウトの設計による。また台湾・阿里山の高原にできたタイワンヒノキ林業の町も構想に近い。

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結論としては、今の量を追いかける林業は破綻すること。木材の歩留りを上げるローテクが必要なこと……私は、それを「林業が産出する木材で建築を行う」のではなく、「建築で必要な木材を木拾いし、それを山から伐りだす林業」にすることと読み取った。商流を逆転させるべきなのである。

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それを実現させる建築が、この陽楽の森で来年より始まる予定である。

 

2024/11/19

高知の立木市場と密植への挑戦

先日、高知県の四万十市を訪れる際は大阪から飛行機で高知空港に飛んだ。

ルートは淡路島を右手に見つつ、徳島県を縦断して高知に入った。つまり徳島や高知の山を上から眺めたわけだ。写真の通り、皆伐地が点々と目に入った。

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一カ所5~10ヘクタールぐらいはある伐採跡地が点在する。林道もかなり入っているようだ。再造林をしているのかどうか、上空からはわからない。ただ急峻な山肌なので、崩壊が起きないことを祈りたい。

そこで思い出したのが、国が音頭を取って企画している立木市場。再造林コストを上乗せした価格で樹木の取引を行うというのだが、林業・木材の業界団体と有識者による検討会によると、モデルとして高知県仁淀川町と福島県古殿町の町有林を市場に出品する計画のようだ。

とくに仁淀川町は、再造林率100%をめざしてスギの最低価格を1立方メートル当たり9422円に設定したという。

なかなか強気の値段設定だ。一般的には3000円程度だろうから、3倍以上にもなる。取引にゼネコンや工務店などが入札することになっているが、果たして参加してくれるのか。業界団体が呼びかけているとは思うが、この価格で落札されたら万々歳だろう。もちろん御祝儀相場では意味がないので、日常的にこれに近い価格にしてもらわないと困る。

しかし、入札側も高値で購入するメリットがなければ応じないだろう。単に「再造林コスト上乗せ価格でエコだから」というだけで金を払ってくれるほどお人好しの業者がいるとは思えない。どこかでコストダウンが必要だろう。
おそらく間に入る流通~製材業者やプレカット業者なども巻き込まないと不可能ではないか。仮に山主と工務店が直取引するとして、運搬や製材コストをどうするか。製材業を泣かせず納得させる仕組みがいる。


ところで四万十流域の森林組合では、1ヘクタールに1万本のヒノキ植林をする計画を進めていると聞いた。吉野林業にも劣らぬ高密植だが、植えたら、後々弱度間伐を繰り返す覚悟がいる。これで品質のよい材を生産できれば立木市場を設けることも考えられるだろう。

高知県で進む新たな挑戦に、大丈夫か?という一抹の心配を抱えつつ、挑戦する意欲に期待しよう。

 

2024/11/13

手取りを増やせ!Wedge ONLINE記事の裏の意図

「手取りを増やせ」という文言は、国民民主党の主張として、何やら流行りそう。まあ「103万円の壁」撤廃がそれに該当するのか怪しいと思っているが、実は私も「手取りを増やせ」を主張している。もちろん、林業家、そして山主の手取りである。

何も労働問題として論じているのではなく、林業振興を「木材生産量」を指標として測るのではなく「山元の利益」が増えたか減ったかで論じないと、日本の林業は回復しないというマクロな林政的発想である。より具体的にいえば、木材価格を上げろ、それも売上ではなく純益を、木材の伐採量は減らしても手取りを増やせ、である。

Wedge ONLINEに「【建築業と林業の起死回生策】AIによる木造資材効率化と適正な利益配分、建築が林業を変える」を執筆した。

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ここではウッドステーションの大型パネル式建築法とAIによる建築費概算システムを取り上げ、それが林業にもたらす影響を描いたが、その基本的は簡単だ。建築現場の情報を山に届ける、それに合わせて山は木材を生産する。これだけのことだ。

エンドユーザーが求める木材(量、質、形状……)などに合わせて山が無駄なく生産すれば、その流通過程の無駄が浮く。それを山元に還元すればよい。3・5メートル材が必要とされている現場には、3・5メートル(+α)の材を届けるべきなのであって、4メートル材を届けて50センチは切り落として捨ててね、ということするな、と言っているだけである。

さらに取引を山と工務店の直販にすれば、流通過程で発生するマージンも省ける。(中抜きではない。)

まあ、そんなこと言っても、その「無駄」で儲けている業者がいるから、反対するのだろうけどね。

より以前の記事一覧

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