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林業・林産業

2017/11/06

なんかヘンと感じたスギ林

山中を走っていて、車窓の景色を見ていると、ふと「なんかヘン?」と感じることがある。
 
今回は、こんな景色で思わず車を止めてしまった。
 
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このスギ林、なんかヘンだなあ。
通常なら見過ごすというか、通りすぎてしまうのだが、この時は車を止めたのだ。
 
改めて見直すと、わかった。幹の高い位置まで枝がない。まさか枝打ちをしたとも思えないんだけどね。。。
 
少し考えて気がついた。
 
このスギ林は密植したまま間伐しなかったせいで、下枝が落ちたのだ。ただ、そんな森は通常森の中に入らないと目にできないのだが、そもそも走っている道が、そのスギ林を切り開いて作ったのだろう。だから、いわば森の断面が見られるようになっていたのか。
 
おそらく道自体がまだ最近開いたばかりで、林際の植生(マント群落)が発達していないから、よく見えるのだ。
 
わかればナンの不思議もないのだが、ちょっとした違和感もよく考えると面白い。森の断面を見られるのだから。
 
以前、間伐遅れの人工林は「緑のマントを羽織ったペテン師」と喝破した林業家がいた。これはマントを剥がしたところかもなあ。
 
その図を探し出した。
 
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これだ。この図のような断面を感じたのだ。
そして語ったのは、大分県の後藤國利氏であった。
 
マントを剥がされた森林は、その後どうなるのだろう。今更枝は生えないし、太らせるのも難しいと思うが……せめて下層植生が発達したら、生態系としてはマシになるのではないか。
 

2017/10/29

戦国の植林~直虎の時代

NHKの「女城主直虎」を見ていたら、いきなり伐採シーンがあって、その後山崩れが起きたので植林する……という展開となっていた。

 
それがすごいのだ。まずマツを植林するシーンがある。ちゃんと三寸の深さで掘って苗を植えて踏み固める、隣とは一尺半空ける……という作法が紹介されている。
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時代は、長篠の合戦直後という設定だから、1575年である。場所は、井伊谷、つまり天竜地方である。
 
まあ、その時代に木を伐ったら山が崩れるという知識があるのはよいが、その対策として植林するという発想はどれだけあったのだろうか。しかも技術として植林が確立していたのだろうか。
 
もしあったら、吉野で植林が始まった時期とかなり近いことになる。(吉野の植林時期は、川上郷で文亀年間、西暦1500年当たりとされているが、これは元亀年間の誤記であり、これなら1570年当たりになるのではないか、と言われている。)
 
 
そして、その数年後?かに、育った苗木が紹介されている。
 
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これって、スゴイよね。だって、苗木を植えるシーンを撮影した後に、その苗木を引き抜き、今度は数年育った幼木を植え直して撮影したということを意味するのだから(^o^)。
 
写真の背景からして、同じ場所であるのは間違いないが、大変な手間をかけて数分のシーンを撮ったのだろう……でも、どこの山だろうなあ。
 
 
ちとマジに考えると、長篠の合戦後に山崩れが起きて、その後植林をしようとするまでに早くても1年ぐらいかかるのでないか。さもないと苗木の調達が難しいだろう。それとも山取り苗か?
 
そして絵にある寸法まで育つには3~4年はかかるように思う。その間、下刈りしたのかなあ。草生えていないし。
 
ま、こんな意地悪? いや深読みするのも歴史ドラマを見る際には面白いのではないかい。
 

2017/09/27

16年の木材自給率は34,8%

平成28年の木材需給に関する「木材需給表」が発表 になった。
総需要量は7,807万7000立方メートル(丸太換算)で前年比3.9%増加。
国内生産量は2,714万1000立方メートルで前年比8.9%増加。輸入量は5,093万6000立方メートルで前年比1.4%増加。
結果として木材自給率は、1.6ポイント上昇して34.8%。
 
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ま、高くなってバンザイなんだろう。
ここで内容を細かく見るのは毎年やっていて徒労感があるので、止めておく(-.-)。
 
 
ただ簡単にまとめたら、国内生産で増加したのは、ほとんど燃料材165万2000立方メートル(58,9%)のおかげだ。いきなり1,6倍だからね。
つまりバイオマス燃料の生産が爆発的に増えて自給率を押し上げたのは間違いない。
 
 
ところで、一つオモシロイことに気付いた。
 
木材輸入量も少し増えているのだ。輸入量は5,093万6000立方メートル。前年と比較して69万4000立方メートル(1.4%)増加している。
その要因は、やはり燃料材が19万4000立方メートル(16.8%)も増加したことによる。
 
輸入燃料材というのは、おそらく木質ペレットのほかはほとんどヤシ殻(PKS)だろう。今年になって、輸入バイオマスによる発電が急増している。ということは、来年以降の統計では、もっと輸入量が増えるだろう。
 
一方、国内で燃料材の生産するのは、早晩限界に来ると思う。国産が急減して、輸入が急増する……?
 
もしかしたら、それが原因で木材自給率の伸びは打ち止めになるかもね。もしかしたら急降下する可能性だってある。
 
木材自給率にこだわるなら、輸入燃料を抑えることだ。それとも自給率を捨ててバイオマス発電量の伸びを自慢するように切り換えるか。
 
ま、好きにしてください。統計のお遊びだから。

2017/09/24

小論文で林業の将来を考える

拙文(『森と日本人の1500年 』平凡社新書)が、某社の小論文模試の問題に使われたようだ。

農・水産・環境学系コース用の設問である。
その通知が来て、解答例文と解説集が届いた。それに目を通すと面白い。
 
まず引用された拙文。(全部じゃない。全体を知りたい方は、本書を手に取ってください。)
 
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ここで注目してほしいのは、問題の(2)の方。「これからの日本の林業の活性化について,あなたの考えを横書き・800字以内で述べなさい」だと。
受験生に、林業振興のために必要な方策を論じさせようというのだ。
当然、受験生は高校生で、林業に詳しいどころか興味のある人だって超少ないと思うが……。これ、受験勉強の問題として読むのではなく、高校生に林業を考えさせるチャンス、いや解決策を論じさせる事例として捉えると面白いではないか。
 
もちろん、受験生の持つ情報は少ない。だが、課題文で触れている事項から論理的に考えればそれなりに方向性が見えてくるはずだ。
 
そこで、解説文の一部を紹介する。まず「出題のねらい」。
 
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「 
今後必要となるであろう林業への取り組みについて考えさせよう」とは! 
 
 
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 そして、ヒントも示している。
 
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ちなみに解説者は、それなりに林業について詳しいようで、拙著には記していないことも触れて説明していることが気付いた。『森と日本人の1500年』の出版は2014年だが、解説の中には平成26年の木材自給率を紹介している。しかし、この数字が発表されたのは翌年だから、拙著の出版後だ。つまり解説者自ら別途情報を得たのだろう。ほかにも自伐林業を紹介したりもしているのには驚く。
案外、林業マニアだったりして(笑)。
 

2017/09/18

魚梁瀬杉の終焉

高知県馬路村の魚梁瀬杉の伐採が今秋で終わるそうだ。

 
……って、まだ伐っていたのか!
 
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この写真は、おそらく20年以上前に馬路村を訪れて、魚梁瀬杉が残る千本山を登ったときのもの。ここは保護区だが、かつて直径1メートル級のスギが馬路の山を埋めつくしていたという。巨木の間隔が狭いことに驚く。樹齢も300年級ぞろい。
 
豊臣秀吉が、京都の方広寺に大仏を建立、その大仏殿に使ったという曰く付きの巨木だ。
だが、戦後伐りまくって、脂分が多いので腐りにくく土台などに使ったというが、やがて魚梁瀬杉のブランド名で持て囃された。
 
それを魚梁瀬杉という名の銘木として伐りだしたおかげで林野庁はおおいに潤い、一つの村に二つの営林署があったほどなんだが……。
 
実は私が訪れたときは、すでに営林署の一つは消え、広大な何百世帯もの空き家が広がっていた。すでに資源が底を尽き、伐採は止めたと思っていた。
 
が、なんとまだ伐っていたのだ。ようやく今秋をもって伐採中止とするそうだ……。その最後の伐採が58本だという。しかも、、用途はとくに決まっていないので市場に出すそうだが、それなら伐る必要あったのか? 単に売却益が欲しかったということになる。
 
 
こうして、日本の山野から、本当の大径木は消えていくんだな。魚梁瀬杉のブランド名も忘れられるのだろうか。
 
 
 
 

2017/09/13

「みえ森林・林業アカデミー」創設の位置づけ

三重県の鈴木英敬知事が、2019年度に「みえ森林・林業アカデミー」を創設すると発表した。

19年度というのは、平成31年4月だそうだ。ちなみに事務局は、津市の県林業研究所内に置き、キャンパスは全県とか。
 
 
この記事だけだと、「また林業大学校が増えるのか」と感じた人も多いのではないだろうか。この数年で続々と林業大学校が誕生している。たしか、現在全国に19校だったかがオープンしているはずだ。
 
一応、特徴としては新規に就業する人ではなく、すでに林業職に就いている人が再び学ぶ場である。また林業現場の担い手だけでなく、林業経営者を育成するコースも設けることだろうか。つまり林業経営者と中間管理職、現場作業者と役割に応じた3コースに分かれている。加えて、森林・林業施策に通じた市町職員を育てる講座も考えているらしい。学び直しの大学校としては新しいだろう。
 
が、実はそうした林業の学び直しは、鹿児島大学と愛媛大学にも社会人コースとして設けられているわけで、まったくなかったわけではない。
 
 
しかし、これだけでは全体像が見えないと思う。そこで老婆心ながら? 私がちょっと補足説明。
 
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今のところのイメージ。学内にディレクター、マネージャー、プレーヤーの3コースというわけだが……。
 
実は、もっと大きな目で見た3コースもあるのだ。それは、紀伊半島の3県(和歌山県、三重県、奈良県)の役割分担だ。
 
すでに和歌山県は、今年度農和歌山県農林大学校をスタートさせて、主に林業現場の作業員の養成に取りかかっている。
 
そこで、こんな構想がある。
 
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和歌山県は、林業への新規就森者の養成を手がけている。そして三重県は、既就業者のステップアップを手がける学校をめざすわけだが……実は、その後に奈良県が控えているわけだ。奈良県も負けじと林業大学校相当の学校をつくる構想がある。仮称・フォレストアカデミー。それがフォレスター養成を手がける。と言っても国のフォレスターではなく、いわば紀伊半島フォレスターになるのだろうか。
 
もっとも、奈良県はいつ開学するのか、本当につくるのか、まだ姿が見えていない(~_~;)。
 
この構想は、3県の紀伊半島知事会議で合意しているから、絵空事ではない。
正直、こんな県を超えたデカい絵を描いてみせたことに感心している。奈良県、やるなあと(^o^)。別にヨイショしているわけではないが、近来なかったように思う。
 
だいたい隣の県が林業大学校つくったからうちもつくるぞ、という発想が多いのではないか。でも中身は横並びで、生徒の取り合いをするということが多くなる。
 
もちろん、本当に3県でこんな棲み分けができるのか、生徒を集めることができるのか、まだまだ予断を許さないけどね。
それに働きながら学ぶことが現実にできるのか、あるいは高い経営力を学んだのに活かす場を与えられるのか。。。という点も課題だろう。
 
ただ国がつくった森林総合監理士は、単なるペーパー資格になりつつあるのに対して、岐阜県は、新たに地域森林監理士を立ち上げ、現実に使える林業資格と林業人の育成に取り組み始めた。全国画一の人材ではなく、地域密着型の人材である。
 
紀伊半島3県は、同じく地方独立型林業人材を生み出せるだろうか。
 
 
少なくても国は、地方の邪魔だけはしないでくれ。総務省が地域林政アドバイザーなる役職をひねり出し、県を飛び越して市町村に働きかけているのが気になるが……。

2017/09/10

道沿いの皆伐地

先日、電話をいただい林業家から、
「山林を売りたいという人がいて、私は買えないからほかの人を紹介して購入してもらったんだけど、いきなり道から見えるところを皆伐されてソーラーパネルが並んでしまったよ。地元からは文句言われるし、斡旋した俺の身にもなってくれよ」
という話を聞いた。

 
実は、そんな話、各地にある。先日の吉野から大台町に入る辺りには皆伐跡地だけでなく、ソーラーパネルの並んだ山を多く見かけた。
 
まあ、太陽光発電が全部悪いとは言わない。本当は山より放棄農地とか開発を中断した工業団地とかだだっ広い駐車場とかビルの屋上とか……もっと適地があるだろうと思う。
ただ、それでも山が何十ヘクタールかあったら、そのうちの1ヘクタールぐらいにソーラーソーラーパネルを設置するのはしょうがないと目をつぶろう。林業やったって利益はわずかだし、確実に収益を上げる山林の利用方法がほかに見当たらないのだから……。
 
だが、美観ということを考えないのだろうか。緑の山の景色の中に、いきなりテカテカ光るパネルを並べることに恥ずかしさを感じないのだろうか。
 
 
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写真は、大台町(旧宮川村)の道沿い。川の対岸をごっそり皆伐してしまった。こちらの用途はバイオマス発電だそうだ。
 
拡大してみると、再造林はしている。
 
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苗木にツリーシェルターまで被せているのは獣害対策か。ちゃんと育てるつもりがあるという点では、良心的な施業になるのだろうか。。。
 
しかし川に面したところだから、雨が降れば土砂が流れ込む可能性もあるし、何より景観が妙になってしまった。はっきり言って、みっともない。
 
宮川村では、ここ以外にも多くの道沿い皆伐を見かけた。意外と皆伐が多いのである。
 
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道路からの“皆伐展望台”。。。
 
 
それにしても道沿いはなあ。美観というものを考えないのか。できるだけ違和感がないように、人目を避けた場所を選定する配慮さえないようである。むしろ道に近ければ搬出が楽とか考えるのだろう。こうしたところに、日本人の節操のなさ、無頓着・無神経さを感じる。恐ろしいほど景観に興味を持っていない。
 
 
私の経験則だが、地域の景観に気を使っているところは、地域づくりもわりと進んでいる。逆に住民の美意識が弱い地域は、住民の底力というかソーシャルキャピタルも低くて荒んでいる気配がある。美しくない土地に人は頑張って住もうと思わないからね。

2017/09/07

バイオマス白書と生き残り予想

先日の伊勢参りに、吉野から大台町を抜けて伊勢に出る山の中のルートで、もっとも目に止まったのは、山崩れと皆伐地だったことは、当日のブログ にも少し紹介したが……。

実はもう一つ目についたのがソーラーパネルだった。どうやら伐採した木はバイオマス発電に、その跡地はソーラー……という流れでもできているのだろうか。ようするにバイオマス燃料か、ソーラーパネルがもっとも儲かる山の使い道なんだろう。FITの買取金額も、ソーラーよりバイオマスの方が高くなったから、今後もっと参入が増えるだろう。

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ちょうど、バイオマス白書2017(ダイジェスト版)が届いた。
 
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サイトには、バイオマス白書2017の本版 があるので、こちらを見るといい。
 
少し紹介すると、2017年2月時点のバイオマス発電の認定容量は約600万kwだそうである。(現在の発電量はその約半分。)
もっとも、このうち9割が一般木質バイオマスだという。未利用材を燃やすのだから地域振興! と錦の御旗を振りかざす時代はすぎてしまった。
 
一般木材と言っても、主要なのはヤシ殻など輸入燃料だろう。2016年のヤシ殻輸入量は、76,1万トンと前年比1,7倍に急増している。
これは、輸送にかかる環境負荷はもちろん、アブラヤシの栽培が熱帯雨林を破壊している点からも再生可能エネルギーの趣旨に反しているとされる。
 
ただ、私は別の点も考えている。ヤシ殻燃料ばかりに頼っていると、首根っこを輸出国に握られるということだ。現在は大半がインドネシアとマレーシアだが、日本がこれほど買い付ければ必ず価格改定を要求してくるだろう。大幅値上げも有り得る。あげくに燃料高でバイオマス発電所は立ち行かなくなるかも。
 
この白書でも、FITの切れる20年後に生き残れるのは3割程度と見ているようだ。これは楽観的な数字だが、それでも7割のバイオマス発電所は潰れるのである。。
 
その際に取りうる手立ては3つ。
 
一つ目は、国や地元自治体が補助金を出して赤字を補填、生き残りを狙う。
 
第2は、木材以外のものを燃やすこと。一番可能性の高いのは、産廃かな。。。いわばゴミ発電に切り換える。すでに多くの発電所がやっているから。それを未利用材と偽るから犯罪行為なのだが、素直に産廃燃やします、と言えばいいんじゃない?
 
そして最後。簡単だ。発電を止めるのである。発電施設は廃墟かくず鉄にする。それまでに投資額は回収しておく。これがもっとも賢いかも。
 
以前、某テレビ局が「バイオマス発電を扱いたい」と取材を申し込まれたので、こうしたことを説明したけど、結局、企画として成立しなかったのかなあ。。。

2017/08/21

宮域林、空白の700年

先日もお知らせしたが、今度伊勢神宮で講演を行う。そこで、式年遷宮の木材や宮域林について、にわか勉強している。
現在の遷宮に使われる木材はほとんど木曽から得ているが、前回ようやく宮域林からも使うようになったことはご存じだろう。これが700年ぶりと言われる。
 
古代は、神宮周辺の宮域林(神路山)や志摩の伊雑神戸(いざわかんべ)から用材を得ていたのだが、資源が尽きたため各地に移した。戦乱など治安の悪化で搬出できなくなったこともあるようだ。
 
では約700年間、宮域林はどうなっていたのか。その点がちょっと気になっていた。
 
まず驚くのが、鎌倉時代初期の東大寺の大仏殿の再建に使いたい、と重源上人に霊告があったという記録だ。仏教寺院の造営に神宮の木を使っている可能性があったこと。神仏混交が驚くほど進んでいたのである。
実際に伐りだしたという記録はないが、重源や東大寺の僧60人が伊勢参拝した記録はある。お礼参りだろうか。 
 
一方で平安時代から伊勢や志摩では塩の生産が盛んだったらしい。かなりの規模の製塩業が営まれていたのだが、その燃料に近隣の山の木を使っていた。宮域林も含まれる可能性は高いのではないか。
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また江戸時代には宮域林から村落の建築資材や薪炭を得ていたという。何度も禁令が出ているのは、幾度も破って採取されていたのだろう。
とくにお伊勢参りが流行ると、全国から押し寄せる参拝客の接待に莫大な燃料が必要となる。それらは全部薪炭だ。山が荒れるはずである……。
 
大正時代に、洪水対策も兼ねて、森林経営計画が作られた。これによって、ようやく遷宮用材の生産を再びできるようにしようという気運が高まったようだ。
 
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面白い。最初は豊富な木材資源があった山も、ついに伐り尽くして薪炭利用に切り替わり、近代に入って復活が図られるというのは、日本全体の森林史に通じるものを感じる。
 
そんな話も織りまぜようかなあ。
9月2日(土)13時~14時30分
伊勢神宮せんぐう館催事室(外宮)
演題  森林は街がつくった
講師  田中淳夫氏(森林ジャーナリスト)
内容  テーマ「森林を求め、林業を生み出したのは街の人である」
 
※ウェブサイトか電話・FAXでお申し込みください。 当日受付も可能
※聴講無料(別途入館料が必要・大人300円)
 
☎ 0596-22-6263
  

2017/08/19

森林本位制と木本位制

日経新聞に「ビットコインと森林本位制 」という記事が掲載されていた。

 
触りを紹介すると
 
「人類が直面する長期的難題すなわち地球温暖化問題を、新しい貨幣制度で解決できるのではないか、という可能性である。」
「ある「モノ」が貨幣としての価値を持てば、人々はそのモノを採掘または生産しようとする。その対象を、二酸化炭素を吸収する森林にする、というのが森林本位制のアイデアである。金本位制と同じように、森林を正貨として中央銀行が管理し、森林持ち分証券を貨幣として流通させる。」
「そのような世界では、人々は競って植林を行い、森林を増やそうとする。貨幣を得ようとする人々の利己的な利潤最大化行動が、地球環境を改善させる。こうした筋道は、経済学的にはほぼ自明と思われる。コロンブスの卵のようなものだ。人類を救う新しい貨幣システムを構想できないものだろうか。」
 
これを新たに登場したビットコインと照らし合わせることでCO2吸収源としての森林を通貨とする可能性を論じている。森林通貨を増やすことによってCO2削減に繋げる発想だ。
 
なんだ、私が10年も前に考えたことと同じではないか、と思った(笑)。
 
どこに書いたかな、と思って探すと、こちらにあった。古いブログである。2006年だ。
 
 
ここでは木材を通貨にしようというアイデアを披露している。ただ日経よりも地に足がついている(笑)のは、仮想通貨を中央銀行が管理する正貨にするのではなく、まずは地域通貨はして流通させるのだ。
しかも「生木券」と「材木券」の2種類に分ける。生木券は、木が太れば利子が生れるが、枯れたり災害で消えるリスクもある。材木券は加工によって価値が変わる変動相場(笑)。
 
コメント欄の応酬も面白いので読んでほしいが、最後に「森林本位制」にも言及している。
そこでは通貨というよりは「証券化」に触れている。 物理的な貨幣ではなく数値だけで動かすことも可能だから、ビットコインのようだ。当時はビットコインのよう仮想通貨は存在しなかったのだが。
 
ここまで行けば、森林証券の先物市場もほしい。相場師の介入で、森林の価値が乱高下するかもしれないが。ディリバティブのような複合商品をつくってリスクヘッジを図るのはどうだろう。しかしデイトレードは拒否したい。樹木は1日にして成らず、だから。
 
 
ちょっと真面目に考え直すと、重要なのは「森林-材木」に価値を置くことで、土地ではない点だ。つまり土地は所有しなくてもよいし、するにしても金額をずっと落とす。現在の10分の1くらいが妥当ではないかと思う。土地ではなく、上に生えている樹木プラス草本・野生鳥獣などが存在する森林という空間に価値を認める。
 
そうすると、森林土地を持っているだけでは価値がほとんどない。運用して価値をつくらねばならない。土地の価格が安ければ流動性が高まるから、やる気のある人が参入でき、資金も流れ込んでくるだろう。
志ある人は、荒れた森もしくは裸地を安く購入(借用でもよい)し、そこに豊かな森を作ることで価値を膨らませる。いわばベンチャー企業が、創業者等にストック・オプションで株を安く与え、業績を上げることで利益が膨らむというインセンティブを持つように。森林の蓄積価値で儲けるのである。創業者利益ならぬ造林者利益を確保する。
 
う~ん、ちょっと夢見るな。。。。

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