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森と林業と田舎の本

2021/02/18

期待できる?国産材輸出の新鋭「木炭」

岩手県からスイスに高級木炭の試験輸出が始まった記事を目にした。

なんと500キロ。1回の出荷量としては、なかなかのものだろう。高級レストランの炭火焼き料理に使うそうだ。輸入元は日本の七輪も扱っているそうで、高級木炭を探して久慈市の谷地林業に行き着いたという。今後の継続的な輸出も考えて、1社ではなく北いわて木炭産業振興協議会で対応することになったという。

このニュースの一報を聞いて、なるほど、この手があったか、と思った。炭焼きは世界でも突出した技術だ。海外に、日本の白炭(備長炭)とか茶道用の菊炭のような木炭を製造する技術はないだろう。炭焼き技術が世界レベルなのだ。だから高級木炭という加工品を海外輸出するというのは、面白い動きかもしれない。高級木炭は煙がほとんど出ず、火持ちもいい。
岩手は木炭生産量日本一だが、高級木炭の産地は全国にあるのだから、それぞれが輸出先を開拓したらいい。どうせなら七輪とセットで売る。日本料理レストランに限らず、炭火焼きは通用するはず。また一部で人気の飾り炭の様なアートとしての木炭も海外向きかもしれない。

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菊炭(左)と紀州備長炭(右)


なぜ、木炭輸出に期待するかと言えば、政策的に進められている木材輸出がイマイチだからだ。近年日本からの木材輸出が増えているが、扱われるのは低価格のB、C材ばかり。高級材(A材)も製材品も求められない。輸出量は増えても、林業家の利益は小さいのである。

私は、その理由に日本の木材加工技術と商品開発のレベルの低さがあると思っている。特に海外に受け入れられる商品をつくる能力が極めて低い。いや国内向きも一緒で、本当に求められる木材商品を生み出せないのが、日本林業の低迷の理由だろう。

だいたい川上(木材生産)・川中(木材加工)側が、川下(木材消費)を全然見ていない。建築材か?家具か?建具か? 何が高く売れるか考えない。ニーズも把握していないし、高くても欲しくなるものを作り出せない。自分たちの都合のよいものを勝手につくって「買え!」と言っているレベルだ。しかも製材精度もいい加減・乾燥もいい加減だ。 

エンドユーザーを見ていないから原料輸出に甘んじて価格もたたかれる。日本の木材産業の構造的問題だ。たとえば現在の日本木材の主要輸出先である中国は、「高級材はカナダ材を使う」と言ってる。原木の品質が高いからだけではない。カナダ材の売り主は、最終商品を見て輸出してくるからだ。

こう書くと、嘘だ、日本の加工技術は高いと反発が出るのだが(笑)、ここにも勘違いが見える。なるほど、一部の木工職人・家具作家レベルで見ると、日本の技術もなかなかのものだろう。だが、木材を削る技術は高くても、ニーズをつかむ能力は低い。「高くてもほしい」と思わせるデザインセンスもない。独りよがりの「和風」デザインには辟易する。加えて輸出するには、それなりの品質を均一につくり、商品のロットを揃えなければならない。単品輸出ではメリットはないだろう。

なんだかぼやきみたいになったが、そこに木炭という商品が登場したわけである。炭焼き技術なら海外と張り合えるかもしれない……。
ただ近年は、日本の炭焼き職人が中国に行って、白炭の焼き方などを教えている。だから、最近は備長炭と言っても中国産も増えてきた。またおが屑を固めた「備長炭」もある。これらは日本の最高級の木炭ほどではないが、そこそこの品質を誇っている。これらは張り合うには、しっかりしたブランド化と真似されない最高級の製炭技術を確立しなければならないだろう。

ただ……記事をよく読み返したのだが、肝心の価格は書いていない。日本の市場価格より高くできたのか安く設定してしまったのか。そこがポイントなのに(泣)。スイスは世界有数の高物価国だから、少々の高値でも気にしないと思うが。

加えて私が危惧するのは、そのうち林野庁が白書に載せたいとか言ってすり寄ってきて、よし輸出振興しようとか旗を振り補助金をバラマキ始めることだ。そして、とにかく量だ、たくさん輸出するんだ、みたいにせっつかれる。官僚は、輸出量を実績にしがちだから。そうなると価格を落としてでも量を売ろうとするかもしれない。差額は補助金で穴埋めするから、安くてもいいかと。しかし価格勝負になったら、中国産備長炭にかなうわけない。気がついたら高級木炭市場も奪われてしまうだろう。

林野庁は、せっかく芽生えた新ビジネスの芽を摘み取るのが名人級だ(笑)。木炭輸出に補助金が出始めたら、そしてそれを輸出業者が受け取ったら終了だろうなあ。

2021/02/01

フィンランドのイメージと真実

フィンランドPR事務局というところから、プレスリリースが届いた。

フィンランド北辺のラハティ市がEU(欧州連合)からヨーロッパの2021グリーン首都賞を受賞したというものだ。ラハティは、フィンランド随一のグリーン都市で、環境対策におけるリーダー的な存在なんだそうだ。ラハティは、これまでに受賞した都市としては最も小さく、最も北にある街である、としている。

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すでに石炭の使用を廃止しており、2025年までにカーボンニュートラルな都市となり、2050年までには廃棄物ゼロの循環型経済都市を目指している。家庭ゴミの99%以上がリサイクルされ、暖房にはリサイクル燃料と地元の認証を受けた木材が使われる。温室効果ガスの排出は、1990年と比べて70%削減された……そうだ。

これだけなら、なんだかアチコチにある環境都市の宣伝文句ぽいが、私がおもろい、と思ったのは、市内交通をクロスカントリースキーにしようとしている点か。昔から冬の重要な移動手段で、フィンランド人のDNAに組み込まれているという。スキーは、2、3歳の子供のころからやっているし、みんなマイスキーを持っているそうだ。
これを都市内にも持ち込もう、シティスキーを提案する! と堂々と書いている(笑)。スキーを無償貸与して、人々が市のスキーを借りて移動するレンタサイクル的なイメージらしい。

ま、そんなに私がラハティの宣伝をしなくてもよいと思うのだが(^^;)、できれば現地を見たいから招待してくれ(⌒ー⌒)。


フィンランドという国は、とくに日本からは理想の国に見えるぽい。面積は日本列島に近く、人口は530万人程度ながら高福祉が売り物だし、豊かな森林が広がり、何といっても林業が盛ん。日本から林業視察に訪れる人も多いのではないか。林業機械メーカーKESLAも有名だ。林業は国の基幹産業で、理想的に経営されている。それでいて、スウェーデンと並ぶ森と湖の国……。

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もっとも、そんなフィンランドには200万丁の銃火器が登録されており(人口単位でアメリカよりも多い)、さらに25万丁の未登録銃器も存在しているといわれている。フィンランド内務省によると、フィンランド家庭の25%が銃火器を所有するそうだ。
……この情報は、「ゴルゴ13」から得たのだが(^^;)、自然豊かで高福祉国家というイメージとは正反対だろう。なぜ、こんなに銃を所持するのかといえば国民皆兵制であることも関係しているそうだが、実は殺人も多い。

そしてフィンランドの森は、実は原生林でなく、第2次世界大戦後につくられたそうである。それまでは荒れ放題だったものを植え育ててきたのだ。ようやく現在、伐れるほどに育ったのだが、そこでどんどん伐採を進めて森林破壊が問題になっている……なんだか、どこかの国と似ていないだろうか? 覚えはありませんか。

まあ、その国は戦後ようやく育った木を皆伐しているうえに、環境にかかわる賞を受賞する当てもないけどね。悪いところだけ似ているよ。

後半はフィンランドの悪口が並ぶって? いや、本当かどうかわからない。確認するために現地に招待してくれませんか

2021/01/27

貯木場と筏師

友人のカメラマンが、かつて空撮したという貯木場の写真を送ってくれた。

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うわあ、こんなに丸太の浮かぶ貯木場なんて久しぶり、まだあったのか……と思って撮影日を見たら2014年4月だった。それでも7年前には、こんなに丸太が輸入されていたのか。場所は広島県福山市の松永だそうである。南洋材かな。米材の方が可能性あるか。

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これは名古屋港の貯木場の筏師。こちらは2018年撮影だが、まだ筏師が生き残っていることに驚いた。もう、ほとんど消えている存在だと思っていたから。昔と比べて丸太の直径が細くなったから(昔は1~2メートルが当たり前だった)、乗るのが大変かもしれない。大阪も東京も、ほぼ(貯木場が)壊滅しているから、名古屋が大規模な貯木場最後の砦かもしれない。ただ、今はどうなっているか。

この技術も景観も、そのうち「記録」だけになるのかなあ。

もう日本に丸太で輸入される木材は極めて少なくなっている。ロシア材も南洋材も、激減した。米材の一部とか、スポット的な大木の輸入分ぐらいだろうか。輸入するのは製材など製品になってからというのも多いだろう。それに貯木場で水に漬ける必要もだんだんなくなっているからなあ。

20年くらい前に東京の新木場で、ラオスヒノキを浮かべている貯木場を見たが、それが最後だったのではないか。

材木店も減っている。かつて大阪の材木店を見て回ったことがあるのだが、それから10年ぐらいしてから再び歩くと、ほとんどが消えていた。廃業したのか、移転したのか。突然訪ねて、なんだかんだ話を聞いて、何十年も寝かせている銘木を見せてもらったものだが、今はどうなっただろう。

 

 

2021/01/19

知らなかった農林系の専門職大学

専門職大学(と、専門職短期大学)という教育機関を知っているだろうか。

2017年5月24日の学校教育法の改正によって設けられた実践的な職業教育を行う新しい高等教育機関のことである。従来の大学(と短大)とは異なり、実習や実験等を重視した即戦力となりうる人材の育成を目指す……とある。一方で既存の大学校、専門学校などとも違って、各学校の長所を取り入れて、理論にも裏付けられた「高度な実践力」「豊かな創造力」を身に付ける……と謳っている。

実際に設置が始まったのは2019年以降。その分野はいろいろあるが、2019年に開学したのは高知リハビリテーション専門職大学、国際ファッション専門職大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学。20年には岡山医療専門職大学、開志専門職大学、情報経営イノベーション専門職大学、東京国際工科専門職大学、東京保健医療専門職大学、びわこリハビリテーション専門職大学……その中に静岡県立農林環境専門職大学(と短大)がある。農林分野では第1号だ。愛称は「アグリフォーレ」。アグリとフォレストの合体か。なんとなく笑える。昨年4月オープンだから、コロナ禍の中での船出だったよう。

静岡県は、実習・演習を中心とした「実学」重視の教育研究を展開する……とあるが、これって大学校や専門学校などの教育理念にもふんだんに使われる言葉だ。いや最近は、大学だって地方では「実学重視」を掲げている。そして地域に貢献とか……そう言わないと存在意義が疑われるらしい。いま一つ、専門職大学の差別化ができていない。

「アグリフォーレ」は、静岡県立農林大学校から独立させて設立したようだ。大学校はなくならないが、生徒募集を止めているから遠からずアグリフォーレに大学校を吸収するのだろう。ちなみに、静岡県には静岡大学農学部もある。ちなみに、私はここの林学科を卒業している。ちなみに、今では当時あった林学科も林産学科も消えて、かろうじて生産資源科学科の中に地域生態環境科学コースと木質科学コースとして名残がある。そういえば静岡には静岡天竜林業高校もあった。こちらは2014年に廃校・統合になったが……。森林科は残されたようだが。教育機関はどんどん変遷を重ねているのだ。

さて、教育内容を見ると、やはり農業が中心で畜産などが目立つが、林業コースもあった。せっかくだから林業教育のカリキュラムを見よう。

林業コース生産理論科目
森林計画・政策論 造林学 森林土木学 木質科学概論 木材生産システム
林業コース生産技術科目
演習林実習 生産マネジメント実習Ⅰ(林業) 生産マネジメント実習Ⅱ(林業) 企業実習

森林計画や造林など、林業生産分野における基礎的知識を座学で身に付けるとともに、県有林などで実習を行い、森林管理の実践力を養います。
トラクター、ドローン、グラップラーなどの林業機械等の実習、また林業経営体における長期企業実習も行います。

なんだか各地の林業大学校カリキュラムと似ている……。企業実習って。どこで違いを出すんだろう。

ただ学長の鈴木滋彦氏のプロフィールを見ると、名古屋大学大学院農学研究科を修了後、静岡大学農学部林産学科に奉職し、木材の有効利用、特に木質材料、森林バイオマス、セルロースナノファイバーに関する研究に従事、とあるから、林業系の人のようだ。学長が静大の講師を勤めていた期間と、私の静大在学期間は重なっていることになる。学科は違うけど、講義を受けた可能性だってある。
ほか、講師陣に平岡裕一郎准教授の名が載っている。森林総研から来られた森林育種分野の方のようだ。

まあ、まだ開学1年経っていないうえにコロナ禍だ。どのように授業をしたことか。

各地の大学、大学校が改組されている。従来の仕組みでは社会と齟齬が生まれているからだろう。それはそれでよし。その中に専門職大学という新たな組織が生まれたのだから、今後農林系を学びたい人にとっては選択肢に入れられるはず。なお山形県でも農林系の専門職大学の設立に動いているそうだ。こちらにも林業コースはできそう。

それにしても、あまりに専門職大学は世間に知られていないね。まあ、専門職大学というネーミングがダサすぎるけど。文科省、もう少しセンス持てよ。。。まあ単に「大学校」「専門学校」を「大学」にして見映えよく学士を与えるようにしただけ、というのならしらける。健闘を祈りたい。

 

2020/12/08

林業界に脱ガソリン車、脱石油の流れはくるか?

政府は、国内の新車販売を2030年代半ばにガソリンだけで走行する車を禁止する目標を設定する方向で調整に入ったというニュースが流れている。ようは電気自動車とハイブリッド(電気・ガソリン併用)車だけしか販売しないということだ。

そこに東京都の小池百合子知事が、都内で販売される新車について、2030年までに「脱ガソリン車」にする方針を表明した。30年代半ばではなく、30年である。ちなみに二輪車も35年までに脱ガソリン。さて国はどうする?(笑)。都の後塵を拝してはみっともないぞ。

そう言えばガソリンスタンドがどんどん減っているが、単に人口減というだけでなく電気自動車が増えたらガソリンいらないし、ハイブリッド車は燃費がいいから、あんまりガソリン売れない。過疎地ではガソリンスタンドが近くになくて不便だが、それがより電気自動車切り換えを後押ししそうだ。
そういやノルウェーでは、街角の駐車場兼電気スタンドでは、無料で充電できるそうだ。つまり燃料費がタダになる。こりゃ、電気自動車が普及するはずだ。

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ちなみにイギリスは30年でガソリン車販売禁止、35年でハイブリッド車も禁止にするそうだ。フランスでは両方とも40年までに禁止海外の動きも急だ。
なおヨーロッパ最大手の石油会社BPは、2030年までに石油・ガスの生産量を40%削減すると発表している。新たな油田ガスの採掘は行わないとも宣言している。石油会社が石油生産をほぼ半減するというのだから、脱石油時代がくるのは間違いなさそう。

で、気づいたのだが、林業機械はどうなるのだろう。脱ガソリン(脱ディーゼルも含む)の中には入っていないのだろうか。あんまり話題に上がっていないようだが、電動林業機械の開発なんて聞いたことがない。それとも欧米では行っているのか?

電動車に切り換えるにしても、電気でどれだけの馬力が出せて、駆動時間はどれぐらいか、と考えると結構な課題だ。チェンソーだって電動になるかもしれない。それにモーターで動かした方が静かで振動も減って健康にいいように思う。林業機械も、もくもくと排気ガスを出しているのを目にしているが、これがなくなるならバンザイだ。

仮にガソリンに固執しても、燃料売ってる店がなくなればどうにもならないだろう。機械化林業、スマート林業化と言われているわりには、そうした点に触れているのを目にしたことがない。

特殊車両だから……といういい訳はやめてよね。甘やかしてはいけない(⌒ー⌒)。

2020/12/06

「ロシアの丸太輸出禁止」報道

日経新聞によると、ロシアが2022年から丸太の輸出を禁止する可能性があるそうだ。プーチン大統領が今年9月に、国内の林業育成を目的に22年1月から針葉樹など丸太輸出を禁じると述べたという。

まあ、それはさもありなん、と思ったのだが、この情報に対する分析は、日本はロシア産丸太の輸入量が約11万立方メートルにすぎず、最盛期の1970年代のわずか1%程度だから影響はないだろうとしている。

ただ中国が大量のロシア産丸太を輸入していて、それが無理となったら代替に日本産丸太を調達するようになるのではないか、という予測を掲げた。もともと中国では、輸入丸太を加工してフェンス材や家具などにして再輸出する産業があるので、製材では困るのだ。あくまで丸太を求めるだろうから。

その予測が間違っている、というのではない。私でもそれは考える。ただ言い換えると、日本は丸太を輸出するのね、ということだ。

これまで木材輸出国は、徐々に丸太輸出から製品輸出に切り換えてきた。丸太の次は製材、さらに合板や集成材などの製品、そして可能なら家具などに二次三次加工して最終商品の輸出に向うのである。なぜなら、その方が利益率が高く、国内の木材産業育成にもつながるからだ。また丸太のままより輸出量は減るから森林保護にもなる。日本もかつては輸入木材を加工して再輸出して稼いできた。

すでにロシアは10年以上前から関税をどんどん上げて、実質丸太輸出を縮小させてきた。(だから現在、日本にはほとんど入ってこない。)

今回の禁止措置(予測)は、その最終段階である。ほかにインドネシアも1980年代より丸太輸出を禁止して、今ではインドネシア製合板や家具輸出に切り換えている。ベトナムも、木材木加工業界が勃興して稼ぎ頭になっている。その原料に日本の木材も含まれる。

日本だって、白書には利益率の高い製材を増やすべきという意向を記している。

が、実際に輸出されるのは丸太ばかり。それも安値のBC材中心だ。育林経費を取り返せるような金額ではなく、ほとんど山に還元する利益は出ていないという。(素材生産業者は儲かる。補助金がつくからであり、真っ当に自力で稼ぐわけではない。また輸出業者と港湾関係も稼げるだろう。)今回も、ロシア産の代替として国産丸太を喜んで輸出するということは、加工は諦めて原料輸出に特化するということか。完全に原料輸出国になる。

世界の産業発展段階の逆を行く日本。これぞ潮流の逆張りか。すごいぞ(笑)。日経新聞も、淡々と報道しているが、危機感ないのか?

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富山港で見たロシア材(2009年)。わりと細くて、そろそろシベリアの木材資源枯渇を感じさせたのを覚えている。

 

2020/11/28

「林業の専業化は不可能」論

また林政審議会の話だが、今月開かれた界では、「森林・林業基本計画」の改定がテーマだったようだ。

そこで林野庁側のたたき台として多角経営というか、副業との抱き合わせ例を紹介したようだ。資料にこんなページがあった。

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そこにあるように副業の例として「露地ナス栽培やキウイフルーツ栽培~つまり農業」「タケノコやサカキ収穫」「土日はカフェ」「林政アドバイザー」「アウトドアガイド」「薪や木工品」といった複合経営の事例を紹介した。

すると出席した委員(自治体首長)は「林業と他の仕事を掛け持ちしても成功している人はわずかで、これで所得を上げるというのは邪道。本業がきちんとあることが大事」と発言したそうである。ようするに林業に専念しろ、と。

ああ、こういう発想が今も根強いのだな、と私はまた「絶望」したのである(笑)。

『絶望の林業』の「希望の林業」の章で触れたが、50年100年のスパンでサイクルが回る林業で、「林業専業」にこだわるのは馬鹿げている。もともと歴史的に林業を専業とする林家はほとんどいず、農林複合などが当たり前だった。戦前までの日本がそうだった。そして現在生き残っている林業家もほとんどがそうだろう。今風の6次産業化なんてのも基本は「林業だけじゃダメ」だから考えつかれたのである。そもそも百姓とは農業だけに専念する職業人ではなく100の職の集まりだった。その中には山仕事も含まれていた。
ところが木材景気に沸いた戦後の一時期に「より効率」を求めて分業⇒専業へと突っ走った。林業から農業、畜産……などを切り離した。結果はいずれの産業も衰退してしまった。

林業を専業化して成功しようと思ったら、広大な面積(たとえば1万ヘクタール以上)の山林を所有するか、あるいはアーボリカルチャーとか大径木伐採のような特殊技能を磨いて高付加価値の「オンリーワン」になるしかない。そして仕事を求めて全国を飛び回る覚悟がいる。狭い地域に特殊伐採や大径木伐採の需要はわずかしかないからである。もし自分は林業(の中の一部の作業)しかできないという人がいたら、それは雇われて……下請け化するしかないだろう。自分の意志で林業はできなくなる。

だが全員がそれをめざすのは非現実的だし、そんなにたくさんの技能者がいたら破綻するわけで、大多数はもっとしなやかに平均的な技術を身につけるだけで多様な職種を抱える方が理に適っている。林業家はジェネラリストであるべきだろう。加えて「ウィズコロナ」時代は副業の時代であり、一つの仕事に固執するのは絶滅へ向かいかねない。林業も、多くの職業の中の一つ、副業のアイテムだ。

しかも多様な職を展開することは、リスクマネージメントになる。一つの職が失敗した際に、生きていけなくなる。居酒屋だけやっていたら、コロナ自粛で経営危機になる例を目の前で見ているのだから。

また「林業」ではなく、「山村」の維持の点からも多様なライフスタイルと多角経営が行うことが人口減社会では重要となる。

専業指向は日本の悪しき意識ではないか。違う他者を排除するムラ社会から、多様な人材を受け入れる社会を築くためにもさまざまなスタイルが必要だろう。

 

※この論考、もう少し練りたい。

 

2020/11/20

盗伐カルテルは、成長産業!

日本の山では、相変わらず盗伐がのさばっている。これまでの盗伐告発は宮崎県が中心だったが、最近は鹿児島や熊本など周辺県でも告発が相次ぐようになってきた。さらに広がりそうだ。盗伐は全国で起きているのだから。
盗伐の犯罪性は、単に他人の山の木を勝手に伐ってしまう窃盗というだけでない。数十年育ててきた山主の気力を奪う仕業なのだ。しかも切り方は乱暴極まりなく、土壌も引き剥がすから、再び造林するのも至難の業。そして剥き出しの土は、雨で流れだすだろう。環境破壊であり山崩れなどの災害を誘発する。その点からも重大犯罪だ。にもかかわらず、取り締まりは遅々として進まず、わずかに捕まった犯人も、執行猶予のつく大甘の刑罰。だから頻発する。

Img001_20201120231901宮崎県の盗伐を報じる地元紙

そんな疑問が広がる中、こんな記事を読んだ。主に中南米で激化している盗伐のルポだ。盗伐とは世界レベルのものであることを伝えている。

木材マフィア ラテンアメリカの森を侵食する

ここにはコロンビア、ホンジェラス、メキシコ、ペルーの大規模な盗伐が報告されている。コロンビアの伐採規制を行う当局が、違法木材の供給者になっている事実や、ホンジェラスでは盗伐が産業として成り立ち、マフィアのボスが木材流通チェーンを経営していること、メキシコでは麻薬カルテル(マフィア)が盗伐事業に乗り出していること、ペルーには元警官の盗伐ネットワークがあること……などがルポされている。

もちろん盗伐は中南米だけではない。中国や東南アジア、シベリア、そしてヨーロッパでも盗伐が起きていることを伝えられている。

こうした記事に目を通していると、すでに国家の産業に盗伐が組み込まれていることを感じる。それも巨大産業なのだ。そして、腑に落ちた。なぜ日本の盗伐がなくならないのか。それは世界中で起きている事情と同じだからだろう。

まず不思議というか興味深いのは、世界中の林業関係者が「木材価格が下落して儲からない」というのに、違法伐採すると木材が儲かるということだろう。
何も盗伐業者が、木材を高値でさばけるルートを持っているわけではない。それどころか違法ゆえ価格は安値で扱われているはず。ただ莫大な量を動かすから儲かるのだろう。しかも本来は対価を支払うべき森林所有者への還元を無視して、再造林もしない。仕事は荒っぽく済ませる。また環境破壊に対する防止策も何も取らないことで経費がかからないから利益が上がる。
言い換えると、通常の方法では利益を出せないから、違法性を利益にして儲けるのだ。しかも証拠を消すため、伐採後に森に火を放つらしい。災害が起きても、当然ながら賠償することもない。

そして摘発されないのは、地域社会(ときに国家そのもの)と密に連携しているからだ。盗伐された木材であっても、それを欲しがる業者がいる。違法な木材であっても取引すれば流通業者も利益を得るし、製材業者も、加工業者も、建設業者までビジネスとして動く。輸出もするから貿易業者も儲ける。最後は施主も、違法木材を使った方が安価になるなどの利益を得る。適法では手に入らない貴重な木材を得られるのも魅力だ。その間には警察機構や行政、そうして政治家まで利益を得る構造がつくられている。
ちなみに日本の輸入する木材の約1割は違法性の懸念があるという。盗伐された木材は日本をお得意様にしているのだ。

そして日本の盗伐も、基本的な構造は一緒だ。儲からない林業も、違法にやれば儲かるから参入者が絶えない。そして、それは政治家や行政組織、そして産業構造に食い込んでいるからやたらと取り締まらないし逮捕もされない。盗伐してでも木材を出さないと、木材産業(伐採業者から製材、建築まで。さらに木材輸出やバイオマス発電まで含む)が立ち行かなくなっているのだ。
自治体も、盗伐によって木材生産量が増えたら、地域経済の活性化することを期待する。「林業を成長産業にする」という目標を掲げる国にとっても、盗伐を取り締まることは、自ら目標達成の足を引っ張ることになりかねないから目をつぶる。さらに業界・政界の圧力があるのか、警察機構も摘発に及び腰だ。ただでさえ仕事を増やしたくないのだから。

かくして日本にも盗伐マフィアと盗伐に関わる各業界のカルテルが生まれている。違法であっても、みんなが利益を得られる。損をするのは森林所有者だが、実は彼らも「林業は儲からない」と思って山を放置してきたから、被害意識が希薄になりがちだ。ただ物言わぬ環境だけが破壊されていく。いつか大災害を引き起こすかもしれないが、先のことは考えない。

もはや盗伐の成長産業化をみんなが後押ししている状態だ。今が良ければいい、という空気が蔓延している。将来、森林の破壊がもたらす厄難より、今、自分たちが利益を得ることを優先した結果だ。世界の盗伐事情を見ていると、日本の盗伐の謎部分も透けて見えてくる。

ただ、新たな動きも多少あるそうだ。宮崎県では、警察が被害届の受理をかたくなに拒み、仮に受理してもすぐに不起訴にしていたのが、急に盗伐に関して被害届を受理しだしたのだ。被害届を出していない人にまで提出するよう促しているという。検察のトップが交代したことと関係があるのかもしれない。その本気、続けていただきたい。検察までが盗伐産業に組み込まれることがないように。

 

 

2020/10/24

紀伊半島の森林経営管理に適した目標林型 ?

紀伊半島3県共同研究実行委員会というのがあるそうだ。

そして、「紀伊半島の森林経営管理に適した目標林型の類型化と施業指針の作成に関する公募」というのをやるそうだ。

う~ん。なんだ、こりゃ。

ちなみに「紀伊半島3県共同研究実行委員会」とは、紀伊半島3県(三重県、奈良県、和歌山県)、近畿中国森林管理局、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所を構成員とし、紀伊半島3県の森林・林業の発展に寄与する共通課題(人材育成・担い手確保、林業省力化、森林管理等)の解決を目的に設置された機関……だそうだ。

そして効率的な森林整備を推進するため、目標林型の整理や経営管理に適した森林の判定基準・施業指針づくりに向けた調査・研究業務の公募を行うのだそうである。イマイチわからんが……。そして事務局は和歌山県が行っているそうなので、そちらのサイトに案内が掲載されている。

紀伊半島の森林経営管理に適した目標林型の類型化と施業指針の作成に関する調査・研究業務

2.委託料  上限600万円(税込)

3.委託期間 原則契約日から令和3年3月31日までとするが、実施計画の内容に応じて最大で令和5年2月28日まで、委託期間を設定することができます。

要項やスケジュールなどは、サイトを見てほしいが、600万円かあ。目標林形を決めるための調査研究?

ところで、こんな募集というか、クラウドファンディングもあった。

荒廃した奥地人工林を『低コストで管理できる森林』へ!

こちらは北海道大学が和歌山県に持つ研究林で、人工林の管理する研究をしている大学院生が、里山や奥地の人工林は天然林にもどすのがイチバンだろうと思いついて、間伐をどれぐらいしたら天然更新で広葉樹などが浸入してくるかの研究課題をぶち上げた、しかしその研究をする資金(主に作業道づくり?)が足りないので募集するというものらしい。

大学院の研究にクラウドファンディングかあ。研究林なら大学内でなんとかしてほしい気もするが。いっそ上記の公募の600万円を獲得したらいかがかな。

ともあれ、なんだか紀伊半島で似たこと言い出している。何より奈良県の立場が浮いているが、「恒続林」、つまり針広混交林づくりを指向していることは以前から幾度も紹介してきた。その研究をすべきではないか、と先日のブログで書いたばかり。まあ、研究成果を奈良県がいただければ、それに越したことはないが。

これ、偶然? みんなバラバラにやってるの?

 

2020/10/19

尾根に並ぶ風車と発電規模

これ、和歌山県から大阪南部の上空。

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尾根筋に白く点々と立っているものが見えるだろう。これは風力発電の風車のよう。

ここまで並んでいるのは思わなかった。数えてみると、その時は48まで見つけたが、もっと周辺にありそうだ。

最近は風力発電公害を言われるようになったが、私は風力発電にそんなに忌避感はない。原子力はダメ、石炭火力もダメ、ダムを築く水力発電もダメ……と言い出すと、もはや発電方法がなくなってしまう。そして私は木質バイオマス発電の危険性を訴えている立場だ。
その中で太陽光発電や風力発電はマシな方だと思っている。ただ立てる場所と規模だろう。風力発電は、景観が悪くなるというのは主観的だが、低周波音を出すとか、鳥類の衝突事故が多いことが問題となっている。また台風などの強風で壊れるケースもある。ただ人が滅多に近づけない尾根筋なら低周波などはさほど心配なくなるのではないか。

管首相……(カン直人である、現在のスガ義偉首相ではない)は、尾根筋に林道を伸ばして、そこに風力発電を築くことで林業と電力の複式経営を提案していた。私はなかなか面白いアイデアと感じた。森林経営を多角化することになる。尾根筋の林道で集材等施業をしつつ、風車の保守点検もできる。また電力収入で森林整備を支えられる。そりゃ、いくつか難関はあるだろうが、政治力と技術力があれば解決するだろう。

ただ、上記の写真ほど規模が大きくなるとなあ……。愛媛に行った際に、見たかったものの行けなかったものの一つに内子バイオマス発電所があるが、ここは熱を回収して発電に回す方式で、効率を30%台まで高めているそうだ。しかも、当初は5000キロワット級の規模を予定していたが、地元からそれだけの燃料材を集められないと注文が入って、持続的に経営するために半分以下の2000キロワット級に下げたという。収支は悪くなっただろうが、地元の意見を聞いて小規模にするという点では、模範的な木質バイオマス発電所だろう。

何事も、持続的な規模というものがあるのだよ。山の上の多数の風車に何か不都合があるとは聞かないが、慎重にね。

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森と林業と田舎