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森と林業と田舎の本

2023/01/11

サバとスギ

最近、焼きサバが食べたいと思ったときに頭に浮かぶのは「ノルウェー産はないかな」ということ。もはや国産サバよりノルウェー産サバの方が大きくて美味しいようなイメージになっている。同じことはサケでも思う。ノルウェー産アトランティックサーモンが美味い。

そして国内漁業では、サンマやサケが記録的不漁が続く。イカも獲れないらしい。というわけで、漁業について調べてみた。

まずイワシやサバ類、カツオ、スケトウダラなどの漁獲量は堅調のようだ。すべての魚種が獲れないわけではない。

ところが農水省の用途別出荷量調査によると、イワシの「生鮮食用向け」は、14.1%にすぎない。「魚油・飼肥料向け」が40.8%で最も多く、次いで「養殖用または漁業用餌料向け」が34.4%となっている。(2022年10月)
サバの「生鮮食用向け」は13.8%と低く、「養殖用または漁業用餌料向け」が45.3%、缶詰用が27.6%。

これだけ低いとはびっくりなのだが、実は「イワシとサバの生鮮食用向け」は、冷凍して海外へ輸出されている量も少なくないのだという。アフリカ南部の国では、日本のサバが家庭料理として好まれているらしい。そして日本は、ノルウェー産サバを輸入しているわけだ。ちなみに魚介類の自給率は2021年度が59%。これは養殖も入る。

小さなイワシやサバは魚市場では買い手が付かず、缶詰原料や冷凍加工品に回す。魚価は安くなる。そこで漁師は、たくさん水揚げすることに血眼になる。安い魚価を量でカバーしようというわけか。でも資源が枯渇して、もはや量も獲れなくなってきた。
国内水揚げ魚類は小さくて味もイマイチで、価格は安い……このイメージがついてしまったか。

ところで漁業のサバと似ているのが、林業のスギだ。

国産材のは中でもスギは、今や建築材や家具用材にはならず、合板やバイオマス燃料のように安い用途ばかりになっている。高く売れる建築や家具用の木材は輸入に頼る。だって品質が違うもの。ノルウェー産の魚の方が美味いと思うのと一緒だ。

一方で林業家は、材価が安いから大量伐採して日銭を稼ごうとする。まあ、そのうち資源は枯渇して伐る山がなくなるかもしれないけれど。ただ雑木ばかりが太る。それを森林飽和と呼ぶ。ただ雑木を高級材として使う頭はなく、またバイオマス燃料用か。イワシやサバを飼料に回すように。水産業と林業は似ていると言われるが、双子のようだ。(ただし、漁業の方が一歩先を行く。)

年初から、暗い話題を振っておきました(笑)。

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魚市場のセリの様子は見ていて楽しいんだけどねえ。

 

 

2023/01/08

恒続林という言葉考

メモ。恒続林という言葉について考えた。

私が恒続林を知ったのはいつからだろうか。

学生時代に読んでいたと思うから、少なくても20代には意識していたはずだ。それを文章にしたのは、2011年発行の『森林異変』が書籍では最初だろう。最後のまとめで取り上げた。その前から記事にはしていたと思う(講演でも話していた)ので、2000年代始めには勉強をし始めたと思う。『森と日本人の1500年』では、もっと詳しく触れた。

もちろん、基本はアルフレート・メーラーの『恒続林思想』である。ただこの本は「思想」と訳本タイトルにつけた通り、森と林業に対する一種の考え方、哲学に近いと思っている。具体的な施業技術ではないのだ。実際、さまざまな流派があるようだ(笑)。

私自身は、文字通り「恒(常)に続く森林」と捉えていて、「森の状態を壊さずに木材生産をする林業」と大枠で捉えている。メーラーの思想や、その前からの森林美学(ザーリッシュ)、ガイヤーの生態学的林業など中欧で培われた森林管理技術と林業形態はもちろんよいが、そうでなくても森をなくさない林業は各地にある。日本にもある。というか、日本では近世より行う地域はあった。

たとえば吉野林業は皆伐を行うが、一カ所の面積はそんなに広くない。江戸時代は1畝、2畝単位だし、せいぜい1町歩までではなかったか。なぜなら人力でそれ以上広く伐り搬出するのは大変だったからである。それゆえ山林土地の所有も細分化していた。
そして、すぐに植え付けしたから森は再生に向かった。それもスギとヒノキを混交させて植えた。だから広い範囲で見れば、伐採は森の中の一部であり、吉野も森林状態を維持する林業だった。
また広葉樹もかなり多く残していたようだ。全部伐らないのである。それは広葉樹も必要だったから。当時の道具や建築には広葉樹材も使われていたためだ。それに広葉樹を生やすことで森林土壌を豊かにして森林を守る技術でもあった。

さらに雑木林を交えた林業も、抜き切りが基本だから恒続的な森林維持的林業だった。針葉樹と広葉樹の混交は普通に行われていた。また樹種転換を世代ごとに行う林業もあって、最初はマツで、次にスギで、最後にヒノキ……かと思いきや、間に広葉樹もかさんでいたりする。

さらに今はアグロフォレストリーという概念になった農林畜産複合だって、実は森林持続を前提としている。森の中で農作物を栽培し、牛豚などを飼育するのだから。

そうした多種多様な草木を育み、森の状態を壊さないように森から幸(木材のほかにもいろいろ)をいただく林業を示す言葉として「恒続林」を使いたい。ただ「恒続林」では森の形態と勘違いする人もいるので、林業の一つという意味では「恒続林業」とした方がよいかもしれない。

そんな広い意味で私は「恒続林」という言葉を使うのだが、こうした「大枠としての恒続林」は、今後林業の主流になっていくと思う。ならねばならないとも言える。SDGsに則したテーマでもある。

それを完膚なき状態まで破壊したのは、戦後の林野行政だと思っているが、それでも現在も各地に頑固に守っている、あるいは新たに取り組んでいる林家はいる。ただ本人たちは、それを恒続林だとか認識していない例も多い。自らの思う森づくりを進めた結果なのだ。

ただ世間には狭義の、というかガチガチの信者的に「恒続林?それはメーラーの唱えた林業技術だ」と決めつける人もいる。だから、ほかの独自流派の「恒続林」を認めない。一神教である。そういう人の描く林業世界を、カルト林業、世界統一恒続林協会(教会)と呼んであげよう(笑)。

また「林業とは、皆伐して一斉造林するのが正しい姿」と時代遅れの法正林を金科玉条とする林家も日本には多い。たかだか戦後生まれなのに、これが正しいと思う林家もカルト林業家だ。

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林野庁の示すこの「循環型林業」図も、実は全然循環していない。皆伐して、その後植え付けても森らしくなるには20年はかかっている。伐期を60年としても3分の1が森でない状態だ。これで循環? 20年間の非森環境の間に、動植物の生態系はかなり崩れただろう。残りの40年で元通りになるか怪しい。どんどん劣化していくだろう。つまり螺旋階段を降りていくような林業。

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イメージ的には、こんな森林。見事に混交しているが、植えたスギは100年生だ。放置林ぽい? そう見えるとしたら、あなたもカルトに犯されている(笑)。

 

2023/01/07

混交林づくり

新年の朝日新聞に、こんな記事が載った。

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同じ内容の記事は昨年にも掲載されたかと思うが、その裏話か。ここで紹介されているのは、秋田県の「清太郎さんの森」である。佐藤清太郎さんが、3本巣植えという植林方法を編み出したのだ。簡単に言えば、植える本数を減らして切り捨て間伐をしないため、3本のスギ苗をかためて植える。すると、そのスギはお互いを助け合って育ち、また周辺は空間が空くので広葉樹が侵入して来る。結果として針広混交林が出来上がるのである。

私は、この木材生産のできる混交林づくりという点で興味を持っていたのだが、秋田は遠い。と思っていたら、なんと同じ方法を大分県の国有林で試しているという。ならば、そちらにお邪魔するかと昨秋行ってきた。臼杵林業の後藤さんのおかげでアポイントも取れたのである。

こちらは混交林づくりというより風害に強い森づくりの発想で真似たそうだ。

すると、こんな感じ。まだ10年程度だ。

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うーん、残念ながら混交林ではないし、成長もイマイチね(^^;)。根元付近を覗き込むと……。

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思うに、九州だから成長がよくて、間隔が狭すぎたのだろう。同時に、植えた人が目的をよく理解していなかったのではないか。急峻な地形だから3本をまとめて植えるのも難しかったうえに、3本の苗の間隔や配置を十分に計画を意識して行わなかったように思える。

針広混交林づくりは、植えてつくろうとすると難しいと言われる。放置したら勝手にできる例はたくさんあるのだが。

これからは混交林林業の時代が来ると私は勝手に思っているので、これからも事例を追いかけていくよ。

 

 

 

 

2022/11/29

スギ林にセンダン植林

大分行は、結構疲れたが、いろいろ見学してきた。ここで一つ公開しておこう。

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臼杵林業のスギ林で見た、ツリーシェルターを使って植林されていた。植えたのは、センダンである。早生樹の一つとして林野庁イチ押しの樹種だが、それをこんな植え方しているとは。

センダンは広葉樹ながら20年で樹幹30センチ級に育つといわれ、しかもケヤキに似た材質で木工素材として使えるから高価が期待されている。

が、実は硬すぎて(広葉樹は早く生長すると硬くなる)、木工には使いづらい面もあるのだ。しかも育つのは水分が多くて明るい場所。しかし明るいと日射のために乾燥しがちだ。適地が難しい。だから耕作放棄地などが向いているのではないか、とされるのだが……。

あえてスギ林の中。全体に暗いので育ちが遅くなるだろうから、材質は柔らかくなるかも、というわけだ。別に早く育たなくてもいいし、と開き直ると面白い。またセンダンは3つに樹幹が分かれがちなので、直材を取るには「芽かき」作業が必要とされるが、なんと暗いところでゆっくり育つと、ほっといても真っ直ぐな幹になるというのだ。

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おまけにスギ林の針広混交林化ができる。そのうち上層木のスギを伐採搬出したら、明るくなって育ちがよくなるが、その頃にセンダンを収穫できたら、針広混交林の木材生産……恒続林も可能になるのでは、と期待するわけだ。

早生樹をこんな使い方するのもアリかも。

2022/11/22

林業振興と木材需要

またまたメールでの「質問」が来た。今回は大学生。

なんでも、大学生チーム対抗のビジネスコンテストがあって、そこの命題が「山で働く人を2倍にする」ビジネスの提案だそう。そこでメール主のチームは「木を食べる」というアイデアを出した。それに対して、どう思います?アドバイスを、というものだった。

果たしてコンテストの参戦者に私が口を出すことがよいのかどうかわからないが、とりあえず私の思うところを記した。どんな返事かはお預け(^^;)にしておくが、ここで根本的な疑問が。

なぜ「木を食べる」商品開発が、山で働く人を増やすのか。いや、増やすと思うのか。

それに関しては、何の疑問も持っていないようだが、私には両者がつながらない。おそらく「食べる」という新たな木の利用法を広めたら木材の需要が増える。木材の需要が増えたら山で働く人も増えるだろう……という連想なんだろうが、ちと、おかしくない?

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これは、今回のケースだけではない。木材需要を増やすことが林業振興、地域活性化に役立つという発想は林業界の上から下まで行き渡っており、まさに林野庁がもっともオシている政策である。とにかく木材を使おうよ、価格や使い道はどうでもいいから……。
木造ビルとかCLTとか、バイオマス発電だって、木材を燃やせば需要が増えるよ、というのが発想の原点だろう。あげくに需要はまだないのに、木材生産だけを増やしてしまっている。

アホかいな、と思う。

木材需要が増えたとして、今いる山で働く人は、若干忙しくなるかもしれないが、それで雇用を増やすだろうか。むしろ木材生産が先に増えたら木材価格は下がりかねないし、伐るのに適切な木がなければ無理に伐って森を荒らす。だいたいウッドショックで起きたのがこの需要拡大だった。その結果はどうなった? 働く人は増えたか?

そもそも木材製品価格が暴騰したときも、山で働く人の給与があがったのかどうか怪しい。私が聞いたところでは、誰も上がっていなかった。木材価格さえ上がっていなかった。上がったのは製材価格なのである。素材生産業者は生産量が増えた分、若干儲けたかもしれないが、雇用者にその分手当てを出したのか、木の本来の持ち主である山主にだって還元されたかのか疑問だ。あげく、現在は在庫の山で価格は落ちている。

結局、木材の生産量や消費量を増やすことが林業振興という発想そのものが勘違いなのだ。伐出を低コスト化したら手取りも増えただろう、という意見もあるが、その「低コスト化」は補助金で行っていることで、本来の利益を生み出したわけではない。

振興に必要なのは、生産量とか生産効率ではなく、利益総額や利益率だろう。純益が増え手取りも増えたら山で働く人にとって喜ばしい。給与が高いと知れば、オレも山で働きたいという人も増えるだろう。

仮に100本伐っても10本伐っても利益が一緒だったら、100本伐らないでいい。10本だけ伐って、資源を温存しつつ仕事も楽ができる方を選ぶだろう。それこそが「楽しい林業」となって、働く人も増える。地域も潤う。

利益の薄い仕事はしていても楽しくないはずだ。仕事を増やして忙しくすると傍目には活気が出て、林業振興とか地域活性化したと見えるのだろうが、それも勘違い。過労死するほど働いて赤字のケースはいくらでもある。当事者にとってはブラック職場だし、それは奴隷労働と一緒だ。危険な目にあって、パワハラ、セクハラ受けまくって死ぬだけだ。

618hnzzhtolこんな本もある。

忙しいだけで利益は増えない、薄利多売の林業なんて、低開発国の労働、いやアホの発想なのである。

経済学を振りかざすまでもない、こんな単純なことに気付かないようでは、業界の上から下、学生までビジネスレベルは低い。

2022/11/16

林業雇用の壁は「ハラスメント」

林野庁が、12年ぶりに「林業労働力の確保の促進に関する基本方針」を変更した。

相変わらず「求人を出してもなかなか人が集まらない」と林業従事者数の減少、つまり人手不足を嘆く経営陣は多いのだが、それに応えるための変更だという。詳しくはリンク先を読んでいただきたいが、変更後の基本方針の中心は
▽再造林推進に向けた人材の確保・育成
▽安全対策の強化
▽地域間の労働力マッチング
▽女性や外国人材の受け入れ強化

などとのこと。

正直、そんなに面白くないのだが、なかなか読ませるのは、パプリックコメント欄だ。

そこには不満が充満し「ハラスメントが横行している」といった声が多く並んでいるのだ。

「労働安全の項目ですからセクハラやパワハラ対策というワードをぜひ加えていただきたい」
「「女性労働者」の記載に、セクハラを入れて欲しいです。本当に悲惨で危険です。」
「経験年数だけは長い先輩から、技術指導とは言えない教育を与えられて、日々命を秤に載せているのが日本の林業の現状です。」
「林業学校やアカデミーが開校されておりますが林業現場の経験が少ない講師が講義を行い、いざ就職すると学校と事業体とのギャップで離脱している生徒や研修生が全国的に多くいます。」
「就業規則も整備されず、ハラスメントが横行し、必要十分な教育も訓練も実施しない等、時代の変化とは無縁な林業界と己の価値観に固執する事業主たちに期待できることは、ほとんどありません。」
「事業主はパワハラやセクハラのセミナーを受けて社内環境の改善を常に考えていく必要があります。ハラスメント関係に関して、他産業にかなり遅れをとっていると思います。」
「外国人技能実習制度は、労働力の確保を目的としたものではないことから、「基本方針」への記載は適切ではない。また、制度目的と実態が乖離していることや、人権侵害の温床にもなっている。」

なんというか、現場からの怒りに満ちた悲鳴が伝わってくる。とくにセクハラが常態化しているのは、自衛隊だけではないということだ。

これらを受けてか「ハラスメント防止対策の徹底」も明記してある。だた、こんなのは林野庁の仕事というよりは、労働の基本中の基本である。ばんばん労基局に訴えて、厚労省が出向いた方がいいんじゃないか。
まあ、基本方針にどんな文言を加えようと、それを現場経営者が実行するのかどうか怪しいのだが、ホント、雇用環境の基本なんだよな。私も、そこそこ酷い環境について聞いている。

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まずはパワハラ、セクハラを止めることからだね。業界がブラック業界認定を受けないように。

 

2022/11/14

盗伐被害者がクラファン始める

宮崎県盗伐被害者の会」が、クラウドファンディングを始めたようだ。

グッドモーニングというサイト? 社会問題を解決するためのクラファン・サイトとある。

いや、ホントに手弁当で頑張っているな、と思っていた。会長は千葉に住んでいるのに、宮崎に通っているのだから。

私がこれまで取材や情報提供などでお世話になっているので、多少は……と思ってクリックしたら、「混雑しているので……」とつながらなかった。またの機会に試してみる。

ただ、このサイト、非常に詳しく状況を説明し、具体的なケースも警察の対応から裁判から行政のやり口まで情報が掲載されている。だから、寄付をするか否かはおいといて、まず読んでみたら現実の盗伐事情がわかると思う。その意味では、勉強になる。

私も、かなり記事にも書いたし、講演では全国で話しているのだが、その度に「知らなかった」「日本で起きているのですか」と聞かれる。いや、本当に林業関係者も含めて全然情報が広がっていない。その度に焦燥感に駆られる。

みんな、妙に日本社会を信頼しているんだな。日本では、そんな無法行為が行われるわけないじゃん、たまに起こるからニュースになるんでしょ、と思っているみたいだ。いや、大がかりで地域ぐるみ、業界ぐるみだから表沙汰になりにくいのだよ。地方に行けば、法律より地域の事情(正確に言えば人間関係と利害関係)なのだよ。平気で法律を無視するケースを山ほど見ている。

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クラファンというのは、情報発信源としても使えるのかもね。

 

2022/10/13

「東大卒女子が林業」の記事バリューは?

こんな記事がYahoo!ニュースに流れ、コメントを求められたので、さらさらと一筆。

29歳で“きこり”になった東大卒女性「運命的な仕事につけた」

元は「CHANTO web」という雑誌?ネット記事のようだが、ようするにこの記事の要点は、「東大卒」「女子」が林業界に入ったよ、というもの。そのまま(笑)。

いまさら言うまでもないと思うが、まだまだ「林業」にも「女子」にもバイアスがかかっているようだ。

ちなみに20年以上前になるかと思うが、和歌山県の龍神村森林組合に女性が入った(たしか東京農大大学院卒)ことがあって、取材に行ったこともあるのだが、彼女は殺到する取材に辟易している様子がありありで、申し訳ないことした(笑)。笑っちゃイカン。

当時は「大卒・大学院卒」で、「女子」で、「地縁のない」ところの森林組合に入った、というのが記事の要点だった。

たしか、その前に静岡県龍山村森林組合に、地縁のない女性が勤めたことがあって、それが、この手の記事の嚆矢だと思う。

もっとも女性自体は戦前から山仕事をしていたわけだし、結局は学歴とか地縁・血縁のない人が山村に移り住んでまで林業やるか? という点にニュースバリューがあったのだろう。それが「緑の雇用」事業などもあって、地縁のなさは珍しくなくなった。女子も、今では全国にいる。林業女子会なる不思議な組織も全国展開。結局、今回は「東大卒」という点がバリューとなる。まあ、東大卒の林野庁職員はいるし、それが辞めて現場に入った(入れたのか、はっきり記憶がない)というケースもあるようだが……。
だいたい本記事の主役の彼女が記事になるのも何度目か。私が目にしただけでも相当な回数になる。かつて私がした「申し訳ないこと」を繰り返している気がする。

というわけで、私のコメントは、そんな世間的なバリューには触れずに林業現場職の現状と雇用の問題点を指摘する、きわめて真正面からおとなしく切り込んで(^^;)書いたのである。なお、この記事の最後に、彼女は結婚して現場から離れたとある。それなら、いよいよバリューは何か?と首をかしげるのだが……。もしかして「運命的な仕事」とは何か、という哲学的記事か?

まあ、記事を書いたライターは、林業界の事情には明るくないということか。

 

 

2022/09/30

新聞に「山崩れと林業政策の関係」

朝日新聞に「てんでんこ」という災害関係の連載が長く続いているが、今週は「山が崩れる」シリーズ。

この記事の出色なのは、はっきり林業との関係、それも林政問題に触れた点だ。

これまで単発で、「山の人工林が皆伐されたから山が崩れたのでは」といった記事はあったが、その背景に林野庁の「林業の成長産業化政策」や「木材自給率50%をめざす」「平均林齢の若返り=皆伐再造林」といった政策があることを記した新聞ではなかったように思う。
記事の内容を個別に見れば、多少不満もあるにはあるが、とにかく書いてくれた\(^O^)/。

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一応、ネット先のリンクを張っておくが、有料記事なんだよな。。。「てんでんこ」

なお皆伐してもすぐ崩れるのではなく、根株が腐る10年~20年後が危険と指摘する。(私が学んだところによると5年から崩れだす、というものだったが、地質や地形などケースバイケースだろう。)
つまり皆伐が全国に拡大し始めて約10年が経つ今、もっとも危険な時期を迎えたことになる。今後、皆伐地、とくに作業道が縦横無尽に入った山は相当危険だろう。ちなみに記事には「崩れにくい工法を学び、実践している。しっかり排水措置も取ったが、想定を上回る大雨が降ったのが一番の原因」と皆伐した業者の弁解を載せている。こんな言葉信じられんよ。どんな工法なんだ、皆伐しても崩れない工法って。だいたい結果責任だよ。崩れたら責任とるべきだ。

なお、私がさらに許せんのは、こうして山が崩れた後の復旧工事は公共事業として税金で行われること。施業者にも負担させるべきだろう。そうしたら怖くて皆伐なんかできなくなるから。

私がチマチマと雑誌やネットに書くよりは、影響力があることを期待する。

 

2022/09/12

国産材の「安定供給」試論

林業振興、あるいは日本林業の弱点という話題になると、「国産材は安定供給ができない」という意見が出る。

ようするに注文する側(木材消費側)からすると、木材が欲しいときに、どこそこの業者あるいは市場が、さっと供給してくれるのを願っている。注文したときに、いつも同じように在庫がないと使いにくい、だから外材に流れる……という意見である。いつでも注文したら、さっと揃えて納品してくれるのなら国産材を使うよ、と言いたいらしい。

そこで対策として国産材の供給力を増やす、大量供給することで品切れを抑えるという発想になるのだろう。それが安定供給だと。

まあ、たしかに国産材が安定供給できていないのはその通りで、それが国産材需要が伸びにくい理由の一つなのもその通りだと思うが、その対策が大量供給というのは安直ではなかろうか。

「安定供給」を文字通り捉えたら、出荷量が安定していること。毎年、季節にこだわらず、できる限り同量出荷されて在庫もあることだ。

だったら、何も量を増やすことと同義ではない。出荷量を安定させればよいのなら、林業現場(事業体ごとか、市場など産地レベルか)で計画的な生産をすれば、可能である。むしろ闇雲に増産して供給力を増やしたら、常に在庫を多く抱えることになり、それは値崩れを起こしかねないし、少なくても在庫コストが上がる。また大量生産は林道・作業道の開削や機械類の購入、人件費……などのコストも上げる。そして資源量の減少と山地崩壊の頻発も招きかねない。

一産地の生産量が小さくても、そこからは常に一定量が出荷されることを周知させれば、発注する側も計算できる。そこだけで足りなければほかの産地と抱き合わせることで量を確保すればよい。ちゃんと、どこにいくら在庫があるか、という情報を告知されていれば融通できる。どうしても足りない分は外材でもよいが、スポットで購入せず計算して輸入すれはよい。山側もその方が供給側もコスト減になって利益を確保できる。

そうなれば国産材全体の生産量を増やさなくても、確実に品は捌ける。むしろ供給量が絞られた方が、売り手市場となり価格決定権を手にできるだろう。それなら外材を頼ると言い出す建設業者もいるだろうが、今や外材自体が手に入りにくくなっている。価格も高い。そんなに思い通りにできないのだ。使用するのは国産材か外材か、はたまた鉄筋コンクリートかと悩むのは発注側に任せておこう。林業側が言いなりに増産しなくてよい。むしろ売り手市場にすべく駆け引きしなくてはならない。

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OPEC(石油輸出国機構)は、常に原油生産量を、世界の需要量の少し少なめに保とうとしている。その方が高値を維持できるからである。現在、ロシア原油の禁輸を進めたことで石油が足りないと欧米はOPECに圧力をかける……いや、増産をお願いしているが、なかなか応じないのは、まさに駆け引きしているのだ。最大の産油国サウジアラビアは、アメリカの懇願で多少の増産はしたが、景気悪化で石油需要が減少しそうと読むと、すぐに減産に切り換えた。したたかである。

木材が高値で困る、という買い手、つまり建設業界の言いなりになる必要はない。むしろ「40年前は、今の5倍した」と脅せばよい。

各社バラバラで疑心暗鬼の塊の国産材市場に、そんなディールは望むべくもないが、決して増産だけが安定供給ではないのである。

そして木材生産量を絞ることは、森を大きな炭素の在庫に仕立てることである。(木を伐らないとCO2吸収量は減る、なんて林野庁のデタラメを信じてはいけない。)伐採量を減らし皆伐を少なくすれば、森林生態系は守られ、生物多様性の維持、山地崩壊など災害の防止にも貢献するだろう。

ま、そんなこと論じても、自分は損したくない、自分だけ儲けたい……と業者は連帯などどこ吹く風と抜け駆けするのだろうけど。。。

 

 

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