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森と林業と田舎の本

2021/02/26

漆芸に見た猫の生態

以前、本ブログでも紹介したような気がするのだが、生駒市には「緑ヶ丘美術館」(および別館)がある。

住宅地の中にポツンと存在して、洋風ながら一般民家を改造したかのような純民間の美術館。扱うのは映画ポスターやマンガまであって幅広いものの、基本は日本の伝統工芸の現代作家作品が多い。ほとんどが所蔵品らしいが、逸品ぞろいである。どんなけ溜め込んでいるんだ(^^;)と思わぬでもないが、これを完全無料で見せてくれるのだから有り難い。

今回は「日本の<漆>展-Ⅳ語り継ぐ蒔絵展」と、別館で「香炉香合展」。

さて、その中で私が目を引きつけられたのは、「乾漆螺鈿箱 眠い猫」と名付けられた作品だ。しんたにひとみの作品。人間国宝などの作品が並ぶ中で、まだ若い人のようだ。しかも奈良市在住だという。

ま、それはよいとして、作品は漆塗りに螺鈿細工をほどこした小箱だが、その上面と4つの側面に描かれているのがネコである。

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鳥を追いかけるネコ、というモチーフで、このネコ眠っていないじゃないか、と突っ込むのは止めておこう。この前面の鳥を追いかける姿で、すでに不穏な様子(笑)。そこで、裏側の側面を見ると……。

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鳥を捕まえて、食べておるがな……。やっぱりネコは凶暴で、野生動物の生態系を生きているのだった。アメリカの研究では、一匹の野良ネコは、年間数百羽の鳥や小動物を捕まえるというが、なかなかの環境インパクトであろう。

とはいえ、これはしんたにさんの考えたモチーフではなさそうだ。なぜなら、春日大社の宝物にある国宝の日本刀「金地螺鈿毛抜形太刀」にも似たネコがいるからだ。こちらにインスパイアされたのだろう。

この太刀は、平安時代の守り刀と思われ、刀剣乱舞ネコ、じゃないネタになったのかどうか。その鞘には金粉に漆、そして螺鈿で雀に襲いかかるネコが描かれている。この絵柄はサライの記事を見てほしい。

私が興味をもったのは、平安時代にすでにネコが渡来していて、貴族に飼われていたことを示している点だ。そして、そのネコは早くも鳥を襲っていたのだった。今なら「外来種は駆除しなければ」と言われるかもしれない(笑)。


なお別館の香炉香合展も見てきた。

こちらは主に陶器の香炉と、香料を入れる香合という小さな箱が展示されている。茶道具の一つであるが……。私は発見してしまったのだ。

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これらの香合は木製だが……わかるかな? 

これは黒柿による作品だ。銘木にして珍木でもある黒柿。柿の木の黒変種で、滅多に見つからないだけに、ときとしてすごい値段がつくが、肝心のその木を使った作品を目にする機会はあまりない。これらの香合は1辺10センチ未満だが、このように加工すると香合自体が数十万円にもなる。もちろん作家の価値であるのだが、素材も高いのだ。

 

以上、伝統工芸展で、注目したのはそこか! と突っこまれるのは覚悟しつつ、紹介しておきます(笑)。

 

 

2021/02/24

薪のお値段いろいろ

生駒山にある森林公園で見かけた掲示物。

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「薪の販売はじめました」とあり、各種の価格が示されている。
一束500円。クォーターとあるのは量り売りだが、キロ55円。丸太のタンコロだとキロ40円。

コナラの丸太の重さがピンとこないが、結構比重は重いはず。太い丸太なら10キロぐらいは行くだろう。長さにもよるけど。それに、配達抜きで自分で持って帰るのが条件だから、まあ、お安い方だろう。と言うのも、この森林公園ではナラ枯れが発生しており、そのためにコナラが多く伐採されている。それを薪にしているのだから一石二鳥である。公園の運営は指定管理者だから、商売もできるようだ。

ちなみにホームセンターで売っているコナラなど広葉樹の薪は一束800円ぐらいはゆうにする。以前紹介したアカシア?の薪で600円前後。そして今日たまたま見かけたのは、スギの薪か。一束と同じ量かどうか怪しいが、建築端材だろう。これが680円。

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ただ、数年前は、コナラやクヌギでも500円しなかった。随分値段が上がっている。

ところが、ネットでこんなすごい価格のスギのタンコロを見てしまった。

[楽天市場]薪Club スギの切り株

お値段は、ぜひリンク先に行ってみてほしいが、直径40~45センチ、高さ30センチだから薪にしたら2束ぐらいになる?しかし、送料別でこの価格は (゚o゚;) 。。。しかもけ未乾燥。

でも、買う人がいるのだろうなあ。使い道にもよるが、どうしても必要だと。そして身の回りでは手に入らないと。ここが扱う薪の値段を見たが、ナラの乾燥薪で1000円以上する。売れるのなら売ってください(^o^)。ダンピング合戦など馬鹿らしいから。

ちなみに薪clubって会社の親会社は、鳥取県智頭町の石谷林業である。あの、400年生の慶長杉の並ぶ山主だ。薪を売って稼いで、文化財級のスギを守ると思えばよいかもしれない。

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2021/02/04

時松辰夫さん死去に触れて

ニュースで、大分県の由布市湯布院町の「アトリエときデザイン研究所」主宰の時松辰夫さんが1月3日に死去していたことを伝えている。83歳だというから、そこそこ天寿を全うされたのだろうが、私にとって記憶に残る人だ。

と言っても、取材したのは20年近く前ではなかろうか。クラフト作家ではあるが、本人の作家活動というよりは木工指導で有名な人だ。全国に木工を広げて、それによる町おこしや個人レベルでの田舎暮らしの生業などとして成り立たせていた。

Photo_20210204223701研究所(工房兼販売店)は樹林に包まれている。

とくに湯布院には研究所という拠点があって弟子の養成をしていたし、湯布院観光の一角を担っていたはずだ。旅館で、ここの木工品(食器から家具まで)などを使って、それが欲しくなってこの店を訪ねる……というルートができあがっていたからだ。

しかもつくられているのは、地元の樹木(雑木)を利用した作品。私が訪ねたときも、果樹園で古くなった木(ミカンだったと思う)を植え直すために伐った木を使った器がつくられていた。材料の木を巡るドラマも聞きながら、それを作品に仕上げていくのだ。それは言い換えると樹種を選ばない。

しかも行うのは、いわゆるグリーンウッドワーク。生木を削る方が柔らかいのでつくりやすい。ただ、そのままだと割れるから少しずつ乾燥させるのだけど、それに電子レンジを使うとか、ウレタン樹脂を浸透させて固めるとか、当時の私には目からウロコの手法だった。
なにより木工品の価格からすると、1本の木から数十万円分の商品が生まれる。

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由布院ブランドとも言えるものだが、それを全国に広げるための指導も行っていて、各地にここで習った技術で取り組んでいるところがある。私も、その後そんなところを3、4ヶ所見て回った。ただ、完全に成功しているところはそんなにないようだ。町おこし、と思って取り組んでも難しい。やはり木工が好きという人材がいないと進まないのだろう。弟子は約500人、このうち約150人が工芸で生計を立てているとあるが。

Photo_20210204224401細い幹でも、このように成形すると碗が幾つも採れる。

建築材しか眼中にない林業とは違う木材利用に目を向けるきっかけとなった。その意味でも、私に新たな視点をくれた人であった。そうそう、取材で訪れて夕方になったら、晩飯の用意までしてくれたよ(^o^)。

最近、広葉樹林業なんて言い方で、木工にも目を向ける人や地域が出てきたが、ずっと昔から時松さんは、それを唱えていたんだぜ(そして私も、その片棒担いでいたんだぜ)と言いたい。合掌。



2020/12/23

アカシア薪

ホームセンターで見かけた薪。

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何といっても目新しいのは、アカシアという木の薪であること。私は初めて目にした。価格も、全体で上昇している中ではマシなほうだろうか。
先日はもっと本数の少ない薪束で、1000円近い価格だったので仰天した。以前は500円以下で、それでも高いと感じていたのだから。

アカシアは、一時期特定外来種扱いされかけたほどで、その成長力から在来植物を押し退ける脅威があると伐採が進められた。ただ花は美しく蜜源になるほか、緑化木としても優秀ということで、かろうじて駆除されるまでには至っていない。ただ新たに植えるのは厳しいだろう。ここに伐採後の用途として薪という用途が生まれたわけか。
材質は硬いから火持ちはよいように思う。生長が早いことも考えれば、しっかり管理することを前提に薪炭林にできるかもしれない。(脱線するが、林野庁は早生樹、早生樹と言いつつもアカシアは含めない。コウウヨウザンのような外来種は奨励しているのに。)

見た目は赤い色合いが強いから、ナラの薪を至上のものとするユーザーに受け入れられるかどうか(^^;)。

とはいえ、本来はどんな木でも薪になるのがよいのだけど。商品として扱うのは、それなりの量が入荷でき、安定的に供給するルートがあることだろう。この薪はどこから調達したのかわからないが、一過性だろうか、今後もずっと供給されるのだろうか。

2020/12/21

木製腕時計ゲット×2!

私は、基本的に衝動買いをしない人間だ。十分に考え、本当に購入して後悔しないか、コストパフォーマンスは釣り合っているか、熟考した上で決める。またネット購入もあまりしない。ある程度使うのはAmazonぐらいで、これまた十分に発売元が怪しくないかチェックする。

そんな私が、スマホで衝動買いしてしまった。

たまたま何のページだかについていた広告に木製腕時計が表示されたので、内容を眺めたのだ。ちなみに、ここまではよくある。木製腕時計は私のトレードマークにもしているわけで、見るだけなら興味がある。まあまあ、見た目はよろしい。が、目を見張ったのが、とんでもセールをやっていたこと。たしか1万9000円ぐらいのが1万円そこそこに値引きされており、さらに1つ購入したら2つ目は無料! なんだ、そりゃ。

気がついたらクリックしていた(^^;)。そして、気がついた。このメーカーと販売店、アメリカだわ。日本語表記だったのに、購入したとたん、英語のメールがどどどと押し寄せる。これは大丈夫なのか。騙されていないか?

なお現在の木製腕時計は5代目なのだが、ここに至るまで結構苦労している。

最初のは、これも偶然のように手に入れた。何のポイントだったか忘れたが、結構たまっていたのでそれで買えるものを探したのだ。するとポイントを使えば残金が3000円程度で手に入る木製腕時計を見つけた。それこそ玩具程度のつもりで、話のネタになるかな、と思って購入した。それが抜群によかった。軽いし、触り心地がいい。デザイン的にもよかった。そのうち話のネタではなく、日常的に身につけて自身のトレードマークになったのだ。

それを旅先で盗まれて(置き忘れて取りに帰った5分ぐらいの間になくなった)、しょうがいなしに2代目を探す。その時は一応国産にこだわった。ところがあっと言う間に壊れるのだ。マシンがイカれたものもあったが、肝心のバンド部分の木が割れてしまう。国産と思って注文したのに中国製だったこともあり、どれもこれもできそこないばかり。

結局、多少値は張ったが、イタリア製のアバテルノにして落ち着いた。バンドもマシンも壊れない5代目に至ったのである。(それ以来、私は国産のものづくりを信用しなくなった。)

ただ、先日ザックを背負うときにバンドをひっかけてピンが外れてしまった。そこで修理に持っていったら、わずかにピン穴の部分が欠けていますよ、と言われた。仮にピンをはめても、すぐ外れてしまいかねない、と。しかも、ピンの種類が日本製と違って細い代物で、すぐにはできません、と言われたのだ。

それが頭にあったからだろうか、今回の衝動買いは。

それから毎日のように英語のメールは届くが、いったいいつになったら商品は届くのか。価格もドル表示に変わってしまって、ちゃんと真っ当な金額を引き落とされるのか。トンデモ金額を請求されないか。ドキドキである(^^;)。

それが、ついに届いた。ちゃんとアメリカから。

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竹製の器に入っているのにはちょっと驚き。これまで購入した時計でもっともパッキングが立派だ。
が、私の衝動クリックどおりの2つの時計が入っていたよ。これが実質1万円程度か。送料も込みだから、いったいどうなっているんだ。一つ5000円以下の品なの? 見たところは悪くない。材質はなんだろうか。黒いけどウォールナットと書いていたような記憶があるんだが。マシンはたいしたことなさそうだが、狂わなければいいや。

ともあれ、私のトレードマーク、復活。

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そうそう、忘れていた。メーカーは、TruWood である。

 

2020/12/09

CLTの歴史から日本の情報脆弱性を知る

CLTについて調べている過程で、「そもそもCLTは誰が発明したんだ?」と思いついた。

板を張り合わせてパネルにするのは、すでにLVLなどさまざまな建材がある。そして直交させて張るというアイデアも、合板と同じだ。合板のベニヤ板(丸太をかつらむきにした薄板)を直交させることで強度を全方向に増している。それを分厚い板でやっても同じ効果が見込めるし、面になって用途も増える……このぐらいなら誰でも考えつくだろう。だが、実際に商品化したのはどの国の誰だ?

で、少し調べる。残念ながら確定的な情報は見つからなかったのだが……。

CLTを考案したのは、ドイツらしい。1990年代の初頭に産み出したという。ただ接合面をどんな形状にするとよいか解決せず、止まってしまったらしい。ところが1995年ごろオーストリアが成功させた。

CLTの接合にはそんな厄介な問題が含まれていたのか。単に板の表面に接着剤を塗ればOKではなかったのか。これは意外。もしかしてパテントもあるのかもしれない。ともあれオーストリアで実用化してから各国で発展させてヨーロッパ一円に広まった。さらにアメリカ大陸にも普及したらしい。欧米では、すでに住宅やビルにパネル工法が広まっていたので、適合しやすかったのだろう。一気にCLTを使った建築物が増えたわけだ。

1_20201209162701 オーストリアの建築物

では、それがどうやって日本に入ってきたのか。これは銘建工業の中島浩一郎社長の証言が重要だ。それによると1997年にオーストリアに合弁会社をつくっており、そのパートナーから「CLTに興味はないか」と言われたという。これが何年か記載はないが、2000年前後だろうか。
ただその時は忙しくて、とくにCLTをどうこうしようと思わなかったらしい。そして2004年にウィーンで4階建て木造アパートを見た。これがCLTの建築で、新しい木の使い方が生まれていることを再認識した。ただ、それでもすぐに飛びついたわけではない。

ようやく日本にCLTという話になるのは、おそらく2009年だという。国交省に設立された「木の家づくり検討委員会」に中島氏が呼ばれて話をすることになった。たまたま当日はヨーロッパから帰ってきたばかりで、その時にCLTを紹介したそうだ。そこでは、日本でCLTをつくれば木材需要を一気に伸ばせる……いった夢を語った。すると住宅部長が興味を示して本気でやる気はあるか、と聞かれたという。

どうもその時は、中島氏はたいしてやる気はなかったらしい(笑)。が、そうは言えずに「はい」と返事したそうである。すると、2カ月後にCLTの実験用に3億円の予算つけたから、と連絡が来た。しかし11月で年度中には無理ということで8000万円で期日も翌年8月まで伸ばして始めたということだ。これが実質的な日本のCLT事始めだろう。

その後、2013年12月に日本農林規格(JAS規格)が制定され(「直交集成板」という名称もここで決まった)、本格的にCLTが広まっていくのだ。

う~ん、これがCLTの発明と日本伝来の歴史だとしたら、わりとあやふやな状態でスタートしたようだ。本気でCLTに惚れ込んだのは誰だ?本気で林業振興に役立つ建材と思ったのは誰だ? 

気がつくのは、ヨーロッパでCLTが実用化したのが1995年として、日本で動き出すのはなんと15年後なのである。この情報伝達の遅さはなんだ? グローバル化の時代、おそらく中島氏以外にも建材を扱うメーカーや商社、それに研究者なども当時のヨーロッパの動向としてCLTという建材が登場したことを把握していた人はそこそこいたはずだ。だが、政治家も官僚も誰も知らなかったのか? 官僚に具申する人も中島氏以外にいなかったのか。

本当にその内容を煮詰めて、「これは日本では無理だね。導入する必要はない」という結論を出していたというのならまだしも、おそらく何も考えることなく、スルーしたというのが本当のところではないか。
この時代、情報だけなら世界中を瞬時に結んでいる。ヨーロッパに行かずとも、インターネットでCLTの存在を知った人もいただろう。だが政策立案にもビジネスにも反応しなかった。日本人の情報に対する感度の弱さというか脆弱性を感じる。木質建材の将来を読んでいたのは中島氏だけだったのか。また林野庁など林業系の人は食いつかず、国交省から動いた点も面白い。


ところで……実は私も「木の家づくり委員会」には参加したことがある\(^o^)/。12年の末に意見陳述を求められて霞が関を訪れたのだ。たしかに、その場に中島氏もいたなあ。私は何を話したっけ。「木は見た目が9割」というタイトルだった。それにフローリングは建築基準法の穴場!とか口走ったような気がする(笑)。
この会議で印象的だったのは、国交省の委員会とは言いつつも、林野庁の人も出席していたことだ。そもそも「木の家づくり」自体が林業振興を目的としているのだから。ところが一切発言しない。司会者が気を利かせて指名しても、まったく話そうとしなかった。「勉強させてもらいます」とだけ行って発言を拒んだ。私の林野庁に対する絶望は、この頃から始まったのかもしれない。

これは私が幾度も書いていることだが、CLT自体は面白い建材だと思っている。建築系から見ても新しいアイデアがいろいろ湧くはずだ。ただ……林業振興にはならんよ。素材がBC材であることと、その買取価格を知った時点で無理と思った。そういう意見を持っていたようにも見えない。その後林野庁はCLTの推進に邁進するんだからね。

なお、CLT以外にもDLT、NLTなど板の接合の仕方の違い(ダボ、クギ)で新たな建材が誕生しているし、超厚物合板もある。競争は激しくなるばかりだろう。

 

2020/12/05

CLTビルに反対した理由を探る

某地の木造ビル、CLTによる建築物の見学に行った。

そこはざっと6年ほど前、まだ建築基準法がCLTに対応するよう改正されていない時期に建築計画を出して建てられている。だから建築は、ある種の実験的な意味合いの許可を取っていた。なかなか大変だったらしいが、そのため国を動かし自治体を動かし、各界の協力を得てなんとか建築することができたという。

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ただ、その際にもっとも反対したのは誰か。

単に建築費が高くつくとか、施工業者が初めての工法を嫌がったとかいうのではなく、「何でCLTなんかで建てるんだ……」と言ったのは誰か、という意味である。意外な答えが出ましたね。

それは……林野庁だったというのですよ。えっ、と思うだろう。だって、CLTをもっとも推進していたお役所のはずだから。まあ、正確には銘建工業の猛烈なプッシュがあったからなんだけど、政府も全面的に応援していたはずだ。農林水産大臣はもちろん、内閣府も。もちろん林野庁はその矛先のはず。だから短時間で建築基準法の改正ができたのだ。

どうも幹部らのCLT推進とは別に、現場レベル、おそらく課長クラス以下?が、CLTビルの建設に文句を受けたのではないか。「面と向って言われるとは思わなかった」という。

さて、問題。なぜ林野庁はこのCLTビルの建設に反対したのでしょう。その理由を推理しなさい(^^;)。

① CLTなんか林業振興に役立たないよ、と本音では思っていた。

② 上からやいのやいのと言われて仕事が増えたんだよ。実際に建築となったらさらに仕事が増えるじゃないか。

③ 建築基準法の改正に一生懸命になっているのに、例外的な方法でCLTビルを建てるなんてケシカラン。

④ 林野庁に相談せずにCLTビルの建築計画をつくるとは、民間がでしゃばるな。

⑤ 自分たちが第1号ビルを考えていたのに、先に建てられたら面目が潰れる。

……これぐらいかなあ、思いつくのは。

ま、どれもありそう。もしかしたら全部理由になるのかもしれない。

今は、とくに役所が関わらなくても建てられるようになった。構造計算が楽になったらしい。それでもゼネコンなどは新しい工法は手間が増えるから嫌がるという。それに価格も割高かなあ。

さて、CLT建築は今もさほど増えていない。どこが間違っていたのだろうか。

 

 

2020/11/24

シダーボールの利益は?

ダイソー百均ショップでこんなものを見つけた。

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シダーボールとある。材料はスギ。さすがに国産だと思うのだが……。これを消臭剤として売り出しているのだ。本当に消臭効果はあるのだろうか。湿気は多少吸い込むから臭いの元も吸着するか。

百均だから売値は100円。(消費税は上乗せされるが。)

さて、これをつくっている人はどれだけ儲かる仕事になるだろう、と想像してみた。

とりあえず卸値は50%として50円としよう。そこからパッケージ費や原材料費や人件費などの経費を引いて……粗利率はどうかな、60%とすると30円。12個のスギのボールをつくって30円の利益を得られると考える。

もちろん手づくりではなく、木材をボールにする機械を使うだろうが、その減価償却はどれぐらいか。そもそも生産力は?
1日1万個つくれたとして、833個の商品となり、2万5000円ほどか。ちょっと厳しいな。もし粗利がもっと低いと立ち行かなくなる。やっぱり1日に2万、3万個つくらないと。大工場なら、1日100万個だってできるだろうが、売りさばけまい。

シダーボールは百均専用の商品とは限らない。百均がいつまで仕入れてくれるかもわからない。ボールの大きさを変えて、ほかの商品にもすべきだろう。木のボールの砂場は最近人気だし、入浴材としても売っていた。小さな粒にすれば枕にも使えるだろう。なんだかんだと頑張れば、そこそこの売上は確保できるか。
まあ、基礎となる数字が全部推測だから、現実のことはわからない。

結局はアイデア勝負かな。もっとも、デカい丸太を扱うことをよしとする感覚の林業家に、こうしたきめ細かいビジネスができるか。何でも試す心がけがないとヒット商品は生まれないよ。

 

2020/10/30

首里城再建。文化か森林か……とモヤる

10月31日は、首里城火災が起きた日。つまり昨年の火災からちょうど1年である。そのためか、このところ新聞やテレビなどでは首里城に関する特集記事や番組などがいくつも組まれている。

それらを見ていると、ふと心にモヤモヤした気分になった。沖縄の人々がいかに悲しんでいるか、早い復元を望んでいるか……を語るのはよいのだが、現実の再復元には途方もない壁がある。そもそも(焼け落ちた首里城の)1992年の再建からして、いかに苦労したことか。だいたい再現したい過去の首里城を見た人がいない(過去の姿とは江戸時代のことを指すうえ、沖縄戦で資料のほとんどは失われた)のだから。

ただ私の興味は、つい木材の調達になる。大径木材が大量に必要だったからだ。すでに沖縄には本来使われた樹種(イヌマキ)の大木はない。そこで前回はタイワンヒノキに目をつけたのだが、台湾でも伐りすぎによって伐採禁止。……そこで何とかできないかと模索するのだが、そこで描かれる“苦労”が、どうも引っかかる。特別に伐らせてくれないかと考えてしまうのだ……(結局、すでに伐られて材木店の在庫として眠っていたタイワンヒノキの製材を集めた)。そこでは、首里城は特別なんだから、という意識がかいま見える。

いや、これは首里城だけの話でない。21世紀は木造建築物の復元ブームのようなところがあり、各地で大径木材の奪い合いが起きているのだ。名古屋城の本丸御殿や天守閣、あるいは平城宮の大極殿、そして興福寺の中金堂……巨大木造建築物なら何でもなのだが、〇〇〇復元のために大木が必要だから、森にわずかに残されていた大木を伐らせてくれ、ご神木も伐らせてくれ、カナダやアフリカの原生林から伐り出してもいい、という発想がちらつくのだ。

これは復元を担う建築家や文化関係者の発想だろうか。文化(建築)と自然(森林)を天秤にかけて、つい文化の方が大切だと考えてしまうのは。

しかし、首里城もその他の天守閣や寺院も古代宮殿も、別にないと困る施設ではない。あえて言えば観光には役立つだろうが。もちろん復元することで多くの人々が過去の文化・歴史に触れることができ想像力が高まるとか、あるいは復元工事を通じて過去の伝統工芸の技法を追求できるとか、何とでも言えるのだが、それに比べて数百年かけて自然が育んだ大木と、それらを取り巻く森林生態系の劣化をいかに考えるか。あんまり想像力を働かせていないように感じる。

すでに令和の首里城復元計画は進んでいる。主な木材は国産ヒノキを使うのだそうだ。調達できる目途が立ったとも聞く。首里城の柱は直径60センチ級らしい。それぐらいならあるだろうな、というのが私の感想。しかし直径60センチの柱となる木材とは、おそらく樹幹としては80センチくらいは必要だろうし、そうなると150年~200年生のヒノキだろう。これ以上の太さとなると、かなり厳しいが、今ならかろうじて200年生のヒノキは残っている。
おそらく、神社の境内に生えるご神木クラスか、はたまた山主が「この森で1本だけ残しておいた」ヒノキを拝み倒して伐り、かき集めるのではなかろうか。

まったく伐るなというつもりはない。ヒノキもいつかは枯れるわけだし、その前に木材として使われるのも宿命だ。しかし象徴的に数本、というのではなく、全部の柱を無垢のヒノキで、となると無理が出る。それに今全部を根こそぎ伐って使ってしまったら、今後出てくるでなろう、ほかの文化財としての木造建築物の修復・復元に使える木がなくなることも意味する。
それは、ほかの素材も同じだ。とくに首里城は漆塗りが多いらしいが、国産漆は極めて少ない。首里城再建のためとごっそり集めたら、ほかの文化財級の漆芸で困ったことになるだろう。

しかし建築側の気持ちとしては、今自分の担当する建築物は全部無垢の木(や国産漆)を使いたいという願望が強いようだ。それが森を破壊しかねないと気づいても、目をつぶってしまうのか。また厳密な復元・再建を言えば、樹種も揃えないといけないはずだが、イヌマキでもヒノキでもタイワンヒノキでも、いやアフリカのアパやカナダのウェスタンレッドシダーでもいいというのは、いかがなものか。無垢の木にこだわりつつ、なぜ樹種はこだわらないのか。いっそ樹種を重視すれば、首里城は細いイヌマキを集めて寄木にするという手もあるのではないか?

……とまあ、そんなことをもやもやと感じたのであった。これは森林側視点の発想だろうか?

文化のためなら自然破壊も致し方なしとか、森林こそ至上のもので文化は二の次とか言うつもりはないが、もっと穏やかに対応できないか。首里城の正面の数本は無垢の大材だけど、ほかのものは集成材を使う……という折り合い方だってあるはずだ。
ちなみに現在東大寺大仏殿は、江戸時代に再建されたものだが、柱のほとんどは寄木づくりだ。それもヒノキだけでなくスギやマツも混ざっている。その時代には、大木がなくなっていたからだ。ただ虹梁だけは無垢の大木を日向から運んだ。それが今や国宝だ。

ちなみに国産材ならスギは60センチ級、いや80センチ級の材でもまだまだある。そして集成技術も防腐技術も進歩している。この際、スギを使うとか、集成材や鉄骨を使って建てて、それなりの価値を生み出す建築に挑戦する勇気はないのか?

ちなみに以前、このような記事も書いている。

首里城復元に使うべき木材はスギだ。琉球の歴史をひもとけば見えてくる木材事情

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2006年に訪ねた際の首里城。

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大仏殿。柱は様々な樹種の材を鉄鋲と銅の環で束ねた寄木である。

2020/09/22

東京チェンソーズの「山男のガチャ」

昨日の続きではないが、こんなものを見つけた。

「山男のガチャ」新発売

東京チェンソーズが生み出したもので、端材や枝からつくる小さな木製品をガチャガチャで売っていくらしい。

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上記サイトより借用。

頑張っている(笑)。現在8種類の品を出していて、1回500円。

実は東京チェンソーズの面々とはどこかで会ったような気もするが、ちゃんと話したことはない。それでも、その動きはウォッチしている。

なぜなら、アイデアを絞り出してあの手この手で林業を事業として成り立たせようとしているから。これって、実は林業家にもっとも欠けている姿勢ではないか、と思っていた。
この会社も、林業会社をつくったという時点では、伐採仕事などがメインだったはずだが、それでは十分な利益が出ないことに気づいて、事業を広げている点に私は注目していた。東京美林倶楽部なんて仕組みで資金調達を行い、今は玩具など木工まで始めている。おそらく、原料(素材)だけを扱っていたら展望が開けないことに気づいたのだろう。最終商品まで手を伸ばさないと、採算が会わないのが現在の林業界だ。

そのことに気づいている林業家は意外と少ない。みんな、山仕事に執着しすぎ(^^;)。

まあ、さすがにガチャガチャの玩具で儲かるとは思わないが、あの手この手を繰り広げることに価値がある。ガチャガチャそのものは、以前私紹介したが、もはやイオンモールにまで進出して全国展開するほど人気のある玩具だ。「驚異!ガチャガチャの世界

自分でガチャを設置するのもよいが、木工作品そのものをガチャ専門店に扱ってもらう方向もあるのではないか。もっとも、そうなると商品の品質レベルが相当厳しく要求されるし、安定供給するだけの数が生産できるのかも考えなくてはならないが。

ともあれ、ジタバタしつつ、突破口を見つけることを期待する。

 

 

 

 

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