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森と林業と田舎の本

2021/10/14

吉野杉の輸出に見る木材の「価値」

米の価格が下がっているようだ。このままでは米農家は立ち行かなくなる……という声が上がっている。たとえば東北6県の主要銘柄米(1等米60キロ)が、前年比2000~4000円程度下落した。これはゆゆしき事態だろう。直接の原因は、コロナ禍で外食産業が不振になったことだとされているが……。

ただ、ちょっと妙だ。今年3月には、2020年度全体で米の消費が2.2%増となったというニュースが流れていたからだ。中・外食消費量は3.7%減少したが、家庭内消費量は5.1%増だった。米は食べられているのに、取引価格は下がるとは……。

 

全然関係ないようで、思い出したのはYahoo!ニュースにあったこの記事。

パリ】フランス人の心に響いた「吉野材」に日本ブランドの未来を見る。

吉野からパリに輸出した吉野杉[YOSHINO WOOD]が評判を呼んでいるのだ。それをパリ在住の日本人がレポートしてくれている。こういうのは有り難い。フランス側の動きや感覚がよくわかる。

ともあれ、吉野杉の素晴らしい材質が理解されたか……というと、全然そうではない(笑)。

そもそも吉野材のヨーロッパ輸出は、2017年から取り組んでいた。最初はオーストリアに。だが、まったく成果は上がらず。ドイツのケルンで行われていた木材メッセにも吉野材を持ち込んだが、まったく相手にされず。

そこでどうしたか。……ぜひリンク先の記事をよく読んでほしい。読まずに、このブログだけで知ろうと横着してはダメよ。
ようはワインでいうテロワール、良質の木材が育てられる背景、環境、あるいはどういう人がかかわって、どういう木材の文化があるのかという、地理的、環境的、歴史的な部分、そういうストーリーと一緒に見せてゆくということなのだ。そして最終商品を見せる。

Photo_20211014213701(イメージです。)

実は、この吉野材の輸出に関しては、私も以前から聞いていた。肝心の人物にも会っている。ただ、聞くだけじゃダメだね。こうしてフランスの様子を紹介されているのを読んで、ようやく合点がいった。

私は20年以上前から「木材は情報素材だ」「木材の個別の機能はほかの素材より劣る」「価値は情操・感覚で伝えるべき」と言い続けてきたと自負しているが、それをキッチリ示している。

吉野杉の原木を見せても見向きもしなかったヨーロッパ人が、見事に反応したではないか。また原木ではダメなわけで、見せる形にしなければならない。

お米も一緒なんだな。もはや栄養をとって腹を満たす素材ではなくなっている。米を売るのではなく、テロワールで売る。料理で売る。たとえば玄米ではなく、おにぎりで売る。売る人の人柄で売る。そんな覚悟がいるのだろう。

2021/10/12

シュールな大極殿南門

平城宮跡に大極殿南門の復原工事が進んでいる。

大極殿は、天皇が儀式・執務をする巨大建築物だが、その周辺の復原として南門をつくっているのだ。この度、素屋根を横にずらしたというので見に行ってきた。

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なんか、シュールというか、古代建築物の復原なのに、近未来的な鉄の屋根がある。いわば建築用の足場と囲いだが、いよいよ中の建築が完成したので、それを横に引っ張ってずらしたというのだ。私が頭に浮かんだのは、サンダーバードの基地(笑)。

ずらす前は、こんな感じ。

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さて、これも復原・復元であって、文化財の修復建築でないのは言うまでもない。設計図が残っているはずもないから、想像で描いた部分も多分にある。

沖縄の首里城の再建工事と似た立場である。時代の差が1000年以上あるので、より想像部分が多いだろう。ここでは、どんな木が使われているか。

木材としては8000の部材があるそうだ。使われたのは、主に紀伊半島のヒノキ。なかには樹齢200年近くの吉野ヒノキもあるそうだ。大木である。もっとも太い柱となる原木の直径は80センチくらいか。人工林からであって天然木ではないはずだ。でも、Yahoo!ニュースにも書いた通り、文化財でもないのに貴重な大木を使うことの是非を考えると、悩ましい。

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使われた木のサンプル。

南門の完成は、来年3月を予定。でも次は、両隣に東楼、西楼を建てる。なかなか終わらんのである。

 

 

2021/09/21

ダイソーのヒノキオイルの成分は?

百円均一ショップであるダイソーが、国産ヒノキオイルを出した、という。

これまでもアロマオイルは売っていたが、それは合成香料で、本物のヒノキなどから絞り出したエッセンシャルオイルではなかったはずだ。だが、今回は、明確に「国産ヒノキから」と書かれている。なんでもStandard Products by DAISO という店で販売しているらしい。

Photo_20210918150402 サイトから借用

まさか、ヒノキオイルが100円で??? 通常数千円するんじゃないのか、と驚いたが、値段は550円だった。それにしても安い。
だが、よく見ると4ミリミットル瓶である。なるほど、それならギリギリ採算は合うか。なお香りは、オレンジ、シダーウッドヴァージニア、ティートゥリー&ユーカリ、ユーカリ、柑橘ブレンド、プレーンとある。主に福井県の木材のほか、東京檜原村や四万十ヒノキを使うらしい。販売価格からすると、原価はどのくらいだろう。多分、厳しい取引条件があったに違いない(^^;)が、逃げずに契約に至っただけでも、ほかの林業地に差がついた。

ダイソー/ヒノキオイル・箸発売

しかし、ダイソーがなんでまた……。実はヒノキオイルだけではなかった。アロマブロックやスモークチップ、カトラリー(箸)などの17アイテムもあった。全国のダイソーで扱うぐらいになれば面白い。そうなると莫大な量が必要だ。オイルはともかく、ほかの箸やブロックなどなら可能ではないか。価格は300円とか、やはり安い。

そんなに売れるとも儲かるとも思える商品ではないが、やはり環境配慮を掲げている。しかし4ミリミットルのオイルは何に使うのだろう……まあ、アロマテラピーの入門編かね。最近は、ヒノキの香りのコロナウイルスへの抗ウイルス作用も指摘されているが……。

ちなみにヒノキには、ヒノキチオールはほとんど含まれていない。もともと発見されたのはタイワンヒノキからで、日本のヒノキにはないのだ。むしろ青森ヒバによく含まれている。ただ木曽檜には若干含まれているというから、ヒノキの品種とか育ち方にも生成に関わるのかもしれない。まあ福井県や高知県のヒノキには含まれていないだろう。

つまりヒノキオイルの成分はヒノキチオールではなく、αピネンなどである。これはヒノキ以外の木にも含まれている。

 

2021/09/06

復元家屋の木の種類

生駒山の森林公園で見かけたこの標識。

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ケヤキとな。しかし、この板の木目はどう見てもスギ……と立ち止まって考えて、気がついた。ここで「欅」と記しているのは、背後の樹のことなのだ。この木をケヤキと記す標識の板はスギ板なのであった。おそらく公園内で倒れたスギの有効利用なのだろう。

あまりに当たり前のことに引っかかっていた私は自分をアホかと苦笑いしたのだが、復元した家屋の木材の種類まで同じにするのは難しいだろうと気がついた。地元で復元中の平城宮の大極殿とその周辺の南門も、できるかぎり国産のヒノキを使っているが、全部が全部同じではない。

それで思い出した。佐賀県の吉野ヶ里遺跡。

ここにもかつての弥生~古墳時代の宮殿や家屋が多く復元されている。

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ただ、事前に読んだ本によると、吉野ヶ里遺跡の建築物の多くはモミの木で作られているらしい。当時、九州ではモミがもっとも普遍的に生えている大木だったらしい。スギやヒノキは少なかったのである。そこで、見た復元建築物は……。

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どう見てもスギの木で建てられていた。ちょっとがっかりした(笑)。

今ではモミの木を大量に仕入れるのは難しい。それこそ外材のモミならあるが、国産とは若干種類が違うのだろう。別にいちゃもん付けるつもりはないのだが、完全復元というのは難しい。文化財といえども、樹種までこだわらない。(あるいは文化財系の関係者は、形などにはこだわっても素材の樹種には興味を示さないのかもしれない。)
そういや沖縄の首里城も、以前はタイワンヒノキで建てていたし、今度の復元には国産ヒノキを使うそうだ。明治までの宮殿がヒノキで建てられていたという証拠はないというか可能性は低いのに。むしろ沖縄のイヌマキを使いたいところだが、底をついているから無理として、スギは使わない・使いたくないらしい。

ちょっと脱線してしまったが、「これがケヤキだ」と示すのにスギの板を使ってもいいじゃないか(笑)ということである。

 

2021/07/29

ヨーロッパの家具市場

先日、ヨーロッパの木材事情に関するセミナーがあって顔を出してきた。基本、日本の木材(奈良の木材)を輸出できるか、というテーマだったのだが、そこで配られた資料を見て、ちょっと気になった点。

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この左側の円グラフを見てほしいのだが、ヨーロッパの林産業の経済規模では、なんと家具が45%以上を占めているのだ。製材は15・7%しかない。そんなに家具市場が大きいのか?

これは経済規模だから、木材の量ではないし、またすべて域内の生産と販売でもない。輸入家具も多いのだろう。家具の価格は製材品より遥かに高いから大きく膨らむのだろうが、それにしても木材製品の半分近くを占めるのか?(「その他」の多さも気になる。)

ヨーロッパは、木材を建築材以上に木工品、それも家具のような大きなものから小さなグッズの比重が高いのかもしれない。たしかに建築では、わりと金属や石材とミックスしている。

ちなみに家具の多くは広葉樹材だと思われる。

これと同じ品目で日本の木の経済規模統計はないだろうか。私は見たことはない。仮にあっても、家具がこれほど大きな比率を占めるとは思えないが、いかがなものか。日本の家具は、合板や段ボール製もあるし、金属製も少なくない。木質家具というくくりの統計があるのだろうか。

ヨーロッパ人は高い木製家具が好きなの? たしかに高級家具ブランドの多くはヨーロッパにある。

この点を詰めて考察していけば、木材利用の観点が変わるような気がする。

 

2021/06/16

気持ちが悪くなる木造建築

「ウッドショックからウッドチェンジへ」

そんなキャッチフレーズがある。森林林業白書の公表や、5年ごとの森林林業基本計画とか、木材利用促進法の改正などなど、林業関係の発表にちなんだ林野庁からコメントに登場するのである。

まあ、キャッチフレーズとしては悪くない。木材価格高騰で騒がれるウッドショックを、木材利用促進にチェンジしたい気持ちもわかる。林業振興、山村再生、それに世の中、これからは「脱炭素」ですから……。

だが、へそ曲がりな気持ちがムクムクと湧いてきた(笑)。木材のどこがそんなにいいんだ、とにかくネコも杓子も木材に変えればいいのかよと、思ってしまう。木材を経済や環境問題の道具として取り上げるが、その前に木材の良さを感じているのか。人間の官能が木にどんな反応をするのか考えたのか。いや、誰でも木材は気持ちいいに決まってる、目にしても触っても、臭いを嗅いでもみんな木の家が好きじゃないか……と自明のようにいうが、それは怪しい。

そして、気持ち悪い木造建築だってあるんじゃないかと考えてみる。木をたっぷりつかっているけど、なんか違和感があるとか、似合わないとか。それがデザイン上のことなのか、使い方を誤っているのか。

そこで自分の経験上、気持ち悪かったのはどこのどんな建物か記憶をたどる。
一つ浮かんだ。あれだよ、あれ。和を究めた……なんて言い方をしていたあの建築は気持ち悪かったぞ。

建築物を名指しするのは申し訳ないが、出さなきゃ伝わらないだろう。

京都迎賓館である。外国人の賓客を迎えるために、京都御所の一角に建てられた、あの建物。気張って日本の木の文化を伝えるんだ、と木造の和風建築なのだが。

私は見学する機会があったのだが、その時に感じたのは、なんか温泉旅館ぽい。和の雰囲気が全然ないというか輪郭がぼやけている。大味で繊細さが感じられない。使われた材料は最高級なんだよ。また随所に職人業は光っている。木組みや加工部分だけでなく、刺繍やら彫り物やら。漆芸もあったかな。しかし、なんか建物としてはしょぼい。安っぽい。

これが日本文化だと言われたら情けなく感じる。(※個人の感想です。)

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だだっぴろい。天井が高い。床材はWPCなのかテカテカ光っている……。

仕方なかったのかもしれない。外国人向き、それも団体さんのケースが多いだろうから、天井を高くして広間も大きく取って。土足で上がることもあるからプラスチックで固めた床にしたのかも。でも、なあ。

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この天井張りも、気持ち悪い。長さ10メートル近い吉野杉をつかっているのだから、ものすごく贅沢なんだけと、胸がざわざわする。だらりと無節の木目が伸びているのは、冗長な感じだ。(※個人の感想です。)

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この表具は職人業だ。3枚の障子の木目が、脇に寄せて合わさったときだけ見える、揃った木目。でも……その外には金属サッシのガラス戸があるんだね……。職人業を全体のデザインで殺しているような。(※個人の感想です。)

実は、この迎賓館は鉄筋コンクリート建てだった。内装だけ木質にしたのである。それも外国人要人を迎える前提で耐震耐火を考えると仕方ないのかもしれない。しかし、素人でも「コンクリート製なんだな」と見破れるというのはいかがなものか。それに気づかぬような工夫はできなかったのだろうか。

外国人には、これぐらいでいいだろ、となめていません?(※個人の感想です。)


実は、この迎賓館を訪ねる少し前、同じ京都の二条城を見学していた。いうまでもなく、御所の近くに徳川幕府の威信をかけて建てた城であり、江戸時代の代表的建築だろう。そして大政奉還の舞台にもなったことで知られる。
入ってすぐに感動した。これが和の建築か。木の文化か。粋を感じたね。古さとかは関係ない。建物から染みだす威厳があった。当時の日本人の身長に合わせているからか、造りは全体に小振りな印象を持ったが、実は壮大な世界観が広がっているように感じて圧倒された。
それと迎賓館を比べるのは……ちょっと失礼か。

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もちろん京都迎賓館を見て、感動する人もいるんだろうけどね。好き嫌いは個人の感性によるから、いろいろな感想があるだろう。でも私は、げっそりしたよ。底の浅さを肌で感じてしまった。理屈じゃない、五感で感じる違和感。

ウッドチェンジと言ったって、高い材料をツギハギに使えばいいわけじゃない。「こんだけ木材使えば満足かい?」という態度が見えしまったら、台無しになってしまうんだよ。

もちろん、これは個人の感想です(^^;)。

2021/06/11

仏塔の見せかけ手すり

買い物途中に、ふらりと思いついて法起寺を参拝した。法隆寺の近くの小寺だが、由緒正しく万葉の姿を伝えている。聖徳太子の建立と伝えられ、世界遺産の一つだ。いつも横を走って三重の塔を見ているが、中に入ったことがないもので。コロナ禍の今こそ、参拝のチャンスだ!

が、なんと団体さんがいたよ。。。しかもガイドがマイクで解説して、密集している。アカンがな。

私は仕方なく遠巻きに見学していた。十一面観音菩薩像は、スギの一刀彫だそうである。写真撮れたらなあ。

そして、この三重の塔。創建は飛鳥時代だが、幾度か焼けて、現在の塔は江戸時代再建のようである。

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ふと気づいたのだが、三重の塔の屋根の下には、「手すり」状のものがついてある。あれ、よく考えるとヘンだ。

この手の塔は、見かけこそ五重、三重になっていても、実は中の構造は一階建てのはず。とくに階層はなく、下から上まで吹き抜けているのだ。それなのに、いかにも三階建てに見せかけているのだなあ。改めて確認すると、法隆寺や興福寺の五重塔も、そのほか各地の仏塔にも、全部手すりがついてあった。誰がベランダ?に出るんだ。

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こちらは法隆寺の五重塔のアップ。ちゃんと「手すり」がある。

ところで全国版でどのくらいニュースになっているか知らないが、先月また奈良でえらい遺跡が発掘された。

奈良市の菅原遺跡で円形の建物跡が見つかったのだ。奈良時代では日本にほかに例を見ない円形構造なのだ。円状に並んだ柱穴が15カ所(おそらくもう1ヶ所で16カ所)発見され、柱穴の内側にあった基壇とみられる凝灰岩も円状だった。柱穴が描く円の直径は約15メートルで、円堂や多宝塔といった建物だった可能性があるという。

八角形の建物は、そこそこあるが、完全な円形建造物は、時代が下ってもそういくつもない。日本では珍しいものがあって、南アジアの仏塔ストゥーパではないかという意見も。ストゥーパは卒塔婆である。ここに、三重の塔・五重塔・多宝塔などとは違う円形仏塔があったのかと思うと楽しい。基盤の直径が15メートルだとすると、高さはそれ以上だろうから、そこそこ見応えはあるのではないか。

建物は高僧・行基を弔う施設だった可能性がある。行基は、東大寺を造営した僧として知られるが、そのほかいくつもの事績があって、生駒山のスーパースターなのだ。ちなみにその墓は生駒の竹林寺にあるが、古墳のようだ。

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遺跡も、我が家からそう遠くない。ただ住宅地のど真ん中で、遺跡も住宅開発の途中で見つかったらしい。だから、今後、破壊される可能性が高い。当然、保存の声は出ているが、周辺は高級住宅地だけに地価も跳ね上がるから、自治体の買取は難しいかなあ。しかし、こんな類例のない遺跡を破壊して、そこに住宅を建てるなんてもったいない。

 

この年になって、古代建築に興味が湧いてきたのであった。

2021/06/03

「バイオマス白書2021」で見えたイヤな未来

森林林業白書に続いて、今度はバイオマス白書。ただし発行元は官庁ではなく、NPO法人バイオマス産業社会ネットワークである。

バイオマス白書2021 サイト版

紙版もあるが、ネットでも読める。毎年読んでいて、いかに日本のバイオマス発電が歪んだ方向に進んでいるか痛感させられているが、今年は、いよいよアメリカに続いて日本もパリ協定に参加して目標を定めたことから、再生可能エネルギーの中でもバイオマスエネルギーに目が向けられることが意識されている。2050年に二酸化炭素排出ゼロの目標には、カーボンニュートラルが売り物のバイオマスエネルギーが欠かせない。しかもいろいろあるバイオマスの中でも、バイオマス発電色を濃くなってきた。

全般の状況やFIT価格の問題などは、ぜひ内容を読んでいただければと思う。

私が、コラムのいくつかのテーマの中で目に止まったのは、広葉樹利用だ。

今、国も自治体も、急に広葉樹林業、広葉樹利用を声高に唱えだした。私は、この動きよりはるかに前から広葉樹材に注目せよ、と言ってきたと自負しているのだが、現在の動きに関しては喜ぶどころか危惧している。

私の推している広葉樹利用とは、あくまで用材であり、広葉樹材は針葉樹材より硬くて人気があり高く売れるからなのだが、今の政府の主張はそうではない。(はっきり打ち出してはいないが)あきらかに広葉樹材のバイオマス利用を指向している。
そう、バイオマス発電所はたくさんつくったものの燃料不足、つまり燃やす木材が足りないのだ。そこで人工林の針葉樹材ではなく、里山林や天然林を伐って燃料にすればいいんだ、日本の森林の6割は広葉樹林なんだ、人工林の針葉樹材にこだわることはないんだ、伐っても萌芽更新してくれるから再造林の心配もいらない、広葉樹を全部チップにして燃やそう……!(と叫んでいる某者の姿が私の脳裏に浮かんだ。)

おぞましい発想である。そもそも天然林と二次林の区別もせずに、施業方法だってほぼ皆伐方式だろう。

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某地の広葉樹チップ工場

「広葉樹林のまちづくり」というきれいな言葉に騙されるな。今でも使い道のほとんどは、製紙チップ(ならまだましだが)か、燃料チップだ。もし本気で広葉樹材の利用を考えるのなら、専門の伐採技術を確立させ、木工産業と組み合わせなくては成り立たない。そこまで考えて「広葉樹利用」を言わないと、バイオマス業界に飲み込まれるよ。

 

2021/05/26

フィンランドの木質繊維材料

時折フィンランドより、プレスリリースが届くのだが……今回は木質繊維を開発しましたよ~というご案内。

「フィンランドの持続可能なスマートテキスタイル、 森林から循環型ソリューションへ」
今後、木造建築や、 製品、 容器に使われるプラスチックの代替となる木質材料、木質繊維材料などが注目されると予測されます

とあって、フィンランドのメッツァグループと伊藤忠商事が共同開発したのが、新しいセルロース系繊維「Kuura」だそうだ。森林から既製品を作り出し、廃棄まで製品のライフサイクル全体を研究しているそうである。
まず繊維産業は、毎年、世界で約9200万トンの繊維廃棄物を発生させていると環境へのマイナス面を訴えている。その上で木質繊維には、それを打ち破るソリューションとなるという。

肝心の繊維の製造法などは示されていないのだが……昔懐かし?レーヨンとか、日本で開発された紙にしてから紡ぐ手法の「木糸」繊維があるが、それとは違うようだ。

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まあ、写真からは木繊維を綿のように紡ぐらしいことはわかる。
ただ最後の写真、アチラでも杼(ひ。織機の道具)をつかうのだな、という別の関心が。日本に一人しか職人はいないのだが。

リリースでは、
フィンランドは、 木質製品を使った低炭素ソリューションや気候変動対策で世界をリードしています。 原材料を十分に確保することができます。 フィンランドの森林は責任を持って管理されており、木材を伐採する際には自然環境を尊重するよう求められています。
フィンランドでは、 森林の大部分は個人所有されており、森林の所有権は家族の財産の重要な一部であると考えられています。

と、いかに環境に優しく持続的に生産している繊維かと強調している。本当にそうか、フィンランドを視察させてくれ~と、前も叫んだような気がしますが(^o^)。
そして木質系繊維は林業にとって重要な新しいビジネスチャンスを生み出す可能性があるとする。たしかに、木材を木材のまま活かす需要は世界的に頭打ちだろうし、すでにだぶついて価格下落傾向にある。かといって燃料のような安価な使い道も願い下げだ。繊維というのは一つの道かもしれない。テキスタイルは商品によっては高値をつけられる。消費量も莫大だ。ただ、原料としての木材は高く買い取られるのかどうか、ちょっと疑問だが。

また繊維産業と生産ラインを変えるには、 国籍を超えたグローバルな協力が必要、と訴えているのは日本と協力しようという意図だろうか。

そのほか、フィンランドが世界初の「循環型経済への国家ロードマップ」(2016-2025)」を作成したことも記す。ほかにもLVL建材による建築なども紹介しているが、そこではこんなものも紹介しているよ、とのことである。

バイオベースで堆肥化可能なSulapac社のカトラリー
スタイリッシュなNiimaar社のリサイクルステーション
 PureWaste社の産業廃棄物やペットボトルをリサイクルして作られたパビリオンスタッフの服
 Dolea社の持続可能なストロー、
Cireco社のストーンレメント石製品
 Siparila社の木製インテリアパネル
 Nikari社、 Made By Choice社、Woodnotes社、 Lundia社、 Iittala社など、フィンランドのトップデザインブランドが提供する持続可能な形で製造された多くの家具や製品

熱心だなあ。日本の林業・木材産業界も、これぐらいのリリースをしないとダメだなあ。いや、リリースする内容を持っていないか。

 

2021/04/27

「分けたら資源」だけど、分けたら資源が消える?

津山に行ったのは、コロナ禍ご時世に遠路出かけて飲んで歩き、お城見学するため、だけじゃない。

ちょっと寄ったところがあるのだが、そこで見かけたのが、こんな製材品。

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これ、間柱として購入したものなのだそうだが、無節、せいぜい上小節までの逸品に見える。56枚あるそうだ。

でも、これは最初からそうした商品として購入したのではなく、全体は180枚の間柱だった。

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こちらが、そう。よく見ると死に節もあって、2等品扱いか。集成材のラミナぽくもある。ただ、その中から無節、上小節を抜き出したら56枚あったというのだ。ほぼ3分の1。無節の間柱だったら見る目が変わる。もともと間柱は、荷重を支えることもなく、壁を支える下地だから、少々の節があってもかまわない……はず。でも、やはり無節・上小節を好む施主もいるだろう。

仕分けたら、無節の板として価格を上げることもできるだろうに……と思ってしまったが、おそらく仕分ける手間が無駄なんだろうね。全部まとめて幾ら!と売った方が楽だし、そもそも用途的にはあまり人の目に触れないし。結局は仕分けコストを掛けない分、利益も多いことになるのか。

なんとも、日本の林業の現状を象徴しているように感じた。「混ぜるとゴミ、分けたら資源」という標語があるが、いや分別する手間をかけたら「資源」の価値が消えるのよ。A材でもバイオマス燃料にした方が利益は手取り増えるのよ……。

一見、もっともな発想だ。それが木材の価値全体を下げてしまうのだろうけど。

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