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森と林業と田舎の本

2021/07/16

テレビで紹介されたフォレスターアカデミー

今夜9時から、久しぶりに奈良テレビを見た。いやあ、地元局なんだけど、いつもテレビショッピングばかりやっている局なんで……(^^;)。

見たのは、「奈良フライデー9」という番組で、そこで奈良県フォレスターアカデミーを取り上げていたからだ。

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実は、私は入学式に列席して以降、まだフォレスターアカデミーに行ったことがないんだよね。覗いてみたいなあ、と思いつつ、近くまでは何度も行っているんだけど……遠慮の塊になっておりまして……(^_^) 。

だから、どんな様子か知りたくて、この番組を見たわけだ。
うん、わりと真っ直ぐというか、ちゃんと本筋を抑えて説明していてよはかった。これまではニュース的扱いで、全国に開校相次ぐ林業大学校の最後列……みたいな感じだったのだが、20分近く費やして、開校した意図も含めて学生や学内の様子を紹介していた。
もともとは防災からスタートしていて、林業振興よりも国土保全の意識が強いこと、地元とのコミュニケーションを重視としていることなど。

ちなみに、「フォレスター」という名称から欧米のフォレスターと比べられがちだが、私はちょっと違うと思っている。奈良県フォレスターには、ある意味、県職や市町村職員の森林林業担当と同じで、公的意識が重要だと感じるからだ。林業という産業振興を軽んじるわけではないが、まずは健全な森林でしょ、それをつくることが先にあって、それができたら防災にもなるし、生物多様性も保てるし、レクリエーション効果も高まるし、(オマケのように)林業も営めるということである。その点、林業振興のためなら森林を破壊してもかまわない、と思っている林〇庁とは違う( ̄∇ ̄;) 。

……ところで、白状します。実は、リアルタイムで見ていない。9時10分からは「サマーウォーズ」見ておりました(^_^) 。やっぱり、こっちの方が魅力あるもんなあ。頭の10分を見た後に、録画したのを今見たのでした。

今度、こっそりアカデミーを覗き見しに訪ねてみようかな。

 

2021/07/12

『地球を滅ぼす炭酸飲料』の描く世界

地球を滅ぼす炭酸飲料~データが語る人類と地球の未来」(ホープ・ヤーレン著 築地書館刊)。

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本書のタイトルはちょっとミスリード。むしろサブタイトルが本筋だろう。英語版は2020年3月の発行だから、すぐに日本語版発行へと進んだようだ。ちなみに原題は『The Story of More』。これ、直訳はなんとすればいいだろう。とくにMoreが……? 「詳しい物語」?「より多くの物語」? いっそ「もっと、もっとの物語」(笑)。「もっともっとちょうだい」と言う人類の欲望の物語。

内容の前に著者を紹介する。ホープ・ヤーレンは地球生物学の科学者で、2016年にタイム誌から「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれた。ハワイ大学に終身在職権のある教授だったが、2018年にオスロ大学に移った。どうやらトランプ(前)大統領の影響もあるらしい。ノルウェー科学文学アカデミーのメンバーでもある。

・[目次]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

日本語版に寄せて

第Ⅰ部 生命

第1章 著者、気候変動に取り組む
第2章 増え続ける人口
第3章 延びた寿命
第4章 都会を目指す

第Ⅱ部 食物
第5章 穀物の過剰生産
第6章 太りすぎた家畜
第7章 過保護な魚たち
第8章 炭酸飲料は砂糖がいっぱい
第9章 作っては捨てる

第Ⅲ部 エネルギー
第10章 エネルギー使用量の急増
第11章 頻繁な移動
第12章 植物は燃料不足解消の救世主か
第13章 タービンは回る

第Ⅳ部 地球
第14章 変化した空気
第15章 気候温暖化
第16章 解けていく氷
第17章 水位の上昇
第18章 大いなる別れ
第19章 もうひとつの道

付録 無駄を減らす
1 あなたがとるべき行動
2 変化はあなた自身から
3 環境問題の現状
4 情報源ならびに推奨文献

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

データを駆使して地球環境問題を語っている。基本的に気候変動やエネルギー問題、食料問題などがテーマだ。

タイトルの炭酸飲料も、問題としているのは、そこに含まれる砂糖と異性化糖(ブドウ糖果糖)だ。と言っても、日本人がすぐに飛びつく「合成甘味料は健康に悪い」レベルではない。そんな「思いつき批判」には目もくれず、ブドウ糖果糖の原料となるコーンの出自を追求する。コーン栽培に使われる莫大なエネルギーと水。実はアメリカで生産されるコーンの何割かがこの砂糖もどきに化けている。そして、多くが捨てられている。全世界でコーンとして食べられるのは、アメリカの生産量の10%にすぎない。

ほかに私が注目したのは、人口が増えたことよりも、消費するエネルギーや食物の増加の問題だ。人口は2倍になって、エネルギー消費は3倍になったのである。食料も、実は人口以上の生産が行われて余っている。穀物の半分は家畜の餌に回り、さらにバイオ燃料や異性化糖に使われていいる。畜産も、よりガタイの大きなウシ、ブタ、ニワトリが開発され、成長も早く肉と乳を生産するようになった。
にもかかわらず8億人が飢えている。単に人口が増えたから飢えている、のではないのだ。

そのほか複雑な気候変動の実態と再生可能エネルギーの欺瞞も淡々と指摘する。

森林に関する点は少ないが、二酸化炭素の吸収源と認められていることに触れている。だが、いわゆるカーボンニュートラルが成立すまには何十年もかかるため、目先の削減には結びつかない。逆に目先は大気中に二酸化炭素を増やしてしまう……。

さて、カーボンニュートラルの欺瞞は、私も指摘してきたことである。とくに森林が二酸化炭素を吸収源となって地球温暖化を助けてくれるという発想に。世間の思う環境問題と、現実はズレているのだ。

実は、現在執筆中の本の原稿でも、この問題に触れる予定である。森の機能を一般常識とは違う異論からの視点で語ろうと思う。森が地球温暖化を進め、森が山を崩す。植林が自然を壊す。花粉症は自然の摂理。
タイトルは本書にちなんで『The Lie of More Foresty!』とでもするか。日本語版は(日本語版しかないけど)『地球を滅ぼす「木を植えろ!」』なんてどうかしら。プライドがない。。。

 

2021/07/11

「安いニッポン」~日本が売るべき「林業」

『安いニッポン~「価格」が示す停滞』(中藤玲著 日経プレミアシリーズ)を読んだ。

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タイトルで、ほぼ中身がわかる。とにかく日本の物価が異常なほど安いことを示している。そして、それこそが経済低迷の主要因なのだ。
帯文にあるとおり、アメリカでは、年収1400万円の人材は「低所得」に分類されてしまう。そして世界中のディズニーランドでも日本は破格に安い(でも、日本人には高く感じる)入場料とか、給与の実態が示される。

ダイソーショップに関しては、100円均一なのは日本だけで,台湾が180円、中国本土160円、マカオ200円、アメリカ160円、フィリピン180円、タイ210円、イスラエルにいたっては320円……。中国製品も多いのに、中国の方が高い(-_-;)。

ようするに世界中で物価は上がり続けているのに、日本だけは横ばいから下降気味だから。この物価安こそ日本経済の停滞の象徴なんだろうが、なぜ安いかと言えば、安くないと買わない消費者の存在があり、安くするために社員の賃金を安く抑え、社員の収入が低いということは消費者の収入が低いことになる。だから安くないと買えないわけだ。

私が目を見張ったのは、『崩れる日本のお家芸「アニメ」』の章である。

今、日本のアニメーターがどんどん中国企業に引き抜かれているらしい。中国ではアニメ市場が爆発的に広がっているが、まだ人材も技術も足りない。そこで日本にアニメ製作会社を設立して日本のアニメーターを雇うのだが、給与は3倍以上、休暇など待遇もよいところが多いらしい。これなら、こぞって転職するわな。日本のアニメ製作現場の劣悪さはことに有名だもの。やりがい搾取の最たるものだ。
そして中国企業傘下でアニメをつくれば、日本だけでなく中国全土、世界の中華世界全域にまで通用する。市場規模が全然違ってくる。

これは、喜ぶべきことだ。ひどい雇用環境を打ち破る契機になる。日本のアニメーターは全部、外資に転職すればよいのではないか。そして中国アニメ制作会社の下請けとして作品をつくり、それを日本が買えば(買えたら)いい。日本語で、舞台も日本のアニメでよいと思う。

同じ理屈でネットフリックスでは、ドラマ制作費が日本の何倍も出る、しかも制約が少ない。日本では自主規制とかスポンサーの意向でつくれないテーマの番組もつくれるというのだ。

そして、ここからが肝心なのだが、私は林業も同じになったらよいのではないか。外資が日本の森を奪う、なんてデタラメ並べて騒いでいる場合じゃない、外資に売るべきなのだ。ただし、山や森を売る必要はない。というか売れないだろう。売るべきは素材生産業界である。

中国だけでなく欧米の外国資本と経営陣で素材生産会社を設立してもらう。日本人の林業技術者を給与は3倍ぐらい出すと言えば優秀な人を引き抜けるだろう。働く舞台は地域に縛られる必要はない。日本全国を機動的に動くのだ。経営トップは、山主に対しても立木価格を2倍にすると宣言して営業すれば、十分に施業地を確保できるだろう。

肝心の木材の売り先は、従来の木材流通なんぞすっ飛ばして建築業界、あるいは施主などエンドユーザーと契約を進める。製材、プレカットなどは賃挽きにする。使い道を先に決めるのだから、木材に無駄が出ないし、各施業や工場稼働も計画的にでき閑散期がなくなる。在庫も消える。営業コストも浮く。これなら流通マージン(というより流通ロス)をカットできて、賃金や立木買取に高値を出す資金も調達できるだろう。また高級材は海外へ送ってもよい。販路開拓は、国際的に行うのだ。ファイナンスは、たとえば施主の住宅ローンを担保にして調達するという手もある。赤字になりそうになっても、日本は補助金があるから心配いらない(笑)。

ちなみに過剰伐採の禁止や再造林の実施なども事前計画に組み入れて、第3者が監査する制度をつくればよい。日本の業者より真面目にやってくれるだろう。いや、その前に日本の企業の大半が失格するだろう。再造林を真面目にやっている業者なんて、日本では3割ぐらいだから。外資の方がよい森づくりをしてくれるはずだ。
日本の資金が海外流出する? なに、日本人を雇用し、賃金を高くするんだから、税金もたくさん払ってくれる。今より税収は増えるだろう。

山主も従事者も製材業者も喜ぶはずだ。誰も困らない……素材生産業の経営者以外は。いや、真面目な経営者なら外資に負けないよ。真面目な経営者なら。

林業界は、やりがい搾取が甚だしい。だいたい現在の林業に不満を持って愚痴ばかり言っている人ほど、この業界から離れない。賃金が低くても、理不尽な仕事が多くても、林業をやりたい、と言う人が少なくない。それに付け込まれていることに気づかないから、経営者がやりたい放題になるのだ。

「安い林業」から脱出するには、もはや外資に期待するしかない。巨大資本で業界をぶっ壊さないと変わらない。

 

2021/06/26

『森林で日本は蘇る』を読む

『森林で日本は蘇る 林業の瓦解を食い止めよ』(白井裕子著 新潮新書)を読んだ。

覚えている方もいるだろうが、著者は以前『森林の崩壊』を書いた人だ。工学博士で一級建築士。だから木造建築の分野から森林問題に入ってきたと言えるだろう。

この際だから書くが、前著はあまり評価していなかった。森林や林業をちょっと学んだかな、という印象で、林野庁など政府の言い分をそのまま信じているかのような箇所もある。そして最後は伝統木造建築礼賛になっていたからだ。伝統構法を建てさせない法律には問題あるが、基本林業にはたいして関係ない。

 

それでも今回、出版直後に読んだわけだが……書いていることは大きく変わらないのだが、印象はかなり違う。

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その前に目次を示しておこう。

はじめに

第1章 日本の建築基準法には自国の伝統木造は存在しない
木の長所と魅力を活かした伝統的な構法がないがしろにされている。大工棟梁の技能も伝統構法も世界に誇れるものなのに……。
第2章 自国の伝統文化は国益に直結する
景観や建築を自国の財産としてきたフランス。思想も哲学もない日本の建築基準法は一体どこを目指しているのか。
第3章 山麓の小さな製材所が持つ大きな可能性
木材の良さを生かせない制度、政策が価値を下げている。闇雲な大規模化を目指す前に足元にある知恵を見直すことがチャンスを生む。
第4章 誰のためのバイオマス発電か
あまりに違う欧州の真似をしても資源も産業も疲弊する。バイオマスは、エネルギーを使う現場から考える。
第5章 美しい山林から貴重な銘木が採れる列島なのに……
かつて銘木には1本3000万円以上で取引されたものもあった。いまでも価値ある木は存在しているはずなのだが……
第6章 森林資源の豊かさと多様性を生かせない政策
諸外国が羨むほどの森林資源を活用できないのはなぜか。豊かな資源で海外へ、将来へ打ち出す戦略を。
第7章 山中で価値ある木々が出番を待っている
日本の木の素晴らしさを日本人はどれだけ知っているのだろう。この価値を高める製材業と林業の復活を。
第8章 林業機械から分かること
欧州の林業技術展の面白さはどこからくるのか。日本は何よりもまず死傷事故を減らすこと。
第9章 いつの間にか国民から徴収される新税
補助金で縛るほど、林業は廃れる。本質的な改革と成長は、おのれの意欲と意志で動き出すことから。
おわりに
謝辞

初っぱながまたもや伝統建築の話なんだが、今度はいかに建築基準法などの規制が伝統建築をを邪魔しているかという展開だ。私自身は伝統建築にさして思い入れはない(そもそも住みたいと思わない)ので、さらりと流した。

その後は、正直、一読して既視感。いや既読感。何がって、まるで拙著『絶望の林業』を読んでいるかのようだから(笑)。

徹底的に現在の林業事情を批判し続けている。補助金もバイオマス発電も林業機械も……よくぞ、書いてくれた(^o^)。私も書き切れなかったり、削った部分も含めて追求している。系統だってはいないが、私以外にここまで林業批判をしているのを目にすることはまずない。

『絶望の林業』との違いはというと、彼女は日本学術振興会の研究員などをやっていた関係で、政府の官僚ともつきあいがあるらしいこと。ワーキンググループなどにも入っていた。そのため内部情報というか、現場の官僚の発言なども紹介されている。

たとえば、ちょっと驚いたのは森林環境税のことだ。私はこの税を批判していた。これは増税だぜ、しかもバラマキだぜ、と言いたかったのだが、報道としては孤立無援というか、賛同者はほぼ現れなかった。ところが内閣府のワーキンググループでは批判続出だったらしい。成長産業にするといいつつ林業を公的管理下に置くための新たな税を取り、補助金的にばらまくとは何事か、というわけである。だが、見事に無視されたとある。内部の審議会の意見でも無視して突っ走るのだから極めて政治的なバラマキだ。識者の意見も形骸化。ガバナンスも疑うレベルではないか。外野の私の声などまったく響かないはずだ。

林業の補助金に関しても、他省庁から不満や批判の声が出ていたそうだし、そもそも補助金が林業関係者のやる気と思考力を削いでいることに官僚と気づいているかのよう。そして白書には、成功例しか載せない(成功したことにする)ことも。

どうせなら『絶望の林業』と抱き合わせて読むと面白いよ(笑)。

ただ異議はある。一番の問題は、タイトルだろう。「森林で日本が蘇る」点なんぞ、どこにも触れていない(-_-;)。あえて言えば、銘木の話。こんなに高く売れることもあるんだから……という点だろう。そりゃそうなんだが、昔の銘木は今は売れないのよ。今の銘木とは何か、がテーマになるのだ。

山村の小さな製材所だって、経営が維持できないから潰れるのであって、潰すなというのは経済原理に反する。まさか補助金で支えろというわけでもあるまい。潰れる理由は、経営者の能力の問題もある。全体に経済的視点が欠けているのだ。

 

とはいえ、『絶望の林業』を読んでも、まだ林業への愚痴が止まらない人は、読む価値はある\(^o^)/。読んで愚痴を言い続けようぜ。この本が売れたら、今後、林業・林政を批判する本が続出するかもしれない。(後に続け~!)

2021/06/12

YouTubeに『獣害列島』の朗読を発見!

いやあ、偶然ながら驚くべきものを発見した。

なんと『獣害列島』の一部を朗読しているのだ。舞台はユーチューブである。

https://www.youtube.com/watch?v=6_FcEHQ3Qfs

 朗読しているのは、p111~p118,p150~p156。内容的には、「飽食の時代を迎えた野生動物たち」と「獣害対策は防護と予防にあり」の部分である。野生動物は餌に困って農地を荒らすのではない、と主張しているところと、草食系クマなどにも興味を示しているよう。

著作権的には、勝手に読まれて公開されては困るが、これぐらいなら黙認しよう。全部じゃないし、ちゃんとAmazonのサイトも紹介してくれている。これを聞いて興味を持ってくれたら、本全部を読んでほしい。本を購入して(^^;)。

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ちなみに私の本は、何冊か朗読されている。主に盲目の人向きのオーディオブック、録音図書だ。たしか日本点字図書館からの依頼だったと思う。その場合は本全部だが、私は了承している。おそらく当時はカセットテープだったと思う。その後CDなどに焼き直しされたのかどうか。

最近はSNSも音声版が登場しているし、時代は文字から耳で聞く方向に進んでいるのかも。ながら聞きにはいいけど、記憶にどれだけ残るのだろうか。

 

 

 

 

 

2021/05/23

『絶望の林業』7刷、タイ記録!

先日、大阪のジュンク堂書店梅田本店を覗いた。で、やっぱり確認したのは……。

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絶望の林業』、まだ平積みじゃねえか(笑)。しかも、かなりの部数が積まれていた。

報告したかどうか、5月25日付けで7刷が発行されることになっていてる。もう、出ているけど(^^;)。

私の本の中では、タイ記録だ。前回の7刷まで言ったのは『「森を守れ」は森を殺す!』である。当時は今より本が売れる時代だったので、部数も伸びたし、その後文庫化もされた。今の世情は激変(出版界の売上が半減)しているが、ともあれありがとうございます<(_ _)>。

この本出して、林業界と縁を切るはずが、そうもいかなくなったのは、誤算というか不思議ではある。
気がついたのは、「林業は~こうするべきだ」的な提言しても無駄であり、しない方がいいのではないか、ということ。むしろ「ここまでダメダメだから、もうどうしてもダメ」と突き放した方がいい。なかには自分でなんとかしたいと考えるのかもしれない。これって教育論みたいだ。突き放して、それで諦めるようでは、元からダメな人材なんだよ( ̄∇ ̄) 。
驚いたことに、この本を読んで林業界をめざす気になったという若者までいるんだから、世の中捨てたもんじゃない(笑)。まあ、リスクは自分で取ってください。

もちろんハナから反感つのらせる人や、全否定で入る人もいる。でも、そこで示す反論が、あまりに拙くて……。いかにも自分の方が実情を知っているとか、自分のやり方が絶対成功するとか鼻高々(笑)なんだが、それ自体が林業界ダメダメ説の証拠かも。こうした人がいることも、社会を俯瞰するネタにはなるが。

ともあれ、新記録8刷をめざそう。

2021/05/20

『大麻の教科書』と工芸の危機

日本人のための大麻の教科書」(イースト・プレス刊 大麻博物館著)を読んだ。

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妙な本である(笑)。これまで大麻と言えば、マリファナなどの向精神薬の素材であり、その麻薬としての危険性を説くか、あるいは無害だと言いつつスピリチュアルな方向にハマってしまうか、いずれにしろ面倒な代物であった。……そもそも著者は大麻博物館というのが面白い。栃木県の一般社団法人の経営だとあるが、どんな博物館なのか興味がわく。

私が以前取材した田舎の移住者の一群の中に、大麻栽培を行った人物がいて、その後逮捕されたニュースを聞いている。もしかして私も、それを目にしていたのかもしれない。田舎暮らしをめざす若者の中には、そうした世界に走りがちなメンバーもいるのだった。

とはいえ、この本を読んで意外な誤解を知る。
たとえば約1万年前の遺跡から大麻の種子が出土していること。(だから帯文には「私たちは、米より先に大麻をつくっていた。」とある) 
また本来は麻(アサ科)のことを大麻と呼んでいたこと。ところがその後リネン(アマ科)、ラミー(イラクサ科)を麻と法律で定めたため、これまでの麻を示す言葉がなくなり大麻に落ち着いたらしい。もともと麻の尊敬語?が大麻だったというのだが。

なお日本の大麻に向精神性の成分は含まれていず、昔から繊維製品であった。かつて奈良時代の租税だった租・庸・調の調とは麻の布のことだったとか、神道の宗教的儀式に欠かせないものだったとか。横綱のまわしは大麻製だとか。また大麻模様というデザインもあって、「鬼滅の刃」の竈門禰豆子の来ている着物の模様がそうだとか。。。。

気になったのは、大麻から糸をつくる技術が忘れられ絶滅寸前だったこと。栽培から繊維の取り出し、糸をうみ(つなぎ)、布にする一連の技術を持った人は、たった一人だけになっていたのだそうだ。それを博物館で把握したことから、その一人(会津の女性)のところに10年間通って技術を習得したという。また講習会を開いて技術を広げた。肝心の大麻の糸をつくれる人がいなくなりかけたのだ。ちなみに大麻を織って布にするのも、いまだに機械化できずに手作業だけだ。

これこそ、日本の伝統工芸あるあるだ。表に出ている工芸品は評価されて、なんとか伝承しようとする人はいるが、その前段の素材を生み出す技術は人知れず消えていく。

たとえば漆芸も、漆を塗る職人はいる。わりとアートとして漆器づくりに取り組む人はいるのだ。ところがウルシノキを栽培する人も少なければ、幹を掻いて樹液の漆を採集する人は極めて少ない。さらに精製過程をできる人・企業もほとんどない。
和紙も、紙漉き職人はいるのに、コウゾやミツマタ、あるいはトロロアオイなどを栽培する人は消えつつある。栽培しても、そこから繊維を取り出す手間が大変で取り組む人は少ない。
陶芸では、土をこねて陶器を造りたがる陶芸家・職人は多いのに、陶土の生産には目を向けない。
日本刀の刀鍛冶は人気でも、たたら製鉄や、その前の砂鉄の採掘は忘れられてしまっている。

そして水口細工と呼ぶ葛織物も同じだ。一時期、完全に技術が途切れてしまった。素材の植物のどの部分からどうやって繊維を取り出すかもわからなくなった。編むための縦糸の植物名もわからない。だから復活までは大変な苦労があったのである。葛細工は伊勢神宮の遷宮にも必要とされるのに、危うく消えかけていた。それについては、こんな記事を書いている。
「幻の葛細工」が消えた意外な理由

日本人というのは(いや世界中で同じかもしれないが)、工芸の最終製品づくりはまだ興味を持って保存運動も起きるが、その前の素材の生産には力を注がない性質があるのではないか。

そういや、木工とか木造建築には興味を向ける人はまだまだ多いが、その手前の木材生産つまり林業とか、木取り技術は軽んじられやすくないか? 木工職人あるいは木彫りアーティストとか、建築家・インテリアデザイナーは憧れの対象だけど、森を育てる林業家とか、丸太の木目を読んで銘木を切り出す木取りの職人はどんどんいなくなっている。

大人気に見えるアニメーションもその一つに入るかもしれない。アニメを製作すると言えば、キャラクターを創造して、ストーリーと絵コンテなどを考えて……と思ってしまうが、現場で絵を描き塗る技術は忘れられがち。今に作業の全部がCGに置き換わって自分で絵を描かなくなるかもしれない。


ちょっと脱線したが、大麻もよく似た状況に加えて、麻薬のイメージが色濃くて、栽培や研究も法律でがんじがらめの免許制のため簡単に生産できなくなっている。だから輸入品が増えている。

本書は、過剰に大麻に肩入れすることなく、淡々と歴史や現状を描いている。ここで大麻解禁の是非を論じる前に、基礎知識を知っておいても損はないだろう。

2021/05/07

蔦屋書店の『鹿と日本人』

奈良にも蔦屋書店ができた。いや、以前からTSUTAYAはあるが、大型店がコンベンションセンターに付設してオープンしたのである。

まあ、デカい。広さだけなら奈良県内で一番かもしれない。本の数はそうでもないが……。ただ品揃えが特徴的で配置も独特。だから、たまに面白い本を見つけることもある。それが目当てで、ぶらぶら見て歩くための書店。最初から何かの本を探そうと思っている時は、行かない(笑)。そんな時はジュンク堂書店でしょ。

今回、郷土本コーナーを眺めていると、目に入ったのが『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』。

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もちろん拙著だが、実はここに並んでいることは珍しい。『鹿と日本人』は、奈良のシカを通して、日本の野生動物と人とのつきあい方を歴史的に俯瞰しようという魂胆であった。ある意味、奈良のシカ・ナラシカと奈良人の関係は、人類の見本となり得る( ̄^ ̄)。
その一環で最近の獣害問題も扱っていて、『獣害列島』の先駆的な面もある。ただ本の表紙や帯には奈良のシカを扱っているとは一言も触れていないのである。

それは版元の戦略でもあり、奈良のシカに焦点が当たるとローカルな内容になって全国で売れない、と睨んだからなのだが……そのためか、動物・生物コーナーに置かれることが多い。奈良本コーナー(というのがあるのだ)にはなかなか置かれない。これって、痛し痒し。

なぜって、奈良のシカファンも全国に多いのだよ。奈良の人もしくは奈良ファンはなんだかんだと言って奈良のシカには興味を持っているわけだが、その人たちにこの本は気づいてもらえない。奈良の歴史、奈良の雰囲気が好きな人は相当するいるし、その中には奈良のシカへも興味を持つ人が少なからずいる。次の段階、ナラシカからシカという動物、さらに(ペットでない)野生動物全般に興味を広げてもらう作戦が発動されていない。。。

ところがこの蔦屋書店。見てくださいよ。郷土本の棚の中に二ヶ所も『鹿と日本人』の平積みがあるのだぜ(⌒ー⌒)。

これは、さすがに初めて経験。そんなにオシてくれるなんて(感涙)。ま、単に棚の空きを埋めるためかもしれないが。

 

なお、蔦屋書店である。本ではなくグッズコーナーも充実。そして奈良のお土産として、こんな棚もある。

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奈良の木工品コーナーである。ワッパなどもあるが、やはり注目は下の段の割り箸だ。なかには、3膳で550円(税込み)という高値も……これって磐城高箸の「希望のかけ箸」と同じ(^o^)だ。強気だなあ。売れるのか。

 

2021/04/17

「マンガ人類学講義」を読んだ

マンガ人類学講義 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか』(日本実業出版社)という本を読んだ。タイトルにもあるように、一応、マンガ。原作は奥野克巳、描いたのはMOSAという漫画家である。

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実は著者の奥野克巳氏は、立教大学の教授なのだが、以前に『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』という本を出している。これは、ボルネオの狩猟民族プナンをフィールドワークした本である。

私は、プナン族とは多少とも縁があるので、興味があった。何よりタイトルがすごい(笑)。ただ、実際には買わなかった、というか読まなかった。字ばかりだもん(^^;)。なんか読みづらそうだったのだね。ほかにも読まねばならない資料本が溜まっていたうえに、ボルネオとは少し距離を置いていたせいもある。

ちなみに私は、このブログ内で、かなりの回数プナン族について触れている。加えて著書にも登場してもらっている。せっかくだから、こんなインタビュー記事を紹介しておこう。

【インタビュー】森林ジャーナリストが追う、ボルネオ島で出会った“幻の民”やソロモン諸島の伝説

が、書店で、『マンガ人類学講義 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか』を見かけて、おお、マンガなら読みやすい♪ と判断して購入したのだ。タイトルが少し違うけど、マンガ版だと思って。

いやあ、全然違ったよ。いや、本質は同じなのかもしれないが、『ありがとうも……』をマンガにしたのではなく、まったく別の意図で書き下ろしたらしい。それは、マンガでなくては示せない人類学の内容があるのではないか、という発想から「マンガ人類学」という分野を作ろうという試みだというのだ。

実はマンガ本と言いつつ、後半40頁ほどは文字のページがあるのだが、そこに人類学の歴史から「文字に囚われた不自由から自由になるために」という論が述べられているのだ。

う~ん。深い。マンガだからさっと読めるかという目論見はすぐに崩壊して、読み出すと眠くなる(笑)。寝る前に読んだら、途中で寝ている。いや、それほど内容が深いということだ。1章読むたびにいろいろ考えてしまって、全然進まない。

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ああ、すでに、この本の内容を紹介する自信がなくなった。一つ一つは実に深いのだ。森の民の思想というか哲学というか世界観というか人生観というか。そうしたものが森の世界全体を描いているかのようだ。生と死、性、また「アホ犬会議」という章では、プナンにとっての犬の分類なのだが、そこから家畜としての犬とペットとしての犬の分化が語られる。

ともかく「森の民プナン」から、人類、そして人生を考えてしまう本なのであった。

※奥野氏の経歴が特異すぎる。。。

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2021/03/23

不動産業が果たす価値~「ガイアの夜明け」から

昨夜BSテレ東で、ガイアの夜明け【ニッポンの山は“宝の山”!?】を見ることができた。前回の地上波放送時には『まだ「山林を買う」ブームか?』にも書いたように見損ねていたからである。

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さて、いかなる感想を持ったか?……うん、よい番組だった。切り口も、紹介する事例もいい。山林売買を、土地の価値だけではなく、立木も算定して行う業者もいるのは嬉しい。これは林業の基本だが、せっかく山林売買ブームと言いつつも、それを行える業者は少ない。山林は土地だけではないのである。
そして送電線の通っている山を狙って買うとか、1円の土地や家屋を扱う業者とか、面白い事例を集めている。なかなかの趣向だ。

私が考えたのは、不動産業の価値である。まず山林の所有を負担に思う人がいて、一方でその山林に価値を見出す人がいる。その両者を繋ぐのが不動産業である。このような両者のマッチングこそ、不動産に限らず、すべてのビジネスの基本ではないか、と。

世間的には、不動産業、会社にしろ町の不動産屋にしろ、そんなによいイメージは持たれていないように思う。バブルの頃の地上げ屋のイメージも残るし、値段があってないような値付けでぼろ儲けしているんじゃないかという不信感。危ないプローカーの存在。土地にしろ建築物にしろ、権利関係が複雑なゆえ後々トラブルが発生することも多いからだろう。

しかし、持て余している荒れた山林でも、そこに何らかの使い道や価値を見出して、それを求める人を探し出す人脈とアイデアは不動産業ならではだ。チェンソー販売店に荒れた山をチェンソーの練習場にしませんか、なんて持ちかけるのはすごい。

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人をつないで不動産を動かす。これこそ不動産業の醍醐味ではないか。山林だけでなく、たとえば町の空き家とかぼろ家でも、それをリノベーションしておしゃれなカフェを開きたいと思う人を見つけてマッチングすることができれば、店ができれば町の価値か上がり活性化になるわけだ。そして空き家に入る人や店を見つけてくるのは、不動産業の仕事なのである。決して行政のできることではない。

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これは某地方都市の商業地にできた空き地の図。こんなに空き地があっては、空洞化が進み、とても活性化はできない。早く空き地を埋めて行かないと、町おこしは不可能だろう。ここにテナントを呼び込むのも、不動産業の仕事だ。

同じように荒れた山林も、商業地にできた空き地と同じだと考えればよい。そんな山でも探せば「魅力」「用途」はあるはずだ。そして、その「魅力」と「用途」を求める人もいるはず。それをマッチングの材料にする。
以前、話を聞いた林業家は、さかんに山林を購入していた。価格は二束三文だが、売り主は持て余しているからそれでよい。どうせ、自分の山にはロクな木がないと思っている。しかし購入後によくよく林内を探索してみると、必ず高価に売れる木々を発見するそうだ。それを伐採搬出すれば元が取れるのだとか。残りは利益が薄くてもかまわない……という発想であった。

林業の活性化とか、山村の振興を考えると、すぐ補助金目当てになる。あるいは行政が机上の空論を振り回すだけになる。本気で山を動かそうと思うのなら、見る目のある不動産屋を呼び込もう。そこまでが、行政の仕事だ。

ほかにも本気になってくれる金融機関だったら、異業種マッチングに力を発揮する。また税理士ならば相続なども含めて取り組める。いずれも「山林に興味を持っている」という条件付きだが、任せると何かが起きそう。本当に放棄山林が「宝の山」になるかもしれない。

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