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森と林業と田舎の本

2021/10/11

不眠症に『荒くれ漁師をたばねる力』

このところ、不眠症である。寝付きがやたら悪くなった。七転八倒して、最後は酒飲んでも寝ようとするが、これは翌朝の体調が悪くなる。

で、寝つけない夜は読書するが、そこで手にとったのが『荒くれ漁師をたばねる力』(坪内知佳著 朝日新聞出版)

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これ、著者がテレビなどにも出ているし、政府の町おこし系のイベントにも引っ張りだこらしいので知っている人も多いのではないか。
内容は表紙カバーや帯文にもあるように、24歳の女性が漁師の船団を束ねる会社の社長に就任して、漁業の建て直しを図る実話である。大学中退のシングルマザーだから社長といってもお飾りで、事務仕事させよう……ぐらいの感覚で就任させたら、既存の漁業の慣習というかシステムをガラガラポンしてしまった。

ただ方法は、わりとシンプルで、サバやイワシなど量の獲れる漁獲は漁協に任せて、混獲してしまう雑魚(実は高級魚)を自前の産直でレストランなどに送る(鮮魚BOX)というシステムだ。当然、産直の方が圧倒的に高くて利益率がよい。いわゆる6次産業化という農水省の大好きな仕組み。これで、建て直しをする計画だったが、外からも内からも既成の勢力の猛反対と妨害、分裂が続き……と、この辺はだいたい読めるパターン(^o^)。だが彼女は、その度に恐るべき胆力と努力で乗り切るのだ。

漁労長の言葉が面白い。「最初はきれいな人だな、私たちを救いにきた天使に見えた。でも悪魔に変わった。

これ、そのままテレビドラマにもなりそうな話なのだが、そうしたオモロイ具体的なエピソードは本書を読んで知っていただきたい。

私がウッとうなったのは、最後の方にサラリとあった実情。それはスタートが2011年で、本の出版したのが2017年だから6年経っているのだが、そこで「魚の水揚げは自家出荷を始めた頃の半分まで落ち込んでいる。」という1行なのだ。6年で半減!

日本の水産業、半端ない危機である。山口県の玄界灘に面した萩大島の漁業の場合だが、おそらく全国で起きているのだろう。これは、とにかく魚が獲れないうえに、魚価がどんどん落ち込んでいるからだ。

だが、著者は言うのである。鮮魚BOXの売上が10倍に伸びている、と。だから漁師の収入は以前と同じ額を保てているのだと。そして漁獲が10分の1になったとしても、鮮魚BOXのを10倍の値段で私は売る、と断言する。ド迫力である。

だが、その意味するところは何か。出荷時の価格は落ちているが、最終価格が10倍になっても買ってくれる消費者はいるのだ。

ちょうど読んだ水産業のレポートでも、興味深い発言があった。

今は流通と生産が分断されている。漁獲して市場に出荷する段階と、市場で魚を買って流通させる段階に大別される。結果、情報も断たれる。誰がどの魚をどれくらい欲しがっているかという情報を基に、オーダーを受けて取りに行く漁業に変えたい。漁獲できる魚の情報を事前に提供して、消費ニーズに沿った水揚げを行う仕組みだ。(和田雅昭・公立はこだて未来大学教授)

ようは林業で嘆いていることと同じだ。材価が落ちて手取り収入が減る、山元と流通が分断されていて情報が断たれている。だが両者を結び、消費者ニーズに沿った木材商品にすれば、価格は上げられる。それこそ10倍にでも。

でも、決定的に違うのは、林業界に坪内知佳さんに相当する人がいないことだなあ。。。

ちなみに本書の欠点は、タイトルだ。ハウツウ本じゃないんだから。「荒くれ漁師」というのもバイアスがかかっているし、「たばねる力」というのも違う。彼女の実力と彼女がしたかったことは何か……というようなことを寝床で考えていると、朝を迎えていたりするのだよ。。。

2021/09/17

騙された?書評『外来植物が変えた江戸時代』

『外来植物が変えた江戸時代 里湖里海の資源と都市消費』(佐野静代著 歴史文化ライブラリー・吉川弘文館)。

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ちょっと驚いたというか、騙された気分にさせられる本だ。

タイトルから外来植物が江戸時代にどんな影響を与えたのか、という思いで手にとったのだが、まずここで騙された。まずサブタイトルに里湖里海とあるように主な対象は湖や海の沿岸部。里山ならぬ沿岸部に人々の暮らしが生態系を変えたことを示している。まあ、その程度の勘違いはいい。
しかし、外来植物というのは何だか今風のヘンな雑草が繁茂するイメージではなく、具体的には、綿、サトウキビ、サツマイモ……など作物なのである。たしかに外来ではあるが、人が有用と思って栽培したのだから、ちょっとニュアンスが違うではないか。

とまあ、タイトルに文句を付けても仕方がない。

そこで描かれるのは、驚きの栽培法なのだ。まず、これらの作物には肥料が必要だ。とくに綿やサトウキビはたっぷり栄養がないと育たない。ちなみにサトウキビは琉球や奄美だけでなく、江戸時代は本土で広く栽培されていたらしい。和三盆の讃岐もだが、遠州などでも盛んだった。そして肥料としていたのが、海草や海藻だったのだ。せっせと池や湖、そして海からアマモやキンギョモ、ホンダワラ……などが採集され、それが畑に入れられたらしい。里山の草木はすでに田畑に取られていたから、足りないのだ。

さらにシジミやアサリも、身はもちろん食べ物だが貝殻は焼いて粉にしたら石灰肥料。これも重要だった。

里山がはげ山になって土砂が流出すると、海が砂地になり、そこにはアマモが繁る……という生態系もあったらしい。山の栄養分が、海に流れ出たのを海藻などの形で陸地に返されるという物質循環があったという。だからホンダワラが商品として取引もされた。

大坂の町では、四国や九州の薪が運ばれて売られたという江戸時代のエネルギー事情は私の問題意識の中にあったのだが、そこに海の産物も加わっていたのである。

ネタばれ的な本の内容はこれぐらいにするが、江戸時代の生態系を見る目が変わった……いうより広がった。鎖国して日本列島の陸地の中の生態系ばかりを考えていたが、そこに水圏が加わり、拡張した生態系の姿が浮かび上がる。それはより複雑になり、巨大な物質循環を築いていたとなると……それを破壊してしまったのは、やはり明治~大正以降なのか。
そして、大きな歴史の断絶をつくってしまった。この本には遠州地方のサトウキビ栽培の資料がなかなか見つからずに困った逸話が記されている。日清戦争後、砂糖生産は領有した台湾になり、本土のサトウキビ栽培は一気に廃れたそうだが、ほんの100年ほど前の繁栄した地場産業が忘れられていた。

今頃、SDGsなんて言って新しがっていられない。温故知新、過去を調べることで新しき社会システムを発見できる。

 

 

2021/08/29

メガソーラー会社のもう一つの罪

先に平群の「ソーラー業者の不正を追求すべき個人的事情もある」と記したが、それをここで告発しよう。

相手は、共栄ソーラーステーション合同会社だ。これはペーパーカンパニーで、大本はエバーストリームという米投資ファンドである。

まず工事を停止させられたことから、剥き出しの現場では土砂の流出が心配されている。その点を県に「応急防災計画書」を提出している(8月5日)のだが、それに目を通すことができた。

するとその内容もさることながら、その中に見覚えのある写真が使われているのだ。

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これは2枚を重ねて撮ったもの。空撮写真だが……あきらかに私がブログに掲載したものだ。

空撮!メガソーラー建設現場」これは7月22日のもの。中で紹介した写真と比べてほしい。

すぐわかる通り、「禁無断転載」としつこく空撮3枚に添えている。なぜならこれは、プロのカメラマンが撮ったもので私の撮影ではないからだ。大阪方面から京都に飛ぶため、途中で生駒山を通過するというので撮影をお願いしたものだ。あくまで好意で私が借り受けて、ブログに使わせてもらったものである。

もちろん画素数も40万画素程度に落として、通常なら印刷には使えないようにしたのだが、それを勝手にダウンロードしたあげく引き延ばして計画書に使っているのだ。だから画像そのものは荒いが、計画書添付の図面説明には使えると考えたのだろう。それも多少のトリミングをしたうえで無断で道路網を書き込んでいる。

これは、あきらかに著作権法違反だ。いくら表に出ない文書であろうと、県に提出した時点で外部流出である。しかも、どこにでもある、どこでも撮れる写真ではない。貴重な空撮なのである。

今後、どういう処置を取るか考えているが、これだけでも犯罪行為を堂々と行う会社であることがわかる。

2021/08/25

森林パートナーズの木材流通プラットフォーム

森林パートナーズ。その後ろに株式会社が付くのだが、この社名で、すぐ内容が想像がついたらエラい。

私が以前取材して、「これは!」と思って希望を感じた一つであり、『絶望の林業』の中で数少ない「希望の林業」の事例の一つとして紹介した会社である。もう少し内容に触れると、伊佐ホームズという東京の工務店と、秩父の山主(秩父樹液生産協同組合)、そして製材所、プレカット工場が結びついてつくった木材流通の会社だ。

それについてはAFCフォーラムという雑誌に記事にしている。(2018年2月号)これの11ページ目から。

Photo_20210825213001記事の冒頭

私は、この事例を拙著で触れるだけでなく、林業系の講演などでも紹介してきた。フォレストジャーナルのウッドショックの影響を受けない事業体の記事でも一部例として触れている。ようするに川上の山主と川下の工務店が直接結んだ木材のサプライチェーンなのだが、具体的な内容は結構複雑で、十分理解していただけているか心配だった。

それを森林パートナーズの社長が自ら説明したパワポ資料を発見。

森を育むプラットフォーム

これを見ていただければ、ICTを使った木材流通でいかにロスを省くかがわかってくるかと思う。ご一読ください。

ちなみに最終ページにも注目。

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ちょっとだけ気になる部分を。それは私の取材時には、社長は「山主の取り分を従来の1,5~2倍に」と力説していたんだけど、今回の資料には具体的な金額的還元分が示されていない点。そしてスタート時にはプラットフォームづくりに公的資金がほしいとする点。ここんところは取材時と状況が変わったんだろうか。また機会があれば訪れて、確認してみたいものである。

 

2021/07/16

テレビで紹介されたフォレスターアカデミー

今夜9時から、久しぶりに奈良テレビを見た。いやあ、地元局なんだけど、いつもテレビショッピングばかりやっている局なんで……(^^;)。

見たのは、「奈良フライデー9」という番組で、そこで奈良県フォレスターアカデミーを取り上げていたからだ。

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実は、私は入学式に列席して以降、まだフォレスターアカデミーに行ったことがないんだよね。覗いてみたいなあ、と思いつつ、近くまでは何度も行っているんだけど……遠慮の塊になっておりまして……(^_^) 。

だから、どんな様子か知りたくて、この番組を見たわけだ。
うん、わりと真っ直ぐというか、ちゃんと本筋を抑えて説明していてよはかった。これまではニュース的扱いで、全国に開校相次ぐ林業大学校の最後列……みたいな感じだったのだが、20分近く費やして、開校した意図も含めて学生や学内の様子を紹介していた。
もともとは防災からスタートしていて、林業振興よりも国土保全の意識が強いこと、地元とのコミュニケーションを重視としていることなど。

ちなみに、「フォレスター」という名称から欧米のフォレスターと比べられがちだが、私はちょっと違うと思っている。奈良県フォレスターには、ある意味、県職や市町村職員の森林林業担当と同じで、公的意識が重要だと感じるからだ。林業という産業振興を軽んじるわけではないが、まずは健全な森林でしょ、それをつくることが先にあって、それができたら防災にもなるし、生物多様性も保てるし、レクリエーション効果も高まるし、(オマケのように)林業も営めるということである。その点、林業振興のためなら森林を破壊してもかまわない、と思っている林〇庁とは違う( ̄∇ ̄;) 。

……ところで、白状します。実は、リアルタイムで見ていない。9時10分からは「サマーウォーズ」見ておりました(^_^) 。やっぱり、こっちの方が魅力あるもんなあ。頭の10分を見た後に、録画したのを今見たのでした。

今度、こっそりアカデミーを覗き見しに訪ねてみようかな。

 

2021/07/12

『地球を滅ぼす炭酸飲料』の描く世界

地球を滅ぼす炭酸飲料~データが語る人類と地球の未来」(ホープ・ヤーレン著 築地書館刊)。

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本書のタイトルはちょっとミスリード。むしろサブタイトルが本筋だろう。英語版は2020年3月の発行だから、すぐに日本語版発行へと進んだようだ。ちなみに原題は『The Story of More』。これ、直訳はなんとすればいいだろう。とくにMoreが……? 「詳しい物語」?「より多くの物語」? いっそ「もっと、もっとの物語」(笑)。「もっともっとちょうだい」と言う人類の欲望の物語。

内容の前に著者を紹介する。ホープ・ヤーレンは地球生物学の科学者で、2016年にタイム誌から「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれた。ハワイ大学に終身在職権のある教授だったが、2018年にオスロ大学に移った。どうやらトランプ(前)大統領の影響もあるらしい。ノルウェー科学文学アカデミーのメンバーでもある。

・[目次]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

日本語版に寄せて

第Ⅰ部 生命

第1章 著者、気候変動に取り組む
第2章 増え続ける人口
第3章 延びた寿命
第4章 都会を目指す

第Ⅱ部 食物
第5章 穀物の過剰生産
第6章 太りすぎた家畜
第7章 過保護な魚たち
第8章 炭酸飲料は砂糖がいっぱい
第9章 作っては捨てる

第Ⅲ部 エネルギー
第10章 エネルギー使用量の急増
第11章 頻繁な移動
第12章 植物は燃料不足解消の救世主か
第13章 タービンは回る

第Ⅳ部 地球
第14章 変化した空気
第15章 気候温暖化
第16章 解けていく氷
第17章 水位の上昇
第18章 大いなる別れ
第19章 もうひとつの道

付録 無駄を減らす
1 あなたがとるべき行動
2 変化はあなた自身から
3 環境問題の現状
4 情報源ならびに推奨文献

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

データを駆使して地球環境問題を語っている。基本的に気候変動やエネルギー問題、食料問題などがテーマだ。

タイトルの炭酸飲料も、問題としているのは、そこに含まれる砂糖と異性化糖(ブドウ糖果糖)だ。と言っても、日本人がすぐに飛びつく「合成甘味料は健康に悪い」レベルではない。そんな「思いつき批判」には目もくれず、ブドウ糖果糖の原料となるコーンの出自を追求する。コーン栽培に使われる莫大なエネルギーと水。実はアメリカで生産されるコーンの何割かがこの砂糖もどきに化けている。そして、多くが捨てられている。全世界でコーンとして食べられるのは、アメリカの生産量の10%にすぎない。

ほかに私が注目したのは、人口が増えたことよりも、消費するエネルギーや食物の増加の問題だ。人口は2倍になって、エネルギー消費は3倍になったのである。食料も、実は人口以上の生産が行われて余っている。穀物の半分は家畜の餌に回り、さらにバイオ燃料や異性化糖に使われていいる。畜産も、よりガタイの大きなウシ、ブタ、ニワトリが開発され、成長も早く肉と乳を生産するようになった。
にもかかわらず8億人が飢えている。単に人口が増えたから飢えている、のではないのだ。

そのほか複雑な気候変動の実態と再生可能エネルギーの欺瞞も淡々と指摘する。

森林に関する点は少ないが、二酸化炭素の吸収源と認められていることに触れている。だが、いわゆるカーボンニュートラルが成立すまには何十年もかかるため、目先の削減には結びつかない。逆に目先は大気中に二酸化炭素を増やしてしまう……。

さて、カーボンニュートラルの欺瞞は、私も指摘してきたことである。とくに森林が二酸化炭素を吸収源となって地球温暖化を助けてくれるという発想に。世間の思う環境問題と、現実はズレているのだ。

実は、現在執筆中の本の原稿でも、この問題に触れる予定である。森の機能を一般常識とは違う異論からの視点で語ろうと思う。森が地球温暖化を進め、森が山を崩す。植林が自然を壊す。花粉症は自然の摂理。
タイトルは本書にちなんで『The Lie of More Foresty!』とでもするか。日本語版は(日本語版しかないけど)『地球を滅ぼす「木を植えろ!」』なんてどうかしら。プライドがない。。。

 

2021/07/11

「安いニッポン」~日本が売るべき「林業」

『安いニッポン~「価格」が示す停滞』(中藤玲著 日経プレミアシリーズ)を読んだ。

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タイトルで、ほぼ中身がわかる。とにかく日本の物価が異常なほど安いことを示している。そして、それこそが経済低迷の主要因なのだ。
帯文にあるとおり、アメリカでは、年収1400万円の人材は「低所得」に分類されてしまう。そして世界中のディズニーランドでも日本は破格に安い(でも、日本人には高く感じる)入場料とか、給与の実態が示される。

ダイソーショップに関しては、100円均一なのは日本だけで,台湾が180円、中国本土160円、マカオ200円、アメリカ160円、フィリピン180円、タイ210円、イスラエルにいたっては320円……。中国製品も多いのに、中国の方が高い(-_-;)。

ようするに世界中で物価は上がり続けているのに、日本だけは横ばいから下降気味だから。この物価安こそ日本経済の停滞の象徴なんだろうが、なぜ安いかと言えば、安くないと買わない消費者の存在があり、安くするために社員の賃金を安く抑え、社員の収入が低いということは消費者の収入が低いことになる。だから安くないと買えないわけだ。

私が目を見張ったのは、『崩れる日本のお家芸「アニメ」』の章である。

今、日本のアニメーターがどんどん中国企業に引き抜かれているらしい。中国ではアニメ市場が爆発的に広がっているが、まだ人材も技術も足りない。そこで日本にアニメ製作会社を設立して日本のアニメーターを雇うのだが、給与は3倍以上、休暇など待遇もよいところが多いらしい。これなら、こぞって転職するわな。日本のアニメ製作現場の劣悪さはことに有名だもの。やりがい搾取の最たるものだ。
そして中国企業傘下でアニメをつくれば、日本だけでなく中国全土、世界の中華世界全域にまで通用する。市場規模が全然違ってくる。

これは、喜ぶべきことだ。ひどい雇用環境を打ち破る契機になる。日本のアニメーターは全部、外資に転職すればよいのではないか。そして中国アニメ制作会社の下請けとして作品をつくり、それを日本が買えば(買えたら)いい。日本語で、舞台も日本のアニメでよいと思う。

同じ理屈でネットフリックスでは、ドラマ制作費が日本の何倍も出る、しかも制約が少ない。日本では自主規制とかスポンサーの意向でつくれないテーマの番組もつくれるというのだ。

そして、ここからが肝心なのだが、私は林業も同じになったらよいのではないか。外資が日本の森を奪う、なんてデタラメ並べて騒いでいる場合じゃない、外資に売るべきなのだ。ただし、山や森を売る必要はない。というか売れないだろう。売るべきは素材生産業界である。

中国だけでなく欧米の外国資本と経営陣で素材生産会社を設立してもらう。日本人の林業技術者を給与は3倍ぐらい出すと言えば優秀な人を引き抜けるだろう。働く舞台は地域に縛られる必要はない。日本全国を機動的に動くのだ。経営トップは、山主に対しても立木価格を2倍にすると宣言して営業すれば、十分に施業地を確保できるだろう。

肝心の木材の売り先は、従来の木材流通なんぞすっ飛ばして建築業界、あるいは施主などエンドユーザーと契約を進める。製材、プレカットなどは賃挽きにする。使い道を先に決めるのだから、木材に無駄が出ないし、各施業や工場稼働も計画的にでき閑散期がなくなる。在庫も消える。営業コストも浮く。これなら流通マージン(というより流通ロス)をカットできて、賃金や立木買取に高値を出す資金も調達できるだろう。また高級材は海外へ送ってもよい。販路開拓は、国際的に行うのだ。ファイナンスは、たとえば施主の住宅ローンを担保にして調達するという手もある。赤字になりそうになっても、日本は補助金があるから心配いらない(笑)。

ちなみに過剰伐採の禁止や再造林の実施なども事前計画に組み入れて、第3者が監査する制度をつくればよい。日本の業者より真面目にやってくれるだろう。いや、その前に日本の企業の大半が失格するだろう。再造林を真面目にやっている業者なんて、日本では3割ぐらいだから。外資の方がよい森づくりをしてくれるはずだ。
日本の資金が海外流出する? なに、日本人を雇用し、賃金を高くするんだから、税金もたくさん払ってくれる。今より税収は増えるだろう。

山主も従事者も製材業者も喜ぶはずだ。誰も困らない……素材生産業の経営者以外は。いや、真面目な経営者なら外資に負けないよ。真面目な経営者なら。

林業界は、やりがい搾取が甚だしい。だいたい現在の林業に不満を持って愚痴ばかり言っている人ほど、この業界から離れない。賃金が低くても、理不尽な仕事が多くても、林業をやりたい、と言う人が少なくない。それに付け込まれていることに気づかないから、経営者がやりたい放題になるのだ。

「安い林業」から脱出するには、もはや外資に期待するしかない。巨大資本で業界をぶっ壊さないと変わらない。

 

2021/06/26

『森林で日本は蘇る』を読む

『森林で日本は蘇る 林業の瓦解を食い止めよ』(白井裕子著 新潮新書)を読んだ。

覚えている方もいるだろうが、著者は以前『森林の崩壊』を書いた人だ。工学博士で一級建築士。だから木造建築の分野から森林問題に入ってきたと言えるだろう。

この際だから書くが、前著はあまり評価していなかった。森林や林業をちょっと学んだかな、という印象で、林野庁など政府の言い分をそのまま信じているかのような箇所もある。そして最後は伝統木造建築礼賛になっていたからだ。伝統構法を建てさせない法律には問題あるが、基本林業にはたいして関係ない。

 

それでも今回、出版直後に読んだわけだが……書いていることは大きく変わらないのだが、印象はかなり違う。

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その前に目次を示しておこう。

はじめに

第1章 日本の建築基準法には自国の伝統木造は存在しない
木の長所と魅力を活かした伝統的な構法がないがしろにされている。大工棟梁の技能も伝統構法も世界に誇れるものなのに……。
第2章 自国の伝統文化は国益に直結する
景観や建築を自国の財産としてきたフランス。思想も哲学もない日本の建築基準法は一体どこを目指しているのか。
第3章 山麓の小さな製材所が持つ大きな可能性
木材の良さを生かせない制度、政策が価値を下げている。闇雲な大規模化を目指す前に足元にある知恵を見直すことがチャンスを生む。
第4章 誰のためのバイオマス発電か
あまりに違う欧州の真似をしても資源も産業も疲弊する。バイオマスは、エネルギーを使う現場から考える。
第5章 美しい山林から貴重な銘木が採れる列島なのに……
かつて銘木には1本3000万円以上で取引されたものもあった。いまでも価値ある木は存在しているはずなのだが……
第6章 森林資源の豊かさと多様性を生かせない政策
諸外国が羨むほどの森林資源を活用できないのはなぜか。豊かな資源で海外へ、将来へ打ち出す戦略を。
第7章 山中で価値ある木々が出番を待っている
日本の木の素晴らしさを日本人はどれだけ知っているのだろう。この価値を高める製材業と林業の復活を。
第8章 林業機械から分かること
欧州の林業技術展の面白さはどこからくるのか。日本は何よりもまず死傷事故を減らすこと。
第9章 いつの間にか国民から徴収される新税
補助金で縛るほど、林業は廃れる。本質的な改革と成長は、おのれの意欲と意志で動き出すことから。
おわりに
謝辞

初っぱながまたもや伝統建築の話なんだが、今度はいかに建築基準法などの規制が伝統建築をを邪魔しているかという展開だ。私自身は伝統建築にさして思い入れはない(そもそも住みたいと思わない)ので、さらりと流した。

その後は、正直、一読して既視感。いや既読感。何がって、まるで拙著『絶望の林業』を読んでいるかのようだから(笑)。

徹底的に現在の林業事情を批判し続けている。補助金もバイオマス発電も林業機械も……よくぞ、書いてくれた(^o^)。私も書き切れなかったり、削った部分も含めて追求している。系統だってはいないが、私以外にここまで林業批判をしているのを目にすることはまずない。

『絶望の林業』との違いはというと、彼女は日本学術振興会の研究員などをやっていた関係で、政府の官僚ともつきあいがあるらしいこと。ワーキンググループなどにも入っていた。そのため内部情報というか、現場の官僚の発言なども紹介されている。

たとえば、ちょっと驚いたのは森林環境税のことだ。私はこの税を批判していた。これは増税だぜ、しかもバラマキだぜ、と言いたかったのだが、報道としては孤立無援というか、賛同者はほぼ現れなかった。ところが内閣府のワーキンググループでは批判続出だったらしい。成長産業にするといいつつ林業を公的管理下に置くための新たな税を取り、補助金的にばらまくとは何事か、というわけである。だが、見事に無視されたとある。内部の審議会の意見でも無視して突っ走るのだから極めて政治的なバラマキだ。識者の意見も形骸化。ガバナンスも疑うレベルではないか。外野の私の声などまったく響かないはずだ。

林業の補助金に関しても、他省庁から不満や批判の声が出ていたそうだし、そもそも補助金が林業関係者のやる気と思考力を削いでいることに官僚と気づいているかのよう。そして白書には、成功例しか載せない(成功したことにする)ことも。

どうせなら『絶望の林業』と抱き合わせて読むと面白いよ(笑)。

ただ異議はある。一番の問題は、タイトルだろう。「森林で日本が蘇る」点なんぞ、どこにも触れていない(-_-;)。あえて言えば、銘木の話。こんなに高く売れることもあるんだから……という点だろう。そりゃそうなんだが、昔の銘木は今は売れないのよ。今の銘木とは何か、がテーマになるのだ。

山村の小さな製材所だって、経営が維持できないから潰れるのであって、潰すなというのは経済原理に反する。まさか補助金で支えろというわけでもあるまい。潰れる理由は、経営者の能力の問題もある。全体に経済的視点が欠けているのだ。

 

とはいえ、『絶望の林業』を読んでも、まだ林業への愚痴が止まらない人は、読む価値はある\(^o^)/。読んで愚痴を言い続けようぜ。この本が売れたら、今後、林業・林政を批判する本が続出するかもしれない。(後に続け~!)

2021/06/12

YouTubeに『獣害列島』の朗読を発見!

いやあ、偶然ながら驚くべきものを発見した。

なんと『獣害列島』の一部を朗読しているのだ。舞台はユーチューブである。

https://www.youtube.com/watch?v=6_FcEHQ3Qfs

 朗読しているのは、p111~p118,p150~p156。内容的には、「飽食の時代を迎えた野生動物たち」と「獣害対策は防護と予防にあり」の部分である。野生動物は餌に困って農地を荒らすのではない、と主張しているところと、草食系クマなどにも興味を示しているよう。

著作権的には、勝手に読まれて公開されては困るが、これぐらいなら黙認しよう。全部じゃないし、ちゃんとAmazonのサイトも紹介してくれている。これを聞いて興味を持ってくれたら、本全部を読んでほしい。本を購入して(^^;)。

1_20210612120401 サイドバーにリンクあり

ちなみに私の本は、何冊か朗読されている。主に盲目の人向きのオーディオブック、録音図書だ。たしか日本点字図書館からの依頼だったと思う。その場合は本全部だが、私は了承している。おそらく当時はカセットテープだったと思う。その後CDなどに焼き直しされたのかどうか。

最近はSNSも音声版が登場しているし、時代は文字から耳で聞く方向に進んでいるのかも。ながら聞きにはいいけど、記憶にどれだけ残るのだろうか。

 

 

 

 

 

2021/05/23

『絶望の林業』7刷、タイ記録!

先日、大阪のジュンク堂書店梅田本店を覗いた。で、やっぱり確認したのは……。

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絶望の林業』、まだ平積みじゃねえか(笑)。しかも、かなりの部数が積まれていた。

報告したかどうか、5月25日付けで7刷が発行されることになっていてる。もう、出ているけど(^^;)。

私の本の中では、タイ記録だ。前回の7刷まで言ったのは『「森を守れ」は森を殺す!』である。当時は今より本が売れる時代だったので、部数も伸びたし、その後文庫化もされた。今の世情は激変(出版界の売上が半減)しているが、ともあれありがとうございます<(_ _)>。

この本出して、林業界と縁を切るはずが、そうもいかなくなったのは、誤算というか不思議ではある。
気がついたのは、「林業は~こうするべきだ」的な提言しても無駄であり、しない方がいいのではないか、ということ。むしろ「ここまでダメダメだから、もうどうしてもダメ」と突き放した方がいい。なかには自分でなんとかしたいと考えるのかもしれない。これって教育論みたいだ。突き放して、それで諦めるようでは、元からダメな人材なんだよ( ̄∇ ̄) 。
驚いたことに、この本を読んで林業界をめざす気になったという若者までいるんだから、世の中捨てたもんじゃない(笑)。まあ、リスクは自分で取ってください。

もちろんハナから反感つのらせる人や、全否定で入る人もいる。でも、そこで示す反論が、あまりに拙くて……。いかにも自分の方が実情を知っているとか、自分のやり方が絶対成功するとか鼻高々(笑)なんだが、それ自体が林業界ダメダメ説の証拠かも。こうした人がいることも、社会を俯瞰するネタにはなるが。

ともあれ、新記録8刷をめざそう。

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