書評「国産材はなぜ売れなかったか」
昨日は、東京日帰り。往復8時間以上の列車の中は、やっぱりきつい……。
で、その中で読み上げたのが、「国産材はなぜ売れなかったのか」(荻大陸著・日本林業調査会・2000円)である。さっそくサイドバーに入れた。
少し前に発売を知ったので、すぐに申し込んだら、その前に著者から贈呈を受けたという有り難い本。私は、以前から著者の薫陶を受けており(^^;)、実は私の林業観にもかなり影響を与えられている。
だから届くとすぐに読み出したのだが、あまりの忙しさに中断していた。それを長い移動のおかげで読めたというわけ。だから、鉄道の旅は好きなんだ。鉄道オタクのカテゴリーに、「読み鉄」(列車の中で本を読むのが好き。ただし鉄道本を読むわけではない。)というのも作ってほしい(^o^)。
内容は、基本的には戦後日本の木材産業の動きを追っている。そして国産材が売れまくった時代、外材解禁後の展開、さらに集成材時代となり、まったく国産材が売れなくなってきた構造的問題を見事に描いている。そして最後に激動する現在から将来への展望と提言も触れている。
私には、それなりに知っていることも多いはずなのだが、それでも仰天することのオンパレードだ。おそらく業界人でも、常識のウソに縛られている人が多いのではないか。
たとえば「国産材は安い外材にやられた」なんてのは、いまさらのウソであるが、
戦後は、太い丸太より小丸太の方が値段が高かったことを知っているだろうか。そして、その理由は。
実は、「空気売り」と言われる、実際の寸法より大きく表示して売る販売が横行していて、小丸太の方が、値段を化かすのに都合がよかったからである! 丸いままの材を角材として売ることもあった。元口と末口の太さが違っているのも当たり前。だから細い材というだけでなく、木口が先の方が細くなっている、いわば円錐形の材の方が高く売れた。まともな太さの変わらない丸太は、空気が入らず「うまみ」が少なかったからだ。
そのほか、吉野でさえ「安い外材が入ってきて木が売れなくなった」なんて平気で言う人が多いが、実は外材が入り、並材需要が外材に取って代わられる中で、役物(銘木)を出せる吉野は、逆に価格が跳ね上がって大儲けしているのだ。なぜ、それを隠すのか?
……こういった事情を、細かな資料・数字で示す。いくら反論したくたって、当時の業界新聞や統計で示されたら、誰も言えないだろう。徹底的な現場調査から導き出しているのである。
そして、現在は、集成材が価格形成のプライスリーダーとなり、常に無垢材の価格は抑えられている。そして「国産材の値段は、もう上がらない」と断言する。
私も同意だが、こうした業界事情を知っている人は、意外と業界人にさえ少ない。
一見専門書だし、内容も木材産業の分析ではあるのだが、一つの産業の歴史として読んだら、非常に面白いだろう。ビジネスの世界で、こんな目茶苦茶なことが可能だったの? と驚くか、商品の価値や価格形成がどのように変動するか、時代の潮流を感じ取ることができる。普遍的な経済勉強にもなるだろう。
多少とも林業に興味を持っているのなら、育林の世界より前に、木材の世界を知ってほしい。そのための好書である。
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