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森と林業と動物の本

2025/02/03

盗伐問題の記事に思う

思わず私が書いたんじゃないのか?と思ってしまった記事(^^;)。

再生可能エネルギーを促進する制度が「森林破壊」を加速させている

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だって、再生可能エネルギーというのはバイオマス発電のことで、そこに「盗伐が助長される」とあるのだから。バイオマス発電批判、盗伐批判となれば、私のテーマにそっくり。

よく読めば、宮崎県盗伐被害者の会の海老原裕美会長が登場している。拙著『盗伐』にも登場する盗伐問題の火付け役だ。なるほど、彼に取材したのなら、重なるはずだ。

まあ、バイオマス発電が木材価格を上昇させた、というよりも、まず大規模伐採ありきで、伐った木の使い道がないゆえバイオマス燃料に流れ込んだとみた方が正確だろうと思うが。結果的に建材になる木が燃料なのだから、木材価格はむしろ引き下げた。それでも量を多くして利益を出すという刹那的なビジネスモデルである。そこに他人の山を乱暴に伐るのだから、コストを抑えてより儲けられる盗伐が、広がる余地があった。

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ちなみに、先日地元の図書館に行った。ここは、近年の拙著はほぼ全部揃えてくれている有り難い図書館なのだが、なんと『盗伐 林業現場からの警鐘』はなかった。内容をチェックして、これは生駒市民にはいらないわ、と判断したとは思えないので、ようはタイトルに魅力がなかったのか。盗伐という言葉は、そんなに興味が持てないのかね。都会の街路樹伐採となると、飛びつくのかもしれないが。

盗伐問題がイマイチ盛り上がらないのは、他人事を感じさせ深刻さが伝わらないからかねえ。

 

 

 

2025/01/25

『敵』と『モリのいる場所』から描く晩年

映画『』を見た。筒井康隆原作の映画。原作は1998年発行で、ほどなく読んでショックを受けた作品の一つ。

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老後を丹精に生きる元大学教授。フランス文学の権威とも語られるが、引退してからは文筆生活だ。食事、歯磨き、洗い物、洗濯、入浴、買い物、庭掃除……と丁寧に生活が描写される一方で、教え子などが頻発に通ってくれて、ワインをたしなめば話も弾むし、家事の手伝いもしてくれる。バーで女子大生とフランス文学について語り合ったりもする。一方で煩悩や妄想もあり、見栄にも縛られる。辛いキムチを食べすぎて腹を壊す。体臭を気にする。遺言書を何度も書く。

もう、私には憧れの晩年生活だ(^o^)。こんな風に過ごせないか。

なお、筒井康隆は現在90歳で頸椎を痛めて歩けなくなったため老人ホームに入っているが、頭はしっかりしていて執筆活動も続けている。こちらの姿にも憧れる。ただ、『敵』を執筆したのは63歳の時と知って驚愕。主人公も70代の設定だが、現代から見ると老後というには若すぎる。80代に設定した方がよかったように思える。なお映画は、昨年東京国際映画祭でコンペティション部門最高賞を受けたという。

実は、以前にも記したが、モリのいる場所』という映画を見て、これぞ憧れの老後!と思っていた。こちらは2018年公開。30年もの間、ほとんど自宅から外出することなく庭を彷徨い、その世界を描き続けた画家の熊谷守一がモデルというか主人公。94歳という設定で、30坪足らずの庭に毎日通い動植物を観察し続ける生活を続け、やがてファンタジックな展開となる。こちらも憧れた。

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マジに今の私が庭をいじり続けるのは、このような晩年を送りたいので、1日中彷徨を続けられる庭をつくろうと思ったからである。我が家の庭は30坪もないけどなあ。

『敵』でも、庭の風景は重要な役割を果たしている。井戸があって、納屋があって、和風だが庶民的な庭のたたずまいが私の好みだった。こんな庭なら倒れても様になるというか。死体を井戸に放り込むのはどうかと思ったが(⌒ー⌒)。
せっかくの丹精な暮らしも、「敵」が現れたために徐々に崩れていくとともに残酷な展開となるのだが、それも老いを生きる(そして死ぬ)という点においてはアリだな、そんな晩年もいいかな、と思わせる。どちらも妄想や譫妄はあるようだが認知症ではない。頭はしっかりしているのである。

映画を見て帰る途中に、居酒屋とバーを梯子。女子大生ではなく、おばさんらと少しの会話を楽しんだ。予行演習か?

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庭づくり、頑張ろう\(^o^)/ね。

 

2025/01/19

「関口宏のこの先どうなる?」で林業特集

まったく偶然なのだが、日曜日お昼にテレビをつけて何かあるかとチャンネルサーフィンをして開いたのが、BS-TBSの「関口宏のこの先どうなる?」という番組だった。

そこで林業をテーマにしていた。

「関口宏のこの先どうなる?」

おやおや、渋いことやってるなあ、と見だした。最初は微笑ましく、次に笑いながら、そして最後は怒りに変わった。

とくに驚いたのは、ドイツとの林業比較だ。

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日本はスギやヒノキの一斉林(画像には針葉樹とあるが、ようするに同一樹種)。ところがドイツは混交林で「自然環境に良い森づくり」なんだそうだ。ほほお。日本の林業のおかしさを指摘したか。しかも、日本は機械化を進めて作業道をいっぱい入れているが、ドイツはウインチ利用であまり道を入れないそうだ!

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日本が大型林業機械を使うために林道・作業道を入れだしたのは、たかだか20年、それもドイツを見習ってではなかったかなあ。ドイツからたくさんフォレスターを呼んだじゃないか。ところがドイツは道を入れたら森が傷つくと入れない方向に向かったというのだ。

しかも、この指摘の後に「日本の林業は伐って、植えての循環型」だと言い出した。それって、日本は混交林にするつもりがないということか。針広混交林づくりだってドイツのフォレスターに勧められたが、拒否している。
ドイツを見習う気はない宣言(笑)。

その後は「希望」も語る。たとえば林業従事者は減っているけど、若者率は高まっている。つまり将来に希望がある!
まあ、4万人ちょっとの人口の中で若者が増えたって、数百人だけど。しかも定着率は悪い。高齢林業者が引退したら、今の半分以下の林業従事者になるだろう。その中で若者が少し増えたとしてもねえ。。。(ドイツの林業従事者は120万人と紹介されたが、本当? 木材事業者も入れているのか。)

あとCLTも目いっぱい宣伝。木造ビルの素晴らしさを謳い上げる。
なぜ普及しないの?という関口さんの質問に「まだ生産する工場があまりない」。

え? 補助金ジャブジャブで全国8か所につくったけど、閑古鳥が鳴いているのではなかったか。ようするに需要がないのであって、生産が追いつかないのではない。そもそもCLTは失敗に終わったともっぱらの評判である。すでに現場ではやる気を失っている。

仮に今後CLTの需要が伸びたって、原木に対する歩留りは2割~3割。カーボンニュートラルに寄与するどころじゃない。この点は、私も書いたばかりだ。

〈ヤバい林業〉大阪・関西万博のリングの木はどこの国から来たものか?木材のことを知らない建築家、木材業者、ハウスメーカー担当者が多すぎる!

ほか、セルロースナノファイバーとか改質リグニンとかも紹介する。それもいいけど、研究途上で、実用化したとはとても言えない。それに、いずれの研究者からも、「あれはダメだ」という言葉を、私は聞いている。実用化の道は険しいのだ。

私自身は、仮に実用化できても、何ら林業に貢献しないことは間違いないと思っている。そもそもナノファイバーだってリグニンだって、そこらへんの雑木や農業廃棄物からだって抽出できる。森林所有者と林業家が一生懸命に育てた木を使うことはない。つまり山元に利益が還元されることはない。

この番組、結局のところ、林野庁の言い分紹介番組になっている。もっと木を伐れ、もっと木材を使え路線だ。それが森林を破壊しているとは信じたくないのだろう。もう少し、正確な問題点を指摘する人に取材したら。私に声をかけろとは言わないけどね(⌒ー⌒)。

ちなみにTVerなどで、まだ見られるようである。

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2024/11/12

ブックファースト新宿の「名著百選」

東京帰りにブックファースト新宿店に寄ってきた。

実は、ここで名著百選という催しをやっていて、私に(森林系の)本を推薦してくれという依頼があって応えたから。

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こんな感じのコーナーであった。私が推薦したのは、この本。

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広葉樹の国フランス』。すでにこのブログでも紹介しているが、広葉樹林業(正確には針葉樹も植えているから、針広混交林林業というべきかもしれない)を行っている、知られざる林業大国だ。「針葉樹だけの人工林皆伐方式林業」が世界的に行き詰まり、針広混交林づくりと択伐方式も課題となっている中、注目すべき要素が詰まっている。

次は、誰か私の本を推薦してくれ(笑)。もっとも森林系の本を選書する依頼が私に来るのなら、自著を推薦するのは気が引ける。

ところでブックファースト新宿には初めて訪れたのだが、何かと驚かされた。店の造りが迷路みたいだったとかもあるのだが、意外な棚が大きかったから。それは……「超科学」とか「スピリチュアル」棚。その分量たるや、ものすごいのだ。全部で何千冊置いているんだ、と思わせる。まあ、なかにはヨガとか宗教学的な本も混ざっていたが、圧倒された。

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そして、それらしい本を漁っている人も見かけた。売れるんだ。私も挑戦しようかな。。。。

しかし、何かと尖っている書店は面白い。

2024/10/23

朝ドラで気づく土倉家の物語

現在の朝ドラ「おむすび」は、「カンナの無駄遣い」というそうだ。何も大工道具の鉋を無駄遣いしているのではなく、橋本環奈の魅力を思い切り殺す役柄だから。なんで彼女をこのキャラに配役したのか不思議なほど。

私は、BSの「カーネーション」に夢中。そしてBS11の「半分、青い」。いやあ、どちらとも面白い。とくに「半分、青い」が描く高校生の姿は、いいなあ。会話が断然いい。「おむすび」は、同じ高校生でも、まったく会話が弾んでいない。

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そして気づくのだ。「カーネーション」は、日本人、とくに女性が着物から洋服へ移り変わる時代を描いているのだなあ、と。だいたい大正から昭和初期の時代だ。(その後に戦後編に移る。)その陰で悪戦苦闘をしている主人公にはワクワクする。実際に、こうした開拓者がいたのだろう。

そう言えば思い出した。土倉庄三郎は、明治9年に川上村の大滝小学校の生徒に制服として洋服をプレゼントしている。生地はちょっとジーンズに似ていて、デザインはブレザータイプ。横浜の店でつくらせたという。「カーネーション」より時代的には60年以上早い。実際、早すぎて根付かなかったわけだが、奈良の山村に洋服を着た子供たちがいたことは特筆すべきだ。なお土倉家は、みんな洋服を着て写された写真がある。当時は、写真館で洋服を貸し出して写真を撮るのが流行ったらしい。まあ、コスプレのような……。

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ちなみにタイトルのカーネーションは、何を意味するのか。ドラマの中では、子供の頃に洋館のパーティで見かけた花として描いている。時代は、やはり大正か。

日本にカーネーションが広がったのは、土倉龍次郎が温室栽培に成功してからだから、大正10年以降。ぴったり符合する。土倉家二代に渡る朝ドラとの縁。こじつけだけど(^-^;

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土倉龍次郎の著した『カーネーションの研究』より。

 

2024/10/20

読めるか?読まずして語るな!『鯨鯢の鰓にかく』

このタイトル、読めるだろうか。意味はわかるだろうか。

けいげいのあぎとをかく。鯨鯢は雄クジラと雌クジラのこと、鰓はあぎとと読み、エラ、アゴのことで、クジラに飲み込まれそうになったが、アゴに引っかかって助かった~そんな絶体絶命な状況を示す。まさに現在の日本の捕鯨業界を指す。

『鯨鯢の鰓にかく 商業捕鯨再起への航跡 山川徹著 小学館』

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同じ物書きとして、こんな難しいタイトルは販売に不利ではなかろうか、と心配してしまう。だが、意味は、ぴったり内容と合う。日本の捕鯨は、厳しい反対世論を受けて、調査捕鯨を経たうえで領海内商業捕鯨を復活させ、ギリギリ踏ん張っている。

著者は、2007年から3度も捕鯨船に乗り(調査捕鯨2回、商業捕鯨1回、のべ百数十日)、200人に迫る捕鯨関係者や研究者に取材をしたという。その密度は濃い。仕事内容はもちろん、プライベート面まで踏み込んで聞き出し、論文を含む文献を渉猟し……多数の人に時間をかけて取材するのは実に大変だ。物理的な意味だけでなく、18年にも及ぶと昔の記憶がおぼろげになり精神的にも揺れ動く。私なら、と自問すると首を横に振りたくなる。ちなみに私が土倉庄三郎関係の取材を始めて19年も経ている(笑)。

単に情報が密なのではない。捕鯨船に乗る人、研究する人、経営する人、反捕鯨を唱える人……とさまざまな立場の姿が見えてくる。その中からは、世間の間違った認識も浮かび上がる。今後、捕鯨を語るには欠かせない書籍となるだろう。

あえて印象的な部分を指摘すると、反捕鯨世論を盛り上げてしまった一因には、水産庁の近視眼的な政策がある。同時に日本の水産業界のどうにもならない乱獲体質と違法操業のオンパレードがある。

ただ、その汚名を拭うために調査捕鯨や復活した商業捕鯨では、極めて厳密で科学的な資源管理が行われている。

そして最後に著者が指摘するのは「敵をつくれ」である。IWC脱退は必然であったようでいて、実は敵を失うことであった。議論の喪失は、不正や隠蔽、そして独善を生み出すとする。クジラのあぎとに引っかかって、かろうじて生き長らえた捕鯨は、独善によって滅ぶかもしれない。いや、むしろ捕鯨は厳しい国際世論のおかげで持続的にせざるを得ないよう拮抗しているが、ほかの魚類の漁業は極めて危うい。


私も、同様の言葉を林業界に投げておこう。違法行為のオンパレードと近視眼的な政策はまったく同じだ。そして、どこからも脱退していないのに「敵がいない」。

国民はなぜか林業界に優しく増税を黙って受け入れ、木材業界も建築業界も、そして官僚も(森林を破壊して)木材消費を増やすことに大手を振って賛成している。何より市民が林業を手放しで応援している姿は、私には気色悪くて仕方ない。多少の不正にも目をつぶり(というより関心がなく)、地球環境のため?と称して林業を推進している。

よほど思考を停止しているのか、単にアホなのかは知らないが、真っ当な頭があれば、この欺瞞に気づくだろうに。林業は基本的に自然破壊なのだ。それを、人間社会の需要にすり合わせて破壊を少なく回復を速やかに進め資源の有効活用を進めるのが林業である。その点は、自然資源を獲る水産業もまったく同じだろう。

タイトルが読めずしても、捕鯨を知りたければ読まずに済ますなかれ。

 

2024/10/07

『図説日本の森林』のテーマ

『図説 日本の森林 ~森・人・生き物の多様なかかわり』(日本森林学会編 朝倉書店刊)を手にした。どんな本なのか、私なりに紹介したい。

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意外と大きい。B5版並製本。ちょっとムックのようにも見える。私は、図説とあるから森林図鑑、言い換えると日本の(観光的な)森林ガイドなのかと思っていた。実際に目次には、日本各地の森林がずらりと並ぶ。ナンバリングでは70あり、136景とある。そこだけ引用すると。

第1部 森林を読み解く136景
 1 知床の森〔森章〕 [北海道]
 2 パイロットフォレスト〔渋谷正人〕 [北海道]
 3 ヤチダモ湿生林〔冨士田裕子〕 [北海道]
 4 阿寒のアカエゾマツ林 〔吉田俊也〕 [北海道]
 5 十勝平野の河畔林〔中村太士〕 [北海道]
 6 水辺林〔崎尾均〕 [全国]
 7 大雪山の針広混交林〔久保田康裕〕 [北海道]
 8 富良野の東京大学北海道演習林〔鈴木智之・尾張敏章〕 [北海道]
 ・解説1 研究のための森林 〔石原正恵〕
 9 北海道のカシワ海岸林〔永光輝義・清水一〕 [北海道]
 10 野幌の森〔渋谷正人〕 [北海道]
 11 北限のブナ林 〔松井哲哉〕 [北海道]
 12 ガルトネル・ブナ林〔並川寛司〕 [北海道]
 13 青森ヒバの森 〔櫃間岳〕 [東北]
 14 野辺地防雪原林〔正木隆・増井洋介〕 [東北]
 15 本州中部以北のブナ林〔小山泰弘〕 [東日本]
 16 秋田スギの天然林〔星崎和彦〕 [東北]
 17 スギの天然林〔津村義彦〕 [全国]
 18 本州多雪地帯の亜高山帯針葉樹林〔杉田久志〕 [東日本]
 19 北上山地の多様な二次林 〔大住克博〕 [東北]
 20 南部赤松の林〔正木隆〕 [東北]
 21 遺存する針葉樹林〔木佐貫博光〕 [全国]
 ・解説2 気候変動と森林 〔津山幾太郎・中尾勝洋〕
 22 冷温帯性落葉広葉樹の里山二次林〔伊東宏樹・斉藤正一〕 [東日本]
 23 青葉山の森 〔永松大〕 [東北]
 24 只見生物圏保存地域〔中野陽介〕 [東北]
 25 ブナの天然更新試験地〔正木隆〕 [東日本]
 26 足尾荒廃地の森林再生〔大久保達弘〕 [関東]
 27 高原山のイヌブナ自然林〔大久保達弘〕 [関東]
 28 小川試験地〔柴田銃江〕 [関東]
 29 関東周辺の太平洋型ブナ林〔島野光司〕 [関東]
 30 明治神宮の森〔濱野周泰〕 [関東]
 31 真鶴半島のお林〔正木隆〕 [関東]
 32 東京大学千葉演習林〔當山啓介・久本洋子〕 [関東]
 33 遷移がみえる三宅島の森林〔上條隆志〕 [関東]
 ・解説3 攪乱と植生遷移〔吉川正人〕
 34 御蔵島のスダジイ林〔上條隆志〕 [関東]
 35 小笠原の低木林〔安部哲人〕 [関東]
 36 佐渡島の森〔崎尾均〕 [中部]
 37 埋没林〔志知幸治〕 [全国]
 38 上高地のケショウヤナギ林〔新山馨〕 [中部]
 39 中部地方の氷期的針葉樹林〔勝木俊雄〕 [中部]
 40 木曽のヒノキ林〔岡野哲郎〕 [中部]
 41 東京都水道水源林 〔泉桂子〕 [中部]
 42 富士山をとりまく森林〔長池卓男〕 [中部]
 43 函南原生林〔澤田佳美〕 [中部]
 ・解説4 気候帯と森林帯〔相場慎一郎〕
 44 能登半島のアテ林 〔小谷二郎〕 [中部]
 45 海岸クロマツ林〔坂本知己・小倉晃・大谷達也・萩野裕章〕 [全国]
 46 熱田神宮社叢〔橋本啓史〕 [中部]
 47 海上の森〔中川弥智子〕 [中部]
 48 台場クヌギ〔深町加津枝〕 [近畿]
 49 六甲山の再生林〔石井弘明〕 [近畿]
 50 万博記念公園の森〔森本幸裕〕 [近畿]
 51 春日山原始林〔名波哲〕 [近畿]
 52 スギ人工林・ヒノキ人工林〔横井秀一・上野満・高橋絵里奈・伊藤哲・太田敬之・島田博匡〕 [全国]
 53 大台ヶ原の森林〔明石信廣〕 [近畿]
 ・解説5 保護林 〔笹岡達男〕
 54 伊勢神宮宮域林〔島田博匡〕 [近畿]
 55 隠岐・島後のスギ林〔湯本貴和〕 [中国]
 56 西日本のブナ林〔永松大・比嘉基紀・金谷整一・作田耕太郎〕 [西日本]
 57 指月山の萩城城内林 〔永松大〕 [中国]
 58 弥山原始林 〔坪田博美〕 [中国]
 59 小豆島のアベマキ林 〔大住克博〕 [四国]
 60 択伐が行われるスギ・ヒノキ人工林〔宮本和樹〕 [四国]
 61 石鎚山の森林〔比嘉基紀〕 [四国]
 62 樵木林業を支えたウバメガシ林〔佐藤保〕 [四国]
 ・解説6 暖温帯の里山〔佐藤保〕
 63 上勝町高丸山千年の森 〔鎌田磨人〕 [四国]
 64 龍良山の照葉樹林〔真鍋徹〕 [九州・沖縄]
 65 虹の松原〔作田耕太郎〕 [九州・沖縄]
 66 九州の照葉樹林 〔川西基博〕 [九州・沖縄]
 67 綾生物圏保存地域 〔山川博美〕 [九州・沖縄]
 68 霧島山周辺の森林 〔伊藤哲〕 [九州・沖縄]
 69 屋久島の森〔相場慎一郎〕 [九州・沖縄]
 70 奄美・琉球の森林〔高嶋敦史・川西基博・渡辺信〕 [九州・沖縄]
 ・解説7 残念な姿のスギやヒノキの人工林〔横井秀一〕

この中に私が訪れたことのある森林も多い。そこで、知っている森の項目に目を通す。関西圏はほぼ全部知っているから。知っている森と記載を比べる。

そこで気づいた。これは個別の森の内容を伝えようとしていなかった。いわゆるガイド的な要素は少なく、むしろ学問的な解説だ。それぞれの森の魅力を紹介しているのでもなく、森の歴史も含めた生態系を紹介している。人工林も多いから、林業の歴史や過去に人が手を入れた過程も記されている。

一方で森林別に取り上げるなら当然入るであろう世界遺産の白神山地が登場しない。かろうじて本州中部以北のブナ林」に組み込まれている。ほかにも溶岩台地の上に成立した珍しい森・青木ヶ原は「富士山をとりまく森林」に含まれる。かといって同じ様な森をまとめているのではなく、地域別だったり、生態系別に取り上げた、なかなか独特な構成なのであった。

また万博公園の森や明治神宮の森のような、ほぼゼロから人間がつくった森も登場する。台場クヌギのような炭焼きによって誕生した森も分けている。面積としては1ヘクタール以下の極小の森もある。

ここで気づくのだ。これは日本の森の一覧解説ではなく、日本の森林生態系の一覧なのだと。土地・地域と結びついた森林紹介というよりは、日本にある森林生態系を整理して紹介しているのだと。森を形作るさまざまな要素、地質に気候に動物に菌類、人の関与まで長い歳月の末に成立している森林を切り分けたのか。

そう考えると、特異な本、図説となる。樹木図鑑や木材図鑑、最近は葉っぱ図鑑や木の実図鑑まであり、森林図鑑もかろうじてある。が、森林生態系図鑑なるものを、私はこれまで見たことがない。専門書ならば生態系別に解説しているケースはないではないが、辞書・図鑑的な取り上げ方をしていない。

そういや、第2部は「生き物たちの森林」で哺乳類から鳥類、菌類まで、つまり植物以外の生き物を取り上げ、第3部は「森林と人」として人為を紹介する。

これは分ける必要はあったのかな。第1部が樹木を中心とした植物の生態系ということなのだろうが、いっそここに動物も菌類も人類も、全部組み込めなかったのか。まさに菌類や人類も関わって生態系をつくっているのだから。そして日本にある森林生態系を機能別一覧にできなかっただろうか……私ならこの切り口で編集するな、と考えるのは、昔取った杵柄の編集者としての感覚が消えていないからかもしれない。

あ、もう一つ気づいた。これ、「図説」とあるのだが、意外や図は少ないよ。写真も数はそこそこあるが、小さめ。文章中心だ。普通の本でも添えてある程度の図説写真である。タイトルに偽りあり(笑)。

 

2024/09/02

日本ジャーナリスト会議『盗伐』書評

ジャーナリスト」という新聞に『盗伐 林業現場からの警鐘』の書評が掲載された。

この新聞、寡聞にして知らなかったが、日本ジャーナリスト会議(JCJ)発行の機関紙(月刊)とのこと。つまり読み手のほとんどは、私の同業者かその関係者。1955年創刊というから、結構な歴史を持っているのであった。こうした媒体に取り上げていただけたのは有り難い。

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ところでちょっと脱線するが、この書評欄には『ルポ 書店危機』(山内貴範著)も取り上げられている。町からリアル書店が消えていく様子のルポらしい(読んでいないので、内容はわからない)。本を書いている身としては、こちらも気になった。

なによりこちらの書評も面白い(書き手は永江朗)。最後に以下のような一文で締めくくる。

「本屋がなくなると困る」と思っているのは、書店関係者と本好きの一部なのかもしれない。

 

これ、林業界でも同じことが言えると思う。

私は、書籍のテーマに世間の関心の薄い題材を選ぶことを旨としている(いや、結果的に、だけどね。自分の興味の範囲が世間と合わないということです)せいか、意外な感想をいただくことが多い。
『盗伐』も世間からは「トウバツという言葉を知らなかった、討伐かと思った」「辛くなって途中で読むのを止めた。こんなこと知りたくなかった」という感想をいただくほどなのだが、プロには評価されたということか。

でも……いわゆる世間も、ジャーナリストも、森林問題から林業問題に分け入ると、極端に興味が失せることを私は体験的に知っている(笑)。

「世界」「社会」は“都会の人”でできており、森林世界は自然科学の分野とカテゴリー分けされて、林業となると少数しかいない隙間産業と認識される。いわば林業界は、世間でも世界でもない異界。「あれは別世界だから」。選挙で少数業界は票にならないのと同じである。

アマゾンやボルネオで起きている大規模に熱帯雨林を破壊する行為に比べて、0・1ヘクタールとか、せいぜい5ヘクタールの盗伐なんて、小さな自然破壊なのでスルーする、盛り上がらないのかもしれない。

私の読者は林業関係者が多いが、その人が思っているほど世間は林業にも木材にも興味がないよ、と教えてあげたい(⌒ー⌒)。

その点を忘れると空回りしてしまう。

 

2024/08/16

『山が学校だった』に学ぶ

先日、逝去された辻谷達雄氏の自伝『山が学校だった』を懐かしく読み返していると、意外な発見がある。

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私は彼の半生(幼年時代から60歳代まで)を聞き取った記憶が生々しくあるが、実は後半は現代の林業論やら労働環境に関して話した部分が多くある。それを私が忘れていてどうする。

で、その部分に今につながる情報が多く含まれていることに改めて気づいたのだ。

地拵えや植林苗、下刈りの仕方で行った試行錯誤などは、現在の施業法にも参考になるはずだ。ほかにも山村問題や林業経営、森林のあり方、実に多岐にわたる。

ここでは獣害について触れている部分を紹介しよう。

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この本は、1990年代後半に取材・執筆している。つまり、今から約30年前の経験だ。その頃に、すでにクマが増えていることを指摘している。さらに鈴を鳴らしても逃げないことも。クマが人馴れして、鈴などの音をさせても逃げない、逆によってくることは最近になって言われだしたが、すでにこの時期にクマの行動になっていたのだ。


シカやカモシカ問題も同じだ。生息数が増えていることは、当時はまだ認められていなかった。実は私のところに増えているという声が届いていたのだが、半信半疑だったことを覚えている。

また天然のヒノキ苗が食べられないという指摘は、今後参考になるかもしれない。まずい苗をつくるのだ。それが遺伝子組み替えか薬剤散布か、方法はわからないが、生産の参考にできないか。

そのほか、辻谷さんの仕事勘や家族勘も、令和の世に合っているように感じる。就職も結婚も子供たちの自由意志に任せつつ、必要なアドバイスと引き際も心得ている。ああ、先進的な人だったんだなあ、と改めて再確認した次第である。

 

2024/08/08

女性誌の林業記事も捨てたもんじゃない

ネットにあったこんな記事。

「日本の森林について正しく知るための12の質問」とある。こんな記事は、素人向きに書かれているから、間違えていたり端折りすぎ! なことが多いんだよな。そんな記事にツッこんでブログ記事を書こうか、と思ったかどうかはともかく(^^;)、読んでみて驚いた。なかなか鋭く的確な記述ではないか。
国産木材=高いというイメージになるかもしれませんが、日本の立木(山に立っている状態の木)の価格は下落しています。……「国産材は高い」と言われる時の“材”とは、製材後の木材やそれを使った製品のこと。
さらに林業の作業の分業化が進んでいること。その問題点。徐伐、間伐、択伐、主伐、皆伐などの言葉の説明もよい。(多少、解釈的には異論もあるが。)そして驚いたのは、択伐をかつての主流としていること。
「皆伐」は、育ったすべての木を伐採すること。主伐に含まれますが、一斉に伐採して区画を更地にする意味合いが強くなります。それとは対照的な主伐方法が「択伐」で、かつて日本で主流だった伐採方法です。
この点をはっきり記した記事は、林業系の専門誌でもあまり目にしない。いわゆる伝統的林業地では、択伐やってたんだよ。
「択伐」に求められるのは経験と知識。伐採量の見極めや樹齢の違う木々をバランスよく育てるノウハウ、伐採後の丸太を木々の間を抜けて運び出す方法など、高い技術と資金が必要で、かつての日本の林業は世界的に見ても極めて高度な技術力を持っていました。
だいたい動力のない時代、皆伐するのは無理だった。せいぜい狭い小規模皆伐まで。また現在は択伐をあまりしないのは、高度な技術力を持った林業家が減ったことも暗に臭わせている。
だれが書いたのかね、と思って見ると、「FRaU編集部」とある。それで、ははん、と気づいた。
女性誌の「FRaU」8月号の抜粋だ。
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これ、広告で見て、表紙に引き寄せられて(^^;)、買おうかなと書店に行って探したのだ。しかし、何軒か回って見つからなかったので諦めたのである。その記事か。見た目以上にしっかりした内容のようである。実際、目次にも惹かれる項目が多い。(目次はAmazon等に飛べば読める。)

今からでもAmazonで購入する? それとも、こうしてネットで抜粋記事が読めたから、もういい? 表紙はこの画像だけ取り込んでおけば満足できるか(⌒ー⌒)。



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