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森と林業と田舎の本

2021/02/20

自然公園法改正案で動物に「餌やり禁止」項目

環境省は、自然公園法改正案を提出している。3月上旬の閣議決定を目指すそうだ。

そこでニュースになっているのは、
国立公園や国定公園の一部地域で、クマなど野生動物に餌を与えることを禁じた上、30万円以下の罰金を科す規定を新設する。
という条項だ。

昨年は市街地までクマが出没して人を襲ったり大騒動になったが、ほかにも頻繁に野生動物が人里に出没するようになった。その背景に餌付けされた野生動物が人に慣れて出没した可能性があるからだろうか。

具体的な改正案は、自然公園の「特別地域」(もっとも厳正に自然を守ることを規定された地域)で、哺乳類や鳥類に餌を与えてはならないと規定するものだ。公園を管理する国や都道府県の職員は、餌を与えている人にやめるよう指示でき、従わなかった場合は罰金を科す。一部メディアには罰金30万円と見出しを付けているが、確定ではないだろう。

野生動物への餌やり禁止は結構なことだ。クマばかりクローズアップされているが、ほかの動物もみんな含むのだろう。シカやイノシシ、そしてハクチョウ、カモなどへの餌やりが目立つ。
実は奈良公園のシカ(ナラシカ)への勝手な餌やりも問題になっていて、奈良県の条例で禁止項目を作ろうとしているのだが、先にこちらの法律ができたらしめたものだ。奈良公園は国立・国定公園でもなければ特別地域でもない(そもそも自然公園ではなく、都市公園)が、便乗することができる(笑)。

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私が目撃したナラシカへの餌やり。わざわざパン屑を持ってきて配る人がいる。ときに軽トラで野菜クズを運ぶ人まで。。。

もっとも、本気で禁止すべきなのはノネコだろうなあ。生態系への影響が半端ない。奄美や沖縄、伊豆諸島、小笠原諸島などでは顕在化しているが、多分本土も少なからぬ被害が出ているはずだ。誰も調査していないけど。すばりノネコに餌をやったら罰金! という法律をつくってほしい。それも特別地域と狭く規定するのではなく、日本全国でノネコ・ノラネコへの餌やり禁止! 私の夢だ(笑)。ただし、そのネコが野生動物かどうかを確認するのが大変なうえ、世論を敵に回すから実現までの壁は高い。

 

ちなみに、改正案にはさまざまな項目が並ぶ。パプリックコメントの時期は終わったが、そのベースとなる素案(中央環境審議会の自然公園等小委員会の答申)は以下の通り。

自然公園法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について(答申案) 

この中の餌やり禁止の項目は、実はほんのわずかだった。

(利用のルール・マナー)
利用形態の多様化等に伴い、動物への餌付けによる人馴れ、ドローンの飛行による騒音、登山道の自転車利用による事故や荒廃のおそれ、ペット同伴登山による他の利用者や利用施設への迷惑行為、野外へのし尿の垂れ流しによる悪臭、トレイルランニング大会による歩道の適正な維持管理の妨げや静穏の阻害等の利用環境への悪影響を与えうる事例が一部見られる。地域で独自の利用のルール・マナーを定めている場合があるが、法律による強制力のない自主的なルールでは指導に限界があるとの指摘もある。

ここにあるように、ルールの中のドローンの飛行やトレイルランやマウンテンバイク、イヌなどペット連れ登山などの規制とセットに触れられているだけ。それが、大きくニュースになったのは、取材した記者が目をつけたのではなく、多分、官僚から説明(ここがポイントですぜ、読者ウケするでしょ? )を受けたのだろう。

でも、ドローンぐらいいいような気がするけどなあ(笑)。騒音もだけど、落ちたら困るか。

なお、動植物の観察などをする自然体験プログラムを促進するための登山道など環境整備の財政支援や、手続きの簡素化という項目もある。ワーケーションや環境教育を意識したのだろう。地味だが、こちらの方にも、もう少し注目すべきではないかと思う。果たして、素案どおり通るだろうか。それとも変更を余儀なくされるか。罰金を外されたら効果がなくなる。

3月国会を少しは注目しよう。

 

2021/01/28

VUCA(ブーカ)の世界

最近、ビジネス用語で「VUCAの世界」という言葉があるそうだ。もっとも、その語源は軍事用語だという。

VUCAは、
Volatility―変動性、
Uncertainty―不確実性、
Complexity―複雑性、
Ambiguity―曖昧性
の頭文字をとったもの。ブーカと読むそうだ。

この言葉はどれも正確なことは何一つわからず、すぐ変動するし、曖昧で複雑……なんだか手を出しようがないような世界である。ようするに予測不能ということだ。

なぜこれが軍事用語だったかというと、1990年代にこれまでの国対国の戦争はなくなりつつある代わりに、ゲリラ闘争やテロ行為が頻発する国際紛争が増えると想定したことからなのだという。

敵が国なり目に見える組織でないとなると、いつ、どこで、何を仕掛けてくるかさっぱりわからない。そして次々と標的を変えるし、指揮系統も読み取れない。そもそも戦略さえあるのかどうなのか……という状態になる。それに対して行う戦闘というか防御方法とは何か。という軍隊の戦術や組織システムを考える中で「VUCAの世界」という概念が生まれたらしい。
そして、その概念が今ではビジネス界にも持ち込まれたのだ。

改めて、現在の世界を覆うコロナ禍は、このVUCAの世界だ。だから政界も経済界もトップの立案に頼る戦略では対応しきれていない。

VUCAという不確実性の強い世界では、組織のすべてのメンバーが現場で柔軟かつ素早い決断をし、行動しなくてはならない。判断をトップに仰いでいたら間に合わない。常に情報をアップデートして、主観ではなく客観的で信用できる情報を集めて、何をどうするのが最善なのかを決断して選択をすべきだ。ある意味、現場力と言えよう。
何もトップリーダーの判断がいらないというわけではないだろう。むしろリーダーはビジョンを示し、そのビジョンが現場指揮官に共有されてこそ、現場の判断が生きてくる。

判断(理念、構想)と行動(作業、対応)というのは抱き合わせないといけないんだな、と思う。自分で判断して、自分で行動するからやる気も出るし、判断も磨かれて内容もよくなっていく。そして利益も伴う。

ところが近年は管理と作業を分離することが増えた。その方が効率をアップさせ作業が進む、儲かると考えたのだろう。しかし現場から分離されたリーダーが考えるとトンチンカンで現場に合わない判断になる。判断させてもらえない現場では、言われただけの作業をして、それが無意味な作業であろうと止まらない。しかし意欲を削がれる。そして疲弊していく。しかしリーダーはこれでいいんだ、金はやるから文句言うなという態度で、現場も金をもらうために黙ってするしかない。

そんな組織は硬直化する。資本主義の末路である。

なんの話をしてるって? もちろん、林政と林業現場の話である。

 

 

 

2020/12/16

国民森林会議の提言に「恒続林」

国民森林会議が、2020年度の提言を公表している。国民森林会議は、今風にたとえれば、日本学術会議の林業板みたいなものか。会長は藤森隆郎氏、提言委員長は泉英二氏となっている。

肝心の提言は、「持続可能な森林の管理(経営)」を論じた第1提言と、「法正林思想」や「恒続林思想」の現代的意義を論じた第2提言に分かれる。なかなか読みごたえある。大部なもので、とても全部は紹介できないが、たとえば第1提言。

日本も加盟しているモントリオールプロセスについて述べると、「持続可能であるか否か」を判断するためには、「生物多様性」、「生態系の生産力」、「社会・経済的便益」など 7 つの基準と、それらを具体的に示す複数の指標の動向によって総合的に判断していくものとしている。この仕組みはヨーロッパ起源の民間主導による「森林認証制度」の枠組みと共通性が高い。

後半では、人材育成を論じている。

ヨーロッパのフォオレスターのような優れたリーダーとなる技術者が、日本でも地域ごとに必要である。経験則や科学的根拠に基づいた森林施業の技術指導から、経営の指導、流通の調整、都市部と山村の交流への貢献など、現場に立って林業と一般社会を結ぶ重要な役割を果たす存在が必要である。そのような林業技術者のリーダーを育成し、活躍できるシステムを築けば、それぞれの地域の林業家の経営力、技術力のレベルは向上し、「持続可能な森林の管理(経営)」の必要条件は高められる。

さて、私が注目したのは第2提言だ。法正林思想と恒続林思想が登場するのである。

両者は名前は似ている?が、正反対の思想と言っていい。前者は数学的に森林の収穫物を扱っているのに対して、後者はある意味フリースタイル。そして法正林思想を歴史の中で否定されたとし、世界の林政は恒続林思想の流れに乗ったとしている。ところが政府は、いまだに前者を推進しているのである。

そういや、もう10年以上前になるが、たまたま林野庁の若手?ベテラン?と飲む機会があって、私が恒続林の話を話題に振ったが、まったく無反応(おそらく「恒続林」という言葉自体を知らなかったのだろう)だったのを思い出す。

ただ、難しい林業理論や林政はさておき、日本の林業の政策の変遷の歴史みたいなのが描かれているから、(私的には)面白かった。

ちょうど『森と日本人の1500年』(平凡社新書)を執筆の際に、この手の林政史の資料をひっくり返し、悪戦苦闘したことが記憶から蘇った。ただ、それをそのまま紹介しても一般向きではないからと、それこそ誤解を恐れず換骨奪胎? いやかみ砕いて説明し直し、いかに一般人に森林と林業の関わりが変遷していったか、林業思想の流れを示したのだが、それでも「難しいよ」と編集者に言われた……のだった(^^;)。

ここでは全体の趣旨を要約した形になっている「おわりに」を引用しておこう。

以上、本第 2 提言では、ここ 10 年来の林野庁の「短伐期皆伐方式」林業は、実は、本家のドイツにあっても既に 100 年以上前に批判にさらされた「法正林思想」に基づいていることを明らかにするとともに、ドイツにおいて、この「法正林思想」がどのような背景と経緯で登場し、どのような機能を果たしたかを明らかにした。次に、「法正林思想」に基づく人工林が、人間にとって都合のよい森林を画一的、機械的、演繹的に作り出そうとしたことに対して、「自然からの厳しい反撃」にあったことを明らかにした。そこで、ドイツでは、「恒続林思想」が登場して、「法正林思想」を全面的に否定したのであった。さらに、20 世紀半ばを過ぎる頃から、ドイツを中心とするヨーロッパでは、多機能林業論、多目的林業論、さらには近自然林業論などへと進化してきたことを明らかにした。
日本の林政は、「法正林思想」を背景に、「持続可能な森林経営」論さえも方便として駆使し、結果として、大量で安価な木材の安定供給だけを目的として、非持続的な荒く粗雑な施業を山元に強いているのである。

どうせなら、日本の動きを林野庁サイドだけでなく、地方の動きも取り入れてほしかったな。奈良県が恒続林を取り入れると宣言したことも含めて……(^^;)。宣伝足りなかったか。

ともあれ、ご一読あれ。

2020/11/17

林政審議会の資料をちょい読みする

林政審議会の次年度の委員を募集しているようだ。2名とのことである。まあ、公募と言ってもほとんど出来レースだろうが……私はもう林業系の情報から少しずつ距離を置いていく所存だったのだが、つい現在はどんなテーマで審議会開いているの?とつい興味をもって覗いてみた。いかん。

幸い議事録やら各会の配布資料などは、全部HPに上げられている。

そこで10月分の資料を見てみた。

印象としては、少なくても森林・林業白書より中身が濃い。白書では触れていないことも書いてある。とくに目をつけたのは、皆伐跡地の再造林問題である。で、こんな図やグラフがある。

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ざっと見てもらえばわかるが、伐採面積に比して再造林しているのは、3割ほどであることを認めているね。そして造林未済地(という言葉があるんだ。伐採跡地のうち、造林を計画し2年以内に更新が完了しないもの、天然更新を計画し5年以内に更新が完了しないもの、計画なしに伐採が行われているもの、を指すのだそうだ)が、平成29年度で11万4000ヘクタールあるとしている。これ、今年度まで推測したら20万ヘクタール近くになるんじゃないだろうな。これらも森林面積に加えているんだろうが、実態は伐採後のまま放置だ。

細かく見ていくと、何かにつけ計画どおりに進んでいないことが浮かび上がる。皆さんも、そのつもりでご一読を(笑)。

なお、もう一つ面白いと思ったのは、審議会はペーパーレスを推進していて、これらの資料は印刷して配布しないそうだ。傍聴人だけ?委員もそうだといいな。自らタブレットなどを持ち込んで、ダウンロードしておくよう勧めている。たしかに紙にしたら一人当たり何十枚になることか。紙の使用を減らすというのは製紙業界的にはどうかというのはあるが、進めるべきだろう。

審議会でどんな意見が出ようと、それが政策にどう反映するのか怪しいもんだが、表向きの顔以外を見ることができるかもね。

 

2020/11/10

外国資本による土地取得対策会議……

政府は「外国資本が 自衛隊基地周辺など安全保障上重要な土地の取得・利用が相次いでいることに対する有効な方策を検討する有識者会議」を設置するそうだ。

外資が日本の森を奪う! と大騒ぎ?したのは何年前か。あきらかにガセネタだったが、世間に流布し今も信じている人もいるだろう。
ようやく落ち着いたのかと思えば、今度は森林だけでなく土地全体で、自衛隊基地や原子力発電所の隣接地、水源地や国境離島などに絞ったらしい。それで、有識者は土地の所有者や利用実態を一元管理する仕組みを考えるというのだが……。政府は来年の通常国会に関連法案を提出するつもりのようである。

別に反対はしない。外国資本が日本の土地をどこを・どれぐらい取得して、いかに利用しているのか把握すること自体は別に悪いことじゃない。情報は常に収集しておくものだ。法務省と国土交通省、林野庁、そして自治体などが個別に持っている情報を整理して管理するのも必要だろう。でも、自衛隊基地周辺だけじゃあね。。。全国全土で行えば、日本の土地利用の基礎データになるのだが。

ただ、その後どうするのか?「外資の森林収奪」と騒いだときも、外資を理由に締め出すことはできずに、届け出制度をつくっただけで終わった。今回も、情報を把握したとして、それをどうする? 公安調査庁か公安警察にでも見張らせるのか? 土地取得に国籍条項を設けるのはハードルが高すぎる。そもそも、何らかの意図を持って基地や原発などの周辺に土地を所有するのなら、あからさまな外資を表に出さないだろう。ましてや水源地など所有しても何の意味もない。

 

このところの「キャンプのための森林購入」ブームの件で森林売買を扱う業者に伺うと、外資が森を奪うと騒がれた一時期に「マスコミが外国人(中国人と同義)が森を買いに来ていないかとうるさく取材に来て、そんなことはまったくないと何度も言っているのに、記事になったら買いに来たことになってるんだよ」と言っておりました(笑)。
でも、「中国人に買われたら困るから買っておこう」という奇特な日本人もいて、役に立たない山林でも買ってくれたからビジネス的には有り難かったそうである。

きっと今回も、法律ができたら基地や原発周辺にある外国籍所有の土地を探し出して、「ほれ、こんな例があった!」と、こじつけて騒ぐだろうなあ。でも、購入した外国人の利用目的が「キャンプしたいから」だったら、どうするんだろう。プライベートキャンプ場禁止法でもつくるのかねえ。。。

 

 

2020/11/05

君は、国連生物多様性サミットを知っているか

アメリカ大統領選挙、大阪都構想と一緒ぐらい接戦で揉めてますね。今後世界は、当分「分断」と「ヘイト」の時代を続けるのだろう。ま、維新とトランプとネトウヨは似てますから(^^;)。

そんな中でも、団結して動いていた分野はあるのだよ、という硬派の話題。

9月30日に国連生物多様性サミットが開催されたことを知っているだろうか。非常に規模の大きな国際会議である。コロナ禍のためオンラインではあるが、100カ国以上の首脳陣に600社以上の世界的企業の社長(CEO)も参加していた。そして今後10年間で今の(生物多様性を破壊する)状態を逆転しなければならないと呼びかけている。企業が参加しているのは、生物多様性は経済活動にも大きな影響があるからだ。このままだとビジネス界にも深刻な影響が出る心配がある。ちなみに日本は、小泉環境大臣がビデオメッセージを出したほか、10社ほどが参加していた模様。

で、どんな目標を掲げたのかと調べてみたら、生物多様性サミット開催の前の9月28日に集まって、2030年までに生物多様性喪失の流れを逆転させるために団結して行動すると宣言していて、10項目の「リーダーの自然回復への誓約」(英文)を行っていた。これに参加・賛同する首脳の数は77カ国あるが、そこに日本の名前はない……。

ともあれその10項目がどんなものか探すと、和訳があった。

指導者による自然回復の誓約

この中の、農林業に関わる項目である6と7を抜き出そう。

6. 私たちは、環境の劣化、生物多様性の損失、気候変動に対する取り組みに重大な影響を及ぼし、安全保障、法の支配、人権、公衆衛生、社会経済開発を脅かす可能性のある環境犯罪を撲滅することを誓います。実効性とバランスを備えた抑制的な法的枠組を確保し、国内法及び国際法の執行を強化して効果的な協力の促進を図ります。こうした取り組みには、違法野生生物取引や違法伐採材取引など、組織犯罪グループが関与する環境犯罪を重大な犯罪と捉えて対処することの他、サプライチェーン全体にまたがる活動、違法に取得した野生生物及び違法伐採材並びにその派生物の需要の抑制、人と自然と経済のための持続可能な解決策を確保する地域コミュニティとの連動も含まれます。

7. 私たちは、食糧生産、農業、漁業、林業、エネルギー、観光、インフラ、採取業、商取引、サプライチェーンといった重要セクターを含む、あらゆるレベルの分野別及び分野横断的な関連政策においても、G7(主要7カ国)、G20(主要20カ国・地域)、WTO(世界貿易機関)、WHO(世界保健機関)、FAO(国連食糧農業機関)、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)、UNCCD(国連砂漠化対処条約)等の変化を促す重要な国際協定及び国際プロセスにおいても、生物多様性の主流化を図ることを誓います。その対策として、政府のあらゆる政策、決定、投資において自然及び生物多様性の価値を考慮するとともに、生物多様性の保全・回復・持続可能な利用、遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を促進します。

農林水産業のような自然と関わる産業は、生物多様性に大きな影響を与える。なお林業分野では違法伐採問題に触れている。組織犯罪グループの関与する重大な犯罪としている。

とくにこの誓約の最初の部分には「私たちは今、地球の非常事態にある」と記されている。生物多様性とは、人間以外の生物を対象として考えるのではなく、人間の生活や社会を維持するためなのだ、自然は人間の健康福祉そして繁栄を支える基盤なのだ……という認識だ。この生命維持装置(自然)が傷ついてしまうと、貧困、不平等、飢餓などをより進行させてしまい、SDGsの達成も困難になる。その上で、自分たちの行動は将来世代によって評価される、自分たちにはその説明責任がある……と言っている。なかなか厳しく、切羽詰まった感がある。

これほど大きな目標を掲げたサミットなのに、日本では、ほとんどメディアの報道はされなかったようだ。おそらく政府内にも興味を持っている議員や官僚がどれだけいるのかどうかも疑問である。

一応、WWFのページはあるが、政府のサイトでは、小泉環境大臣の演説のみを紹介しただけという情けなさ(それも外交のページ)。

誓約の最後には、来年9月の国連総会のハイレベル会合において、自分たちが1年間に何をしたのか、どれだけ進展させられたかを確認しようとあるのだが……。日本は、ちょうど10年前に生物多様性条約会議を主催したんだけどなあ。。。今や我関せずか。本当にそれでよいのか。

 

2020/10/28

合板用とバイオマス用の木材価格差

ちょっと、よくわからない記事が流れていた。

長野県が、新型コロナウイルスの感染拡大で滞留する合板用の県産木材を木質バイオマス発電の燃料用材として販売する際に差額を一部補助するそうだ。コロナ禍の影響で住宅着工数が減少したため合板需要が減り、合板工場では原木の入荷を制限している。それが林業界に悪影響があるからと、バイオマス発電燃料に回すように指導している。そこで、その価格差を県が補助するというのだが……。

当たり前だが、バイオマス用は製材や合板用と比べると安い。私が以前聞いたのは、1立方メートル当たり合板用は1万円しないぐらいで、バイオマス用はFITで嵩上げすることで約7000円ぐらい……という。つまり価格差は3000円以内。(本来のバイオマス用は2000円もしないから、FITで5000円以上嵩上げしていることになる。)

ところが長野県は、合板用とバイオマス用の価格差を6000円と想定。差額の2分の1を補助する(3000円が上限)というのだ。えっ?

6000円という差額はどこから出てきたのだろうか。何か事情が変わったの? 合板用が高くなった? しかし1万3000円ともなると、製材用A材だろう。九州なら、製材用だって1万円ぐらいだという。
バイオマス用のFIT価格が下がったとも思えない。県内では3つの木質バイオマス発電所が稼働しているというが、海なし県だから輸入燃料は使いづらい。燃料用木材を取り合えば価格は上がるはずなのだが。

もともと合板用どころか製材用、そして製紙用のABC材も全部燃料にしてしまっていることが問題だったのではないか。仕分けせずに皆伐した木を全部バイオマス発電所に運んでいる話もよく聞く。

どんな計算方法を取ると、差額が6000円になるのか。誰か教えてください。すでに2020年度9月補正予算に6000万円を計上したというが、対象事業者は森林組合や木材流通業者などだろう。2分の1補助といいながら、全額補助になってない? 

なんか貰い得の補助金ではないか。いや、もらい毒かも。

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写真の丸太は何用かわかる? 3メートルあってそこそこ直材ぽく見えるけど。ふ節は多くて傷も付いている。

これは、みんなバイオマス発電所の横に積んであった燃料。見本のようなもので、実際燃やしているのは廃棄物じゃないかと疑われている発電所だけど、そこで見せている燃料は、合板用になら十分なりそうな丸太が多かった。

なぜ補助金が必要なのか。なくてもバイオマス用に回しているじゃないか。

2020/10/12

森林ビジネスイノベーション研究会の報告書

日本政策投資銀行の「森林ビジネスイノベーション研究会」の報告書が出された。

なかなか分厚い。121ページにわたる。ただネットで読めるから、紹介しておく。

テーマは、やはり日本林業の再生で、ありきたりというか、これまで幾度も繰り返し議論されてきたものだが、この報告書はなかなか読ませた。と言っても、全部を熟読したわけではないが……。

最初の日本林業の分析は、網羅的であるが、結構ツボを押さえている。少なくても「森林・林業白書」のように、何か意図的に誘導しつつ情報を隠している風がなくて(笑)、現時点のよい点、悪い点を列挙している。

そして結論としては、「高収益化および森林資源利用の多角化」、「投資型企業経営の実践」という2つの方向性を示している。こじつけるわけではないが、拙著『絶望の林業』の中の「希望の林業」で示して方向性と同じように思う。まあ、そのためのサプライチェーンやバリューチェーンの確立が難しいのだが。

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そして、森林林業に投資を呼び込むファンドを成立させるための課題を分析・考察している。

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森林投資がさかんなアメリカとも比較している。ああ、これも「希望の林業」で触れたところだ(⌒ー⌒)。

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そして、こんな投資と展開を掲げている。

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これまで数ある「林業再生のシナリオ」提言の中では、なかなか納得できるものであった。私の見解と違うところ……というか、私もそんなにていねいに読んでいないのでエラそうに語れる資格はないのだが、CLTに示す期待の浅はかさとか、森林生態系に関する言及の少なさなど、現場の肌感覚と合わないところもある。それでも、痛いところはちゃんと指摘している。

白書を読むより、勉強になると思うよ。

 

ところで、私は明日より愛媛県の某所に出かけて「希望の林業」を語ってくる予定だ。予定だが……さて、どうなるかな?

 

 

 

2020/10/06

まだできる?林業学校……

先に奈良にできる「フォレスターアカデミー」を最後発の林業学校、と紹介した。実際、もう全国にできすぎだと思っているのだが。

なんと、再来年に林業専門学科を新設する計画のある自治体が見つかった。これで奈良県は最後発だと自慢?できなくなる。

山梨県である。正確に言うと、「山梨県立農業大学校に林業専門学科を創設する」という方向のようだ。新たな学校ではないが、農林学校となって林業の専門的な実践教育を行うらしい。ちなみに2年制だそうである。

まあ、内容的には現場の作業員養成だ。つまり即戦力になる人材……という名の林業の労働者を育成しようというわけだ。全国の林業学校であまたある?方針である。ただ関東地方には、まだあまりないかな。群馬には農林大学校、長野県も老舗の林業大学校はあるが。あと栃木県には民間のフォレストビジネスカレッジ(だったっけ)がある。こちらは製材企業の設立。

しかし、林業に本当にそんなに人材が必要なのか。そして応募する学生がいるのか。

山梨県で面白いのは、9月補正予算案に森林環境譲与税の配分額を財源に学生募集のためのPR動画作製費や施設改修のための設計費など900万円を計上した点。そうか、まずはPRか。そういや、奈良県は PRをあんまりしなかった。つくったら学生黙っていても応募してくるでしょ、的な発想だったので、私が焦ったくらいだ。結局、口コミとかネットに頼ったよね、私のブログも含めて……。

一つ、気になるのは学校をつくれば必ず金がいる、それも持ち出しである点。設立後の維持費も馬鹿にならない。林業従事者が増えて林業が活発になって、それで税収が増える可能性はあんまりない。その点、各自治体は財政的にどう考えているんだろうね。

奈良県は、市町村に下りた森林環境譲与税を吸い上げるという裏技を使うようだけど……(笑)。

ともあれ、せっかくつくるんなら旧態依然の林業から脱するような教育をしてほしい。

2020/10/04

奈良県フォレスターアカデミーの概要公表

ちょくちょく紹介してきた奈良県が新たに開校する林業の学校、奈良県フォレスターアカデミー

その学校概要と、学生の募集要項が発表された。

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我と思わん方は応募していただきたい。前回の奈良県職の募集とは別に、学生としてチャンスがある。

おそらく全国の林業系大学校の設立の最後発だ。今後、新たに開校するところがあるのかどうか。そこが奈良らしい。あえて、先頭に立たない県民性かも(笑)。単に腰が重いのか、あるいは先発組をじ~と眺めて、善し悪しを見極めて活かす……のだったら、これも生存戦略の一つ。

簡単に紹介すると、フォレスター学科森林作業員学科がある。後者はまさに林業の現場で働く人の養成であるから説明はいらないだろう。ほかの学校と同じだ。奈良でも、やはり今は現場から「フォレスターより作業員」の声が強い。
そして前者こそがフォレスター養成コースで目玉だ。全国に林業大学校は20以上あるが、マネージャー的な人材の養成コースはほぼないし、しかも県職ほかの職場まで用意している自治体は例がない。

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個人的には、カリキュラムの⑬~⑮の「広報」と「コミュニケーション」「リーダーシップ」の3つが、フォレスターに重要となってくる能力と思っている。ただもう一つ、奈良県の新たな森林環境管理制度として掲げている「恒続林」づくり。これを身につけられてもらわないと。理念を推進する覚悟はもちろんだが、肝心の森づくり技術はまだ未知の領域。実践者は各地にいるが、いかに奈良の土地で実現するのか。。。そこにコミュニケーション能力もリーダーシップも絡んでくるだろう。

林業界でも目先の需要を追うのではなく、理想を掲げ理想を追う人材に期待する。期待するが……不安もチラホラ(^^;)。人材って、やはり人そのものなんだよ。

 

実は、私も「恒続林」に関しては、奈良県だけでなく各地で紹介・推進している。このアカデミーが、人材の拠点となってほしい。

以前も触れたが、条例とか制度、学校などは器にすぎない。「新しき器」はつくったけれど、中に「新しき酒」は詰められる、いや新しき酒を醸せるだろうか。

ちょうどフェイスブックに上げられた「とくしま林業アカデミー」の写真に、講師は地下足袋履いているわ、チェンソーで木を伐っている学生はイヤマフもバイザーも身につけているのに使っていないわ、なので顰蹙買っている。新しき学校という器までガッカリだろう。せっかく国がつくった伐木の安全ガイドラインを教育機関が守っていないのでは、どんな人材を養成する気なのかわからない。古い人材の再生産になりかねない。講師の質以前に、学校の理念はどうなっている。

私は「新しき酒」になりたい人に期待する。

より以前の記事一覧

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