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森と林業と田舎の本

2020/11/17

林政審議会の資料をちょい読みする

林政審議会の次年度の委員を募集しているようだ。2名とのことである。まあ、公募と言ってもほとんど出来レースだろうが……私はもう林業系の情報から少しずつ距離を置いていく所存だったのだが、つい現在はどんなテーマで審議会開いているの?とつい興味をもって覗いてみた。いかん。

幸い議事録やら各会の配布資料などは、全部HPに上げられている。

そこで10月分の資料を見てみた。

印象としては、少なくても森林・林業白書より中身が濃い。白書では触れていないことも書いてある。とくに目をつけたのは、皆伐跡地の再造林問題である。で、こんな図やグラフがある。

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ざっと見てもらえばわかるが、伐採面積に比して再造林しているのは、3割ほどであることを認めているね。そして造林未済地(という言葉があるんだ。伐採跡地のうち、造林を計画し2年以内に更新が完了しないもの、天然更新を計画し5年以内に更新が完了しないもの、計画なしに伐採が行われているもの、を指すのだそうだ)が、平成29年度で11万4000ヘクタールあるとしている。これ、今年度まで推測したら20万ヘクタール近くになるんじゃないだろうな。これらも森林面積に加えているんだろうが、実態は伐採後のまま放置だ。

細かく見ていくと、何かにつけ計画どおりに進んでいないことが浮かび上がる。皆さんも、そのつもりでご一読を(笑)。

なお、もう一つ面白いと思ったのは、審議会はペーパーレスを推進していて、これらの資料は印刷して配布しないそうだ。傍聴人だけ?委員もそうだといいな。自らタブレットなどを持ち込んで、ダウンロードしておくよう勧めている。たしかに紙にしたら一人当たり何十枚になることか。紙の使用を減らすというのは製紙業界的にはどうかというのはあるが、進めるべきだろう。

審議会でどんな意見が出ようと、それが政策にどう反映するのか怪しいもんだが、表向きの顔以外を見ることができるかもね。

 

2020/11/10

外国資本による土地取得対策会議……

政府は「外国資本が 自衛隊基地周辺など安全保障上重要な土地の取得・利用が相次いでいることに対する有効な方策を検討する有識者会議」を設置するそうだ。

外資が日本の森を奪う! と大騒ぎ?したのは何年前か。あきらかにガセネタだったが、世間に流布し今も信じている人もいるだろう。
ようやく落ち着いたのかと思えば、今度は森林だけでなく土地全体で、自衛隊基地や原子力発電所の隣接地、水源地や国境離島などに絞ったらしい。それで、有識者は土地の所有者や利用実態を一元管理する仕組みを考えるというのだが……。政府は来年の通常国会に関連法案を提出するつもりのようである。

別に反対はしない。外国資本が日本の土地をどこを・どれぐらい取得して、いかに利用しているのか把握すること自体は別に悪いことじゃない。情報は常に収集しておくものだ。法務省と国土交通省、林野庁、そして自治体などが個別に持っている情報を整理して管理するのも必要だろう。でも、自衛隊基地周辺だけじゃあね。。。全国全土で行えば、日本の土地利用の基礎データになるのだが。

ただ、その後どうするのか?「外資の森林収奪」と騒いだときも、外資を理由に締め出すことはできずに、届け出制度をつくっただけで終わった。今回も、情報を把握したとして、それをどうする? 公安調査庁か公安警察にでも見張らせるのか? 土地取得に国籍条項を設けるのはハードルが高すぎる。そもそも、何らかの意図を持って基地や原発などの周辺に土地を所有するのなら、あからさまな外資を表に出さないだろう。ましてや水源地など所有しても何の意味もない。

 

このところの「キャンプのための森林購入」ブームの件で森林売買を扱う業者に伺うと、外資が森を奪うと騒がれた一時期に「マスコミが外国人(中国人と同義)が森を買いに来ていないかとうるさく取材に来て、そんなことはまったくないと何度も言っているのに、記事になったら買いに来たことになってるんだよ」と言っておりました(笑)。
でも、「中国人に買われたら困るから買っておこう」という奇特な日本人もいて、役に立たない山林でも買ってくれたからビジネス的には有り難かったそうである。

きっと今回も、法律ができたら基地や原発周辺にある外国籍所有の土地を探し出して、「ほれ、こんな例があった!」と、こじつけて騒ぐだろうなあ。でも、購入した外国人の利用目的が「キャンプしたいから」だったら、どうするんだろう。プライベートキャンプ場禁止法でもつくるのかねえ。。。

 

 

2020/11/05

君は、国連生物多様性サミットを知っているか

アメリカ大統領選挙、大阪都構想と一緒ぐらい接戦で揉めてますね。今後世界は、当分「分断」と「ヘイト」の時代を続けるのだろう。ま、維新とトランプとネトウヨは似てますから(^^;)。

そんな中でも、団結して動いていた分野はあるのだよ、という硬派の話題。

9月30日に国連生物多様性サミットが開催されたことを知っているだろうか。非常に規模の大きな国際会議である。コロナ禍のためオンラインではあるが、100カ国以上の首脳陣に600社以上の世界的企業の社長(CEO)も参加していた。そして今後10年間で今の(生物多様性を破壊する)状態を逆転しなければならないと呼びかけている。企業が参加しているのは、生物多様性は経済活動にも大きな影響があるからだ。このままだとビジネス界にも深刻な影響が出る心配がある。ちなみに日本は、小泉環境大臣がビデオメッセージを出したほか、10社ほどが参加していた模様。

で、どんな目標を掲げたのかと調べてみたら、生物多様性サミット開催の前の9月28日に集まって、2030年までに生物多様性喪失の流れを逆転させるために団結して行動すると宣言していて、10項目の「リーダーの自然回復への誓約」(英文)を行っていた。これに参加・賛同する首脳の数は77カ国あるが、そこに日本の名前はない……。

ともあれその10項目がどんなものか探すと、和訳があった。

指導者による自然回復の誓約

この中の、農林業に関わる項目である6と7を抜き出そう。

6. 私たちは、環境の劣化、生物多様性の損失、気候変動に対する取り組みに重大な影響を及ぼし、安全保障、法の支配、人権、公衆衛生、社会経済開発を脅かす可能性のある環境犯罪を撲滅することを誓います。実効性とバランスを備えた抑制的な法的枠組を確保し、国内法及び国際法の執行を強化して効果的な協力の促進を図ります。こうした取り組みには、違法野生生物取引や違法伐採材取引など、組織犯罪グループが関与する環境犯罪を重大な犯罪と捉えて対処することの他、サプライチェーン全体にまたがる活動、違法に取得した野生生物及び違法伐採材並びにその派生物の需要の抑制、人と自然と経済のための持続可能な解決策を確保する地域コミュニティとの連動も含まれます。

7. 私たちは、食糧生産、農業、漁業、林業、エネルギー、観光、インフラ、採取業、商取引、サプライチェーンといった重要セクターを含む、あらゆるレベルの分野別及び分野横断的な関連政策においても、G7(主要7カ国)、G20(主要20カ国・地域)、WTO(世界貿易機関)、WHO(世界保健機関)、FAO(国連食糧農業機関)、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)、UNCCD(国連砂漠化対処条約)等の変化を促す重要な国際協定及び国際プロセスにおいても、生物多様性の主流化を図ることを誓います。その対策として、政府のあらゆる政策、決定、投資において自然及び生物多様性の価値を考慮するとともに、生物多様性の保全・回復・持続可能な利用、遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を促進します。

農林水産業のような自然と関わる産業は、生物多様性に大きな影響を与える。なお林業分野では違法伐採問題に触れている。組織犯罪グループの関与する重大な犯罪としている。

とくにこの誓約の最初の部分には「私たちは今、地球の非常事態にある」と記されている。生物多様性とは、人間以外の生物を対象として考えるのではなく、人間の生活や社会を維持するためなのだ、自然は人間の健康福祉そして繁栄を支える基盤なのだ……という認識だ。この生命維持装置(自然)が傷ついてしまうと、貧困、不平等、飢餓などをより進行させてしまい、SDGsの達成も困難になる。その上で、自分たちの行動は将来世代によって評価される、自分たちにはその説明責任がある……と言っている。なかなか厳しく、切羽詰まった感がある。

これほど大きな目標を掲げたサミットなのに、日本では、ほとんどメディアの報道はされなかったようだ。おそらく政府内にも興味を持っている議員や官僚がどれだけいるのかどうかも疑問である。

一応、WWFのページはあるが、政府のサイトでは、小泉環境大臣の演説のみを紹介しただけという情けなさ(それも外交のページ)。

誓約の最後には、来年9月の国連総会のハイレベル会合において、自分たちが1年間に何をしたのか、どれだけ進展させられたかを確認しようとあるのだが……。日本は、ちょうど10年前に生物多様性条約会議を主催したんだけどなあ。。。今や我関せずか。本当にそれでよいのか。

 

2020/10/28

合板用とバイオマス用の木材価格差

ちょっと、よくわからない記事が流れていた。

長野県が、新型コロナウイルスの感染拡大で滞留する合板用の県産木材を木質バイオマス発電の燃料用材として販売する際に差額を一部補助するそうだ。コロナ禍の影響で住宅着工数が減少したため合板需要が減り、合板工場では原木の入荷を制限している。それが林業界に悪影響があるからと、バイオマス発電燃料に回すように指導している。そこで、その価格差を県が補助するというのだが……。

当たり前だが、バイオマス用は製材や合板用と比べると安い。私が以前聞いたのは、1立方メートル当たり合板用は1万円しないぐらいで、バイオマス用はFITで嵩上げすることで約7000円ぐらい……という。つまり価格差は3000円以内。(本来のバイオマス用は2000円もしないから、FITで5000円以上嵩上げしていることになる。)

ところが長野県は、合板用とバイオマス用の価格差を6000円と想定。差額の2分の1を補助する(3000円が上限)というのだ。えっ?

6000円という差額はどこから出てきたのだろうか。何か事情が変わったの? 合板用が高くなった? しかし1万3000円ともなると、製材用A材だろう。九州なら、製材用だって1万円ぐらいだという。
バイオマス用のFIT価格が下がったとも思えない。県内では3つの木質バイオマス発電所が稼働しているというが、海なし県だから輸入燃料は使いづらい。燃料用木材を取り合えば価格は上がるはずなのだが。

もともと合板用どころか製材用、そして製紙用のABC材も全部燃料にしてしまっていることが問題だったのではないか。仕分けせずに皆伐した木を全部バイオマス発電所に運んでいる話もよく聞く。

どんな計算方法を取ると、差額が6000円になるのか。誰か教えてください。すでに2020年度9月補正予算に6000万円を計上したというが、対象事業者は森林組合や木材流通業者などだろう。2分の1補助といいながら、全額補助になってない? 

なんか貰い得の補助金ではないか。いや、もらい毒かも。

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写真の丸太は何用かわかる? 3メートルあってそこそこ直材ぽく見えるけど。ふ節は多くて傷も付いている。

これは、みんなバイオマス発電所の横に積んであった燃料。見本のようなもので、実際燃やしているのは廃棄物じゃないかと疑われている発電所だけど、そこで見せている燃料は、合板用になら十分なりそうな丸太が多かった。

なぜ補助金が必要なのか。なくてもバイオマス用に回しているじゃないか。

2020/10/12

森林ビジネスイノベーション研究会の報告書

日本政策投資銀行の「森林ビジネスイノベーション研究会」の報告書が出された。

なかなか分厚い。121ページにわたる。ただネットで読めるから、紹介しておく。

テーマは、やはり日本林業の再生で、ありきたりというか、これまで幾度も繰り返し議論されてきたものだが、この報告書はなかなか読ませた。と言っても、全部を熟読したわけではないが……。

最初の日本林業の分析は、網羅的であるが、結構ツボを押さえている。少なくても「森林・林業白書」のように、何か意図的に誘導しつつ情報を隠している風がなくて(笑)、現時点のよい点、悪い点を列挙している。

そして結論としては、「高収益化および森林資源利用の多角化」、「投資型企業経営の実践」という2つの方向性を示している。こじつけるわけではないが、拙著『絶望の林業』の中の「希望の林業」で示して方向性と同じように思う。まあ、そのためのサプライチェーンやバリューチェーンの確立が難しいのだが。

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そして、森林林業に投資を呼び込むファンドを成立させるための課題を分析・考察している。

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森林投資がさかんなアメリカとも比較している。ああ、これも「希望の林業」で触れたところだ(⌒ー⌒)。

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そして、こんな投資と展開を掲げている。

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これまで数ある「林業再生のシナリオ」提言の中では、なかなか納得できるものであった。私の見解と違うところ……というか、私もそんなにていねいに読んでいないのでエラそうに語れる資格はないのだが、CLTに示す期待の浅はかさとか、森林生態系に関する言及の少なさなど、現場の肌感覚と合わないところもある。それでも、痛いところはちゃんと指摘している。

白書を読むより、勉強になると思うよ。

 

ところで、私は明日より愛媛県の某所に出かけて「希望の林業」を語ってくる予定だ。予定だが……さて、どうなるかな?

 

 

 

2020/10/06

まだできる?林業学校……

先に奈良にできる「フォレスターアカデミー」を最後発の林業学校、と紹介した。実際、もう全国にできすぎだと思っているのだが。

なんと、再来年に林業専門学科を新設する計画のある自治体が見つかった。これで奈良県は最後発だと自慢?できなくなる。

山梨県である。正確に言うと、「山梨県立農業大学校に林業専門学科を創設する」という方向のようだ。新たな学校ではないが、農林学校となって林業の専門的な実践教育を行うらしい。ちなみに2年制だそうである。

まあ、内容的には現場の作業員養成だ。つまり即戦力になる人材……という名の林業の労働者を育成しようというわけだ。全国の林業学校であまたある?方針である。ただ関東地方には、まだあまりないかな。群馬には農林大学校、長野県も老舗の林業大学校はあるが。あと栃木県には民間のフォレストビジネスカレッジ(だったっけ)がある。こちらは製材企業の設立。

しかし、林業に本当にそんなに人材が必要なのか。そして応募する学生がいるのか。

山梨県で面白いのは、9月補正予算案に森林環境譲与税の配分額を財源に学生募集のためのPR動画作製費や施設改修のための設計費など900万円を計上した点。そうか、まずはPRか。そういや、奈良県は PRをあんまりしなかった。つくったら学生黙っていても応募してくるでしょ、的な発想だったので、私が焦ったくらいだ。結局、口コミとかネットに頼ったよね、私のブログも含めて……。

一つ、気になるのは学校をつくれば必ず金がいる、それも持ち出しである点。設立後の維持費も馬鹿にならない。林業従事者が増えて林業が活発になって、それで税収が増える可能性はあんまりない。その点、各自治体は財政的にどう考えているんだろうね。

奈良県は、市町村に下りた森林環境譲与税を吸い上げるという裏技を使うようだけど……(笑)。

ともあれ、せっかくつくるんなら旧態依然の林業から脱するような教育をしてほしい。

2020/10/04

奈良県フォレスターアカデミーの概要公表

ちょくちょく紹介してきた奈良県が新たに開校する林業の学校、奈良県フォレスターアカデミー

その学校概要と、学生の募集要項が発表された。

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我と思わん方は応募していただきたい。前回の奈良県職の募集とは別に、学生としてチャンスがある。

おそらく全国の林業系大学校の設立の最後発だ。今後、新たに開校するところがあるのかどうか。そこが奈良らしい。あえて、先頭に立たない県民性かも(笑)。単に腰が重いのか、あるいは先発組をじ~と眺めて、善し悪しを見極めて活かす……のだったら、これも生存戦略の一つ。

簡単に紹介すると、フォレスター学科森林作業員学科がある。後者はまさに林業の現場で働く人の養成であるから説明はいらないだろう。ほかの学校と同じだ。奈良でも、やはり今は現場から「フォレスターより作業員」の声が強い。
そして前者こそがフォレスター養成コースで目玉だ。全国に林業大学校は20以上あるが、マネージャー的な人材の養成コースはほぼないし、しかも県職ほかの職場まで用意している自治体は例がない。

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個人的には、カリキュラムの⑬~⑮の「広報」と「コミュニケーション」「リーダーシップ」の3つが、フォレスターに重要となってくる能力と思っている。ただもう一つ、奈良県の新たな森林環境管理制度として掲げている「恒続林」づくり。これを身につけられてもらわないと。理念を推進する覚悟はもちろんだが、肝心の森づくり技術はまだ未知の領域。実践者は各地にいるが、いかに奈良の土地で実現するのか。。。そこにコミュニケーション能力もリーダーシップも絡んでくるだろう。

林業界でも目先の需要を追うのではなく、理想を掲げ理想を追う人材に期待する。期待するが……不安もチラホラ(^^;)。人材って、やはり人そのものなんだよ。

 

実は、私も「恒続林」に関しては、奈良県だけでなく各地で紹介・推進している。このアカデミーが、人材の拠点となってほしい。

以前も触れたが、条例とか制度、学校などは器にすぎない。「新しき器」はつくったけれど、中に「新しき酒」は詰められる、いや新しき酒を醸せるだろうか。

ちょうどフェイスブックに上げられた「とくしま林業アカデミー」の写真に、講師は地下足袋履いているわ、チェンソーで木を伐っている学生はイヤマフもバイザーも身につけているのに使っていないわ、なので顰蹙買っている。新しき学校という器までガッカリだろう。せっかく国がつくった伐木の安全ガイドラインを教育機関が守っていないのでは、どんな人材を養成する気なのかわからない。古い人材の再生産になりかねない。講師の質以前に、学校の理念はどうなっている。

私は「新しき酒」になりたい人に期待する。

2020/10/02

「GBO5」って、知ってる?

このところ、SDGsが目につきだした。

「エスディージーズ」と読むようだが、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称だ。2015年9月に国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決められた、国際社会共通の目標……とされている。

なんか発音からして悩むし、こんな難しい概念は広がるのだろうか……と思っていたが、なんだかんだと宣伝されているうちに、徐々にではあるが認知度が上がってきたようだ。これ付けないと、企業活動もしにくくなってきたみたい。

 では、「GBO5」をご存じだろうか。

実は、こちらの方こそ日本には身近である、というか身近であるべきだった。なぜなら2010年に名古屋で開かれた生物多様性条約締結国会議、いわゆるCOP10、そこで定めた愛知目標に基づくものだからだ。生物多様性戦略計画2011-2020及び愛知目標の達成状況について分析した報告書こそが、地球規模生物多様性概況第5版』(GBO5なのだ。それが9月15日に発表されている。

愛知目標には全部で20の目標があり、それらの中に含まれる複数の項目を合わせると60項目になる。詳しくは、こんなサイトで確かめてほしい。

環境省・愛知目標 一部を紹介すると、こんな項目がならぶ。

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だが、GBO5 に示された日本の成果は惨憺たるもの。

この60項目のうち、10年間で達成できたのは7つにすぎない。そして20の目標のうち、構成要素をすべて達成できた目標はゼロだ。

生物多様性さえこんな状態だとすると、SDGsの達成レベルも極めて怪しい。目標に近づく道筋さえつくっていないのではないか。現在の状況をできる範囲から改善しても、どんどん低レベルになっていくよなあ。


名古屋では、2050年に向けての中長期目標として「自然と共生する世界」というビジョンも採択している。

一時はSATOYAMAイニシアティブだとか、自然と共生していた日本人の生き方をモデルにする……とか高らかに謳い上げていたのに、すっかり忘れられた存在になってしまった。GBO5が話題にならないことが象徴的かもしれない。

2020/10/01

発表!昨年の木材需要と木材自給率

2019年の木材需給と自給率が発表されている。

木材の総需要量は、8190万5000立方メートル。前年と比べて57万3000立方メートル(0.7%)減少したという。内容的には、用材が191万5000立方メートル(2.6%)、シイタケ原木2万3000立方メートル(8.4%)減少している。代わりにと言ってはナンだが、燃料材(おそらくほとんどがバイオマス発電燃料)が136万6000立方メートル(15.1%)増加した。差し引きしても減少局面だ。
ちなみに燃料材需要は1038万6000立方メートル。とうとう大台に乗った記念すべき?年になる。

国内生産量は、3098万8000立方メートルと前年より78万7000立方メートル(2.6%)増加した。用材が12万5000立方メートル(0.5%)、燃料材が68万4000立方メートル(10.9%)増加した。需要も、生産量も、ほとんどをバイオマス発電燃料に負っているわけだ。

木材需要は減ったのに国内生産量が増えたのだから、相対的に国産材のシェアが高まる。おかげで木材自給率は、前年より1.2ポイント増の37.8%。9年連続で上昇した。

なんとなく発表するときは、「木材自給率が9年連続伸びているぞー」と自慢したくなる(^^;)。もうすく4割だ、目標の5割までガンバローと気合を入れる……。が、中身を見たら暗澹たるものだね。燃料材を抜いたら、どうなるか。

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しかしバイオマス燃料も、今後は輸入が増えていくはずだ。木質ペレットとかPKSが増加しているから。となると、そのうち自給率も落ちるに違いない。

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木材需要の内訳も、需給表を見ると、ほとんどがマイナス。輸出で、かろうじて製材がプラスなのが救い?でも、分母が小さい。

今年は、コロナ禍で需要も生産も縮小するのは間違いあるまい。そのバランスによって自給率は上がるのかもしれないが、もうジタバタせずに、木材需要は減少していくことを前提に対応策を練るべきでしょう。

 

2020/09/30

林野庁予算案から見る獣害対策

来年度(令和3年度)の林野庁予算概算要求の概要が発表されている。

詳しいことはすべての項目はゆっくり読めば、そしてその後に国会を通るかどうかも含めて見たらよいのだが、『獣害列島』(イースト新書)発行目前の私が興味を持つのは、やはり「シカ等による森林被害緊急対策事業」だ。

シカ被害の甚大化を防止するため、林業関係者によるシカの捕獲効率向上対策を講じるとともに、捕獲や生息状況把握の省力化、効率化など、効果的なシカ被害対策を実施していく上で特に有効なICT等を活用した新たな捕獲技術等の開発・実証を実施します。また、シカ被害が深刻な奥地天然林等において、国土保全のためのシカ捕獲事業を実施します。

その内容を抜き出すと、

1.シカ捕獲効率向上対策事業 30(-)百万円
○ 林業関係者によるシカの捕獲効率向上のために、狩猟熟練者の技能や最新の捕獲技術等の活用による捕獲技術の導入を図ります。
2.ノウサギ被害対策検討事業 30(-)百万円
○ 顕在化しつつあるノウサギ食害に対する効果的・効率的な防御や捕獲等の対策手法の検討を実施します。
3. シカ被害対策技術実証事業 40(20)百万円
○ 効果的なシカ被害対策を実施していく上で特に有効なICT等を活用した新たな捕獲技術等の開発・実証を実施します。
4.国土保全のためのシカ捕獲事業 104(84)百万円
○ 森林の持つ国土保全機能の維持増進を図るため、国有林野内の奥地天然林等においてシカの行動把握調査等に基づく効率的なシカ捕獲を実施します。

ここで気になるのは、シカに関する対策事業の内容が、ほぼすべて「捕獲」にあること。林業関係者が捕獲するための技術の導入とか、ICT利用とか、シカの行動把握調査まで捕獲のためとする。

これって林野庁の予算なんだが……。獣害対策がどうあるべきかというそもそも論は置いておくにしても、捕獲で林業被害は防げるのか。たとえば農作物を食べに来るシカに対する緊急対策だったら、捕獲して駆除するのがてっとり早いというのはわかる。しかし林業だよ?
林業における獣害とは、まず植林したばかりの時期に苗木を食べられてしまうケースがある。だが、より深刻なのは収穫間近の樹齢50年60年ものの木の幹の樹皮を剥がし、枯らしてしまうことだ。つまり、人工林すべてが対象となる。

広大な林野のシカによる被害を防ぐためにシカを捕獲……というより捕殺することなんてできるのか? そして効果はあるのか? 

捕獲には銃猟と罠猟があるが、銃による捕殺は、ハンターが山野を歩き回らないと数を稼げない。罠も、仕掛けた後にほぼ毎日見回らないとかかった獲物を処分できない。そんな人手があるのか。

しかも林業被害を防ぐ猟自体が非常に困難だと思われる。農地なら、かろうじて農地の周辺にたむろするシカを狙う方法が考えられるが、広大な面積のある人工林の周辺でどうやって待ち伏せするのか。効率は非常に悪い。しかも野生動物の場合、生息数を1割減らしたら被害も1割減る……というほど単純じゃない。これは農地も含めてだが、いくら害獣を駆除しても被害は減らないことは、これまでの調査や統計で出ている。たとえば環境省の対策事業でも、ある地域の生息推定数の5割がた捕獲したのに、植生に対する効果はまだはっきりと現れないと述べられている。

結局、被害を出す個体(人工林を狙うシカ)かどうか関係なく、地域全体のシカを駆除しなければならないだろう。それこそ被害を出ないようにするには生息するシカの8割9割がた駆除しなければならないのではないか。しかし、それは不可能だ。

なんか、予算要求の時点から前途多難というか、その予算、無駄にならね? と思ってしまうのだ。

むしろ必要なのは、「防護」だろう。しっかり防護柵を築くことの方が有効だと思う。ただし、これまでのように広い林地を大きく囲む柵は、一カ所破られたら、中に入ったシカの食い放題になる。現在提案されているのは、小さな区画をいっぱい築く柵の張り方だ。パッチディヘンスと呼ばれるが、柵内が狭いとシカは入りにくくなることが確かめられている。飛び越えようにも狭すぎて難しくなる。また柵や網が二重三重にかかっていると、シカも警戒する。その林地そのものが迷路のようになってしまうから余計に警戒するのかもしれない。また苗木なら1本1本ツリーシェルターを被せる方法が有効だ。幹に網で包むのもアリだろう。
ただし、この手の方策には手間も費用もかかる。本来は、林野庁が低コストで効果的な防護をするか研究し提案してほしいのだけど。

かろうじてノウサギ対策には、「効率的な防御」という文言が入っている。ノウサギを捕獲するのは簡単じゃないからだろう。しかし、ノウサギこそ、柵のすき間から侵入しやすいから防護は難しいのだが……。ただ狙われるのは苗木・若木だけだ。

ちなみに、そうした獣害対策の考え方や実験は、いろいろな研究青果が公表されている。林野庁の方々も勉強してください。

 

獣害列島 増えすぎた日本の野生動物』は10日発売だが、先んじて見本が届いた。(サイドバーにもリンクをアップ)

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獣害の現状とともに、森林に対する被害についても記しているので、ご一読を(^_^) 。

 

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