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森と林業の本

2024/09/01

バイオマス燃料の調達

日経に、バイオマス発電燃料のパームヤシ殻(PKS)の輸入量が、2023年595万トンとなり、10年間で30倍超に伸びたという記事があった。

パームヤシ殻、輸入10年で30倍 バイオマス発電で

そこで気になったので、バイオマス燃料そのものを調べてみる。

(1)PKS 2023年は前年比1.1 倍の約595 万トン。輸入割合はインドネシアが77%、マレーシアが22%。

(2)木質ペレット 2023年の輸入量は前年比1.3倍の約580万トン。輸入割合はベトナムが45%、カナダが27%、アメリカ合衆国が22%。

(3)木質チップ 2023 年の輸入量は前年比0.98 倍の約1,112 万トン。ただし輸入には製紙原料が入っているので、燃料はそのうち何割かはっきりしない。

問題の国産燃料は、どうなるのか。それが、なかなかわかりにくい。

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このグラフによると、約54%が国産らしいのだが……。怪しい(^o^)。もっとも多い間伐材由来46%というのは、そう申告しないと未利用材扱いにならないからではないか。それに間伐材というのが全部国産なのかどうかもはっきりしない。

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政府は30年にバイオマス発電を全体の5%に引き上げる目標を掲げているから、まだまだ増やすつもりなのだろう。しかし、輸入燃料も価格がどんどん上がっているし、そもそも生産量が行き詰まる気配がある。さて、どうする?

 

2024/07/29

「財務省が獣害対策におかんむり」な理由

獣害の話題がよく上がっているが、財務省は農林水産省に獣害対策を抜本的に見直すよう要請した……というニュースがあった。

鳥獣対策金、抜本見直しを 予算執行、27事業で改善要求―財務省

ようするに付けた予算が被害減少につながっていないからだ。具体的には害獣侵入対策津用の防護柵の予算(鳥獣被害防止総合対策交付金) のよう。22年度の補正後予算額は137億円で、例年近い金額を支出していたが、被害額は18年度の158億円以降は横ばいだからだ。当初は防護柵の建設と駆除強化で随分下がった。239億円をピークに抑えていたのだが、近年は下げ止まり。

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なぜ、被害が減らないのか。ちゃんと予算執行調査で各地の現場を確認したようだ。そしてわかったのは……柵が適切に管理されず穴だらけ、加えて出荷しない作物が農地に放置されていたという。担当者は「これでは獣に食べに来てくださいと言っているようなもの」。
捕獲実績は結構な数があるのに、被害額が減っていない自治体もあるのだが、どうも捕りやすい場所で捕獲して、単に実績(数字)を積み上げているだけで、農作物被害を減らそうと真剣に取り組んでいないことも指摘している。そして「成果を挙げていない市町村にも交付金が交付されるのは不合理」という意見がついている。

柵の設置は補助金でやるのだが、その後誰も管理せず、穴が空いたり壊れて出入り自由状態になっていたり。柵の出入り口を開けっ放しのケースもあるそうだ。柵の問題のほか、農作物廃棄物を山積みにした田畑も、よく見かける。それに里に下りてきて農作物を食べたわけでもない山の中のシカを捕まえて駆除しても、意味がない。これで獣害が大変と言っても通じないだろう。

この感想、鳥獣害専門家には以前から言われていた。同じことを素人の財務官僚にも言われたのだね(^^;)。

まあ、農水省というより、自治体への通告なのかもしれない。しかし、その自治体に配分しているのは農水省なわけで、ちゃんとやる気のある自治体かどうか見極めずにばらまいているのだろう。

一方で、鳥獣を捕るエリアを計画で定め、捕獲実績を把握している自治体は、被害減少額が大きい。真面目に取り組めば獣害は減らせる、と財務省は判断したのだろう。そして自治体への配分の在り方を変えるように求めていた。でも、農水省⇒都道府県が獣害対策の真剣度・成果度合いで補助金の配分を決めたら、手抜き自治体からの突き上げが恐い。査定の仕方も難しいし、下手に査定すると減らされた自治体の恨みを買う……。一律、ばらまく方が楽だし、恨みを買わない。

農水省も、実は獣害対策に本気ではないのである。

最近、獣害とは何かを考えているのだが、そこで思いついたのは、害獣(主にシカ、イノシシ)が増えたからではないかもしれないと思い出した。たとえば奈良のシカの歴史をひもとくと、「人に迷惑をかける獣害」を出すのは頭数ではないことに思い至った。

まだ詳しく論考してはいないのだが、そのうち論じてみたい。

2024/07/17

「生物多様性を高めるための林業経営」とプラチナ構想

林野庁の情報誌「林野」に、「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」が特集されている。たしかに、春先にそんな発表があったなあ、と思い出したわけであるが……。4月には、「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」も成立している。

情報誌「林野」令和6年7月号

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これも世界的なネイチャー・ポジティブの動きに乗ったものだろうが、本音は「余計なことを」と思っているのではなかろうか。林野庁的には、「林業の成長産業化」に役立たないから。

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なんだか、しょぼい。今まであった内容をまとめただけのように感じる。しかし、長伐期にするとか複層林化するとか、だいたいの方向は記されている。

一方で、 同時期に、一般社団法人プラチナ構想ネットワークが、森林資源の循環利用のためのロードマップを公表した。この団体、以前も紹介したが、あり得ない構想を掲げて「儲かる林業」「地球環境に寄与」を訴えている団体である。その点は、Yahoo!ニュースにも書いた。

「都市の森」のからくり。木造建築は炭素を固定しない

今回のロードマップでは、建築用木材やチップを製造・加工する大規模施設「ストックヤード」を各県に10カ所程度設ける提案をしている。このストックヤードは、年間10万立方メートル程度の木材を集めるという。そのため30キロ圏内にある1万ヘクタール 程度の人工林の木を伐採する。エリア内の人工林では年間250ヘクタールを伐採する計画だ。事業規模を大きくすれば「もうかる林業」が実現できると考えているらしい。

なお37%にとどまる再造林率を2050年に100%にするともある。(いつのまにか、「再造林率3割程度」が、37%に嵩上げされている。)


なんか約20年前の新生産システムと似たような発想だ。これは民間の提案だが、政策として見ても、相反するテーマを同時に掲げている感がしてならない。両者のアクセルを踏めば、両方にブレーキがかかるだろう。

さて、これで「生物多様性を高める林業」と「もうかる林業」を実現できるかな。

2024/06/08

推進するのは、疎植林業?

あまり知られていない(笑)が、今年の森林・林業白書が公表された。

令和5年度 森林・林業白書(令和6年6月4日公表) 

特集が花粉症なので、ほとんど興味がわかない(-_-;)。

それでも「森のようちえん」を取り上げているところなどひっかかりはあるのだが、詳しくはまた読もう。

今回目に止まったのは、第2章の「林業と山村」の中に「新しい林業」とその新技術について施業法を取り上げているところ。

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こうした方向をめざしているということか。一目で感じるのは疎植したいのだな、という点。そして早生樹・エリートツリー苗などで木を早く育てようという魂胆か。

まあ、そんな林業もあるだろう。が、全国画一的に広めるなよ、と言いたい。そして、もっと過去を見ろ。温故知新で事例はある。

すでに紹介したが興野文書というのがあり、栃木県にあった黒羽藩の林業技術を記した「太山の左知」が林業遺産にも指定されている。

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これは、疎植の技術だ。2間、つまり4メートル間隔で植えるというから、1ヘクタールあたりは625本。今なら超疎植扱いだろう。そして樹下植栽しろとか、なかなか面白い。わざわざ吉野林業を視察したうえでの結論だったようで、吉野の密植をやらない、反面教師にしたのか。

これで早く、太く育てるどいうのだ。

興野家文書と林業技術のアレンジ 

黒羽にあったもう一つの林業

今は消えてしまった幻の林業技術だが、なぜ消えたのか。どこに無理があった?疎植だからかも?

ほかにも京都ではヘクタール500本植えもあったし、各地で疎植をしていた。それが密植に変わっていったのはなぜ。

やみくもなに再び疎植を目指す前に、過去の検証をやってほしい。

 

2024/05/01

街路樹林業計画

これぞ、私のめざす都市林業だ! と思った(^_^) 。

伐採後の街路樹を加工して商品化を目指す、町田市と飛騨産業

なんでも東京の町田市では、23年11月に「街路樹更新計画」を策定したという。

しかし50年近く経過しているものも多く、高木が約1万5000本もあるらしい。

そこで「街路樹更新計画では、緑豊かな景観を維持しながら適切な管理を行うことで、質の高い緑を充実させていく。計画期間は23年度から32年度までの10年間。街路樹を優先的に更新する約100路線に対し、高木や低木の撤去などを行う。また一度更新した大径木は、その後30年の間隔で更新を実施する計画。こうして適切に管理することで、維持管理費は10年間で約14億円削減できると試算する。
伐採した街路樹は一般的に廃棄物として処分されるが、今回は街路樹の個性を生かして商品化などを目指す。町田市が伐採した街路樹を無償提供し、飛騨産業が製材・乾燥して商品にする。22年度には伐採後の街路樹からダイニングセットの試作が行われている。

この計画の後半が肝だろう。大径木の街路樹は、商品化をめざすのだ。

Machi2(町田市)

この写真からは、商品化した街路樹の木材はケヤキだろうか? 街路樹に多く、また大木化しやすい。何より広葉樹が多いので、木工向き。

実は、以前より東京では一般社団法人 街の木ものづくりネットワークで街路樹や庭木などを伐った場合、その木材を家具などにする運動が行われている。またオークヴィレッジのようなメーカーも、積極的に都市の大木を伐った際に引き取ってきた。すでに民間主導で行われているわけだ。

先日古本市で『都市林』という本を見つけ、200円で購入した。昭和47年発行で、林業経営研究所編・農林出版発行である。どちらも、今はあるのかわからない。

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古い本だが、都市林についてまとめた書籍は、今はほぼないのではないかと思う。日本の都市林、欧米の都市林について説明されており、なかなえ貴重な文献だ。

そこには、林業的都市林とか、非営利的生産・保全両立型都市林、放置的都市林……といった分類が成されている。まあ、詳しい説明は省くが。

私は、以前より街路樹を木材生産の場とする都市林を考えていて、それを新林業的都市林としたいと思っている。最近、やたら大径木になって倒れる街路樹が増えているではないか。京都の産寧坂の桜の大木が倒れた際は、全国ニュースになった。それどころかワイドショーが連日報道しまくった。(たかだか、街路樹1本が倒れただけなのに?)

一方で、明治神宮外苑の木を伐ると発表されたら大騒ぎ。あの程度の街路樹を伐るのに、なぜ国連イコモスまで登場しなくてはならんのだ。

そうした勘違いと感情的な街路樹対応をするのなら、最初から「街路樹は木材生産の場」と位置づければよいのだ。たとえば直径50センチ以上になったら伐りますよ、その木は木材として使いますよ、決めておく。そして都市を大径木広葉樹の貴重な生産の場として位置付ける。

……とまあ、そんなことを考えていたのであった。

 

それにしても……『都市林』のカバーにはラベルが張られている。「計画課」とあるが、どこか役所などの備品だったのだろうか。それを廃棄する際に古書として放出されたものかもしれない。どこだろうな。。。

2024/04/23

自然共生サイトを見に行く

自然共生サイトを知っているだろうか。

本ブログでは折々に紹介しているが、ようするにネイチャーポジティブ戦略の一環で、国際公約の30by30(陸海の各々30%を生物多様性の高い地域として2030年までに指定する)ために設けられたものだ。従来の法的な裏付けのある保護区では10~20%しか指定していないから、民間の土地なども法律抜きで指定していこうという作戦だ。

すでに昨年度に185カ所指定したというのだが、奈良県では1カ所、王寺町の「陽楽の森」一カ所。ここは谷林業が持つ市街地内の里山である。周りは住宅地などに囲まれている約10ヘクタールぐらいの土地で、雑木林になっている。そこを見に行ってきた。

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どんな条件をクリアしたら認定を受けるのか聞いたのだが、意外と曖昧で、とくに生物多様性があることを示す調査が必要なわけではないらしい。むしろ位置や地形、区域、所有者……などを示す書類が必要になる。また自然を管理する活動なども重要としている。

「陽楽の森」は、さまざまなイベントを開いたり、市民の憩いの場として機能していることから選ばれたらしい。見ての通り、ツリーハウスもつくったし、今度はここにカフェなどをオープンする計画も進んでいる。

一応、条件を調べてみた。

「自然共生サイト」認定の令和5年度後期申請受付開始について

ここに各項目の添付資料がある。いくつか抜き出すと……。

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こうやって見ると、やっぱりてんこ盛りの書類が必要になる(^_^) 。

それに、現時点では認定されたからと言って、何か特典があるわけではない。せいぜい、認定を受けたことを利用して寄付を集めることだろう。ただし、近く環境省は、固定資産税の減免などの特典を賦与する予定だ。まあ、山林などの税金は安いから、金額的にはたいしたことはないだろうが、それでも一つの目安になる。林業家、山主が、木材以外に「生物多様性という商品」を持つことを示すことは重要だ。

これを進めれば、自然を破壊する開発行為に対して、穴埋めとなる自然を提供する形の「生物多様性クレジット」に発展させられるかもしれない。すでにイングランドでは、開発したら、そこの自然の10%増の自然を別の場所に作らなくてはならないというネットゲイン政策が発動されている。これが日本にも広がるかもしれない。

特典のない今の間に認定を取得することは、先駆者としての地位が得られるだろう。

2024/04/18

モクレポ31号に能登半島地震報告と

林野庁のモクレポ31号(4月版)が出た。

モクレポ~林産物に関するマンスリーレポート~

今月号は、読みごたえがある。というか私の関心事が多く登場する。

まずは能登半島地震の林業関係被害が掲載されている。この地震被害報道は、漁業や観光業、伝統工芸に収入し、林業がほぼスルーされてきた。私が微力ながらいくつか発表した程度だ。それがまとめられている。

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また「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」も出ている。
とくに気になるのは、森林を生物多様性にする問題で、林業についても触れていること。日本の林業は、一斉林ばかりで生物多様性とは一線を画しているが、ここでは林業地であっても生物多様性を高めることについて紹介している。

森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/tayousei/attach/pdf/top-4.pdf
森林の生物多様性を高めるための林業経営事例集
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/tayousei/attach/pdf/top-3.pdf
生物多様性保全に資する森林管理のあり方に関する検討会
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/tayousei/kentoukai.html

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このQRコード読み取れるかな(ただしpdfである。パソコンで開いた方が読みやすい)。。。とくに「林業経営の指針」は面白い。事例集は……イマイチ(笑)。

ほかにも統計など、細かく見ていくといろいろ読み取れるのだが、それは皆さんの興味に任せよう。

 

 

2024/04/04

合法木材に関する法令のパプコメ募集中

こういうパプコメ募集があった。

合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律第三章に規定する木材関連事業者による合法性の確認等の実施等に関する省令案等についての意見・情報の募集について

これってようするにクリーンウッド法改正に関するものだね。

締切りが4月24日23時59分だというから、あまり日数はないが、しっかり意見を書き込むのもよいかもしれない。

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ただ、私の気分が萎えるのは、「違法」という言葉がなかなか見つからないこと。違法伐採、違法木材とは書いていない。あくまで合法性確認木材なのである。かろうじて基本方針の改正案のところに「木材関連事業者は、違法伐採に係る木材等を利用しないようにするため」とある程度。

私の見落としかもしれないが、慎重に「違法」という言葉を避けたように感じてしまう。

「違法」だとすると、当然ながらケシカランこととなり取り締まらなくてはならないが、「合法」の促進と言えば、ある種のキャペーンみたいなものになる。掛け声だけみたいだ。しかし、「合法」を促進しなければならないというのは、現在「違法」なものが出回っていることではないのかね?

そして国産材を対象にしているように感じさせる部分もあまり見つからない。なんとなく輸入材だけに思わせているように読めてしまう。

そもそもパブコメを募集しても、それをいかに反映させるのかもピンと来ない。これもセレモニーなのだろう。

2024/04/03

環境負荷低減の農産物ラベル

今年3月から、このような試みがスタートしていたらしい。

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こんなラベルが張られている農産物が23品目あって、評価を受けて合格したらこのような3段階のラベルを張るというもの。いわゆる「環境負荷低減の取組の見える化」である。23品目とは、トマト、キュウリ、ミニトマト、なす、ほうれんそう、白ねぎ、たまねぎ、はくさい、ばれいしょ、かんしょ、キャベツ、レタス、だいこん、にんじん、アスパラガス、りんご、みかん、ぶどう、日本なし、もも、いちご、茶

どのような項目を評価するかについては、以下のサイトに評価表示ガイドラインが載っているから見てくれ。結構な分量だが、なかなか面白い。

環境負荷低減の取組の「見える化」の本格運用がスタートします!

化学肥料や農薬などの使用量データを基に、地域特性を踏まえ、 温室効果ガスの削減量を算定。コメについては温室効果ガスに加え、「生物多様性保全」の指標も表示できる。もちろん、難問は一杯会って、こちらを立てればあちらが立たず、の状態でもある。温室効果ガスを減らせば、生物多様性が減るケースも出てくるからだ。

しかし、だねえ。本当に気候変動や生物多様性に関わる環境負荷を行うなら、まずは森林。そして産物としては木材だろうに。農薬はともかく林業機械に始まり、地域に対する伐採本数や林床の扱い方、そして木材加工のあり方まで、山ほどガイドラインは必要だろう。

農家の方が意識高い系かどうかはともかく、とりあえず農業は始めたのだから、次は林業、水産業だと思うな。でも……そんな人材がいるかと思うと……はあ~。林業家や製材業者では、誰もラベルを求めない光景が目に浮かぶ。

2024/03/12

補助金に環境負荷低減「クロスコンプライアンス」

タイトル、難しい言葉使ってしまった。

わかるだろうか。環境負荷低減クロスコンプライアンス。

これは農林水産省が決めたことで、今後はすべての補助金事業を対象に、環境負荷低減の取り組みを支給要件として義務付ける、というものだ。これは農水省のサイトにも掲載されている。

環境負荷低減のクロスコンプライアンス

もともとは、2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」で掲げた農林水産分野の二酸化炭素排出を実質ゼロにする目標を実現するための土台と位置付けている。食料という言葉があるように、これまでは肥料・農薬の適正使用や省エネといったことの農業分野だけのイメージだったのだが、それを林業や水産業分野まで広げるらしい。しかも、すべての補助金事業で環境対策を義務化するというのは、画期的というか、中央省庁で農水省が初めてらしい。

2024年度から試行を始め、27年度からは本格的に実施する予定だ。すでに農業や畜産業の一部で実施してきたが、いよいよ林業と水産業を含めていく。当初の予算ベースでは、2兆円程度の補助金が対象となる見込みだ。このうち林業にはどれぐらい含まれるだろうか。

なお、具体的に補助金の受け手に最低限求める取り組みには、次のような7項目を挙げている。

①肥料の適正使用
②農薬の適正使用
③電気・燃料などエネルギーの節減など
④悪臭や害虫の発生防止
⑤廃棄物の発生抑制と循環利用・適正な処分
⑥生物多様性への悪影響の防止
⑦環境関係法令の遵守

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この項目だけを見たら、ほとんど農畜産業になってしまうが、⑥の生物多様性には森林が大いに関係するし⑤の廃棄物うんぬんも、林業に関わりそうだ。もちろん③電気、燃料の節減も重要で、もしかして農業機械より林業機械の方が大きいかもしれない。
しかし、藻によりも⑦の法令遵守は林業界にとって最重要だろう。

実際の運用がどんな形になるのかよくわからないし、守っているのかどうかをチェックだってできるのか、という心配もある。相変わらず当事者が自身で発行する合法証明みたいなものでは意味がない。
それでも農水省が本気になってきた感がある。これらは農業界の世界標準だから日本だけ放置できないのだろう。

まさか林野庁は農水省と違うもん、と思っていないだろうな…。林野庁補助金は例外扱いします、とか? 24年度は目の前なのに、全然広報が行われていないのも気になるところだ。

上記に紹介したサイトだが、肝心の説明資料や、チェックシートのリンクが切れている。今になって削除したとしたら、「画期的な政策」も、なんだか、うやむやにするつもりではあるまいな。

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