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本の紹介

政策・行政関係

2018/08/06

バイオマス熱のFIT

木のルネサンス」(熊崎実著・エネルギーフォーラム刊)を読んでいると、ちょっと面白いイギリスの施策が紹介されていた。

 
まあ、この本には、日本のバイオマス発電がいかにダメダメかを詳しく書いているのだが、成功例とされがちなドイツでもバイオマスでも問題は山積みだそうだ。
 
とくつに問題は、FIT(固定価格買取制度)だ。バイオマスなど再生可能エネルギーとされたもので発電された電気料金を固定価格、つまり事前に定めた高い金額で買い取ってくれる制度で、日本はその制度の不備だらけのため、バイオマス発電が森林を破壊し、さらに海外から石油を使って輸入するバイオマス燃料を高く買い取る有り様だ。
 
日本の場合、未利用材から一般木材、建築廃材まで区分けするという世界に類を見ない大馬鹿な方法を取ったが、これは一部の業界に金を回す裏施策だったのだろう。
 
そもそもバイオマスエネルギーのうち電気に変えられるのは1~2割なんだから、そこにFITを当てはめたのが間違いなのである。8割方、熱としてエネルギーは放出されるのだから。
 
で、イギリスが考えたのが「熱のFIT」のような再生可能な熱の生産コストと化石燃料の差額を政府の補助金で埋める政策。これをRHIというそうだ。2011年にスタートした。
 
電気料金に上乗せするのではなく補助金なのだが、熱利用を進める方が意味があるのはたしかだ。実際、イギリスではバイオマス熱の利用が一気に拡大したそうである。
 
ま、その結果、補助金の底はついて、痛い目にあったそうだが……。ちょうど石油の値段が下がって、差額が大きくなりすぎたのである。
 
何をやっても、バイオマスエネルギーは上手くいかないというわけだ。それでも電気のFITよりは熱のFITの方が意味あるように思える……。
 
 
それでも熱を固定価格にした方がよかったような気がする。発熱なら小型ボイラー中心になって、大規模な燃料木材の調達に走ることはないからだ。しかも熱が届く範囲という地域経済に金が回るのである。
 

2018/07/28

「防災省」設立構想

今晩は、近畿圏を台風12号が通過予定。緊張した時間を送っている……と書きたかったのだが、今のところ雨も降っていない(~_~;)。風もほとんどないなあ。近隣には避難勧告の出た地域もあるのだけど。 

さて、そんな相次ぐ災害に備えて防災省(仮称)の創設案が登場している。

 
先日、札幌で開かれた全国知事会議でも「国難レベルの巨大災害に負けない国づくりをめざす緊急提言」の創設が提案され、採択されていた。また自民党総裁選挙に出ると噂される石破茂議員が「防災省創設」を掲げたことも話題になった。官邸側としては、こうした政策を潰そうとしているから実現可能性はさほど高くないが。
 
防災省構想は、もともと阪神大震災が起きたときに総合的な防災・災害対応を行う部署が必要として、アメリカのFEMA(緊急事態管理庁とでも訳すのかな?)のようなものをつくろうとしたのが最初のはず。それを関西広域連合が提案するようになり、石破議員も取り上げたというのが流れだと思う。
 
実は先日、英字新聞の記者から、この防災省案についてのコメントを求められた。
私が以前にYahoo!ニュースに書いた「山川省構想」を読んで、防災省と似ているからだという。
 
山川省構想とは、土倉庄三郎が唱えたもので、時期と内容もかなり違う。明治時代だけに、山川省は、防災のための緑化と森林整備が第一義であった。ただ、山と川を扱う官庁がバラバラでは効果が出ないという発想は、防災省にも通じるところがある。つまり縦割り行政を廃する目的である。
 
求められたコメントは、
 
・防災省を創設すると、防災強化の名目で政府は自然破壊に繋がる無駄な公共事業を認可しやすくなる恐れがあるか。
・政治家、学者たちは防災省に「被災地の復興まで担当する権限」を描いているようだが、町村レベルで山川の復興をどこまで考えているか。
・仮に農林水産省が分割され「山川省」を創立すれば、防災省よりうまく行くと思うか……。
 
というものだった。
 
想像される防災省の役割は、
各省庁がバラバラに取り汲んでいる防災・災害対応を調整すること。
防災内容などの基準を一元化すること。
専門知識・技術を持つ職員の養成と専属にすること。
 
この3つだろう。その点からすると、
防災省が、公共事業を認可して自然破壊が進むとは考えにくい。むしろ、権限のないまま提案する無力な官庁になるかもしれない。また専門知識を持った職員を本当に養成できるのか。数年ごとに転勤させる体制を改変できるのか。
日本の中枢は、遠い未来の姿を描くのが不得手で、社会の将来像や自然環境の保全に対する意識が低い。防災省ができても、インフラの復元や、防災施設の建設など目先のハコモノと復興ばかりを優先するだろう。防災名目なら自然破壊も仕方ないと考える可能性だって大。
インフラが復元できた頃には、そこに住む人がいなくなるかもしれないのに……。
 
と返事した。
 
つまり、関係省庁(気象庁、消防庁、警察庁、防衛省、国土交通省、農水省、林野庁……)に命令する権限はなく、あくまで「調整」官庁になるだろう、ということだ。
とはいえ、縦割りゆえの弊害が減るのなら、考えてみるのもよいかもしれない。防災という錦の御旗で「開発」に待ったをかける力になるのなら。 

2018/07/25

農水省・林野庁人事のことなど

霞が関で大きな人事移動。

農水省事務次官が奥原正明氏から末松広行氏に。末松氏は、現在経産省に出稿して産業技術環境局長だそうで、出向中の人がいきなり次官というのは異例の人事だそうだが、そんなことにはあんまり興味はない。
 
林務では、奥原次官が森林経営管理法のほか、一連の「改革」という名の「林業の成長産業化」を主導したわけだが、果たして交代がどんな影響を及ぼすか。
 
末松氏は、もともと農水畑……畑といっても米作中心(~_~;)だそうだが、以前は林政部長だったこともある。官僚らしくない、という評判だったが、私的には官僚そのものに思えた。
 
そう感じたのは、在籍中に立ち上げた木材ポイント制度のとき。私は、これこそバラマキ以外の何ものでもないと思っていたし、最後は外材にまで木材ポイントを与えることになって、終了したわけである。 それが林業に与えた影響への評価も??だ。
国産材の建材をせっかく注文したのになかなか手にはいらない、と建設業者に不信感を植え付けたような気がする。
もっとも、最近では木材ポイント制度で国産材家具が増える契機になった……という声もあって、何がどう転ぶかわからない(笑)。
 
一方で林野庁長官の沖修司氏も退任し、後任は次長の牧元幸司氏だそうである。
沖氏が唯々諾々と奥原次官の路線に従ったわけだが、さて、こちらもどうなるか。
 
沖氏は技官出身だったが、牧元氏は事務官出身である。東大法学部出身ながら、在学中から緑の会に属していたとかで、わりと植物系・森林系には馴染んでいたらしい。
 
※ちなみに「緑の会」で検索すると、NPO緑の会というのがヒットするが、これはEM菌などをばらまく団体である。また東京大学法学部の緑会は、学生自治組織のこと。東京女子大学の緑の会は、カフェ巡りをするサークルのようである。多分、いずれも関係ない(~_~;)。
 
林野庁では、トップが技官出身と事務官出身が交互に交代する。 
日本の官僚は、ほとんどが東大法学部出身者がトップに立つ状況にあるが、林野庁だけがかろうじて技官もトップに上がれるのは、戦後占領軍であったGHQの勧告があるからだという。林政のトップは森林のことを知っていないといけない、と強力に押したからだ。
 
そのためか今度はどちらか気にする声がある。技官だったら林業のことを知っている……という期待があるのかもしれない。たしかに法学部出身でしかも農水省から来たと聞いたら林業のこと知らないだろうな、とは感じる。
 
ただ、最近はあんまり関係ないような気がする。林業のことを知っていると言っても、下手に業界に染まっているだけかもしれないし、事務官出身の方が素直に勉強して世間の視線で林業を眺めるから、改革には向いているようにも思える。
 
さて、お手見拝見である。(期待していないけど。)
 
 
なお、まったく関係ないが、現在「LGBTは生産性がないので支援は不要」と月刊誌に書いてお騒がせしている杉田水脈自民党議員は、鳥取大学農学部林学科卒だそうである。
現在の活動に、この経歴が反映されるようなことはまったく感じられないが、大学の専門とはその程度のものである。
 

2018/07/16

水産認証MSCとMEL

気がついたら、今日は休日で、土曜日から3連休だったらしい。あまりに暑い日が続くので気付かなかった……。(関係ない)

 
この時期、スーパーマーケットの水産物売り場を覗くと、否が応にも目立つのが「土用の日」のウナギの蒲焼だ。
 
絶滅危惧種に指定されたり、シラスウナギの漁獲が激減したり、ということが話題になってもやっぱりウナギを売るのね……と少々呆れ気味に眺めていたが、そんな売り場で目についたのが「MSC」認証。
 
ようするに海洋管理協議会(MSC)の水産物の環境認証だ。ところが、それだけでなくMEL(マリン・エコラベル・ジャパン)というのもあることを知った。こちらは、大日本水産会が2007年に立ち上げたのだそうだ。すでに10年以上も経っているわけだが、まったく知らなかった。
 
MSCだって影は薄いが、イオンでは比較的よく扱っているので目につく。しかしMELは……。
 
ここで両者の違いを説明する元気はないが、簡単に言えば、国際基準のMSCに比べて、国産のMELは基準がゆるゆるで、審査の透明性も欠ける代物らしい。そして、審査費用が安いのが売り物。
なぜか国際基準を嫌がって日本独自の制度をつくりたがるのだが、嫌がる理由が透けて見える。
 
 
まるで、FSC(森林管理協議会)とSGEC(緑の循環認証会議)の関係に似ているなあ(^o^)。
 
森林認証をなぞるがごとく、水産認証もできていたのだ。
ただSGECは、PEFCに合流したから国際基準になったし、基準も多少は厳しくなったようだけど。
 
 
私は、,FSCを取得しているスギ、ヒノキの価格を一定程度高く買い上げるビジネスを考えているのだけど、安定供給できる山はどこにあるだろうか。

2018/07/11

森林経営管理制度の疑問と回答コーナー

林野庁のホームページに、森林経営管理制度(森林経営管理法に基づく施策)に関するコーナー ができている。

 
平成30年5月25日、新たな法律である「森林経営管理法」が可決され、成立しました。平成31年4月1日に施行され、「新たな森林管理システム」がスタートします。……というように、林野庁系の冊子によく使われているイラストで説明している。
 
 
Photo  
 
面白いのは、皆様からいただいた疑問と回答の部分。
 
主伐(短伐期の皆伐)を強要されるのか。大径木の生産を目指した長伐期施業はできないのか。
 
いいえ。……
 
市町村の方針に所有者が同意しなければ、強権的に経営管理権が設定される措置なのか。
 
いいえ。……
 
乱伐が進んで、再造林・保育が行われずに放置されることになるのではないか。
 
いいえ。……
 
経営管理実施権は、大企業にしか設定されないのか。
 
いいえ。……
 
 
詳しくは、実際のサイトの回答を読んでいただきたいが、疑問のすべてに「いいえ」で返答するというのが面白い(笑)。
ここまで否定するのなら、その旨、法律の条項にも記載すればいいのに。ここで否定されても、現場ではいかほどにも運用は可能だろう。
もし、この回答とは違う結果が出たら、どうするのか。たとえば、15年の委託を受けておきながら、伐採後の再造林をしなかった場合(しても、まったく成林しなかった場合)、どんな処罰が下るのか。何もなければ逃げ得だ。
 
 
もう一つ。林業経営に適さない森林は市町村が直接管理、とあるが、市町村職員が直に何かできるわけないので、結局はどこかの事業体に委託するのではないのか? 
能力と意欲のある事業体とやらせは、上記の経営に適した森林に取られるので、こちらには意欲も能力もない事業体に(笑)。ま、それは意地悪な言い方かもしれないが、ようするに市町村が税金で費用払って業者に施業をさせるという意味だろう。
 
 
私も、これからコツコツと読んでいこうと思う。誰か、さらなる疑問とツッコミドコロを見つけたら、私にも教えてください。

2018/07/08

紀伊半島知事会議で「恒続林」

西日本大水害(と名付けられたのかどうか……)が発生している5日から7日にかけて、私は風邪で臥せっていたわけだが、ふと気になるニュース。伊勢新聞に掲載されている。

 
5日に三重県で開かれたという三重、奈良、和歌山の3県知事による紀伊半島知事会議である。
 
会議では、災害対応などについて議論したという。この場合の災害とは、主に平成23年の紀伊半島大水害に関するもののようだが、まさかこの会議が始まった日からの雨が大災害を引き起こすとはタイムリーといっては不謹慎だが、ズバリ議題が的中したとも言えるかもしれない。幸い、今回は紀伊半島では大きな被害につながっていないようだが……。
 
 
私が目を止めたのは、
 
会議では、奈良県が導入を検討中の「恒続林」について、3県で情報共有を進めることで合意。恒続林は防災などを目的に、針葉樹と広葉樹を混交させて木材を生産する森林。仁坂知事も針葉樹の環境林に広葉樹を混交させるための間伐を進めていると紹介した。
 
こんな会議の場に「恒続林」という言葉が登場していることに、目を見はったのである。
この記事の説明ではわかりづらいが、恒続林とは、まず字のとおり、常に森林である状態が継続することが大前提だ。伐採して木がない状態にはしない、という意味だ。
その上で木材生産も、防災にも最大限の力を発揮させるとするもの。さらに生物多様性やレクリエーションも賄える森だ。基本は針広混交林で、択伐施業をしつつ、更新する。当然、皆伐はしない。
 
これまで恒続林という概念は、学術的な場面で登場することはあったが、政策面で使われることはなかったと思う。奈良県はスイス林業を取り入れた研修を行っているから、そこでスイス林業を説明する言葉として恒続林という言葉は使っていたが、明確な政策方針として掲げるのは初めてではないだろうか。
 
 
奈良県の計画は、こんな具合。(ホームページより)
 
Photo
 
この中では、めざす林型として「恒続林」のほか「適正人工林」「自然林」「天然林」がある。適正人工林は、スギ・ヒノキが健全に育っている人工林。自然林は適正里山林・雑木林と言い換えてもいいかもしれない。天然林は、完全に手を入れず保護する森。ここまでは従来の森林分類でも収まるが、これらに加えて「恒続林」が入ったのだ。
 
目標林型に恒続林があることは、日本の林政史上、稀な事例だろう。
 
記事はさらりと流しているが、記憶に留めておいてほしい。
 

2018/06/27

国有林の実質売却計画?

森林経営管理法によって、民有林の皆伐が進む……と警笛を鳴らしてきたが、どうも波は国有林に及びそうだ。

 
国の未来投資会議で、これまで立木販売システムは短年度で行われていたが主だったが、長期・大ロットに広げることになったようだから。それがちょっと桁違いで、面積では4000~4万ヘクタール規模、期間も30年~60年のスパンを考えているらしい。そして年間25万立方メートルの木材生産をできるようにする……。
 
つまり、「民間の素材生産業者が国有林で作業する」というより、大面積の国有林を民間業者が丸ごと借り上げるようなもの。60年間委託して経営させるのなら、もう実質的に国有林ではなくなるように思う。国有林の売却みたいなものか。なんでも、竹中平蔵のアイデアらしい。
 
ある意味、東南アジア各国が伐採業者に伐採権(コンセッション)を売り渡してバンバン伐っていた時代を思い出す。安倍政権は同じように国有財産を叩き売りするつもりらしい。
 
民有林より作業道などの整備が進んでおり、山林も一元化されている国有林は、業者にとっては民有林よりはるかにオイシイ。森林経営管理法による委託なんか手を出すより、こちらに殺到するんじゃないか。
 
これまで官邸種痘の「新たな林政」に唯々諾々と進めてきた林野庁だが、それが国有林に及ばされるとなると、顔が引きつっているのではないか。民有林を伐っても国有林は温存しておく心づもりがぶち壊されたみたい。
 
 
ちょっと歴史を振り返る。
 
明治の初年度に、大蔵省の次官だった井上馨は、国有林の民間払い下げを画策した。大久保利通が岩倉使節団で欧米に言っている間に、幕府や藩の所有していた森林を取り上げてつくったばかりの官有林を、民間に無制限払い下げを行った。しかも買い取った後は何をどうしてもよいというお墨付きで。
 
それは2年後の大久保の帰国と井上の失脚で止まったのだが、どれほどの官有林が売り飛ばされたか。
 
それら約15年後、農商務大臣になった井上馨は、再び官有林の払い下げを画策する。今度は市町村へ移管しようとしたのだ。よほど国が森林を持つ必要はないという信念があったのかも。森林を環境とか国土保全という目ではなく不良財産と見て、さっさと売り飛ばして金に換えることばかり考えていたのである。
これも井上の大臣交代というか、更迭で止まったが、なんか今の政府のやることは井上馨の発想に似ている。
 
明治期のそうした動きは、幸いにして各地の自治体が反対し続けて、最終的には政権交代によって瓦解させた。
太平洋戦争直後でも、民有林は乱伐で荒れていたが、国有林は比較的木材資源も残っていた。それは国有林であったからだろう。ところが戦後は、国有林を自ら大伐採を進めた。
 
 
今度は自らの伐採ではなく、民間委託という形で経営権を譲り渡すことに近い。果たして国有林を守りきれるか……。
真正面から反対できないのなら、取る手は「サボタージュ」だな(笑)。あれこれ問題点を指摘して、足を引っ張り続けて、どうしてもやるには新たな法制度が必要~とかなんとか言って、ひたすら先延ばしにする。そして政権交代するのを待つか。なんか、得意そう。
 
 
 
 
 

2018/06/21

白書記載の「内輪の論理」

先日、元林野庁関係者とお会いして多少の意見交換をしたのだが、そこで話題になったのが、クリーンウッド法

 
私はザル法と言い切ったのだが、その理由として罰則もなく、そもそも違法木材の取引禁止を謳っていないことを上げた。しかも登録した業者のみに適応するという。わざわざ登録するメリットもないのに……。(法の趣旨は、合法木材の推進である。)
それに関して、「こちらの気持ち」はわかってもらえたものの、「仕方なかった」というのである。
 
なぜ罰則を付けられなかったか。それは業界から圧力がかかったわけでも、政治家の横車があったわけでもない、らしい。
 
日本の法体系では、違反と決めつけるまでが大変なのだそうだ。そうすると立証責任が生まれてしまい、とても一件一件輸入する木材の素性を追いかけて違法性を立証できないから。
結果的に努力義務のような、あってもなくても構わない法律になった。
 
なるほど。だがその理屈は、しょせんは内輪の論理だろう。そんな理屈を厳しい違法木材の取締法を設定した欧米諸国に説明して理解を得られるだろうか。しかも、その理屈を外向きに発表もしていない。
 
森林経営管理法のように、個人の財産権・所有権の侵害を疑われ憲法違反かと言われる法律を山賊のごとく力業で成立させておきながら、クリーンウッド法はおとなしいお公家さんのようなことを言われても納得できない。
本気で違法木材を取り締まる覚悟があれば、いくらでも手はある。ようはやる気の有無だ。
 
 
 
そんなことを思い出したのは、森林・林業白書を読んでいて、またもや“内輪の論理”があるんだろうなあ、と思ったから。
 
日本の木材輸入状況を確認していると、いずれも木材量(立方メートル)で表現されている。
 
Photo_2  
 
丸太、製材、チップ……それぞれの輸入量の増減が示されている。これ、金額的にはいくらになるんだろう、と思って読んでいくのだが、全然金額は登場しない。金額は貿易統計などに任せているのかな? と思うが納得いかない。
 
次は、木材輸出の状況だ。こちらは……いずれも金額ベースなのである!
 
Photo_3
 
今度は、木材量の数字はないか探す。ない。これでは、国産材何万立方メートルを海外に送ったのかわからない。木材生産量全体の何割が輸出なのかもわからない。各品目の単価も概算できない。
 
なぜ輸入は材積で、輸出は金額なのか。理解できない。
もしかして、輸出が増えた、これぞ日本林業の復活の気運!と煽りたいのに材積を示したら、そのしょぼさがばれるからでとないか? まあ、金額にしても326億円なんて貿易の中では木屑みたいなもんだが。
 
 
おそらく、それぞれの単位を変えたのは何がしかの“内輪の論理”があるのだろう。「ウォーリーを探せ」みたいに、各省庁の発表している白書や統計の中から該当する数字を見つけてご覧、とでもいうのだろうか。
 
本気で情報発信するつもりなら、単位を揃えるのは常識というか最低限の義務だ。白書を発表しておきながら、日本の林業事情の本質を読み取られては困ると言わんばかりの不遜な態度である。

2018/06/14

「森林管理の手引」はゲームアプリで

林野庁、やっぱりお節介。

来年度から施行される森林経営管理法に合わせて市町村が森林管理の責務を負うことになるわけだが、そのための手引き書づくりを林野庁が行っているそうだ。今から来年の準備をこのようにやりなさい、というわけか。

内容は管理対象となる森林の目安(どういう状態が放置林か、林地台帳で所有者を調べたり境界線を確認したりしなさいよ、集約する優先順位は……など)を示すというのだ。
さらに、こんな森林は管理権を所有者から奪って業者に委託しなさい、こういう森は、森林環境譲与税注ぎ込んで管理しなさい、と指導するらしい。
 
市町村が独自に森林管理をやりなさい、と言いつつも「指導」が入るわけね。どうせ市町村に林業のことわかる人材なんかいないだろ、と見切ってお手伝いするのか。(本来、間に入る都道府県を見事にディスってる気がする……。)
 
 
実際問題、ほとんどの市町村は困っているだろう。林業に詳しい人材はそんなに多くないし、仮に一人や二人いても全体を見渡して指針を考えるのは厳しい。マニュアルがあれば頭使わずに済むから有り難いだろう。
しかし、そもそも林野庁にも、それを示せる能力のある職員が何人いるのか問いたくなる。スギとヒノキの区別も付かない職員もいるよ、と以前に聞いたが……。(もちろん、それは特別な例だと思いたい。)
 
手引き書づくりを丸ごと否定するのではない。
気になるのは林野庁がつくれば、全国画一的なマニュアルとなりかねない点だ。
 
森林は地域ごとに大きく違うものだ。気温や降水量はもちろん、土壌、地形、水分条件、光条件。所有者の立場や意志。そして地域の背景の木材産業事情。素材生産業者の数と質。木材市場や製材工場の配置まで響いてくる。
 
それらに対して目をつぶって手引をつくられても、機能するのか。もちろん林業に通じた優秀な職員がいたら、手引を元に自分で地域事情を落とし込んで上手く適合させるだろうが、そうでなければマニュアルを御旗のごとく金科玉条に実行しようとするかもしれない。
 
全国画一的な施策が、日本の山を多く荒廃させてきた。植樹本数から始まり、下刈りの回数や間伐率まで決めてきた。複層林なんてのもあった。現場を無視して実施して傷ついた山も多いはずだ。また繰り返すのか。。。
 
 
ここで、どんなマニュアルが適切か考えてみた。必要なのは「手取り足取りの指導」ではなく、現場の職員に自分で考えさせることだ。
 
森林のタイプ(上記の条件)ごとに分類し、それぞれのタイプ別施業の選択肢をいくつか示す。市町村の担当者は、自分なりにどれを採用するか決断させる形式はどうだろう。いわばロールプレインゲームのように森林管理の施業を自分の頭で考えさせる。
そうなれば担当者も勉強するだろう。鍛えられるし、自分で判断した行うのは楽しい。上手く行って森が健全に美しくなればやりがいになるし、下手な選択をして失敗する経験も疑似体験させる。
 
いっそパソコン用アプリにするとよい。安易に選択肢をクリックしたら、10年後森林がボロボロになる様子を画像で見せる(笑)。そしてゲームオーバーとか減点100点とか。
せっかく健全な森づくりができたのに、ある時台風で山崩れが発生して壊滅!という事例も入れておく。君は何段階までクリアできたか? なんて競争になる。
 
そうだ、自分のアバターを決めて、アニメキャラを当ててもよい。「武器」は、森林生態学や土壌学、砂防学など専門分野の試験を合格したら手に入る\(^o^)/。
 
Photo 画像はイメージです。。。
 
なんなら、このゲーム攻略の全国大会も開催。100年後もっとも美しい森をつくるのは誰だ、日本一の市町村林政担当者を決めよう! と競わせる。日本の林政の底力を鍛えられるぞう。。
 
 
あ、実地の森で実行しなきゃ意味ないね……。
 

2018/06/04

29年度森林・林業白書の読みどころ

北海道から帰って来たら、平成29年度の森林・林業白書 が公開されていた。

 
ざっと目を通す。
 
案の定、「新たな森林管理システム」(⇒森林経営管理法)に関しては、かなりのページ数を割いている。気になる方はどうぞ。あ、森林環境税に関する説明にも紙数を費やしている。私は見ないけどね(⌒ー⌒)。
 
もう、うんざりだから(笑)。北海道でもしゃべってきたし。しかも会場には林野庁出身者がいたし(笑)。ちょっと内幕も聞けました。
 
 
で、今回の私のお気に入りとなったのは……。
 
トピックスである。その中の、
 
4. 「日本美 うつく しの森 お薦め国有林」の選定
5.明治150年~森林・林業の軌跡~
 
である。とくに後者は気になる。
 
150 こちらは概要の囲み記事。
 
ちょっと引用すると、
 
明治時代になると、近代産業の発展に伴って、工事の足場や杭、鉱山の坑木、電柱、枕木、梱包用材等、様々 な工業用の用途にも木材が使われるようになりました。当時、鉄道用の枕木やマッチの軸木等は主要な輸出 品目となっており、明治43(1909)年における輸出量は枕木約30万㎥、マッチ用軸木約4,000トン、木炭 約12,000トンとなるなど、我が国の外貨獲得に貢献していました。また、クスノキから抽出される樟脳は、 当時重要な工業製品であったセルロイドの原料であり、木材由来の工業用品として、盛んに生産され、輸出もされていました。 
 
 
実は、私もかつて明治期の林業を調べた際に、枕木や木炭需要、そして樟脳生産などが想像以上に大きかったことに気付いたのだが、肝心の数字(統計)は見つけられなかった。それがここには載っているではないか。さすが林野庁!(ヨイショ)
 
枕木を30万立方メートルも輸出していたんだぜ。国内消費も少なくなかったはず(鉄道建設ブームだったし)、いったいどれほど大木を伐っていたんだ。
 
 
さらに気付かなかったマッチの軸木も輸出が4000トンかあ。足場や杭や鉱山の坑木、電柱の量も示してほしかった。
樟脳はどうだろう。おそらく台湾で生産したものが多かったと思うのだが。
 
こんな数字を見ると、当時の林業の素顔が浮かんでこないか。林業と言えば建築材と思い込んでいる昨今の硬い頭を崩す一助にはなるだろう。
 
なお、こんな明治~昭和の伐採量や造林面積グラフもある。
 
Photo
戦前のこれらの数値は、意外と見つからなくて戦後と比較できなかった。それが、このグラフでよくわかる。かつては薪炭がいかに多かったことか。。。
 
 
目先のことばかり見ている林業関係者に、明治からの日本の林業を見つめ直せ、と言いたいね。そして、そこから何を読み取れるか考えてほしい。
 
 
 

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