無料ブログはココログ

森と林業と田舎の本

2021/07/15

EUのガソリン車とプラ締め出しを真似ろ

EUが、ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を決めたという報道があった。
以前から言われていたし、個別の国の指針にも出ていたと記憶するが、やはりEUとしてバーンと打ち出すと迫力がある。やる気満々だねえ。

ただ、もっと地道で強烈な政策も打ち出している。

今月3日には「使い捨てプラスチック指令」が施行されているのだ。とくに10種類の使い捨てプラスチック製品を具体的に指摘している。
具体的な10種類の製品とは以下のとおり。これらが海洋ゴミの7割を占めているという理由からだ。

・綿棒スティック
・カトラリー(フォーク、ナイフなど)、皿、ストロー、マドラー
・風船とそのスティック
・食品容器
・飲料カップ
・飲料容器
・タバコのフィルター
・ビニール袋(レジ袋)
・パック、ラップ
・ウエットティッシュと生理用品

これらのうち、持続可能な代替品が手頃な価格で入手できるようになったら、EU内で販売できなくなる。今回販売が禁止されるのは、綿棒スティック、カトラリー、皿、ストロー、マドラー、そして風船のスティック。発泡スチロール製のカップ、食品・飲料容器も入る。するとタバコのフィルター以下は、まだ当面は使われるのか。レジ袋も生き残る。ただプラ食器類は全滅……というか、今月から完全に禁止の模様。

なお酸化型生分解性プラスチック(従来のプラスチックに添加物を混ぜて、時間とともにバラバラの細片になるもの。プラそのものは分解しない)は禁止になるとか。


なぜ、これほどEUは強気なんだろうか。もちろん市民の環境意識の高さが第一だろうが、経済戦略的にもプラスと睨んだに違いない。すでに電気自動車は先行しているから、日本車やアメ車を締め出すことをできる(中国車は力をつける?)ことも睨んでいるのではないか。プラ食器類も、代用品はすでにできているのだろう。おそらく木製か紙製。

日本だって、つくれないことはない。木製トレイや木の型抜き式のスプーンもある。EUにこれらを輸出するぐらいの気合があればよいのだが。(無理だろうなあ。)

007 Photo_20210715163901

国際社会で優位に立つには、理想(環境問題の解決)を掲げるとともに、自国・自陣営内の有利さも重要なファクターだ。日本は、そうした駆け引きがまったく苦手で欧米、いや中国などにも遠く及ばない。

たとえば私は、違法木材使用を完全に禁止にしたら、現時点の木材需要の約1割(ほぼ外材)を締め出せるから、その分国産材にチャンスが回ってくると随分前から唱えている。自由貿易原則内でも、「違法伐採」「森林破壊によって調達」された木材を締め出すのは、大義名分が十分に立って文句の付けようがない。国産材の需要拡大とか林業振興を本気で実現したいのなら、大義名分に引っかけて外材を排除できる。さもないて、勝手に国産材優先などを打ち出したら海外からWTO違反で批判を浴びるのだ。

だが、まったく動かない。それどころかクリーンウッド法のようなネボけた(どころか違法木材を容認するような)法律をつくる能しかない。真面目に違法木材を取り締まったら、国産材も外材以上にトレーサビリティがなく、過半が否定されるとおびえているのだろうか。人災、国産材は違法というより合法を証明できないグレー木材が多すぎる。
あるいは違法木材を使っている木材業界の脅しに屈したか忖度したか。いや、おそらく取り締まるのが面倒くさいからだろう。外国機関のほか関係省庁や政治家と粘り強い交渉が必要で、大変な業務になる。仕事を増やしたくないのだ。

だがEUだって、電気自動車や脱プラスチックを掲げて(反対勢力もあるだろうに)挑んでいるのだから、日本もやる気出せよ、と言いたい。仮に厳しく違法木材を締め出した結果、国産材も沈没して合法な外材ばかりになるか、木材需要そのものが減ることがあっても、それは地球環境に貢献したことになるのだから胸を張ればよい。そして国産材の(本物の)合法化に力を注ぐべきだろう。

 

2021/06/29

保安林解除を推進?再生可能エネルギーのため……

林野庁が、保安林指定の解除をやりやすくするマニュアルづくりに乗り出した。

ようするに地熱発電や風力発電、それにメガソーラーなど再生可能エネルギーを進めようとすると保安林指定された森林に引っかかることが多いが、そのため保安林の解除が必要になる。

現状ではちゃんと手続きを進めていくと1年ぐらいかかるが、もっと迅速化するための手引だという。必要な点を明確して書類づくりや事前相談をやりやすくするわけなのだろう。

保安林とは水源涵養だとか土砂災害防止ほかさまざまな用途に合わせて指定して、その用途以外への転換ができない。当然、地熱開発や風車建設やメガソーラー設置ができない。だから解除を申請するのだが、なかなか進まない理由として業者が不慣れというか手続き方法を知らないこともある。そこでマニュアルをつくって、手取り足取り早く「森林破壊」できるようにしてあげましょう、ということか。

これって、マニュアルづくりと言いつつも、指定解除に手を貸すことである。しかし林野庁なら、本来は抵抗すべき筋のものではないか。目的をもって指定したものを、業者の希望に沿って解除する手助けとは。しかも、解除された森林は、実質破壊される運命だ。木を伐らずに地熱開発も風車やソーパーパネルも設置できないのだから。

この調子だったら、バイオマス発電の燃料調達のための保安林伐採も進みそう。

これは、菅総理が進める二酸化炭素排出削減46%(2030年)達成のためになりなりふり構わぬ動きに出たとしか思えない。しかし、考えてほしい。こうして再生可能エネルギーが増えたとしても、結果的に森林を破壊すれば大気中の二酸化炭素は減らない。増えるかもしれないのだ。

先に生駒山の奈良県がメガソーラー計画の工事を差し止めた件を紹介したが、やはり国は推進したいのだ。

20210626_210045

これは平群町のメガソーラー計画地。48ヘクタールがすでに切り開かれた(3分の1は残置森林だそう)。遠目に撮影したものだが、わりとはっきり切り開かれた部分が目に入る。ここにソーラーパネルを並べられたら、見事に反射して目立つだろう。

業者は一時的に差し止められても、すでに土地を購入しているし、かなりの資金を投入しているはず。簡単には引かないかもしれない。あの手この手で林地開発申請書の不備を直して再提出を目論むだろう。そこに国の省庁が手を貸す可能性は……あるな。ある。保安林ではないし、すでに伐採済だが、国定公園内だけに、さまざまな規制がある。加えて今回の差し止め理由となった排水処理や高圧電気の送電線など許認可がいっぱいだ。

アメリカのファンドは、政府内に人脈も築いているだろうから、奈良県に圧力かけるかもしれないなあ。

 

2021/06/28

ガボンの巨大「カーボンクレジット」

中央アフリカの国ガボン。そこで驚きの計画が発表されている。

Next Africa: As Oil Fades, Gabon Bets on Its Forests


ガボンは予算の半分以上を占める収入源として森に賭けるというのだ。

Photo_20210628211001

森林を伐採して開発をする……ようなギャンブル計画ではない。アフリカ保護開発グループに70万ヘクタールの土地の帯を持続的に開発する権利を与えたのだ。このアフリカ保護開発グループ〔African Conservation Development Group 〕とはどんな存在かわからない。アラン・バーンスタインという人が創業者兼会長とあるから民間企業のよう。そして「持続的な林業」「農業」「エコツーリズム」「インフラ整備」などの部門を持っている。また傘下には、生態学、野生生物観光、持続可能な林業、自然資本評価、気候ファイナンス、カーボンオフセット市場の分野で世界をリードする専門知識を持つ人材を揃えているのだそうだ。

とにかく、広大なコンゴ盆地の熱帯雨林の一部を保護することでカーボンクレジット債券を得る計画らしい。見返りとして、ガボンはエコツーリズム産業と持続可能な広葉樹伐採事業を行うことを望んでいる。

カーボンクレジットは各地で行われているが、たいてい決まった森林を伐採開発計画から防ぐために行われるものだった。だが、今回のガボンは、複数の土地利用でより広い地域を保護するための計画だ。ガボンはすでに森林保護に関する以前の合意に基づき、1週間に1700万ドルを受け取っているとか。

あまりにも壮大な仕掛けなんで、日本人には理解しづらい(^^;)。ただ森を預けてカーボンクレジットでこれだけの資金を得られるのなら、日本もいっそ預けた方がいい。赤字垂れ流しの林業より、上手く経営してくれそうだ。

いくつか謎の言葉がある。「世界で2番目に森林に覆われた国 As the world’s second-most forested nation 」とはどういうことか。面積ならロシアやカナダ抜きに語れないから、ここでいう森林とは熱帯雨林のことだろう。熱帯雨林ならブラジルに次ぐか?ガボン一国ではなく、コンゴ盆地の熱帯雨林のことかもしれない。アマゾンに次ぐ中央アフリカという意味かな?

もう一つ、ガボンの環境大臣はイギリスの植物学者リー・ホワイトとある。外国人が大臣をしているのか。それも学者が。そんな融通が効くのも面白い。
そして大臣の発言「私たちがコンゴ盆地を失うと、気候変動との戦いに負けます。国として、私たちはアイデアを推し進めようとしています。排出量を削減するために支払うのではなく、排出量を吸収するために支払うのです」。

世の中、どんどん動いている。アフリカも大きく変わりつつある。

 

2021/06/13

ほとんど知られていない国際的な「自然への誓約」

おそらく、この国際的な「誓約」を知っている人は数少ないだろう。私も最近知ったばかりだ。

リーダーによる自然への誓約(Leaders Pledge for Nature)」に対して、日本は賛同を表明したのだ。

この誓約は、昨年9月の国連生物多様性サミットの際にすでに提案されていた。すぐに70カ国のトップが賛同し、これまでに84カ国が参加。それなのに日本は、すぐに応えなかったのだ。G7の中では日本とアメリカだけが参加していなかったのである。

だが、現在開催中のサミットに先立って、菅首相がイギリスのジョンソン首相との電話会議した際に、参加を表明したという。5月28日のことである。

この誓約の内容は、2030年までの10年間で「生物多様性の喪失を反転させるための10の行動」を取ることを約束するものだ。抄訳は以下の通り。

1. 生物多様性、気候変動、環境問題全般を、コロナ禍からの復興(グリーン・リカバリー)戦略の中心に据える
2. 生物多様性条約締結国第15回会議(COP15)で採択される2020グローバル生物多様性枠組が野心的に進展させる
3. 生物多様性、陸域・淡水・海洋の劣化、森林破壊、汚染、気候変動への取り組みの縦割り思考を終わらせ、統合的に取り組むよう努力する
4. 持続可能な生産と消費、持続可能な食料システムへの変革にコミットする
5. パリ協定を野心的なものにするよう気候の国内目標を引き上げる
6. 生物多様性の喪失や気候変動への取り組みを台無しにするような環境犯罪を撲滅する
7. 食品、農林水産業、エネルギー、採掘、観光などの業界を横断的に、あらゆるレベルにおいて生物多様性を主流化する
8. 健康と環境の持続可能性に統合的に取り組む、あらゆる政策や意思決定においてワンヘルス・アプローチとする
9. 人々の福祉を地球の保護のために経済と金融を変革すべく、あらゆる資金的・非資金的な手段を強化する
10. 政策の決定と実施を科学に基づいたものにすることにコミットし、同時に科学と同様に伝統的な知識の重要な意義についても認識する

 

今、気候変動(少し前の言葉なら「地球温暖化」)は、随分と知られるようになって、それなりに行動原則も紹介されてきた。しかし、元を辿るとリオの地球サミットで提起された問題だ。そしてこの会議で取り上げられた議題は、実は「地球温暖化」だけでなく「生物多様性」もあった。どちらも森林が密接に絡むうえに、2つのテーマで毎年もしくは隔年の条約締結国会議が開かれている。SDGsなども、両方が含まれている。

ところが、日本では、あるいは世界どこでも同じなのか、生物多様性に関しては関心がイマイチ薄いようである。気候変動は、直接、気象災害など身近な話題に結びつくうえ二酸化炭素削減といった対応は産業経済や生活に響くのに対して、生物多様性は見えにくいからだろうか。

しかし今後は、生物多様性も気候変動と並ぶ二大テーマとしてクローズアップされていくだろう。

果たして菅首相はそのことに気づいているのだろうか。どうも本当に問題を理解しているのか疑念が湧く。気候変動さえ、本音では興味の埒外にあるように感じるが……(それでも世界が騒ぐので、しょうがなしに温室効果ガスの46%削減を宣言してしまった。)。
今回も、官僚の後押しで、ジョンソン首相を喜ばせようと「誓約」に賛同してしまっただけのように感じる。

とはいえ、今後は両2つの環境問題のテーマに沿って経済・金融の変革など本気で行わなくてはならない。国際社会の行動原理に加えられたのだから。そして行動そのものも加速していく(日本的には、加速させられる)だろう。気をつけないと、また日本だけが置いてきぼりになりかねない。

 

2021/06/02

森林林業白書R2の読みどころは「逆転人生」!

森林林業白書令和2年度版が発行された。

毎年白書を読んで、荒探し、もとい、読みどころ、つまり重要な論点を探すのだが、それも飽きてきた。もう、それほどの林業に対する熱意もなく……とはいえ勉強のためにもおいおいやるとして、今年に関しては、一発で指摘できる読みどころがある。

それは、コラム。

Photo_20210602120001

林業用トラックの開発について紹介されている。この点については以下の記事を。

ネットの声が悪路走行用の新型トラックを生み出した!

実は、この白書の原稿は、記事の試乗披露会の際にはできていてゲラを見せていただいていた。とりあえず注目はされているみたいだ。短いので詳しい事情については私の記事の方を読んでいただいた方がわかると思うが、なかなかドラマチックな展開の上に完成したのだ。

新型トラックが旧型より(悪路走行では)性能が劣るところから始まり、それが林業界を苦しめて廃業の危機も起きたこと。そこから自動車メーカーの意地を見せて開発に取り組んだこと……なかなか感動的だろう。

この話、NHKの『逆転人生』で採用してくれないかなあ、と思っているv(^0^)。最近、この番組はネタ切れの気配があるから提案したら飛びつきそうに思うのだけど。誰か、関係者知らない?

 

 

2021/05/28

アイデア勝負か、4パーミル認証制度?

以前、4パーミルイニシアティブと「地中の森」づくり という記事をアップした。

ここで山梨県の研修会の取組を紹介したのだが、なんと、その後山梨県は認証制度を作り上げたようだ。単に「研修」で済まさず、施策に綱崖のだから、立派。

まず「4パーミルイニシアチブ」を改めて説明しておくと、世界の土壌中に含まれる炭素量を年0.4%増やしていけば、経済活動などで排出される大気中のCO2を実質ゼロにできるという考えで、2015年にフランスが提唱した。山梨県は、この運動に参加していたが、果樹園で発生する剪定枝を炭にして土壌に埋めて炭素の量を増やす取り組みを考え出した。そして認証制度を創設したというのだ。もちろん全国で初めてだし、世界的にも認証制度まで広げたのは珍しいんじゃないかなあ。

もちろん山梨県が脱炭素社会に貢献しているという宣伝効果があるが、同時に果実のブランド化にもつなげる魂胆だろう。

認証の対象は、4パーミルに従って作られたモモやブドウなどの県産果実で、生産の開始時と開始後の2段階で発行する。そして
①申請から3年後に土壌炭素量の増加が見込まれる計画の提出
②1ヘクタール当たり1トン以上の年間炭素貯留量を確認
を条件とする。認証を取得した農家は、県が発行する認証ロゴマークをつけて果実を販売できる……という仕組みだそうだ。また農家に、無煙炭化器など専用機材の購入費用を補助するようにもする。

問題は、どのようにCO2削減量を計算するかだろうか。農家が木炭をどれだけ土中に埋める(散布?)したかの計測も裏付けが必要かも。

もちろん、現実にどの程度のCO2削減効果があるか怪しいし、前回も記したが、炭にするなら埋めずに熱利用を考えてもらいたい。むしろ効果としては、土壌改良効果の方ではなかろうか。炭によって土壌バクテリアがよく発達するから。

ユニークであることは間違いない。だいたい4パーミルイニシアテチブを日本で注目している人・組織は数少ないだろう。

本来は木材関係でもこの手の発想を取り上げてもらいたいものだ。森林内の土壌に枝葉とか落葉を溜め込むとかするだけなら簡単だ。農業以上に意味がある。

もはやCO2削減手段と、その実行を自身のアドバンテージとするアイデア勝負の時代なのかもしれないなあ。

 

2021/05/19

CO2排出46%削減への道・林野庁編

菅総理がいきなり宣言した、CO2の排出を13年度比46%削減(2030年度)。これまでは26%だったのだから異常な上方修正だ。

もっとも目標を掲げて、そこへ至る手段を考えるというのは悪くないと思っている。いわゆるバックキャスト思考になるのだろうが、未来の目標に向かって今やることを決める方が真剣味が増す。現状を見ながら、どこまで積み上げられますかねえ、なんてうだうだ言っていると進まないのは目に見えているのだ。
とはいえ「私は目標を決めた。後は任せた」式のリーダーシップほど怖いものはない(^^;)。官僚の皆さんは、泣きながら右往左往しているだろうなあ。

というわけで、林野庁も森林吸収量の目標を約3割引き上げることにしたらしい。政府はこれまで「26%減の目標に対して森林による吸収は2%分」としていたのを2.7%分まで引き上げる。森林吸収量をCO2換算で約1000万トン上積みし、約3800万トンとするというのだ。いやあ、思い切った数字だが……。

しかし、森林という生命体の吸収量を人間が勝手に上げるにはどうしたらいいのか。それを人工林を伐採して再造林することや、木材利用をより増やすことで確保するという。再造林は、現状の年3万ヘクタールから同7万ヘクタールまで拡大する。

この施策は、その大前提に「年数が経過した(50年~60年)人工林はCO2の吸収量が減少するから若木に植え替えた方がよい」という考え方がある。
これが嘘っぽい。なぜ、そうなるの? だいたいスギやヒノキの寿命は通常でも200年以上ある。50年60年ぐらい若い木で生長量(CO2吸収量に相当)が落ちるとは思えない。最低でも100年ぐらいまでは生長旺盛のはずだ。伐るなら300年以上の天然記念物級の大木だけにすべきだろう。

それに同じ面積に育つバイオマス量は、どんな森でも一定であるという法則からすれば、間伐はもちろん皆伐して植え直すことも、吸収にはならない。むしろ現時点で炭素を貯蔵している森を伐採したら、その後同じ量だけの炭素を蓄えるまで最低50年はかかることになり、その間はCO2超過だ。そして、その後も吸収量は増えない。単に元にもどるだけ。むしろCO2を排出してしまう。

いや伐った木を木材として長く使うことで保管すれば、その間は炭素を貯蔵していることになる、と反論が来そうだが、それなら国産材は最低でもバイオマス発電と製紙には回してはダメ。燃やせば瞬時に炭素は大気中にCO2として出て行くし、紙もほとんどが数年以内に破棄されるだから。この二つを除くと、国産材の用途の3分の1は消える。木材需要全体ならば、炭素貯蔵に回る分は半減してしまう。それに合板だって50年も使い続けるだろうか。国産材の合板用途割合は、2割ぐらいある。
肝心の建築材も、以前日本の家は29年で建て直すという統計もあるが、これと比べると60年伐期の半分以下ではないか。

再造林に植えるのも、生長が早くCO2の吸収能力が高い「エリートツリー」だというが、品種開発から苗木を供給できるようになるまで10年程度かかるよ……。ついでにいうと無花粉スギの苗木だって求められている。無花粉エリートツリーという難解な品種を作り出さないといけない。

ようするに人工林の伐採でCO2の吸収量を増やすというのは、ほとんど絵空事だ。

理論的にも、森林面積を増やす以外に森林がCO2を吸収して貯蔵する量は増えない。できることと言えば、現在の皆伐地のうち再造林しているのは2~3割というから、まずはここをしっかり押さえることだろう。ほとんど焼け石だろうけど。



2021/05/17

「流域治水関連法」を知っているか

なんと5月中旬で梅雨入りしたそうだ。あまり大きく報道されていないが、流域治水関連法が先月28日に成立している。今年11月までに順次施行するそうだ。正式名称は「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」、かな?

また林野庁の「豪雨災害に関する今後の治山対策の在り方検討会」も、治山対策に関する報告書をまとめた。

どちらも昨今の激甚化する気候災害を意識したようだ。それだけに、ざっと目を通しただけだが内容はよく似ている。

まず前者は、河川法など関係する法律9本を一括で改正している。調べてみると、9本とは特定都市河川浸水被害対策法、河川法、下水道法、水防法、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律都市計画法、防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律、都市緑地法、建築基準法だった。
かなり大規模な改正だろう。ただ全部、国交省関係だけど(^^;)。

具体的には、自治体や企業、住民が協働して河川の流域全体で治水の実効性を高めることを謳い、浸水被害の危険がある地区の住宅や福祉施設の建築や盛り土を許可制・届け出制とするなど規制も伴う。そして避難対策が柱だ。これまでのような、ひたすら堤防だとか建造物で自然の力を押し込めようとするのは諦めたようだ。

またリスクの高い河川流域に農地など河川沿いの低地を「貯留機能保全区域」に指定して貯水機能を持つ場所を整備する。河川の氾濫をなんとしても防ぐというより、あふれても遊水池に受け止めることで、被害を最小限に抑える発想を取ったのだろう。

江戸時代の水害への対処法は、基本的に低水管理(あふれる水は流して貯水、人は避難する)だった。それが明治になって高水管理(堤防やダムで増えた水を抑え込む)へ転換した。被害は一切出さないゾ、という発想だ。ところが昨今の激化した水害は、もはやコンクリートを使っても抑え込めなくなっている。そこで、再び低水管理を取り入れるようにした……ように感じる。

これは治水に関して法律というより方針そのものの大転換ではないか? 役人に聞いたら「そんなことない、昔から両輪でやってきた」というに違いないが(笑)。

 

後者の林野庁の検討会では、「流域治水」に加えて山の保水力向上が、流域全体の洪水被害抑制につながると指摘している。これは提言だが、今後法律改正に結びつくことはあるのかどうか。

面白いのは、「木の本数や高さ、密度などを調べ、対策の必要性が高い地域を把握する」という発想か。
また森林整備と組み合わせて、土壌を流れにくくする「筋工」や「柵工」などを行うというのは、まだ崩れていない山に、この手の工事を行うことになる。ほかに小規模な治山ダムを階段状に設けるとか、砂をためる治山ダムを設置するべしとか……治山ダムとあるが、これは国交省からすると砂防ダムのことだろうなあ。山の景観としては喜ばしくないが……。

さらに流木になる危険性の高い木を事前に伐採することを提唱している。森林経営管理法にあって災害等防止措置命令の適用のことかもしれない。

とまあ、いろいろ想像してしまう。もはや気候変動に伴う豪雨災害には、従来の力の対策では間に合わないと方針転換をしたのか。それは結構なことだが、砂防だ治水治山だと言葉の違いを乗り越えて取り組んでほしい。

7_20210517153801
生駒山にある、コンクリート部分を木材で覆った砂防ダム。

 

2021/04/30

国立公園巡る林野庁と環境省の連携

国立公園の運営に関して、環境省と農水省・林野庁の連携が進んでいるそう。

具体的には、日本の国立公園の約6割(約130万ha)が国有林(日本の国立公園は土地所有に関係なく指定できる制度なのである)のため、これまで所有者としての林野庁と公園として管理する環境省がなにかと齟齬を来していたのをちゃんと連携しましょう、さもないと保護はもちろん利用ができないよ、ということらしい。まあ、目的としては後者に比重があるのだろう。狙うは世界水準!ということで、世界国立公園ランキングトップ25等へ選ばれることを目標にするとか。ようするにコロナ禍後を見込んで、インバウンドの再来に期待しているわけだ。もちろん、連携の模索は、コロナ禍が始まる前からの課題だろうが。

これまでも両省庁は、「国立公園満喫プロジェクト」や「日本美しの森 お薦め国有林」といった利用において連携してきたが、今一歩進めるということか。

そこで、重点地域(世界遺産クラスの自然または誘客ポテンシャルのある地域)として知床、日光、屋久島、中部山岳、西表石垣の5つを選んで、まず実施する。内容には

〇自然を厳格に保護⇒ 両省の制度を組み合わせた保護の徹底
〇自然に感動する体験機会を提供(自然体験フィールドやガイドの提供、入場時のレクチャー、入域料徴収、上質な滞在宿泊施設、利用者数や交通手段のコントロール、施設の脱炭素化)
〇管理者の顔の見える管理体制

とまあ、そんな連携項目を並べている。そのために両省庁職員の合同研修・人事交流や、必要な場合は所管換えも含めて検討する……のだそうだ。

ちなみに重点地域に次ぐ個別の事業を行う「モデル地域」を11ヶ所も選んだ。
阿寒摩周、支笏洞爺、白神山地、磐梯朝日、上信越高原、妙高戸隠連山、白山、吉野熊野、大山隠岐、足摺宇和海、阿蘇くじゅう

よろしいのではないですか、としか言えない(^o^)。

私の記憶で両省庁が絡んでいたのは、奈良県の大台ヶ原。吉野熊野国立公園に入るが、所有は国有林と一部奈良県有林だが、シカ害が酷い。そこでそれぞれが防止柵づくりを行っていた。

297

こちらは環境省の柵。何種類かあるが、わりと広範囲に張っている。全体に丈夫な造り。

 

307

こちらは林野庁。パッチディフェンスに挑戦だ。小さな柵をいくつも張って、シカ害の分散と、シカの警戒心を呼び覚ます方法か。

どちらが効果あるか、試行する点では面白かったが……。ちなみにシカそのものの駆除は環境省所管のよう。各地にくくり罠を仕掛けていた。この山には観光・登山客が多いだけに、景観にも配慮しなければならず、結構大変そう。観光客の通るところで、シカを駆除できない。木道を設けているが、それも不評だったりする。

299

さて、保護と利用の両立という、古くて新しい取組に、一石を投じるかどうか。

 

2021/04/06

奈良県フォレスターアカデミー開校式

本日は、奈良県フォレスターアカデミーの開校式&入学式。

私は、何の資格なのか来賓として出席する機会を得た。ある意味、感慨深い。2年間、私も参加して、みっちりと奈良県の林政の方向を議論した上で開校した学校だから。その点からは、一つの仕事の集大成ぽくもある。

しかし、学生は20人。しかも学校は新設ではなく旧吉野高校の校舎の一部を間借りというか、分割しての使用。(吉野高校は合併して奈良南高校となり、吉野校舎も一部使うので、丸ごとアカデミーではない。)だからこじんまりとした式典かと思ったら、県会議員ほぼ全員に、多くの市町村首長、林野庁……と来賓だけで学生の何倍か(笑)。

式典の一部を紹介すると、

6_20210406225801

名誉校長の、アラン・E・コッハー(スイスの元リース林業教育センター校長)のビデオメッセージがあった。驚くべきは、日本語だったこと(笑)。たどたどしいとはいえ、ちゃんと聞き取れるし、しかも、かなり長い。練習したんだろうなあ。お見事。

そして、知事の挨拶だが。

5_20210406230101

こちらは本人が「つい力を入れてしまった」という内容であったが、私が心に引っかかったところ。

「本校は、林業の技術屋さんを養成するのではなく、森の哲学を学んでもらうところ」

ここは、肝だ(^o^)。哲学と言ったら重いと思うのなら「考える人」である。森のことを深く考えて実行する人。言われた作業をする人ではなく、森にとって必要なことは何かを考えて、考えて、ぶれずに実行する人が生まれてほしい。

学生は、ほぼ半分が県外者。関東圏も多いし、岡山とか熊本出身なども見かけた。年齢的には30代が多いが、それ以上もいる。どんな学生がいるのか、本当はインタビューするつもりだったのだけど、ちょっと場違いだったので今回は諦めた。そのうち、どんな経歴の人が、どんな思いで入学したのか聞いてみたい。

最後の記念撮影で、知事から一緒に写ろうと言われたので、私が?と思いつつも一緒に学生らとともに入ってしまったよ(笑)。

ちなみに学校なんて「器」にすぎないというのが私の持論だ。ようやく「器」はできた。でも器が林政を仕切るわけではない。中に入れたものが、2年後美酒になるのか腐った水にしてしまうか。願わくば、美酒で乾杯したい。

ちなみに司会は、ミス緑の女神。選定されたばかりの小林優希さんかな。もしかして初仕事? 遠くて、よくわからない(^o^)。

Photo_20210406232401

より以前の記事一覧

July 2021
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

森と筆者の関連リンク先