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森と林業と田舎の本

2019/10/14

役所用語と河畔林の伐採

台風19号の洪水状況を空撮映像で見ていると、河畔の樹林帯もかなり水没しているのが確認できる。

つい河畔林は洪水対策に有効かどうか考えてしまった。昔から河畔には竹を植えたりして堤防補強につなげたりしたものだが、河川沿いに樹林帯があることで多少とも水があふれるのを押しとどめたかもしれない。一方で、逆に水を滞留させて流れを悪くすることで越水させる元にもなる可能性もある。ただ河川に沿って森林があることで動植物の生息地として需要な役割を果たすのはまちがいないだろう。とくに広葉樹が多い河畔林は、貴重な生態系を生み出しているはずだ。

もちろん今回の災害は、その雨量が記録的で、河畔林どころか堤防やダムだってほとんど無力だったといえるが……。

そんなときに、こんなものに目を通す。

東北森林管理局の「30年度地域管理経営計画及び国有林野施業実施計画」である。この中の配布資料に目を通していて、興味深い文言が目に入った。

ここでは「渓畔林」という言葉を使っている。そして森林生態系ネットワークを築くために重要だとしている。

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だが、別のページをよく見ると、ちょっと引っかかる文言があった。

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「渓畔林は適切に保全」とある後に、「有用広葉樹がある場合、周辺の人工林の伐採の際に一部利用することも検討」。さらに「間伐等を繰り返すことで大径木育成」「林道沿いの大径木は人工林の伐採の際に利用」なんてある。
なんだ、伐る気満々ではないか。間伐とか大径木育成とか言葉でごまかしているけど、これは河畔林の広葉樹材を得るためというのがミエミエである。「大径木育成」がいつのまにやら「大径木利用」に置き換わっている。言葉を微妙に変化させているところが怪しい。なぜ大径木を育成しようと書きつつ、大径木を伐るのか。
「伐採指定状況」でも、皆伐地の下斜面に当たる沢筋を「間伐」するというが、河畔林の防災能力を落としかねない。

国有林では、スギやヒノキは価格下落で儲からないから大径木の広葉樹を伐りたい願望は昔から強い。大径木の広葉樹材は非常に高値がつくからだ。スギの数倍、十数倍の価格も珍しくない。だから伐りたいのだ。
そもそも国有林の多くが広葉樹林でもある。ただし、天然林を伐ると言うと世間の反発が出る。そこで「渓畔林」という言葉で、その中の大径木広葉樹を伐ることを推進しようとしている……ように読める。しかし河畔林を木材生産する場とすること自体が無理があるのだ。

間伐といえども伐るために重機を入れたら林地を荒らすし、堤防機能を弱めかねない。川の近くだから増水時に水に浸かる可能性もあり、流木発生源になることもあるだろう。伐採跡地が災害を発生させる心配はないだろうか。

こうした役所用語で綴られた計画などは、よほどよく読まないと真意をつかめない。

2019/10/13

森林環境譲与税の配分

いまだ台風被害の全容はつかめていないが、今後は復興の問題も論議されていくだろう。
ちょうど先日記した「超学際的研究の時代…」とつながるところがあって、水害を自然科学的に見るだけでなく、災害許容度や災害後の復興といった社会的な面まで目を配る必要が出てくる。

そんなときにナンだが、森林環境譲与税の配分が始まっている。21年度までは、9月と翌3月の2回に分けて譲与することになっているのだ。今回は総額約100 億円(市町村約80億円、都道府県約20億円)。というわけで、9月30日に第1回目の譲与が行われた。ちなみに配分基準は、5割を私有人工林面積、3割を人口、2割を林業就業者数とするため、人口の多い(森林は少ない)都市部ほど額が多くなるという妙なことになっている。 

総務省が、9月30日に森林環境譲与税を各自治体に配分した額を見ると、最も多いのは横浜市の7104万4000円、次いで浜松市の6067万1000円、 大阪市5480万3000円の順だった。一方で配分額が少なかったのは、沖縄県の渡名喜村(8000円)、北大東村(1万3000円)、粟国村(1万4000 円)。
これを2倍にしたのが、だいたい年間受け取る金額だと言ってよいだろう。ただし、当面は借入金で払っていくため、24年度からの森林環境税の徴収を始めるまでは少なめだ。さらに借り入れ分を返済(10年くらい先になる予定)し終えて満額になると、ざっと6倍ぐらいになるのではないか。つまり横浜市は約4億3000万円ぐらい。渡嘉敷村は4万8000円(^^;)。

こうした金は、森林関連につながることに使うとなっているが、実際の縛りは弱い。こじつけたら何でもOK。だから森や木に関するイベントとか木造建築にも使えるわけだ。

ならば、この譲与金を今回の災害復旧に使ってもよいのではないかと気づいた。山崩れも倒木も、みんな森林絡みだし。洪水被害だって河畔林整備とつなげられる。ちょっとした都市部を抱えているところなら数百万円はあるはず。多少とも足しにはなる。場合によっては、都市部が上流の被災した山村地域に提供する手もあるかもしれない。ま、8000円ではどうにもならないが……。

ほかにふるさと納税なども、こうした被害地が復興のために募集する手として使える。そもそもふるさと納税は、税金の配分を変えるのが趣旨であり、新たな税収アップ策ではない。言い換えると、ほかの自治体の税収をかっぱらう施策だ。泉佐野市のような理念も知恵も誇りさえないえげつない自治体が稼ぐためにある制度ではない。

被災地が利益ではなく復興のために求めるのは、趣旨に沿っているだろう。

 

2019/07/10

MMTは将来への先送りか、先食いか。

学生時代の記憶だから何年前だろうか。林学の授業で戦後の林政を学んでいたら、「将来の蓄積」を先食いする理論が登場したことがある。うろ覚えだけど、紹介しよう。

戦後は、戦災復興と高度経済成長による木材不足が顕著で、しかも日本の山ははげ山だらけ。一方で、そのはげ山に大造林が繰り広げられたか人工林面積は激増しており、それらが育つ将来は森林蓄積が非常に増えることが予想?期待?されていた。

木材不足対策として外材輸入が解禁されたが、やはり国産材業者にとっては日本の木がなければ利益を得られない。そこでもっと山の木を伐りたがっていた。そんなときに登場したのだ。将来は非常に多くの蓄積が生まれるのだから、その分を先に伐って木材を得ても、日本の国土の森林は減らないというわけだ。私は首をかしげつつも、十分に理論を消化できなかった。

果たして、こんな理論で政策が実行に移されたのかどうか知らない。ただ、今からすると森林蓄積は増えすぎたと嘆いていてるのであるが……。もっとも、この理論もおかしい。当時伐ろうとしたのも残された太い木であり、植林したての細い稚樹ではないのだから。生態系も生物多様性も無視しているし、森林資源は単なる足し算引き算では計れないものである。
素人的に考えても、将来育つ分を先に収穫してしまうことがよいこととは思えない。若いサラリーマンが、(将来得られるであろう)退職金分の金を先に使ってしまったら、どうなるのか。

 

なんだか同じような理論が経済界に登場している。「MMT」だ。アメリカ発の経済理論Modern  Monetaey  Theory=現代金融理論、現代貨幣理論である。

政府が自国通貨建ての借金をいくら増やしても財政破綻せず、インフレはコントロールできる。もっと借金して財政出動すべきだ

ようは赤字国債をどんどん発行して金回りをよくしろ、という理論である。デフレと財政赤字が経済回復の足を引っ張っている中で、もっと金を出させるために考え出されたように見える。
国債という借金がいくら増えても財政は大丈夫、借金は永遠に先送りできる、というわけだ。国は永遠に続くから、借金は永遠に先送り。あるいは(将来の)自国民なら踏み倒しても構わない?という発想か。とにかく、今の自分を豊かにしてくれという欲望が考え出すのだろう。

そんな過激な主張が、日本でも広がりつつあるようだ。いや、そもそもMMT自体が日本の財政事情をモデルにしているように感じる。「日本はあんなに赤字国債を発行しているのに財政破綻しないではないか。インフレどころかデフレではないか」と。

耳障りはよい。借金し放題を理論的に認めてくれるのだから。1000兆円を超える借金なんて返せるわけないから、永遠に先送りして、今の豊かさを享受しようよ、という悪魔のささやきのように思える。

なんか、リーマンショックにもつながったデリバティブ金融商品にも似ている気がした。債権を分解してリスクを取り除いたりリスクだけを集めた商品を作り上げそれなりのメリットをつくって販売すれば、どんな低所得者でも家を建てられる……というサブプライムローンみたい。今の所得が少なくても借金をし続ければ金回りをよくできるよ……。

日本の林業という小さな舞台で考え出された理屈は、世界経済まで応用できる優れたものであったのか? でも森林を先食いしたら、回復するまで数十年数百年かかる。一方で経済が破綻しても、その被害は人間社会だけで終わるか。さて、どうなるやら。

 

2019/07/08

日本の林業は、ESG投資かダイベストメントか

ESG投資というのが、ようやく日本で注目され始めた。これは環境、社会(責任)、ガバナンス(統治)を重視した投資である。

環境や社会に与える影響や、法律などのルールに従った事業であることを投資の基準とするもので、投資も、そうした分野に目を配りながら案件を選ぶことで社会をよくしていく原動力にする……という意味がある。

欧米では森林(林業)に対する投資も、このESGに適合しているという。つまり林業は環境をよくし、社会責任を果たし、企業内統治もしっかりされているものと見られているのだろう。森づくりは地球環境(生物多様性、地球温暖化防止など)に寄与する産業と認められている。

日本では、森林への投資などゼロに近い。投資してもリターンがほとんど見込めないからだ。莫大な税金(補助金)を投入しても、ブラックホールのように吸い込んで外に何も出さないからだ。注ぎ込んだ税金以上に稼いだ例があるのなら教えてほしい。
だが、ESG投資の理念からすれば、日本でも森林が投資対象にならないか……と思っていた。長期的に見れば社会貢献や排出権などの面からプラスになる要素がある。チャンスだ! と思っていた。


そう期待していたのだが……世界はさらに進んでいる。

今や「ダイベストメント」だそうである。これは、ESG投資の裏返しで、「投資撤退」を意味する。環境や社会に悪影響を与え、ルールを守らないところには投資しないという方向性だ。地球環境や社会、健康を脅かしかねない企業への資金供給を止め、持続可能なビジネスへの転換を促す。規制強化などで業績が将来悪化する恐れがある企業のリスクを指摘するという意味もある。

世界でダイベストメントを表明した機関数は900を超えるとされ、その運用資産総額は7兆ドル(約800兆円)にも上るそうだ。しかも、これは急速に膨らんでいる。なんたって1年前は6兆3000億ドル(約700兆円)足らずだったのだ。ぐいぐい伸びていることを感じる。

今のところ、ターゲットは石炭火力発電やタバコだそうである。結構な力を持っていて、ダイベストメントの対象に選ばれると、企業は事業を展開するのが不可能になる。かなりの数の石炭火力が撤退に追い込まれた。また古くは、アパルトヘイトを行う南アフリカにダイベストメントを仕掛けられて、南ア政府はギブアップしている。

この理念からすると、日本の林業はダイベストメントに相当しそうだ。だって、明らかに森林環境を破壊し、地域社会を破壊し、違法伐採が横行しているからである。もともと投資はなかったけど、今後も投資してはダメな案件というわけだ。

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日本の林業は、世界の潮流であるESG投資が回ってくる前にダイベストメントの波に飲み込まれてしまうのだろうなあ。

 

 

2019/07/03

Wedge記事のネット公開と林野庁長官交代

Wedge7月号に私が執筆した「横行する盗伐、崩れる山林 林業県・宮崎の」がネットにアップされた。

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ぜひ、目を通していただきたい。こちらが、本筋の記事である。ちゃんと裏事情まで触れている。盗伐問題は、単に例外的な悪質業者の仕業ではないことを納得してもらえるだろう。さすがに記事には書かなかったが、宮崎県の木材生産のうちの何割かは違法状態だという指摘もあった。そして業界の重鎮まで…。

 

ところで、折しも林野庁長官の交代人事が発表された。

牧元幸司長官が農水省の農村振興局長に移り、本郷浩二次長が7月8日付けで長官に昇格、後任次長に農村振興局の太田豊彦次長という布陣になるらしい。
しかし、牧元氏が長官になったのは、昨年7月。つまりたった1年しか経っていない。任期の短い官僚組織の中でも、さすがに1年は珍しいのではないか。とくに長官である。それも上がりではなく、長官経験者が農水省の局長に移るというのは、更迭人事ぽい。

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これは国会筋から流れてきた噂だが、どうも宮崎県の盗伐問題がひっかかったらしい。そもそも牧元氏は、2011年3月から宮崎県の副知事に就任しており、盗伐が頻発するようになった木材増産策を進めた張本人である。
14年には林政部長になっているが、これも増産政策の要。16年に内閣官房内閣審議官、そして17年に次長、18年に長官。

まあ噂にすぎないが、多少とも盗伐問題が人事に響いているとしたら、私としては喜ばしい。国会答弁で盗伐を擁護(「誤伐と区別がつかない」など)した長官として私は記憶している。だいたい誤伐だって違法木材だよ。

先の沖長官があまりに期待外れだったので、牧元氏には多少期待した。東大法学部出身の事務官として違法行為にはもう少し敏感かと思っていた。だが、2倍3倍の期待外れだった。今後はどうなるかね。。。。もう期待はしないが。

 



2019/06/11

外資が買収した森林よりも

また林野庁が「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」を発表している。

昨年1年間に外資が購入した地目・山林を集計したようだが、30件・373haだったそう。平成18年からの合計で223件、2076haという。(ちなみに平成18年とは2006年だ。来年から平成~令和なんてまたがった発表されたらわからんようになる。)

毎度ながら、この調査結果がしょぼく感じるのは、取得した森林面積が0,003ha~0,006haという物件が結構多いこと。これ、どれぐらいの面積だ?

0,1haは10アール、0,01haは1アール、1アールは10メートル四方。0,003haとは、その3分の1以下。たとえば10メートル×3メートルの土地ということになる。何坪か。。。ああ、もう換算するのが嫌になった。

ともあれ下手な宅地面積より狭い。木が何本生育しているのか。これを計上することの虚しさよ。

 そもそも一時に「外資が日本の森を奪う」と狂奔した輩がいて、その対策に始まった調査である。しかし、今やまったく声が聞こえてこない。どんな結果が出ても興味がなくなったようだ。

 

一方で、国有林法改正の審議では、「外国資本の参入の可能性」が問われていた。それに対して「外資は、日本の森なんかに興味ないでしょ」という答弁が出ている。おい!

20190611_135940(毎日新聞6月6日)

この記事では、かつて外資(中国)が、日本の離島の森林資源を購入した例を上げている。その中国人は、しっかり協議に応じて紳士的であったようだ。日本の議員も、もう少し真摯に答弁しようよ。

2019/06/09

農産物輸出1兆円の大嘘

ここ数日、自衛隊がイージス・アショアの導入で、設置場所の選定でとんでもないミスが見つかったというニュースが騒がれている。
果たして本当にミスなのか、最初から秋田にしようという心づもりで揃えた資料に無理があったのか。なんとなく、後者ぽい臭いがする。

というのも、同じことが幾つもあるからだ。

たとえば「林業の成長産業化」の一環でよく唱えられるのは、輸出である。昨年の木材輸出は、前年比7%増の351億円とまた増えた、と誇らしげに白書に書かれている。

同じように「農業の成長産業化」も唱えられている。そして輸出額の目標は1兆円なのだ。それが伸びている。2012年に4497億円だった農産物・食品の輸出額は昨年に9068億円まで増えたという。1目標の1兆円が見えてきた、これもアベノミクスの成果だ、世界中に日本食レストランができ、和食そのものが世界無形遺産に指定されたおかげで日本の農産物の優秀さがよく知られるようになった、と安倍総理の演説の得意部分でもある。 

普通、日本の農産物や食品の輸出が伸びていると聞けば、何を想像するだろうか。米や野菜は無理だな。流行りは和牛に日本酒やワイン? リンゴやイチゴなど果物? 
ところが日本農業新聞の記事によると、政府が発表する統計では何が輸出されているのかわからない、というトンデモな事実が判明した。 粘り強く日本農業新聞の記者たちは追いかけたのだ。渾身の調査報道だろう。


ようやく判明した品目で、トップを占めたのは798億円の「その他の調整 食品のその他」なのだ。その他のその他???

せっかくだからランキングを並べよう。

1 その他の調製食品のその他 798 
2 パン、ケーキなどのその他 300 
3 清酒 222
4 ソース用の調整品などのその他 194 
5 紙巻きたばこ 160 
6 ウイスキー 150 
7 水のその他 146 
8 リンゴ 140 
9 ビール 129 
10 スープなど 115 

末尾の数字は輸出額。億円単位である。

清酒とウイスキー、ビール、リンゴ以外、なんだ???とハテナマークのつくものばかり。だいたい上位に「その他」が多すぎる。パンの材料の小麦などは輸入品だし、調整品というのは原材料は輸入しているものだろう。調味料も同じ。タバコはかろうじて日本で栽培しているのかもしれないが(輸入も多いはず)、ウイスキー、ビールだって大麦やホップには輸入も多い。「水のその他」なんてなんだ? ミネラルウォーターとかジュース類だろうか。これが農産物なの?

実は細かく見ると、野菜種子、小麦粉、みそ、ごま油、ゼラチンなどの加工品も大半が輸入農産物が原料。メントールなどの有機化学品(76億円)や化学工業生産品(17億円)、さらにゴム製品やココア・同調製品などもはいっているそうだ。加工食品の多くは輸入原料だから、日本の農業とはまったく関係ない。

まるで統計偽装である。農産物を可能な限り拡大解釈して、輸出額を増えるように見せかけたのか。そもそも財務省の貿易統計の数字をいじっただけで中身に興味がなかったのか。

実は林産物にも似たケースは聞く。製材や合板には原料が外材のものもあるのではないか。また中国やベトナムに輸出した国産材が、向こうで加工して木工品(家具や建具など)になって日本にもどってくるケースもあるはずだ。それも輸出統計に入れてしまうと、日本の木材が世界で欲せられているように勘違いする。逆に漆やコウゾ・ミツマタなど和紙原料はほとんど輸入だが、林産物扱いだし。

本当は、こうした調査をするのが業界紙の真骨頂であるべきなのだが、はたして林業界の業界紙は……?

農業も林業も、全然、成長産業になっていない。偽装統計もここまで来ると、国力の実態を偽装する国家になってしまう。

 

 

2019/06/08

イオンのトレーサビリティ・ウナギ

イオンが、2019年6月8日より新しいウナギ商品を発売したというニュースがあった。名付けて「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼」。

どこが新しいんや! と突っ込んだ人も多いだろう(笑)。

実は、ウナギ養殖に欠かせないシラスウナギを、正式許可を得た採捕団体が浜名湖で採捕した正規ルートで購入し、それを指定養殖業者が他のルートから仕入れたシラスウナギと混ざらないように育てたウナギだという。いわばトレーサビリティのあるウナギなのだ。ちなみに種としてはニホンウナギ。一時期増えていたヨーロッパウナギではない。

なぜこれが新商品になるのか。知っている人は知っている、ウナギは今や世界的な絶滅危惧種なのだ。それも、ほとんと日本が採りまくったせいだ。ウナギをこれほど好きで、高値で取引する国民に日本しかない。絶滅危惧されるほど減ると、より価格が上がって、それを狙って採りまくるという情けないことをしている。その中には、かなり違法性の高いものが混ざっている。

2015年漁期の場合、国内の養殖場に入ったシラスウナギは18.3トン、そのうち輸入された量が3.0トンなので、国内の採捕量は15.3トン。ところが適切な採捕と報告された量は全国総計で5.7トンにすぎない。さらに輸入された3.0トンのシラスウナギは、ほとんどが香港から。香港で採れるわけないので、台湾や中国本土から香港へと密輸された疑いが非常に強い。

こうした事実をまとめると、2015年漁期に国内の養殖池に入れられたシラスウナギ18.3トンのうち、約7割にあたる12.6トンが、密輸、密漁、無報告漁獲などの違法ウナギなのだ。

だから、今回のイオンが合法であることをトレーサビリティをつけた商品を開発したのは、大変な努力をしたことになる。おそらく日本で初めてだろう。

……とは言っても、結局は絶滅危惧されている種であることに違いはない。それに、イオンではこの商品以外にも多くの違法性の高いウナギ商品を販売している。そこで2023年までに販売するウナギを、100%トレーサビリティのあるクリーンなウナギにすると発表している。

まあ、ザル法のクリーンウッド法ででたらめし放題の木材よりましか。イオンに木材の流通も扱わせた方がいいんじゃないの。

 

そこで私もイオンに直行(^^;)。さて、「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼」は売っているか。探したのである。

だが……あったのは、鹿児島産やら愛知産やら、いかにもグレー産地ばかり。

あげくに見つけたのがこれ。

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なんと! インドネシア産ではないか。ただ、下に小さくシラスウナギょき採補、養殖、加工まで一元管理しているとトレーサビリティを売り物にしている。でも、これ……インドネシアのウナギというのはビカーラ種という、また別のウナギを使っているのではないか。これまで養殖に成功していなかったウナギで、ニホンウナギやヨーロッパウナギが絶滅危惧状態になったため、新たに目をつけられて乱獲が始まっている種である。

なんかローズウッド(紫檀)が取引禁止になったから、アマゾン・ローズウッドを扱いだしたどこかの業界と似ている……。



2019/06/06

「改正国有林野管理経営法」の目的は何か

国有林野管理経営法の改正案が参議院で可決して成立した。

これまでの林業関係の政策としては、この改正法に対する反応はわりと大きくて、一般紙の一面や大きな特集紙面で記事となった。で、私のところにもいろいろな声が届く。

私はすでに記事化もしたとおり意見は述べているが、改めて考えるところもある。これまでアチコチから得られた情報を元に、何を狙っているのか考えてみた。(裏情報もあるから、厳密な証拠は示せないよ。)

まず、業者視点で見ればこの“改正”は喜ばしい。民間業者が国有林に参入して大規模に伐採できるようになったのだから。
これまでの短期契約で面倒な書類をいっぱいつくって入札することを考えれば、一度契約してしまえば格段に楽になる。しかも長期だから経営の目算が立ちやすい。この場合、1年で20ヘクタールずつ皆伐させる(10年で200ヘクタール皆伐する)計画らしい。

次に林野庁側は、最初嫌がっていた。森林経営管理法は民有林を伐採業者に開放する手だてだったが、庁の管理下の国有林は手を付けさせない思いではなかったか。それを未来投資会議の鶴の一声?で開放させられたように感じる。何とか骨抜きにしようとしていたように思う。

だができあがった法案の条項をよくよく読むと、実は全然管理を手放していないわけだ。細かく施業内容を国側で決めて契約を結ばせる。つまり、骨抜きに成功したのではないか。民間に国有林を自由に経営させるのではなかった。むしろ国の労働力としての民間業者の囲い込みのように見える国の森林保育管理部門の労力は減少の一途で消滅寸前。そのため使える労働力を確保するという労務対策だ。民間でも林業就業者は減り続けているのだから、先に長期契約で縛りつけるのだ。

……というのが私の読み。

森林経営管理法では、委託を受ける民間業者は、わりとその森林をどのようにするか自分で決定できる要素があるから、もし性善説に立てば、業者が理想の森林経営を行うことができる。しかし今回の国有林の場合は、そんな自由度がない。

これで国有林周辺の民有林を手がけられる業者はますます人手不足になるだろう。

とはいえ、国には管理の手が足りないということは、監視もあまりできないということで、少々暴走してもバレないかな? 10年後に返すときにどんな状態になったか初めて目にするケースも出てくるだろう。

 

これで国有林の借金を返せるという声もあるが、無理だろう。そもそも国有林の借金は3兆円を超えたのを、全部一般会計に付け替えている。その時点で借金は消えたのも同然だ。1兆3000億円だけは国有林野からの収入を当てにしているというが、これも嘘くさい。返す気などないと見た方がよい。
なんなら林野庁の返済計画を見たらよい。年々、あり得ないほどの金額を債務返済額に繰り入れている。平成29年度まで90億円だったのが、30年度からいきなり200億円に跳ね上がり、その後も増額。平成60年には470億円まで増やせて返済が終了するという見込み(夢物語)だ。まあ令和に変わったから御破算かな?

いずれにしろ、今後は政策的に国有林も民有林も伐られて、全国にはげ山が増えるだろう。本当に林業の振興を考えるのなら、その時に森林が残っている地域こそ可能性がある。森が木材がなくなった、と言われ出した時代に、森林資源を保存していた山こそ、本当の意味で宝の山となる。

 

 

 

 

2019/05/31

国有林の再造林は「大丈夫」か?

国有林野管理経営法改正案は、衆議院も通過していよいよ成立しそうだ。

そこで議論の的となっているが、私もYahoo!ニュースに書いたような「再造林が担保されているのか」という点と、原則10年、最大50年という長期の樹木採取権が必要か……という点に絞られているように感じる。

ただ、どうも法律論争に陥っていて、伐採業者に造林を植林しなくて天然更新という手法もあるのに義務化できるのかとか、苗を植えさせたら所有権が移ってしまう……といった意見が目立つ。あるいは伐採者側から見て使いやすい制度か、真っ当な利益は出るのかという点から是非を論じる人もいるだろう。

私自身は、そんな小手先の法理論に興味ない。業者の都合なんかどうでもよい。ようは、ちゃんと伐採後に森林はよみがえることを誰が担保するのか(その前に大面積皆伐するなよ、という気持ちが強いが、その点は別とする)という点に尽きる。法律の文面や整合性等の理屈ではなくて、伐った跡地を森にもどせるのか。それを誰が責任持ってやるのか。失敗した場合の責任は誰が負うのか。そのための制度設計をどのようにするのか、という点からこの法改正に疑問を持っている。

で、格好の記事を読んだ。

以前にも紹介した宮崎で会った毎日新聞の寺田記者が25日朝刊に記した記事だ。

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山肌さらす国有林

ネットでも出だしは読めるが、後半は有料。もっとも上記の写真の細かい字を読むのは辛いかもしれない。
そこで前半だけ(笑)、拡大してみる。

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これは今回の法律改正とは関係なく、8年前に皆伐した国有林のケースだ。8・7ヘクタールになる。
ここは、おそらく伐採業者とは別の業者に国が造林を発注したのかな。だが、見事に失敗。今や苗はどこにも見えず、今も斜面崩壊が続く。林道さえ寸断されたという。地形・地質上の問題のほか、シカの食害もあったのだろう。
しかし、業者にしてみれば一度は植えたのだから違反ではない。ちゃんと仕事はこなしたのだ。だから責任はない。補植……というかやり直しの義務はない。では、発注した国の責任は? やはりないのである。こうした山も、再造林済みであり、森林にもどる(はず)とカウントしているから。日本の森林面積の計算には、こうした不成績造林地も含まれているはずだ。

文中によると、まともに治山して造林し直すには数千万円かかるそうで(伐採権の入札額は590万円だったそう)、その金を工面できないらしい。

この現場に私も訪ねてみたい。不成績造林地ツアーを催さないか。7月に群馬へ行く予定があるから、計画しようかな……。

 

今回の法改正では、1地域の契約で1年20ヘクタールずつ、10年で200ヘクタール皆伐させるそうだ。不成績地は必ず出る。さぼる業者も出るだろう。シカ害を完全に防ぐ手だてもない。「国が責任を負って再造林(もしかしたら再々造林も)させる」というが、赤字になったらやるのだろうか。(やるという担保はないのが、今回の法律だ)。

 

 

 

 

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