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森と林業と田舎の本

2019/12/11

所有者不明土地と土地利用の懇談会

東京の毎日新聞が送られてきた。これ、全国版だろうから、全国で読めるのだろう。

先日、電話取材に応えた記事が掲載されているのだが、当初は千葉の台風害から森林の管理が遅れている問題を取り上げようとしていたようなのだけど、私は台風の被害と結びつけるより、所有者不明とか境界線未確定の方が本筋でしょうと意見したためか、ちょっと方針転換をしたよう。

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そして、私はこの記事で「所有者不明土地法」が今年6月に成立していたことを知る。なんだか、所有者を探す手間を緩めるよう法律が改正された記憶があったのだけど、新法がつくられたのだね。所有者不明土地法の正式名称は「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」である。

ちと調べてみた。

第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加していることに鑑み、所有者不明土地の利用の円滑化及び土地の所有者の効果的な探索を図るため、国土交通大臣及び法務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、地域福利増進事業の実施のための措置、所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の特例、土地の所有者等に関する情報の利用及び提供その他の特別の措置を講じ、もって国土の適正かつ合理的な利用に寄与することを目的とする。

なるほど。小難しいが、かろうじて意図はわかった。

今回の法律では、登記官に職権で調査する権限を与え、所有者がわかれば登記を変更できるし、調べてもわからなければ、土地を利用したい自治体や企業の申し立てで裁判所が管理者を選び、売却できるようになったというもの(らしい)。

でも解説を読んでいると、今回の条件を満たす土地は全国の1%程度しかないらしい。対象を公共的目的があり、争いが生じるおそれの低いものに限定しているからだ。これでは根本的解決にはほど遠い。さらに山林の場合を想定すると、所有者不明に加えて境界線未確定問題が大きく横たわるから、もっと厄介なはず。

……なんで、こんな専門外で面倒くさいことに興味をもって調べているかというと、実は奈良県から来年に設立する土地利用の懇談会に参加してくれという打診が来たから。なんで? 私が? と???だらけなんだが、私は森林分野の土地問題にもの申す要員のようだ。農地や宅地などには詳しい人が多くて専門家もいるが、森林のことを話す人がいないのだろう。

うえ~ん、オレだって専門外だよ。と頭の中がグルグル回ったが、引き受けてしまった。そこで俄か勉強している(^^;)。なんと付け焼き刃というか泥縄というか。。。ま、もう少し内容をよく聞いてみよう……。

 

2019/12/09

ダークサイド「Forest Style ネットワーク」に堕ちたい

林野庁が「Forest Style ネットワーク」を立ち上げたようだ。これは、「森林サービス産業」を拡大するために関連団体が情報共有するための団体だそうだ。企業や自治体、研究者らが参加している。すでに11月にキックオフ・イベントを開いて56団体集ったそうだ。

そのHPから引用して意図を説明すると、

人口減少・少子高齢化社会の中で、持続的かつ健全な森林を管理していくためには、その基盤となる山村地域が元気であることが重要であるとともに、全ての国民が森林からの様々な恩恵を享受しつつ、国際的に関心が高いSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を達成することにより、森林への関心を高めていく必要があります。
また、「働き方改革」が進展し人々のライフスタイルが変革する中で、メンタルヘルス対策や健康づくりの場などとして森林空間を利用しようとする新たなニーズが高まっており、人生100年時代のライフステージの様々な場面において、森林と人々との新たな関わり方である「Forest Style」が国民の多くに浸透していくことが期待されます。
健康、観光、教育等の多様な分野で森林空間を活用して、山村地域における新たな雇用と収入機会を生み出す「森林サービス産業」の創出・推進による山村振興・地方創生への貢献も併せて期待されています。

まあ、同じことを言っていた森林セラピーが、もう忘れられつつあるから模様替えかな。森林セラピー基地に認定された自治体の中には、すでに自分の町が認定を受けたことも忘れているところがあるからね。莫大な認定料払ったはずだけど、忘れられるのはたいしたもんだ。そんな自治体に、Forest Style ネットワークに入らない? と声をかけたらイチコロだろう。夢はもう一度。

そのことについては、以前にも書いた。これ、今年の2月の記事だ。

「森林サービス産業」を謳う前に


そこで考えた。私も批判ばかりしていてはつまらない。いっそ参画しようかな、と(笑)。

なぜなら、今年私が手がけた記事でもっとも楽しかったのは、日刊ゲンダイの「森の歩き方・楽しみ方」だったなあ、と思い出したから。これ、5か月21回も連載したのだよ。今もネットで全部読める。
ここに加筆拡大したら、新たに本になるのではないかと夢を描いている。タイトルは『希望の森歩き』かなあ(笑)。もちろん、中には「絶望の森歩き」の章もあって、そこで森林セラピーを取り上げるけど……。

儲かるなら、森林サービス産業の広報とインストラクター役を買って出る。本は、団体で買い上げてくれるだろう。部数はそこで稼げる。私はかまわんよ。ダークサイドに堕ちて暗黒面のフォースを手にするのだ( ̄∇ ̄) 。暗黒面は甘美で楽しい。

2019/12/08

「森林と生活に関する世論調査」結果を読む

内閣府が行った「森林と生活に関する世論調査」の結果が公表されている。

これは1989年から行われている調査で、今回は6回目。森林の果たす役割や木材利用の是非などを質問して得られた結果だ。(複数の選択肢を選ぶ形で、約1550人から回答) 全部目を通すのは面倒だから、概要だけにしておく。

設問および回答を読んでいると、誘導しやすい方向なんかもかいま見えて、と突っ込みたい思いが……〇△あるが、ぐっと堪えておく。せっかくだから、いくつか紹介しよう。

 農山村定住の意向

 農山村に定住してみたいと思うか聞いたところ、「定住してみたい」とする者の割合が20.8%(「定住してみたい」8.6%+「どちらかといえば定住してみたい」12.2%)、「定住してみたくない」とする者の割合が62.7%(「どちらかといえば定住してみたくない」23.9%+「定住してみたくない」38.8%)、「既に定住している」と答えた者の割合が14.1%となっている。
 都市規模別に見ると、「定住してみたくない」とする者の割合は大都市、中都市で、「既に定住している」と答えた者の割合は小都市、町村で、それぞれ高くなっている。

もっとも「農山村での森林浴や景観を楽しみたい」と答えたのは約85%と、あくまでお客さんでいたいわけか。就労に関しては、農業が半数を占めるが、林業は1割以下(^^;)。

 森林との関わり方の意向

 日常の生活の中で、森林でどのようなことを行いたいか聞いたところ、「心身の健康づくりのため森林内の散策やウォーキング」を挙げた者の割合が60.2%と最も高く、以下、「森林の中でのランニングや自転車による走行」(26.9%)、「森林の中での音楽鑑賞及び芸術鑑賞などの文化的活動」(22.6%)、「森林の中で自然を活用した保育・幼児教育」(21.3%)などの順となっている。なお、「特にない」と答えた者の割合が19.2%となっている。(複数回答、上位4項目)
 都市規模別に見ると、「心身の健康づくりのため森林内の散策やウォーキング」を挙げた者の割合は大都市で、「森林の中での音楽鑑賞及び芸術鑑賞などの文化的活動」を挙げた者の割合は中都市で、それぞれ高くなっている。

こんな項目もある。

 傾斜が急で道から遠い人工林の木材の生産、その後の植林や手入れ

 植林されて50年以上が経過した傾斜が急で道から遠い人工林について、木材の生産、その後の植林や、間伐などの手入れをどのように行うべきだと思うか聞いたところ、「木材の生産、植林及び手入れを行うべきである」と答えた者の割合が42.4%、「木材の生産のみを行い、植林及び手入れは行うべきではない」と答えた者の割合が8.5%、「木材の生産及び植林は行わず、手入れのみ行うべきである」と答えた者の割合が28.5%、「木材の生産、植林及び手入れは行うべきではない」と答えた者の割合が10.0%となっている。なお、「わからない」と答えた者の割合が10.6%となっている。

植林も手入れもいらない、というのは、今ある木を伐って、あとは放置で天然林にもどせ、という意味だろうか。すべてを行うな、という答も1割あるが。

こんな木嫌いな理由もあるぜ。

 木材を利用すべきではないと思う理由

 様々な建物や製品に木材を「どちらかといえば利用すべきではない」、「あまり利用すべきではない」と答えた者(119人)に、利用すべきではないと思う理由は何か聞いたところ、「森林破壊につながる印象があるため」を挙げた者の割合が63.0%と最も高く、以下、「火に弱い印象があるため」(35.3%)、「地震に弱い印象があるため」(30.3%)、「劣化しやすい印象があるため」(24.4%)、「価格が高い印象があるため」(15.1%)などの順となっている。

私的に意外だったのは、森林認証材を意識する、と答えたのが34,4%もあったことかな。本当かあ?

まあ、こうした世論調査結果を眺めて、国民の意識を脳内で咀嚼することも有意義だと思うよ。

2019/11/21

次は森林組合法?

ここ数年、森林経営管理法に国有林管理法改正、森林環境税(および森林環境譲与税)……と何やら森林関係の法律が次々と新設・改正が続く。中身はないけどクリーンウッド法もできた。もう打ち止めか、と思いきや、また出てきましたね。

森林組合法改正案が。

林野庁は、改正案のたたき台を自民党林政対策委員会に出したようだ。来年の次期通常国会へ法案提出をめざしているという。おそらく、たいして修正もないまま通るのだろう。野党にも、反対意見を出すほど林野政策に精通している議員は思い浮かばない。

目立った内容は、まず森林組合間で事業ごとの譲渡や分割をできるようにする点。そして事業の一部をほかの組合に譲渡したり、組合同士が特定の事業分野で広域連合体を新設したりできるようにする。

理事に経営能力のある人材を配置する、とある。具体的には組合理事会の中に販売や経営の能力を持つ理事を1人以上置く、年齢や性別が偏らないよう配慮することも明文化する……というものだ。

ようするに、新たな事業展開ができるよう経営の自由度を高め、「しっかり儲けろ」ということのようだ。森林経営管理法や森林環境譲与税絡みで新たな仕事が生まれるはずなのに、今の森林組合では受け皿になれるかどうか心もとないから改革しようというわけである。

……でも、なあ。経営能力のあるなしを、どこで決めるのよ。森林経営管理法のように、木材生産量を増やせたら経営能力あり、とみなすのか。経営感覚も大切だけど、森林の将来に対するビジョンを持った人材はどこにいるのか。
かつて某森林組合が、外から招き入れた参事が改革を唱えたものの、緑の雇用事業で雇い入れた移住者組を全部首切って裁判ざたにまでなったことがあった。そして、結果的に参事の使い込みがバレたこともあったな。

 

組合は全国に621あり、組合同士の合併はすでに可能だが、あまり進んでいない。たとえば奈良県では、農協が早い時期に全県単一になったのに、森林組合の合併はほとんど起きなかった。市町村が合併しても、組合は別のケースも多い。下手に合併したら、隠れ赤字を背負わされたり、逆に自分らが抱えるドル箱を奪われる恐れがあるので、疑心暗鬼状態なのだろう。

森林組合は、改革というより作業班を切り離して独立させた方がよいのではないか。培った森林整備の技術を新たなビジネスに活かせることもあるはずだ。販売事業も独立させて、森の商品化を進めて展開したら面白いと思う。組合は、窓口業務と調査業務、組合員の渉外だけに絞ったらどうか。まあ、新規事業を展開できる人材が見当たらないのが問題なわけだが。

決め手となるのは、補助金をどんどん減らすことだと思う。補助金に頼るからビジネス感覚が生まれない。頼れなくなったら、イヤでも改革しなければならない意識になる。そして切磋琢磨したら、残れるところは残るだろう。
これは実例があって、小泉内閣の時に補助金をどんどんカットしたら、森林組合も目の色変わって新しいことを始めたことを私は見ている。そして第1次安倍内閣になった途端に補助金が復活して、改革気運は雲散霧消したのである。

危機感がもっとも改革の原動力になる。危機感を持たせるには補助金カットが一番。

2019/10/14

役所用語と河畔林の伐採

台風19号の洪水状況を空撮映像で見ていると、河畔の樹林帯もかなり水没しているのが確認できる。

つい河畔林は洪水対策に有効かどうか考えてしまった。昔から河畔には竹を植えたりして堤防補強につなげたりしたものだが、河川沿いに樹林帯があることで多少とも水があふれるのを押しとどめたかもしれない。一方で、逆に水を滞留させて流れを悪くすることで越水させる元にもなる可能性もある。ただ河川に沿って森林があることで動植物の生息地として需要な役割を果たすのはまちがいないだろう。とくに広葉樹が多い河畔林は、貴重な生態系を生み出しているはずだ。

もちろん今回の災害は、その雨量が記録的で、河畔林どころか堤防やダムだってほとんど無力だったといえるが……。

そんなときに、こんなものに目を通す。

東北森林管理局の「30年度地域管理経営計画及び国有林野施業実施計画」である。この中の配布資料に目を通していて、興味深い文言が目に入った。

ここでは「渓畔林」という言葉を使っている。そして森林生態系ネットワークを築くために重要だとしている。

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だが、別のページをよく見ると、ちょっと引っかかる文言があった。

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「渓畔林は適切に保全」とある後に、「有用広葉樹がある場合、周辺の人工林の伐採の際に一部利用することも検討」。さらに「間伐等を繰り返すことで大径木育成」「林道沿いの大径木は人工林の伐採の際に利用」なんてある。
なんだ、伐る気満々ではないか。間伐とか大径木育成とか言葉でごまかしているけど、これは河畔林の広葉樹材を得るためというのがミエミエである。「大径木育成」がいつのまにやら「大径木利用」に置き換わっている。言葉を微妙に変化させているところが怪しい。なぜ大径木を育成しようと書きつつ、大径木を伐るのか。
「伐採指定状況」でも、皆伐地の下斜面に当たる沢筋を「間伐」するというが、河畔林の防災能力を落としかねない。

国有林では、スギやヒノキは価格下落で儲からないから大径木の広葉樹を伐りたい願望は昔から強い。大径木の広葉樹材は非常に高値がつくからだ。スギの数倍、十数倍の価格も珍しくない。だから伐りたいのだ。
そもそも国有林の多くが広葉樹林でもある。ただし、天然林を伐ると言うと世間の反発が出る。そこで「渓畔林」という言葉で、その中の大径木広葉樹を伐ることを推進しようとしている……ように読める。しかし河畔林を木材生産する場とすること自体が無理があるのだ。

間伐といえども伐るために重機を入れたら林地を荒らすし、堤防機能を弱めかねない。川の近くだから増水時に水に浸かる可能性もあり、流木発生源になることもあるだろう。伐採跡地が災害を発生させる心配はないだろうか。

こうした役所用語で綴られた計画などは、よほどよく読まないと真意をつかめない。

2019/10/13

森林環境譲与税の配分

いまだ台風被害の全容はつかめていないが、今後は復興の問題も論議されていくだろう。
ちょうど先日記した「超学際的研究の時代…」とつながるところがあって、水害を自然科学的に見るだけでなく、災害許容度や災害後の復興といった社会的な面まで目を配る必要が出てくる。

そんなときにナンだが、森林環境譲与税の配分が始まっている。21年度までは、9月と翌3月の2回に分けて譲与することになっているのだ。今回は総額約100 億円(市町村約80億円、都道府県約20億円)。というわけで、9月30日に第1回目の譲与が行われた。ちなみに配分基準は、5割を私有人工林面積、3割を人口、2割を林業就業者数とするため、人口の多い(森林は少ない)都市部ほど額が多くなるという妙なことになっている。 

総務省が、9月30日に森林環境譲与税を各自治体に配分した額を見ると、最も多いのは横浜市の7104万4000円、次いで浜松市の6067万1000円、 大阪市5480万3000円の順だった。一方で配分額が少なかったのは、沖縄県の渡名喜村(8000円)、北大東村(1万3000円)、粟国村(1万4000 円)。
これを2倍にしたのが、だいたい年間受け取る金額だと言ってよいだろう。ただし、当面は借入金で払っていくため、24年度からの森林環境税の徴収を始めるまでは少なめだ。さらに借り入れ分を返済(10年くらい先になる予定)し終えて満額になると、ざっと6倍ぐらいになるのではないか。つまり横浜市は約4億3000万円ぐらい。渡嘉敷村は4万8000円(^^;)。

こうした金は、森林関連につながることに使うとなっているが、実際の縛りは弱い。こじつけたら何でもOK。だから森や木に関するイベントとか木造建築にも使えるわけだ。

ならば、この譲与金を今回の災害復旧に使ってもよいのではないかと気づいた。山崩れも倒木も、みんな森林絡みだし。洪水被害だって河畔林整備とつなげられる。ちょっとした都市部を抱えているところなら数百万円はあるはず。多少とも足しにはなる。場合によっては、都市部が上流の被災した山村地域に提供する手もあるかもしれない。ま、8000円ではどうにもならないが……。

ほかにふるさと納税なども、こうした被害地が復興のために募集する手として使える。そもそもふるさと納税は、税金の配分を変えるのが趣旨であり、新たな税収アップ策ではない。言い換えると、ほかの自治体の税収をかっぱらう施策だ。泉佐野市のような理念も知恵も誇りさえないえげつない自治体が稼ぐためにある制度ではない。

被災地が利益ではなく復興のために求めるのは、趣旨に沿っているだろう。

 

2019/07/10

MMTは将来への先送りか、先食いか。

学生時代の記憶だから何年前だろうか。林学の授業で戦後の林政を学んでいたら、「将来の蓄積」を先食いする理論が登場したことがある。うろ覚えだけど、紹介しよう。

戦後は、戦災復興と高度経済成長による木材不足が顕著で、しかも日本の山ははげ山だらけ。一方で、そのはげ山に大造林が繰り広げられたか人工林面積は激増しており、それらが育つ将来は森林蓄積が非常に増えることが予想?期待?されていた。

木材不足対策として外材輸入が解禁されたが、やはり国産材業者にとっては日本の木がなければ利益を得られない。そこでもっと山の木を伐りたがっていた。そんなときに登場したのだ。将来は非常に多くの蓄積が生まれるのだから、その分を先に伐って木材を得ても、日本の国土の森林は減らないというわけだ。私は首をかしげつつも、十分に理論を消化できなかった。

果たして、こんな理論で政策が実行に移されたのかどうか知らない。ただ、今からすると森林蓄積は増えすぎたと嘆いていてるのであるが……。もっとも、この理論もおかしい。当時伐ろうとしたのも残された太い木であり、植林したての細い稚樹ではないのだから。生態系も生物多様性も無視しているし、森林資源は単なる足し算引き算では計れないものである。
素人的に考えても、将来育つ分を先に収穫してしまうことがよいこととは思えない。若いサラリーマンが、(将来得られるであろう)退職金分の金を先に使ってしまったら、どうなるのか。

 

なんだか同じような理論が経済界に登場している。「MMT」だ。アメリカ発の経済理論Modern  Monetaey  Theory=現代金融理論、現代貨幣理論である。

政府が自国通貨建ての借金をいくら増やしても財政破綻せず、インフレはコントロールできる。もっと借金して財政出動すべきだ

ようは赤字国債をどんどん発行して金回りをよくしろ、という理論である。デフレと財政赤字が経済回復の足を引っ張っている中で、もっと金を出させるために考え出されたように見える。
国債という借金がいくら増えても財政は大丈夫、借金は永遠に先送りできる、というわけだ。国は永遠に続くから、借金は永遠に先送り。あるいは(将来の)自国民なら踏み倒しても構わない?という発想か。とにかく、今の自分を豊かにしてくれという欲望が考え出すのだろう。

そんな過激な主張が、日本でも広がりつつあるようだ。いや、そもそもMMT自体が日本の財政事情をモデルにしているように感じる。「日本はあんなに赤字国債を発行しているのに財政破綻しないではないか。インフレどころかデフレではないか」と。

耳障りはよい。借金し放題を理論的に認めてくれるのだから。1000兆円を超える借金なんて返せるわけないから、永遠に先送りして、今の豊かさを享受しようよ、という悪魔のささやきのように思える。

なんか、リーマンショックにもつながったデリバティブ金融商品にも似ている気がした。債権を分解してリスクを取り除いたりリスクだけを集めた商品を作り上げそれなりのメリットをつくって販売すれば、どんな低所得者でも家を建てられる……というサブプライムローンみたい。今の所得が少なくても借金をし続ければ金回りをよくできるよ……。

日本の林業という小さな舞台で考え出された理屈は、世界経済まで応用できる優れたものであったのか? でも森林を先食いしたら、回復するまで数十年数百年かかる。一方で経済が破綻しても、その被害は人間社会だけで終わるか。さて、どうなるやら。

 

2019/07/08

日本の林業は、ESG投資かダイベストメントか

ESG投資というのが、ようやく日本で注目され始めた。これは環境、社会(責任)、ガバナンス(統治)を重視した投資である。

環境や社会に与える影響や、法律などのルールに従った事業であることを投資の基準とするもので、投資も、そうした分野に目を配りながら案件を選ぶことで社会をよくしていく原動力にする……という意味がある。

欧米では森林(林業)に対する投資も、このESGに適合しているという。つまり林業は環境をよくし、社会責任を果たし、企業内統治もしっかりされているものと見られているのだろう。森づくりは地球環境(生物多様性、地球温暖化防止など)に寄与する産業と認められている。

日本では、森林への投資などゼロに近い。投資してもリターンがほとんど見込めないからだ。莫大な税金(補助金)を投入しても、ブラックホールのように吸い込んで外に何も出さないからだ。注ぎ込んだ税金以上に稼いだ例があるのなら教えてほしい。
だが、ESG投資の理念からすれば、日本でも森林が投資対象にならないか……と思っていた。長期的に見れば社会貢献や排出権などの面からプラスになる要素がある。チャンスだ! と思っていた。


そう期待していたのだが……世界はさらに進んでいる。

今や「ダイベストメント」だそうである。これは、ESG投資の裏返しで、「投資撤退」を意味する。環境や社会に悪影響を与え、ルールを守らないところには投資しないという方向性だ。地球環境や社会、健康を脅かしかねない企業への資金供給を止め、持続可能なビジネスへの転換を促す。規制強化などで業績が将来悪化する恐れがある企業のリスクを指摘するという意味もある。

世界でダイベストメントを表明した機関数は900を超えるとされ、その運用資産総額は7兆ドル(約800兆円)にも上るそうだ。しかも、これは急速に膨らんでいる。なんたって1年前は6兆3000億ドル(約700兆円)足らずだったのだ。ぐいぐい伸びていることを感じる。

今のところ、ターゲットは石炭火力発電やタバコだそうである。結構な力を持っていて、ダイベストメントの対象に選ばれると、企業は事業を展開するのが不可能になる。かなりの数の石炭火力が撤退に追い込まれた。また古くは、アパルトヘイトを行う南アフリカにダイベストメントを仕掛けられて、南ア政府はギブアップしている。

この理念からすると、日本の林業はダイベストメントに相当しそうだ。だって、明らかに森林環境を破壊し、地域社会を破壊し、違法伐採が横行しているからである。もともと投資はなかったけど、今後も投資してはダメな案件というわけだ。

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日本の林業は、世界の潮流であるESG投資が回ってくる前にダイベストメントの波に飲み込まれてしまうのだろうなあ。

 

 

2019/07/03

Wedge記事のネット公開と林野庁長官交代

Wedge7月号に私が執筆した「横行する盗伐、崩れる山林 林業県・宮崎の」がネットにアップされた。

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ぜひ、目を通していただきたい。こちらが、本筋の記事である。ちゃんと裏事情まで触れている。盗伐問題は、単に例外的な悪質業者の仕業ではないことを納得してもらえるだろう。さすがに記事には書かなかったが、宮崎県の木材生産のうちの何割かは違法状態だという指摘もあった。そして業界の重鎮まで…。

 

ところで、折しも林野庁長官の交代人事が発表された。

牧元幸司長官が農水省の農村振興局長に移り、本郷浩二次長が7月8日付けで長官に昇格、後任次長に農村振興局の太田豊彦次長という布陣になるらしい。
しかし、牧元氏が長官になったのは、昨年7月。つまりたった1年しか経っていない。任期の短い官僚組織の中でも、さすがに1年は珍しいのではないか。とくに長官である。それも上がりではなく、長官経験者が農水省の局長に移るというのは、更迭人事ぽい。

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これは国会筋から流れてきた噂だが、どうも宮崎県の盗伐問題がひっかかったらしい。そもそも牧元氏は、2011年3月から宮崎県の副知事に就任しており、盗伐が頻発するようになった木材増産策を進めた張本人である。
14年には林政部長になっているが、これも増産政策の要。16年に内閣官房内閣審議官、そして17年に次長、18年に長官。

まあ噂にすぎないが、多少とも盗伐問題が人事に響いているとしたら、私としては喜ばしい。国会答弁で盗伐を擁護(「誤伐と区別がつかない」など)した長官として私は記憶している。だいたい誤伐だって違法木材だよ。

先の沖長官があまりに期待外れだったので、牧元氏には多少期待した。東大法学部出身の事務官として違法行為にはもう少し敏感かと思っていた。だが、2倍3倍の期待外れだった。今後はどうなるかね。。。。もう期待はしないが。

 



2019/06/11

外資が買収した森林よりも

また林野庁が「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」を発表している。

昨年1年間に外資が購入した地目・山林を集計したようだが、30件・373haだったそう。平成18年からの合計で223件、2076haという。(ちなみに平成18年とは2006年だ。来年から平成~令和なんてまたがった発表されたらわからんようになる。)

毎度ながら、この調査結果がしょぼく感じるのは、取得した森林面積が0,003ha~0,006haという物件が結構多いこと。これ、どれぐらいの面積だ?

0,1haは10アール、0,01haは1アール、1アールは10メートル四方。0,003haとは、その3分の1以下。たとえば10メートル×3メートルの土地ということになる。何坪か。。。ああ、もう換算するのが嫌になった。

ともあれ下手な宅地面積より狭い。木が何本生育しているのか。これを計上することの虚しさよ。

 そもそも一時に「外資が日本の森を奪う」と狂奔した輩がいて、その対策に始まった調査である。しかし、今やまったく声が聞こえてこない。どんな結果が出ても興味がなくなったようだ。

 

一方で、国有林法改正の審議では、「外国資本の参入の可能性」が問われていた。それに対して「外資は、日本の森なんかに興味ないでしょ」という答弁が出ている。おい!

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この記事では、かつて外資(中国)が、日本の離島の森林資源を購入した例を上げている。その中国人は、しっかり協議に応じて紳士的であったようだ。日本の議員も、もう少し真摯に答弁しようよ。

より以前の記事一覧

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