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森と林業と動物の本

2025/06/11

ウッドショックと米騒動

米騒動の話題は今も尽きない。テレビのニュース、ワイドショーにとってもっとも美味しい米ならぬネタになっている。

私は、もうコメント付けるのを止めようと思っている。ただ話題は米不足から米の価格へと移ったようだ。米はあるけど、価格がまだまだ高いことを問題としている。

それって、ウッドショックのときと流れが似ているなあ、と感じた。最初は「木材が(製材が)手に入らない!」と騒がれた。まず輸入する米材(コメじゃない、アメリカ・カナダ材だ)がなくなり、次に国産材も取り合いになった。やがて木材はとりあえずあるけど高すぎる、建築の値段が上がってしまう、となっていった。

もっとも高値は長く続かず、価格が暴落し始めるのだが……改めて当時の動きを見たら、米の価格の今後の変動も読めるかな、と思って木材価格推移を探す。

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今年の森林・林業白書から。

製材の価格で、ぴょこん、と跳ね上がっているのがウッドショック時だが、その後下がり始める。気がつくのは、下がったといってもウッドショック以前の価格にはもどっていない。多少の高値で落ち着いている。まあ、この当たりが売り手買い手両者が納得できる値段だったのだろう。
米もこの程度の価格(現在の異常な高騰はなくなるが、以前よりは高め。1・2~1・3倍ぐらい)で止まれば、消費者も生産者も納得できるのではないか。

面白いのは、ヒノキとスギの製品価格はそうした値動きだが、その下の丸太価格はどれも反応していない。ウッドショックのときもたいして上がらず、落ちても今までどおりのように見える。コンマ単位で多少は上がり下がりはしたようだけど。 

そして点線の参考値である。国内企業物価指数らしいのだが、こちらは跳ね上がり続けている。ようするに物価高が続いている。それと比べたら、なぜ製材価格は落ちたの?と不思議になる。

米価格も、以前より多少は上がるだろうが、物価高に則した値上がりではないかもしれない。ただ、今年はしのいでも、来年以降は備蓄米もなくなった上で生産量が増えるかどうかもわからない。また跳ね上がるかもなあ。いや、米を食べない生活が根付く可能性もある。米生産量に則した食べ方をするのである。

 

2025/06/03

森林林業白書に生物多様性

今年の(令和6年度)森林・林業白書が公表された。

令和6年度 森林・林業白書(令和7年6月3日公表) 

全体を読むのがキツければ、概要版もある。ともあれ、今年の特集テーマは「生物多様性を高める林業経営と木材利用」だ。

これは画期的というか、ようやくというか。これまで林野庁はかたくなに生物多様性を拒んでいた。そんなことないよ、という人もいるだろう、一応は環境問題を取り上げたり生物多様性という言葉も散りばめられていた。が、中身がない。というか遊離していたと思う。

環境配慮や生物多様性を持ち出すと木材生産が落ちると言わんばかりだったのだ。林業としては木材生産一本槍であり、量的拡大のためには生物多様性など持ち出されては困る、という態度が如実に出ていた(と、私は読み取っている)。

それが、白書の特集に取り上げたのである。おそらくネイチャーポジティブなどの広がりで環境省が力を入れているので、便乗というかおつきあいなのだろう。どこまで本気かはともかく。

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事例もたくさん載せている。

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宮崎県諸塚村のモザイク林。椎茸栽培や林内放牧などを行っていたことから成立した針広モザイク混交林だった。

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問題は、肝心の現場の施業法が生物多様性保全にどこまで配慮しているかなんだが、本当に政策でも生物多様性を推進していくつもりはあるのだろうか。それは十分に読んでいないので、よく分からない。

ただ保持林業も紹介しておりますな。この保持林業は皆伐を前提としており、私にいわせれば従前の施業法との折衷案にすぎないと思っているが、まあ、全山皆伐よりはよっぽどマシだ。

さて、事例を紹介するだけで済ますのか、本気で政策的に推進する気があるのか。

まあ、高みの見学しますか。

 

2025/04/20

「里山広葉樹の利活用」に向けた提言とやら

林野庁の「里山広葉樹林の利活用を通じた再生に向けての提言」を読む。

里山広葉樹利活用推進会議という審議会?が3月に出したものだ。最近は広葉樹押しの林野庁だが、こんな研究会も開いていたのね。正直委員の顔ぶれはうさ…、なるほどね、と思ってしまったけれど(笑)。

私も6年前のYahoo!ニュースに「もう一つの林業・雑木林を宝の山に変える方法」を書いているから気になるところではある。

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掲載されているデータは、使えるかな。。。

提言部分だけ引用。

提言

上記の3つの基本的な視点を踏まえた上で、広葉樹の利活用を進めるためには、入口(樹種、径級)の多様性と、出口(家具・床板~ほだ木・薪炭・おが粉・チップ)の多様性の中で、広葉樹資源の様々な利用を組み合わせることで付加価値の高いサプライチェーンを構築する必要がある。

広葉樹の利活用について一定の成果が見られている地域は、川上・川中・川下のそれぞれの立場の者がコンソーシアムを組んで連携し、消費者への訴求や、サプライチェーンの構築に取り組んでいるが、現在の取組はまだそれぞれの地域が「点」で頑張っている段階で、多くの困難も抱えており、共通する課題も多い。

このため、里山広葉樹林の新たな価値創造と利活用を通じた再生に向けて、
①各地域の取組への支援を強化しつつ、

②供給側や需要側の情報の共有や地域横断的な課題に取り組む場として、全国レベルのプラットフォームの構築に取り組んでいくことを提言する。

そして、こうした具体的な指摘もしている。

○すぐに取り組むべきこと
(ⅰ)里山広葉樹の立木伐採予定情報(樹種、径級など)、市場で取引されている原木の市況情報や流通している材の品質の共有
(ⅱ)家具メーカーや材木店、きのこ生産者等が欲している木材情報等の共有
(ⅲ)供給側と需要側の交流とビジネスマッチングとマッチングに必要なコーディネーターの育成
(ⅳ)(ⅰ)~(ⅲ)を円滑に進めるために必要な情報共有や流通拠点のあり方の検討
(ⅴ)里山広葉樹林を積極的に管理し、人との関わりを取り戻すことが 2030 年ネイチャーポジティブにつながることの国民への情報発信
(ⅵ)広葉樹施業の事例収集
○発足後 2~3 年先から取り組むべきこと
当面、上記に取り組みつつ、準備検討を重ね、以下の内容に数年後に取り組む。
(ⅰ)建築家やデザイナー等の需要者からの相談の受付
(ⅱ)広葉樹材の伐採・造材・仕分けや、加工・流通、里山広葉樹林の管理等に関する人材育成や相互研鑽の実施
(ⅲ)広葉樹林の管理や利用による生物多様性保全への貢献等のプラスのインパクトを定量的に評価する指標の検討

さあ、提言は出ましたよ。誰がやるんでしょうね。

 

 

 

2025/04/17

木材のトランプ関税

林野庁のモクレポ4月号が出たが、そこにタイムリーに木材に関係する米トランプ関税および政策が記されている。

モクレポ令和7年4月号

トランポリンのごとく飛んだり跳ねたり落ちたり……のトランプの政策だが、とくに木材に関してはわかりにくいというか、情報がちゃんと出ていなかった。それを整理してあるので有り難い。

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対米の木材輸出入が示されている。額は25倍もの違いがあるのだが、輸出はたった56億円。スギ製材が半分を占めて27億円。
ただし、実は中国に輸出している日本のスギ丸太も多くが加工されてアメリカに輸出されている。フィリピン輸出分にもアメリカ行きがある。それらを合わせると、日本の木材はアメリカにもそれなりの量が渡っていることになる。だが、中国からアメリカへの輸出は、ほとんど無理になるだろうから、日本は中国への木材輸出も縮むのではないかな。その点を分析してほしかったな。

あと興味深いのは、日本がアメリカから輸入しているのは、木質ペレット(バイオマス発電燃料)と木材チップ(製紙用チップ)が多いものの、製材もそれなりにある。しかし私が注目したのは、「樽」だ。樽が42億円もある。これはジャパニーズウイスキー用なのだろうか。これだけで日本の木材輸出総額に近い。

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トランプ関税についての説明がされている。

ただし、この情報全体が「4月14日時点」なのだ。モクレポ発行直前までチェックしていたようである。よく頑張ったなv(^0^)
でも調査中部分もある。今後、トランプ関税に関わる部分だけでも、月一と言わず、速攻で出してもらいたいものだ。

とにかくブリコラージュ、朝令暮改だ。どんどん変わる。最初は、木材に関税はかからない例外扱いだったのだが、今やどうなっているのかわからない。相互関税10%には入ってるの? さらにアメリカ国内の木材増産令が、どのように木材価格に反映されるのかもわからない。

とりあえずトランポリンを注視するしかない。

 

2025/03/28

林野庁「森林林業の現状」分析を楽しむ

林野庁が、最新の「森林・林業・木材産業の現状と課題」を出した。

こういうのに目を通しながら楽しむ。どこにつっ込めるかなあ、……と考えながら。なんて悪趣味なんだ(> <;)

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世界の森林と林業なのだが、森林率の順位で面積が大きいのは、日本は3位で、上位はフィンランドとスウェーデンになっている。ここまではよく知られた話だが、一方で人工林面積のランキングが面白い。大きいのはほぼ大陸国家の中で、スウェーデンが5位をキープしているのだ。これを森林面積と比べると約半分が人工林。日本より10ポイントも高い。フィンランドの順位は9位で日本の次だが、北極圏を含む。
北欧は「森の国」であることを売り物にしているが、目にする森の多くは人工林なのである。

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これは国民が期待する森林の働き。まー期待だから実態とは違って当たり前だが、木材生産を見てほしい。この乱高下はなんだ? メモリは3~4年刻みだが、1999年に急降下したうえで、2019年に回復したのはなんだ? そして2023年はまた落ちた。これらの理由を分析してほしい。
なお特用林産物、つまりキノコ類や野外教育も順位は下落傾向。野生動物も落ちているが、23年に一つ上がったのは、獣害が頻発したことが理由かもしれない。

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温室ガスの削減・吸収のグラフなのだが、ちょっとわかりにくい。ようするに森林が吸収する分は小さくて、輩出削減が大部分を占めるわけだ。でも、22年が4568万CO2トンなのを、40年には7200万CO2トンに増加させる計画なのか。グラフでは小さくても量は多い。
しかし、それなら森林の伐採を推進するのは矛盾だろう。別のグラフでは、木材利用をさらに増やす計画になっているけど。再造林をすれば大丈夫というものではないし、再造林そのものが半分以下の現状からしても、木を伐ってCO2を吸収させるなんて……(´_`)。

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これは違法伐採対策として上げているクリーンウッド法なのだが、あれ? クリーンウッド法は違法伐採禁止を謳っていないよね。合法木材推進にすぎない。違法木材を留められないのだ。
そして業者登録制だが、これによると現在登録した業者は696件か。日本に木材関連事業者って、何件あるのか。数千件?数万件?登録率も出してほしい。登録してもしなくても、違反して何の罰則もないわけだが。

……とこういう風に見ていくと、楽しめるのでありました。

 

 

 

 

2025/03/10

林業機械に林業3原則を植え付けろ!

林野庁が、「林業機械の遠隔操作に関する安全性確保ガイドライン」に関する意見を募集していた。つまりパブコメの募集なのだが。

意見公募の趣旨・目的・背景
近年、林業の安全性及び生産性の向上を目指した林業機械の遠隔操作技術及び自動運転技術の開発が進展しています。このうち、遠隔操作林業機械は実用化段階にあり、自動運転林業機械は開発・実証段階にあります。これらの新しい技術の導入により、林業の労働に関する諸課題の解決が期待されている一方で、その運用に当たっては、これまでにはない危害が生じる可能性があります。
これらの状況を踏まえ、林野庁では令和6年7月に「林業機械の自動運転・遠隔操作に関する安全対策検討会」を設置し、遠隔操作林業機械を使用することで新たに生じるリスクを回避・軽減することを目的としたガイドライン案の検討を行いました。本案について、広く国民の皆様から意見を募集し、提出いただいた意見を考慮しつつ、ガイドラインを策定することを目的として行います。

遠隔操作できる自動運転機械は、建設土木の世界では少しずつ導入が始まっているが、いよいよ林業界にも入ってきたか。

これが普及すると、もはや林業家の質がまったく変わってしまうような気がする。森の中で過ごしたいという人は求められないかも。もっとも、ここではあくまで「安全性」が課題なのだね。

私は、いっそ林業の基本理念を林業機械のAIに植え付けてほしいと夢想する。

かつてSFの世界でロボットが普及することを見越して、作家のアイザック・アシモフは「ロボット工学3原則」を提唱した。ロボットの開発には、この原則を守ることが必須なのだ。それは作品「わたしはロボット」の中の話なのだが、広くその原則はほかの作家の作品にも取り入れられている。

第1原則:ロボットは人間に危害を加えてはならない
第2原則:ロボットは、第一原則に反しない限り、人間の命令に従わなくてはならない
第3原則:ロボットは、第一、第二原則に反しない限り、自身を守らなければならない

それに匹敵するような原則を林業機械にも設定できないか。

第1原則:林業機械は森の生態系を破壊してはならない
第2原則:林業機械は森の資源を持続的に利用しなくてはならない
第3原則:林業機械は第1、第2原則に反しない限り、利益の出る作業をしなければならない

こんなん、どうかなあ。どれも、林学の世界では当たり前の原則だ。林業は保続にありと100年以上前から言われてきたし、資源を枯渇させてはならないのも決まりきったこと。そして儲からない作業をすることは経営ではない。

多分、今の林業家なら「ムリ!」と言って投げ出すかも(笑)。

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研究途上のロボット。人が操縦しつつ、何百キロもの物体を運んだりつかんだりできる。

2025/03/03

モクレポに見る木材輸入額推移

林野庁のモクレポが出た。

モクレポ令和7年2月号

いつも木材輸出関連に目を向けがちだが、今回は輸入額のデータを見てみた。

概観は、こんな具合。

・2024年(令和6年)の木材輸入額(HS44類)は、前年比104%の1兆4,567億円。木材輸入額第1位はベトナム、第2位はEU、第3位は中国となった。
・ 品目別の輸入量を見ると、丸太が前年比88%と減少する一方、製材が前年比119%、合板が同107%と増加した。

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なんと、輸入先の一番はベトナムである。二位のEUに差をつけ圧倒的だ。が、数年前は1000億円に届かず4割程度だったのだ。急伸したのは、いうまでもなく木質ペレット輸入であろう。こんなもの、木材貿易と思えない。燃料なんだから、石炭石油と一緒にしたらどうか。

品目別を見ると。

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なんと、木質ペレットやチップなどの項目がない。隠すな(笑)。

しかも大半を占めるのが、丸太は北米、製材はEU、合板はマレーシア、インドネシア。ベトナムは、合板のところにちょっこと名を出すだけで額はしれている。

金額的にも、木質ペレットを除くとEUの製材が非常に多い。

輸出額と比べると、単位が二桁ほど違うよねえ。

2025/02/16

木材輸出に関する林野庁の政策

林野庁ホームページにあった「木材輸出に関する情報」の最新版木材輸出をめぐる状況(2024年11月)に目を通した。

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木材関係の輸出額の推移がグラフになっているが、2023年が621億円。目標として25年に718億円、50年に1660億円としている。まあ,これぐらいの目標はいい。ただ現在までの品目内訳を見ると、圧倒的に多いのが、丸太。次が合板。(その他には何が入っているのか……)

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しかし、丸太も合板も原料価格は安い。あまり利益率は高くならないだろう。もっとも利益の出るはずの製材は低いのである。

そこで、製材の輸出促進にどんな政策を掲げているか。

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中国や韓国には、木造軸組構法の普及を掲げている。これって、日本式の建築方法を教えて、日本の製材を買ってもらうということ?

アメリカには枠組壁工法用の製材のマーケティング……。アメリカに日本的家屋は無理と考えたのか。

かつて、アメリカが日本に木材を売ろうとしてツーバイフォー工法を普及させようとしたが、日本はほとんど受け付けなかった。それを真似て、中国に日本式を教えても受け付けないんじゃない? 

もっとも多い中国の動向はこんな具合。

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大半が丸太(笑)。製材は自国内で行うのだろう。より利益率の高い二次加工品である木工品、食器、家具、内装品、建具を増やすことを考えた方がいいのではないか。

ちなみに私の一押しの木製家具だが、輸出先は中国、台湾が多い。香港も加えると、半分近くになる。ここをもっと伸ばすことを考えてほしいものだ。すでに輸出額の1割強を占めるのだから。

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何が欠けているのか。小さな木材輸出という分野から日本の産業の動向を眺めてみるのも悪くない。

2025/02/05

食品等流通法はエガリム2法に近づけるか

通常国会で、生産コストを考慮した食品の価格転嫁に向けた食品等流通法改正案などが予定されている。

農家など売り手側がかかったコストを明確にし、買い手側がその費用を考慮して取引することなどを定めようとするものだ。努力義務だが、生産コストを小売り価格に反映させろというわけである。

これって、エガリム2法に近い? 近づけようとして改正を目論んだのか? 私が最初に頭に浮かんだのは、この点だ。

エガリム法およびエガリム2法は、フランスの法律。私は、以前、この法律に関する記事を書いた。まったく無反応というか、読者はいたのかどうかわからないほど、興味を引かなかったようだが。

トレーサビリティの次はコスト明示。適正価格求めるエガリム2法

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まあ、この記事を書いたときは、日本側はエガリムに対して、まったくやる気のない国会答弁もあったのだが、私は遠からず議題に上げなくてはならないだろうと思っていた。今回の法改正案は、それに近づけるのか?  だいたい資材代も肥料も燃料も値上がりしているのに小売価格を上げないように、卸価格を叩いている現状がおかしいのだから。農作物だけでない。小規模生産者は、団結できないゆえ常に買いたたかれる。

食品が値上がりすれば、消費者の買い控えにつながると言われる。しかし、米が高値だとぶうぶう文句言うが、フードロスはいまだに高い。2021年で、523万トンだという。全生産量の約2割である。世界中では生産量の4割近いらしい。価格が上がれば、無駄にしないように工夫するから、フードロスも減るのではないか。

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法改正では、コスト反映に対しての支援制度を創設するものらしい(まだ法案を読んでいない)。国産原材料の安定供給に農家と連携したり、温室効果ガスやフードロスの削減に取り組んだりしたら、金融支援や税制特例をつけるというものだ。日本流の穏やかな内容になりそう。支援金で誘導しようというのも、相変わらずの行政手法だが。

ちなみにエガリム法の正式名称は、「農業および食料分野における商業関係の均衡並びに健康で持続可能で誰もがアクセスできる食料のための法律」。目的として上げられているのは、
①農業者と取引相手との適正な取引関係の促進
②食品の品質・地産地消の強化
③健康に寄与し信頼性および持続可能性の高い産品の促進
④食料分野におけるプラスチック使用の減少など

単にコストの価格転嫁だけでなく、さまざまな要素が含まれている。

コストを折り込んだ価格形成を行わせるのは、食料だけでなく林産物も含めて全商品で考えるべきだろう。木材なんて、50年60年単位でコスト計算してみたらいいと思うよ。これもサスティナビリティ経済だ。

2025/02/01

南三陸の林業地が自然共生サイトになった

宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、国が認定する自然共生サイトに認定されたという記事。

南三陸FSC認証林、自然共生サイトに認定 生物多様性に配慮し植林

宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、豊かな生物多様性が保全されている区域を国が認定する自然共生サイトに認定された。生物多様性に配慮したスギを中心とした森づくりが行われている。

ついでに、こんな記事も。

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これに私が驚いたのは、森林認証のFSCを取得したことではない。自然共生サイトに認定された方なのだ。それも約2471ヘクタールと全域らしい。

自然共生サイトとは、環境省が仕掛けたネイチャー・ポジティブ政策の一環。30by30と呼ばれる2030年までに国土(水陸)の30%を自然保護区に指定する国際的な目標を達成するための施策だ。国立公園などの保護地域指定では全然足りないことから、新たな指標で民間の土地も指定するようにした。生物多様性増進に役立つとされた土地を「自然共生サイト」と名付けたのだ。現在、全国で253か所あるが、多くは企業などがCSR的に生物多様性を意識した保全地区である。

私は、かなり前からこの制度に注目していて、そのうち林業地が認定される動きが始まると睨んでいた。ただし、ほとんどの人工林はスギやヒノキ、カラマツなどの針葉樹一斉林である。それでは生物多様性になりにくい。よほど工夫した森づくり(たとえば針広混交林とか)をしていないと認定されない、だから可能なのは所有林のうちの自然林部分ではないかと考えた。林業地と言っても、たいてい一部は植林せずに自然のまま残した森がある。河畔とか尾根筋とか崩落地とか……。

そうした天然状態の森の部分の保全策を決めたら、自然共生サイトに認定されるかもしれない。そうすれば、将来的に固定資産税などの減免措置もあるだろうし、補助金ももらいやすくなる……と睨んでいた。実際、いくつかの林業家の所有森林の一部が認定されている。ただし面積的には小さい。数ヘクタール、いや1ヘクタール未満も多い。大きなところで2~300ヘクタールもあるが。

ところが、今回はそうではないらしい。純然たるスギ林が、FSC森林認証を取得したことで自然共生サイトにも認定されたのだ。どうやら広葉樹も生やして針広混交林に誘導するらしいが、それでも人工林に違いがない。そこが自然共生サイトになったか! 面積も桁違いだ。

まだ認定基準とか、細かなところはわからないが、かなり期待できる。私有林業地の中の自然林は、面積にして1割程度ではないかと思っていたのだが、もし人工林全域も施業方法次第で認定されるなら、可能性は一気に10倍になる。当然、認定特典などの効果も大きくなる。30by30にも貢献する。

もしかしたらFSCの認証を取得したら、自然共生サイトに認定されやすいという事例になるかもしれない。そのうちSGECもなるか……。林業地の林業のできない部分だけ認定を受けるより、林業を行う山そのものが認定を受けられることになれば、意識も変わってくる。

願わくば、サイトに認定されたら受けられる特典を早く示すことだろう。今のところ、どんな特典があるのか明示されていないが、それが明確にわかって指定を受けたら有利になるとわかれば、参加しようという林業家、山主も増えてくるはず。内容次第だが、林業家が森林認証に目を向けるかもしれない。

そして生物多様性を重視した林業も進む。

環境省、林業政策へ一石を投じるのではないか(笑)。今も皆伐一斉造林を推進する林野庁、どうする?

 

 

 

 

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