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森と林業と田舎の本

2020/10/22

森林認証とウッドデザイン賞を取ったお菓子

日本では、森林認証がなかなか広まらない。いや面積だけはそこそこ広がってきたが……まあ、ほとんどの林業家や消費者から認識されていないのではないか。なぜって、利益に結びつかないからである。認証取ったって、木材価格が上がるわけでなし、売れる量が増えるわけでなし。

森林認証とはそんなものではなく、むしろビジネスのプラットフォームに乗るための条件であり倫理的な基準なのだ……と言いたくもなるが、日本の林業家と消費者が全然とんちゃくしないのでは話にならない。

そんなときに、森林認証を取得したお菓子があると聞いた。秩父である。

Photo_20201022164801サイトより拝借

正確には、SGEC/PEFCのCoC認証を取得したお菓子 「ちちぶまゆ」。マシュマロだそうである。

埼玉県秩父市の市有林がSGEC認証(国際的なPEFC認証と相互認証)の流通認証を取得しており、そこから採れた楓の樹液、つまりメープルシロップをつかっているからだそうである。今年6月に発売開始とか。

本来の森林認証とは、その森林の施業が環境に配慮しているかどうかを問われるわけだが、認証を取った森から採れる産物は、その流通経路を押さえればなんでも認証付き商品になる。

そういや森林認証付きシイタケというのがあった(宮崎県諸塚村)が、とうとうお菓子の世界に踏み込んだか……。

秩父では、天然林のカエデから樹液を採取して、それを煮詰めてメープルシロップを作っている。

051 シロップを採取中

秩父市および林業家は、この手の発想が豊かで、また扱いも上手い。私が秩父の樹液組合を訪れた際は、採れるカエデの樹液なんて量がしれているから、たいした実利に結びつかないのではないか、と思っていたのだが、秩父駅に降り立ってびっくりした。いきなりお土産物として秩父産メープルシロップのパンやお菓子類が並んでいたからである。ほか「カエデゼリー」とか「カエデサイダー」もあった。使用しているシロップの分量はごくわずかだろうが、とにかく使っていたら看板になる。そして結構な種類の商品が生まれていた。言い換えると「秩父産メープルシロップ」のブランディングに成功したわけだ。

そして、今度はお菓子である。秩父産メープルシロップというブランドだけでなく、そこに森林認証を被せてくるとは。

しかも、それだけに終わらず、なんとこの商品、ウッドデザイン賞を受賞したのだ。ウッドデザイン賞の基準て、なんなの?と思わないでもないが、この際、どうでもよろしい(笑)。

これこそ、日本における森林認証の上手い扱い方なのかもしれない。木材にこだわらず、森林認証はブランディングのツールとして使えるのだよ。

2020/08/09

樹木葬墓地で見かけたもの

相変わらず、近隣の墓地を見て歩くことがある。

最近は「樹木葬」を名乗る霊園が増えた。ここで拙著『樹木葬という選択~緑の埋葬で森になる』について紹介するのは抑えておくが、樹木葬の中身は百花繚乱状態で、みんな好き勝手にしている状態だ。

ただ、石の墓標でなく樹木の墓標にする理由の一つに、墓守が楽というのがある。森になれば、放置してもよいのだ。

しかし、近年の樹木葬墓地は、そもそも樹木葬と言いつつも石の墓標はあるし、植えるのは樹木というよりは低木の花の木。

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これ、正確には樹木葬ではなくて、庭園風墓地なのだが、これ、目茶苦茶管理が大変。

折しも私の訪れたとき、業者による大規模な手入れをしていた。

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おそらくお盆前にきれいに整えようということなんだろうが、本来(石の墓の場合)は各々の遺族が墓参りをして墓石を磨くと思うんだが、ここでは業者が草花の手入れをしている。墓石を磨いているかどうかまでわからないが、小さいし地面に埋め込んでいるからしれている。

結局、墓守を遺族がするのではなく霊園側に任せているということか。まあ、管理費は高いだろうと想像する。

一見、この手の庭園風の墓は人気を呼ぶのだろうが、多分長くは持たないな。遺族も、徐々に来なくなる(子息は高齢になるし、孫の代になるとなじみがなくなる)だろう。管理費もちゃんと払い続けるかどうか。払わなくなったら、永代供養と言っても、撤去の対象になるんじゃないかなあ。

で、こんな看板もある。

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そのうち霊園では経営が行き詰まることも考えて。

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ちゃんと霊園の裏には、メガソーラーを。

これが現実かね。

 

 

2020/07/06

イオンモールのトイレの装飾

さすがに今日は朝から雨である。九州はまたもや大変なことになっている。熊本に続いて、ほかの県も油断ならないだろう。私は、皆伐ではげ山だらけの山をたくさん見てきたので注視している。盗伐地はもちろん、合法的な皆伐跡地だってどうなるか。。。

ただ生駒はたいしたことない。

そこで買い物に出ようとしたのだが、車で行くにしても駐車場から店内に入る際に雨に濡れるのはイヤだし、その間だけのため傘をさすのも面倒だ。というわけで、選んだのがイオンモール。今年はほとんど行っていない。コロナ禍もあるが、なんだか最近は面白くない。並んでいるものが同じもので飽きがきたのである。それでも、屋内駐車場を選べば、濡れずに、傘をささずに店内に入れる。

そこで我が家から選んだのが大阪の四條畷イオンモール。大阪かあ。イヤだ。アホが感染する……じゃなくて人が多すぎないか。しかし車で20分かからないのだ。

まあ、広いし、平日だし、ソーシャルディスタンスを守りながら行けば大丈夫だろう。

この作戦?は成功。客は少なめであった。シネマもリバイバルものが多い。そんなわけで、ぶらぶらしつつ、トイレに入った。

そこで見たのが、これ。

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何かわかるだろうか。絵画でも彫刻でもない。

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なんと、苔であった。苔テラリウムか? ようするに垂直の板に苔を育ててインテリアにしている。

たまにインテリアの店で小さなビンなどに入れて育てる苔テラリウムは見かけるが、こんな壁の装飾用苔テラリウムは初めて見た。しかもイオンモールとはいえ公共の場だよ。なかなかイオンも尖っているではないか。

苔をもっと広範囲にインテリアにできるようになったら、森からの新たな資源になるのにな。

残念ながら、苔の生育はあまりよろしくないが(^^;)。苔って難しいのだよ。私も育てようと幾度かビンに採集してきた苔を移植したが、何がわかる井野しばらくすると衰退する。まったく放置して成功する例もあるのだが、何か条件かわからない。

ともあれ、こんな装飾を提案した人も、許可した人も、エライ。頑張って育ててくれ。

で、家に帰ると我が家一帯は停電していた。なぜ? とくに強い風も吹いていないのになあ。この雨は油断ならない。

2020/06/29

クロモジのクラフトジン

私は酒類の中でも、ジン飲みである。なぜか若い頃からジンをよく飲む。昔は安酒でさっさと酔っぱらうための酒のイメージがあったが、むしろチビチビ味わって飲むのが好きだ。

だから、近年のクラフトジン・ブームは歓迎したい。手づくりというか、小規模で個性的なジンづくりが世界的に流行っているのである。一つには、ウイスキーのように長い年月寝かせる必要がなく、スピリッツにボタニカルと呼ぶ植物性のハーブを漬け込んで浸出させればジンになるという安直さ?のせいかもしれない。だから焼酎メーカーなど、醸造できて、蒸留設備を持っていたらアルコール度の高い蒸留酒をつくれる。あとは漬け込むボタニカルの選定……でできると考えるのだろう。そういやコロナ禍で、酒造メーカーが消毒用(にも使える)アルコールを生産し始めたが、工程は似ているのである(笑)。

日本産クラフトジンも増えた。それぞれ特徴を出そうと、ボタニカルにこだわる。日本的なボタニカルを加えるることが多い。そういや以前、「季の美」というクラフトジンを紹介したことがある。それはヒノキを使っているからだった。

で、今回私が手にしたのは、これ。

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養命酒株式会社がつくった「香の雫」。この特徴は何か。特徴的なボタニカルは……。

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クロモジだった。クロモジは、日本特産で、最近はちょっと人気だ。もともと高級楊枝に使われていたが、その爽やかな香りが気に入られたのか、アロマにもなっている。クロモジ茶も開発されている。さらに飴もある。なかなか人気者なのである。

そこにクロモジ・ジンか。

ま、それだけなら、新機軸かというだけだが、ちょっと驚いたのは、養命酒は薬草を浸出させた薬用酒だが、その主力の薬草はクロモジだったのだ。日本で利用されているクロモジの大半が養命酒で使われているとか! だからジンにもクロモジを使うのは当然と言えば当然の選択かもしれない。

木材だけでない林業を考えた際、クロモジというのは、今後ちょっとしたブームかも。クロモジはクスノキ科だから、樟脳に近いスッとした香りを持つ。畑で育てるより山地が向いているようだ。しかも数年で育つ低木だから、経営的にも回転は悪くない。

なお、新潟のろくもじ株式会社がクラフトジン「ROKUMOJI」を開発したそうだ。こちらはクラウドファンディングで資金を集めての挑戦だ。ここにもクロモジが使われている。ほかアテビ(ヒバ)や茶、ドライアップル、アンジェリカルートなどが使われているそう。


ちなみに私は国産ジンに対して言いたいのは、奇をてらうな、ということだろうか。生姜だけを入れたジンとかもあったが、それって生姜酒である。。。。ジンとは、ジュニパーベリーの香りが基本なのである。ヒノキやユズや茶もいいが、肝心のジュニパーの香りがしないのはジンじゃないよ。ジュニパーはヒノキ科のセイヨウネズの実だが、日本で近いのはやはりネズ(ムロ、ネズミサシ)かね。香りは違うのだろうか。
球果は杜松子(トショウシ)というそうで、漢方の原料とか。

クロモジとネズを国産にできないだろうか。

 

2020/06/20

薪の価格は……どうなった?

先日、森林・林業白書で「特用林産物」、とくに漆について紹介した。

もう一つ大きな特用林産物(キノコ以外)と言えば、薪がある。燃料としたらバイオマス燃料が急速に拡大しているが、薪はそこには含めないんだ。木炭も大きいが、こちらはむしろ輸入が目立つ。しかし、薪はほぼ国産と言ってよいのだろう。

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生産量は、急減して2006年がボトムで、そこからじわじわと増えてきたようだ。(震災で落ち込んだ点は除く。)

2018年には4.8万㎥(丸太換算)となり、近年は5万㎥程度で推移している。生産量を都道府県別にみると、多い順に鹿児島県(8964㎥)、
長野県(8459㎥)、北海道(7932㎥)……。北海道はその広さと寒さからもっと多いと思ったが、そうでもないらしい。鹿児島が多いのは、カツオ節製造用かな。と考えると、薪ストーブ需要は長野県が一番多いのかもしれない。もっとも北海道は自給の割合が多そうだし、長野は首都圏など遠くまで販売している可能性もある。

ところが驚くべきは価格だ。長期的に上昇していると言えるだろう。とくに震災で生産量が落ちたときに急騰している。ということは、震災でむしろ需要は増えたのに、生産が滞ったということか。2018年は層積立米単価で2万6100円だ。(1層積㎥を丸太0.625㎥に換算)。
そういやホームセンターで見かけた薪も、ひどく高かった。一束760円などとある。同じホームセンターでも、数年前と比べて2倍になっているのではないか。それほど足りないのか。こちらはキャンプ用だろうが、高くてもイットキのレジャーなら買う人はいるだろう。

しかし、こんなに高止まりしているのなら、もっと生産に新規参入してもよいと思うのだが、そうもいかないのだろうか。

やはり薪にする木を伐りだして、割って、さらに乾燥……という工程はなかなか大変なんだろう。それに、たいてい配達が必要だろうし。

と思っていたら、本日の発見。

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これ、なんの木かわからない。剪定木だろうか。とにかく山積みなんだが、そこの看板に注意。

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「薪、無料」だった(゚д゚)。「自由にお持ち帰りください」だと。ようするに薪を生産しているのではなく、廃棄物処理か。ほかに堆肥もいいらしい。

こんな業者がいたら、せっせと薪を生産している業者はあがったりだな(笑)。

2020/06/18

森林・林業白書~特用林産物・漆で考えた

令和元年度森林・林業白書が発表された。

 私も一応ざっと目を通しているのだが、あんまり興味をそそる項目はなく……相変わらずの林業事情と林業政策。

そこで、つい目を向けたのは、特用林産物の項目。木材一辺倒の林業の中では、あまり注目されないが、産出額で言えば全体の半分を締めているのだから、特用という言葉が間違っているかもしれない。具体的には、食用のきのこ類、樹実類、山菜類、漆や木蝋など工芸品の原材料、竹材、桐材、木炭など……である。まあ、その中でも売上の大半、8割はきのこ類だ。

残りの中で比較的力を入れているのは、漆である。

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こんなグラフを見ると、生産量が減り続けてきたものの、ここ数年は少しだけ伸びている。が、面白いのは量(1・8トン)より自給率で、急回復を見せている。とはいえ、5%なのであるが。ただ、1980年前半は6トン以上生産していたのに、自給率は1%程度。
ようするに漆そのものの需要が激減したのだろう。何が減ったのかね。文化財は増えこそすれ減らないだろうから、民需がなくなったのか。

そして国宝・重要文化財用をすべて国産にするには2・2トン必要だそうだから、最近になって増産が叫ばれているのだ。

ここで、ふと思ったこと。

現在の漆は、ウルシノキを「殺し掻き」している。樹齢10数年程度のウルシノキをひと夏、漆を掻いたあと木を伐採する方法だ。中国が、毎年漆掻きをする「養生掻き」をするのと比べて、国産漆はこの方法だから質がよい……といった言い方をされている。が、それは嘘だろう。理由はその年の採取量を増やすために行われたのだ。つまり先のことを考えなかった。

だいたい日本も昔は、養生掻きをしていたのだ。1度採取したら数年休ませて、樹勢が回復したらまた掻く。たしか明治時代に目先の生産量を増やすため殺し掻きに変えたんじゃなかったか。しかし、ウルシノキを植えて10年~15年育てて、たった1年漆液を採取したら伐り捨てるなんてもったいない。仮に3年に1度の養生掻きにすれば、ものすごく生産効率を上げられるように思える。

それにウルシの実からは、をとることができる。江戸時代は、この実から蝋をとるための実の収穫もやっていた。木蝋はハゼの実などから取るが、ウルシの実からも取れたのだ。これは和ろうそくの材料として重宝した。この実の収穫のためにも、養生掻きだった。現在の木蝋の需要はどれほどあるのかわからないが、これも特用林産物なんだから。
現在なら、ウルシの花で養蜂をやることも考えられる。意外とウルシの蜜はよろしい。by 養蜂ジャーナリスト
そして太くなったウルシノキの材も使い道を考えたい。

ある意味、漆産業は林業の縮図だな。木材の生産も、目先の量の増加に走って持続性と長期展望を失い、木材以外の森林の多様な資源利用を捨ててしまった。結果、行き詰まる。

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とまあ、白書を見て、ここまで妄想を膨らませたのである。

2020/05/24

環境ストレスを迎え撃つ?新肥料

私は、かつて土壌ジャーナリストを名乗っていた。これは2015年の国際土壌年に合わせた肩書であるが、年が明けてから返上した記憶はないので、今も土壌ジャーナリストでもあるはず、だ。

そこで、久々の土壌、それも肥料の話題を。

バイオスティミュラント生物刺激剤・BS)」をご存じだろうか。農業ではまったく新しい発想の資材として注目されていて、とくに欧米を中心に広まりつつある。簡単に言えば、環境変異におけるダメージを軽減できる植物に育てる資材のことだ。

そもそも農業資材には、まず「肥料」がある。いうまでもないが、植物(作物)への栄養供給と土壌を化学的に変化させて植物を育ちやすくする。無機・有機に関わらず、植物の生長に必要な物質を補給してやるものだ。

次に「農薬」がある。こちらは害虫や病気、雑草(ライバル植物)といった生物が作物に与えるストレスを除去する役割がある。殺虫剤、殺菌剤、除草剤などだ。こちらも化学物質が主流だが、生物農薬と呼ばれるものもある。

さてBSは、これらとは違って、高温や霜、日照り、塩害、冷害、霜害、活性酸素、雹や風、さらに農薬による薬害などの環境ストレスを和らげる素材だ。非生物ストレス対策とも言えるだろう。そうしたストレスを軽減することで、作物が本来持っていた力を発揮させる。それで収穫量だけでなく品質もよくする。ストレス耐性を身につけさせる。さらに収穫後の農地の状態もよくして次の作付けにもよい影響を与える。
具体的な資材は、海藻やアミノ酸、タンパク質、腐植質、微量ミネラル、微生物など多種多様だそうだ。とはいえ、まったく新規なものではなく、日本ではボカシ肥料(油粕や米ぬか)がそれに相当する。日本の農業には、昔からBSの発想があったのだろう。

Photo_20200524165401 ※ボカシ肥料。イメージです

ちょっと飛躍して人間に例えると、病気を治す医薬品でもなければ、ビタミンなどの栄養剤や補助食品でもない。アロマとかお酒とか温泉とかヨガとか……ストレス発散に使われる消費みたいなものか。森林サービス産業という名で立ち上げようとしている「新たな林業」もその一種で、人間用のバイオスティミュラントか。
こちらも今流行っている。その代わり、怪しげなのも一緒(笑)。実際の効果は見えにくいし、肝心の植物の個性?によって効果も揺れ動く。

それでも、すでにバイオスティミュラントの世界市場は2014年に約1400億円、それが18年に約2400億円に達した。今後数年間の成長率は年10%前後と推測されているのだから有望かも。食料危機に備えるために作物の収穫量を上げるのに必要と訴えられている。そうしたセールストークも、人間に心地よい生活を与えるという森林サービス産業と一緒\(^o^)/。今ならコロナ禍に耐える身体づくりに必要と宣伝しているのではないだろうか。

日本バイオスティミュラント協議会も設立された。もはや農薬などの資材の売れ行きが今以上に伸びないと見た企業が参入し始めたのだろう。その点も、木材売上が伸びない林業に「サービス産業」を持ち込んでいるのと同じか。

でも、こうした資材を生産するのには森林はちょうどよいと思うよ。

2020/03/06

養蜂業界が生き残るためのブランディングを考える

先日、玉川大学のミツバチ科学研究会で講演を行ったが、その主催者からハチミツが送られてきた。

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なんと5種類も! なかにはニセアカシアのほかケンポナシ、ハゼリソウなど珍しい花の蜜もある。さらに玉川大学内や山梨県で採れた、さまざまな花の蜜が混ざった百花蜜も。感謝感激だ。

さっそく味わう。すべての封を切ったわけではないが、ケンポナシの蜜は、なんというか、爽やか。通常ハチミツは濃厚な甘さが売り物だが、そこに爽やかさが加わる。なんでもケンポナシのエキスは二日酔いに効くと言うから、このハチミツにも効能を期待したい。

ニセアカシアは比較的淡白で食べやすい。百花蜜は、採蜜した地域でそれぞれ味が違う。その地域に咲いていた花が変わり混ざる蜜も変化するからだろう。香りとコクが微妙な違いを感じる。この香りはハゼリソウか、いやこちらの香りかも。と想像しても楽しめる。いや~ハチミツの世界は奥深い。

 

日本の養蜂業界は、現在厳しい局面に置かれている。とくに問題は蜜源が減ってきたことだろう。農業の衰退とも関わるが、蜜源がなくてはミツバチも生きていけない、ハチミツが採れない養蜂家も食べていけない……のだ。そして農地に撒かれる農薬の問題。ミツバチにつくダニの発生などもあるし、世界的に問題となっている謎の大量死と群崩壊現象。気象変動もヤバイ……あああ、養蜂は先行き不透明だ。

さらに後継者不足も深刻だ。加えて基本的にきつい肉体労働だし、蜜は採れたり採れなかったり自然に左右され収入も不安定になりがちだ。採蜜と並ぶポリネーション(交配)の仕事もあるが、これも農家の都合に左右されるだろう。

ただ、私に言わせれば、林業よりは将来性がある(笑)。

何より養蜂家個々人の腕と努力に左右される面が大きい。それに1年ごとに状況は変わる。今年は不作でも来年は多くの花が咲くかもしれない。そして蜜もポリネーションも食べ物が対象だから人々の関心も高い。業界全体が沈滞していて、個人の努力では如何ともしがたい面が強い林業より見通しがつく。

まず考えるべきは、出口戦略だ。養蜂家自身のハチミツの売り方に工夫の余地があると思う。単に仲買業者に卸すだけでは、結局は量の世界に陥る。外国から大量の安いハチミツが輸入されているのだから太刀打ちできない。引きずられて安価になりがちだ。もっと各人が工夫して採取したハチミツの付加価値を高められないか。

たとえば北海道の中川町のケースとして聞いたのだが、町で蕎麦栽培が盛んになったためハチミツにも蕎麦の蜜と花粉が混じるようになったそうだ。すると価格がガタンと落ちてしまい、養蜂家が生活できなくなった……という。日本では蕎麦のハチミツ好まれない。

だが、この話を聞いて私は逆のことを思った。たしかに蕎麦蜜はクセはあるし、蕎麦アレルギーの人には危険だが、世界的には人気のあるハチミツなのである。フランスなどでは高級品扱いのはず。それを卸し業者に任せておくから、安物にされてしまう。もっと蕎麦蜜としてブランディングすれば、むしろ高く売れるのではないか。

同じく、私は地元・生駒山で採れるソヨゴのハチミツが好みである。照葉樹のソヨゴは、最近増えてきた。しかし世間ではソヨゴ蜜は安く買いたたかれているらしい。これもブランディングの仕方がよろしくないのではないか。

ほかにも以前いただいたクマザサ味のハチミツとか、今回のケンポナシとか、希少な蜜をそれなりに活かしたブランディングを行い直販方式で扱えば、利益率を高められるだろう。

実は、これこそセイヨウミツバチの特徴なのだ。日本在来のニホンミツバチは、採取する花を選ばず、ごった煮的に集めてくる。だから百花蜜という言い方をするのだが、ようはさまざまな花の蜜が混ざっているから特徴を出しにくい。その点セイヨウミツバチは、採取する花を決めたら集中して集める。だから花の特徴をハチミツに出せるのだ。しかも採蜜力はニホンミツバチの十数倍にもなる。 

レンゲ、トチ、アザミ、ミカン、サクラ……その蜜の味の特徴を十分に世間に知らしめて、ソムリエのごとく紹介すれば人気を呼ぶだろう。サクラの香り、ミカンの香りのするハチミツの優雅さを知ってほしい。

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蜜源も、農地の作物の花に頼ると、農薬問題が発生する。しかし樹木の花なら農薬を散布される可能性は低い。もっと地域と一体化して蜜源植物を育てられないか。今、各地でサクラの里づくりが行われているが、それと養蜂を組み合わせる仕掛けも考えられる。

さらにミツバチに花粉を運んでもらうポリネーションも、有機農法などと結びつけてブランディングすれば、無農薬栽培を支えているハチミツとして価値を高められるはず。あるいは、よりシステマティックにビジネス化すればハチミツ生産と区別して交配産業と位置づけることも可能だろう。

さらに花粉や蜜蝋、ロイヤルゼリー、プロポリス……と多様な商品化のチャンスが眠っている。

……そんな夢想をしていると、なんだ、結局はほかの産業(とくに林業)と同じだと気づく。流通を見直して無駄を排除し、商品の多様化を図り、広報戦略をしっかりして、ブランディングで価値を高める出口戦略で生産者にちゃんと利益が確保する道筋をつけることが大切なのだ。つまりビジネスの基本をしっかり押さえて展開すれば、養蜂は多くの可能性に満ちた産業になるだろう。

いっそ私も養蜂ジャーナリストと名乗ろうかな(⌒ー⌒)。

2019/11/28

漆採取は林業か農業か

最近、漆が話題になることが増えた(と、私的には思う)。何かと国産漆が記事になっている。

おそらく、文化庁が文化財の修復に使う漆は国産にしろ、と号令をかけて、増産が課題になっているからだろう。何しろ年間約2,2トンは必要なのに、現在の生産量は半分ほど。2014年は645キロと4分の1まで減ったのだ。

漆の増産と言っても、まずウルシノキの栽培が必要で、そのためには苗木の生産から始めなくてはならず、そして約15年かけて育てても、漆掻きをする職人を養成しなくてはならず……となかなか道は遠い。
実は、奈良県は日本の漆の原点らしく、かつては漆部(ぬるべ)があったとかで、再びウルシノキを栽培の話もあるが、全然進展していない。植えても枯れるし、住民はかぶれるからと反対するし……。ウルシノキの栽培は、なかなか難しいらしい。

日本でイチバンの産地である岩手県二戸市浄法寺町は「漆林フォレスター」を任命したという。この名称に惹かれたのだけど(^^;)。もっとも実態としては地域起こし協力隊の一人らしい。

ここで私がふと考えたのは、ウルシノキの栽培と、そこから漆(樹液)の採取する仕事は、林業なのか、という疑問だ。浄法寺町では森林組合が取り組んでいるようだし、フォレスターと名付けたのだから「林業」と位置づけているようだが。

まず生産物は樹液である。たしかにメープルシロップのような林業的な樹液生産もあるが、イメージ的には果樹園のような園芸に近くはないか。樹木としては15年だから、これも林業よりは果樹栽培に近い気がする。作業的にも、自然に任せて育てるというよりは毎年の世話が必要で、樹液の採取作業も農作業に近く感じる。

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林業か農業かという区分は端からするとどうでもいいように思うが、実は意外とやっかいだ。

なぜならウルシノキを植える場所をどこなのかという課題がある。樹液を採取する作業を考えると平地の方がよい。急斜面だと厳しいだろう。それに成長も土地が肥えている方がよいらしい。……そう考えると農地に植えるべきだ。ちょうど耕作放棄地も増えているし……。

が、ダメなのである。農地に林産樹木を植えるのは、法律違反らしい。地目が山林でなければいけないらしい。なんともくだらない話だが、これで栽培適地は一気に減ってしまう。

059 平坦な漆の森

これで増産しろというのは、根本的に手足を縛っているようなもんだ。

それに……文化庁は国産漆が欲しいと言いつつ、肝心の買取価格は上げていない。安いまま増産しろというのもおバカな話である。現行価格の3倍で買い取るぐらいのことを言って初めて、ではウルシノキの苗づくりをしよう、植林しよう、そして漆掻きを職業にしよう、という人が現れるのではないか。現場の待遇をよくせずに増産をめざす点も、林業的?である。

ついでに栽培技術と樹液採取技術の再構築もすべきではないか。

現在は、15年間育てたウルシノキを一夏搔いたら、その木は切り倒す(殺し掻き)が、これはどう考えてももったいない。毎年樹液採取(養生掻き)すると、漆の品質が落ちるというのだが、それは樹木を休ませないからだろう。数年間休ませたら、またよい樹液を出すのではないか。たとえば3年間休ませるとしたら、4年毎に樹液採取ができることになる。それは苗を植えて15年後に一度採取してオシマイにするに比べて約4倍の生産にできるはず。……そんな研究は行っていないのだろうか。採取したら切り倒すというのは林業的だが、これも農業的生産方法に変えることで増産につながらないか。
さらに樹液の掻き取りも、自動化できないか研究の余地はある。あまりに原始的な採取方法が何百年も続いている。

まあ、素人考えであるが、現状のままの漆増産の掛け声は、あまりに絵空事ぽく感じてしまうのだ。

2019/11/26

北の国の養蜂異変を考える

先日、京都市の総合地球環境学研究所で開かれた「バイオリージョンに立脚した社会の実現と新たな農林漁業体系の構築」というワークショップに顔を出してきた。

なんか難しいタイトルなんで内容は省略(・_・?)。気になる人は、リンク先を見ていただきたい。

私は、10人の演者の中の一人、北海道中川町の高橋直樹さんの「少量多品種多用途の森づくり ~森の恵を分け合う仕組みづくり」に興味があったから参加したのである。(朝イチバンの発表だったので、私も早起きして、2時間かけて行きました。京都市と言っても北の端にあって遠い。。。)

中川町の展開する林業を、私は注目している。それは発表にもあったとおり、現在日本政府が推進している大規模化・画一化の流れから一線を画した戦略を展開しているからだ。その点は『絶望の林業』の中の「希望の林業」でもちょっとだけ触れたが、トップランナーに位置づけている。そこで具体的な現状を聞きたくて訪れたのだ。

ただ引っかかったのは、それらの構想全般ではなく、その一部、非木材林産物、養蜂の話である。
中川町は養蜂が盛んだ。「森の蜂蜜」として売り出している。正確に言えば、その周辺の中頓別から富良野までは北海道の養蜂の中心地と言ってもいいと思うのだが、そこに異変が起きているという。

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養蜂で食っていこうと移住してきた人が、上手く行かずに撤退せざるを得なくなっているというのだ。

具体的には、採蜜の量からは十分自活できると睨んでいたのに、肝心の蜜が高く売れなくなったから。そして、価格下落の原因は、蕎麦の蜜・花粉が混ざってしまうからだという。蕎麦の蜜は、日本では好まれないのだ。(海外では、むしろ蕎麦蜜は高い値がつく。)ほかの蜜に蕎麦が混ざるだけで価格が落ちてしまう。

そんな日本人の嗜好自体がオカシイとも思うのだが、由々しき事態である。

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その原因は、急激に蕎麦栽培が増えたこと。農政のプロジェクトが始まり、蕎麦に補助金が出るようになって栽培面積が激増しているらしい。

農業収入を上げるために始めた蕎麦栽培(補助金目当てだと意味ないが)が、養蜂を圧迫するというジレンマ。いやはや、人と森の生態系は複雑で何がどう影響するのか読みきれない。


私は養蜂に関心がある。銀座で養蜂をしている同姓同名の田中淳夫さんだけでなく、私自身も養蜂もしくは受粉昆虫としてのミツバチに注目している。それどころか来年2月には、なぜか無謀にも研究者と養蜂業者の集まりであるミツバチ科学研究会で講演することになってしまった。何を話すか今から悩んでいるのだが、この北国の養蜂事情も取り入れたいところである。

さて、午後はワークショップを抜け出して、日本生態学会の事務局へ向かった。……と言っても事務局に用事があるのではなく、家主とだべっていただけ(^^;)。そこに巣くう魔性のネコも見たかったのだが、姿を見せなかった。

 

 

 

 

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