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森と林業と田舎の本

2023/12/06

足立美術館の庭園

先日の島根行では、足立美術館にも寄ってきた。

ご存じ? アメリカの庭園雑誌のランキングで20年連続日本一を続けている。美術館と言いつつも(横山大観コレクションや魯山人コレクションも有名だが)、実は巨大な日本庭園が見どころの施設だ。田園風景の中に、この美術館だけがさん然と広がっており、朝から客も行列をつくっていた。私も、その一人。

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これは、ほんの一部だが、何百坪、いや何万坪もの広大な敷地に、寸分の狂いもなく整備された日本庭園は圧巻だ。とにかく木々の配置、枝振り、地面の苔まで計算されているし、それが意匠を狂わせていない。

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これは「生の掛け軸」とあるが、景観をそのまま建物に取り入れている。日本庭園とは目に映る光景を美しく感じるように人が完全に管理した空間なのだと感じる。

ところで、この3枚の写真の共通点(2枚目と3枚目は同じ)は何か。それは滝が写っていること。
そして、この滝も人工の滝なのである。ここに滝があると美しく感じると計算されているわけだ。

そこで、もう一枚。

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こちらは、先月訪れた鳥取県智頭町の「みたき園」という施設。こちらも広大な敷地なのだが、その中には滝がある。

が、よく見るとヘンだ。だって、山の頂上から水が落ちている……。

景観を作り込む日本庭園とは、自然の法則反してもいいのだろうか。

戦前、「林業芸術論」と「林業非芸術論」の論争があったのだが、そこで林業の作り出す景観は、造園的な美しさが必要か、という命題が掲げられた。木材生産をやや巣ためには美しさが基準になるのか? という、森林美学的な観点からの議論だ。
そこには西洋の林学を取り入れることによる森づくりの限界を問う面もあったように私は読み取った。人工林は自然の法則から外してもよいのかどうか、という論争のようにも読み取れる。

足立美術館の庭を眺めながら、そんなこと考えたらダメかもね。

2023/11/23

林業界のエコーチェンバー

このところ、広い意味での森林・林業関係者に会う機会が多くあった。

マジの林業現場、木材加工現場の人から林野行政を担う役人、林業を学ぶ学生、森林ボランティア、木育関係者……と、なかなか多彩。

そこで、ふと気付いたのは、彼らに「森林は大切だ」「林業は大切だ」「山仕事は面白い」「木に触っているだけで楽しい」といった意見が非常に当たり前のように語られていること。そして「もっと森や木の素晴らしさを伝えなくては!」という意欲が満ちていること。

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こんなイメージ? 林業は楽しい!とか。。。

まあ、全否定はしませんけど、「それって個人の感想ですよね」(^o^)。

ちょうど、日本の若者世代を森に呼び込みたい、森と人をつなぐビジネスを起業したい!という女子学生から質問が来た。そこでオンラインで顔を合わせたのだが、授業と研究の一貫で世間の人にオンライン・アンケートを取ったそうだ。そしてその結果に愕然としていた。

森に興味はない。林業なんて知らない……という声が圧倒的だったのである。当然、どうしたら森がよくなるか、という質問にだって目立った意見は出てこなかったそうだ。

さもありなん。そうでしょそうでしょ、というのが私の感想だが、彼女は誰もが「森は大切だと思っている」のが当たり前と想定してビジネスモデルをつくろうとしていたらしい。根底から崩れる(> <;)。

これは彼女の例だけでなく、森林林業に関わっている人全般に、似たような思い込みがあるように感じる。なぜ、そうした勘違いが起きるのか。それは、いっば業界内でエコーチェンバーを引き起こしているのではないか。周りの人は、みんな森が好きだし、林業は重要な産業と思っていることが反響して、世間全部がそうだと信じてしまう。

世の中、甘くない。自身に関係のないことは興味のないのである。

「森に人を呼び込むにはどうしたらよいか」と聞かれたので、私は「森の良さを伝えても、森に興味がないのだから無駄だよ」と答えた。森への興味関係なく、森に行くことで何らかのメリットがある状態を設けなくてはならない。結果として森に入れば、そこで森の良さに気付く、かもしれないというスタンスで臨むべきだろう。

そう言えば、夏ごろに大学で森林政策を研究したいという高校生からの聞き取りも受けたのだが、彼から合格したという知らせが届いた。法学部である。そこで盗伐など林業界の問題点や、地球環境に利する制度・政策を学びたいということだ。そうか、森に興味があるから森の研究をするのではなく、法学から入る。あるいは経済でも文学でも数学でもいい。そうした広い視点で森や林業を見つめる方がいいかもね。

 

2023/11/20

ニューギニアで噴火したウラウン火山を訪ねた記憶

日本時間の11月20日(月)午後、パプアニューギニアにあるウラウン火山で規模の大きな噴火が発生したというニュース。

日本のニュースは、この大噴火で高潮・津波が押し寄せないかという点に絞られているようだが、そちらの心配は今のところなさそうだ。もっとも火山噴火という点では、もっとも被害が心配なのは現地住民だろう。

実は、私にはこの火山の記憶がある。もしかしたら、その山麓を訪れたことがあるかもしれない。今から40年くらい前のことである。(´_`)

ただし、私の記憶ではウラウン山ではなくウラワン山、双子の山がウラモナ山なので別かもしれないが……。

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ニューブリテン島の北岸には、火山が並んでいる。上記は煙の噴く山々。

ウラウン火山は、パプアニューギニアのニューブリテン島にある標高2334メートルの火山である。富士山のようとあるから、上記の(私の記録では)ウラワン山と同じではないか。高さも同じ2300メートル級。ラバウルの火山が母山と呼び、こちらは父山なんだそうだ。

パプアニューギニアで最も頻繁に活動する火山の1つで、1970年代から噴火を続けている。2019年には大規模な噴火が発生して噴煙が高さ1万9000メートルに達したことが話題になった。

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グーグルの衛星画像より。

そして山麓を訪れると、火砕流に襲われた森があった。

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溶岩も壮大に流れたそうで、付近の森も村も焼けていた。写真は、溶岩に飲み込まれて焼けた大木。

なぜ、私はこんなところを訪れたのか? 一つは溶岩洞窟ができていないか、という聞き込みだったが、こちらは不発。もう一つは伐採現場を訪ねること。そう、南洋材のふるさとなのであった。

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こんな直径2メートル級の大木を切り倒して、ブルドーザーで運び出す。

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これが集材場。

今は日本企業も撤退してしまったが、森はどうなっているかなあ。

火山ニュースから不意に思い出した昔話であった。

 

 

 

 

2023/11/19

「切り株の上の生態系」の遷移

不定期に登場させている「切り株の上の生態系」シリーズ。

ようするに伐採された木の切り株の上に、新たな生命の息吹を見つけるネタなのだが、せっかく芽生えても、それが将来的にどうなるのかはわからなかった。一時的に草木の芽吹きがあっても、それがどこまで生長するか、別の種類に移り変わっていくのではないか。

今回、感動的?な事例を見つけた。某寺の境内である。

ここには直径2メートル級の切り株が何本もある。台風で連鎖的に倒れた跡とのことだが、そこで見てしまった。

 

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これが通常の「切り株の上の生態系」。スギの種子が落ちたのだろう、切り株の腐りかけた部分に根を下ろして芽吹いていた。

ところが、少し離れて振り向いて、こんな切り株を見つけた。

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ん? このスギの根元が太すぎる……て、これは切り株では? あわてて近づくと。

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お見事である。スギの切り株の上に発芽したスギが十分に生長していた。切り株は1・5メートル級で、その中に根を下ろした若いスギも、直径60センチ級。樹齢なら80年ぐらいは経っているのではないか。

ここまで育って世代交代したのなら、「切り株上生態系」も満貫であろう。

 

2023/11/13

車検の日に5時間歩いて見たものは

今日は車検だった。朝9時に持ち込んだら、午後4~5時には上がるというスピード車検。しかも2年間ガソリン代10円引きの恩恵つき。

有り難いのだが、1日車検だと代車を借りるまでもないかと、その時間は出歩くことにした。

そこで選んだのが、春日山原始林。ここを一周しよう。

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と、ところが朝から雨。。。今更濡れない場所を探しても変更しても車なしに行けないし、自宅に登るのもイヤだ。

そこで雨合羽をかぶって決行。なんと、ほぼ休憩なしで5時間歩きましたよ。歩数計は3万歩を越えた。後半は雨も止んだけど、いやあ、シトシト冷雨に濡れながら歩くのも楽しい(負け惜しみじゃない)。森の中はあまり落ちてこないし、静かでいいものなのよ。そして、発見もある。

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飛火野の大クスノキ。立派だが,ちゃんと明治天皇が植えたと書いてある。ここで陸軍大演習をした記念である。飛火野は、奈良の時代からあったかのように知られるが、実は場所は転々と変わっていて、いつの世でもあったわけではない。現在の飛火野は、明治の世は陸軍の基地があったのである。そこを撤去して、飛火野と名付けたらしい。

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これは原始林の中にある「妙見宮」とある寺院に登った際に発見。なんと直径3メートルを超える切り株。伐ったのではなくて倒れたのだろうけど、これほどの巨木があったか。かなり腐っていたから、倒れたのは数十年前かと思う。

さて、いよいよ車検の終わった車を引き取りに行こうとしたら、近鉄奈良線は人身事故で止まってしまった。。。。満員のホームで待ちぼうけである。

2023/11/11

石の樹

たまに、住宅街の中で見つける、こんな樹木。

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ま、これは東京某所なんだけど。

セメントで、こうした細かな造形をつくるのは、なかなか骨が折れるだろうに、建築家やガーデナーの仕業じゃないな。

たまに小さな無名の神社などで、社殿にびっくりするような彫刻が施されているのを見ることがあるが、それと近いかも。作り手は名もなき、アーティストでもない職人だったりもするが、ひっそりと腕前を披露する。

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こちらは生駒の住宅街の一角にあったお堂の彫刻。

2023/11/10

スギも紅葉する。それ、病気?

東京の杉並区にある「玉川上水旧水路緑道」の緑道で樹木189本が伐採される予定だったという。一部が枯れ始めていたからだ。それに対して住民から反対運動が起きて、別の専門家を呼んで調べたところ、ほとんど木は健康な状態だった、ただ複数の樹木で必要以上の剪定が行われたために樹勢が落ち、腐朽菌が侵入しやすくなっているところもあったと指摘した……。伐らずに治療できるというのである。区は調査をし直すと決めたそうであるが。

そんな記事を読んで思い出したのが、奈良県十津川村にある玉置神社。

そこには神代杉と呼ばれる樹齢3000年とする巨樹がある。だが、これが数年前に“散髪”された(^^;)。具体的には、着生木を取り除き、枝も剪定した。幹全体に付いていた苔を取り除いたらしい。それが地元の猛反発を食って、その後さまざまな事件があった末に宮司は辞任している。

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そもそも着生木があったら、なぜいけないのか。どうやら、県の調査で樹木医が、着生木が多く付いたから樹勢が衰えていると進言したらしい。それを真に受けたのか、そもそもスギの木にいろいろくっついているのを嫌っていた宮司なのか、「散髪」を敢行したのである。

しかし、着生木がついたくらいでスギは樹勢を落としたりしない。寄生する草木や菌類ならともかく、大半は広葉樹なのだ。むしろ共生関係が生まれることもあるという。スギも着生している苔や木々のおかげで利益を得ることもある。

神代杉に限らず、玉置山のスギ巨樹群は、湿潤温暖で霧がよく発生する気候から、樹木に苔が育ち、そこに着生木が根付く景観が生まれて、それが森の荘厳さや神秘的な風域を高めている。むしろ地元の誇りだったのだある。それをさっぱり取り除いてしまった……。

どんな樹木医が衰えるという判断したのか。もちろん、どちらが正しいのかわからないが、誤診は危険(^^;)。

着生しているのは落葉広葉樹が多いから、スギでも紅葉する。

こちらは、取り除かれなかった別の巨樹。こんな具合に紅葉していた。

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なかなかオシャレ(笑)。

でも、急傾斜に立っていて少し傾きがち。しかも下に本殿があるから、もし倒れたら本殿を壊してしまうと、ワイヤーロープで固定している。

巨樹群を守るとは、何をどうすればよいのか。樹木医に限らず、「専門家」の判断は慎重を要する。ちなみに私は、樹木の手入れの仕方を聞かれても滅多に応えないよ。自信ないからね。

2023/11/09

山の相続話にアドバイス

御歳90を越えた人とお会いした。コロナ前にも会っているから5、6年ぶりか。

そこで聞かされたのが、山の相続の話。そろそろ身辺整理を進めているようなのだが、故郷にヒノキ林とスギ林で10ヘクタールほど持っていて、さらに田畑もある。全体としては里山であり、そんな山奥でもなく標高も斜度も高くない。ところが長男は、嫁が反対するために山を引き受けてくれそうにない。次男もいるが……。

アドバイスを求めていると思ったので、境界線やら名義を確認して整理することの重要性を説明しようかと思ったが、その前に、すべて地籍調査を終えたこと、名義も曾祖父のものまであったが、全部自分に換えたことなどを聞かされる。なんだ、やるべきことやっている。日常的に森を管理してくれる林業家とも渡りをつけている。もう私が口を出すことないではないか。話していると、頭も明晰だし、年齢を考えるとしっかりしている。

が、なんとなく話の流れが、私に山を引き受けてくれと言われそうな雰囲気に(^^;)。いやいやいや。私が贈与を受けてどうする。

そこで将来の見通しを語ることになった。たしかに今は、山林を所有しても何の利益も生まないし、かえって税金などがかかるだけかもしれない。

相続土地国庫帰属制度はできた。しかし、その内容たるや、10年間分の管理料を先払いしろとかロクでもない。そんな金を払ってまで国に納めるぐらいなら、山林に20年間分の固定資産税額を相続者に割増しで分け与えるように約束して、長男でも次男でもいいから名義だけは相続してもらうべきだ。嫁が反対しているのは、多分負担が増えることを警戒しているのであって、それを前倒しで相続に含めておけばいい。管理は、地元の林業家などに頼むとしたら、名義を引き受けるのにそんな負担感はないと思う。

山林の条件もすこぶるよく、緩傾斜地だから崩れて迷惑をかける心配もまずないだろうし、近くに高速道路も走っている。いつか大化けするかもしれない土地である。むしろ農地の方が心配かも。今は売ったり処分する時期じゃない。山を寝かすのではなく何かに利用したいという思いがあるのなら、私もアドバイスできるかもしれない……。

なんだか力説してしまった。

さて、私の将来の説明はよろしかっただろうか。それとも逃げ口上になってしまっている?

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写真はイメージです。

2023/11/05

薪ストーブと乾し柿

智頭町で泊まった農家民宿。

すでに薪ストーブに火が入っていた。昼間は暑い!んだけどねえ。昼は夏。でも夜と朝は晩秋である。

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で、驚いたのは、ストーブの上の吹き抜けに吊るし柿があったこと。近所の人も皮を剥いた柿を縄でくくって持ってきた。ここに吊るしてくれというわけだ。

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外に干すと、川が近いこともあって乾きが遅いうえカビが生えやすいそう。薪ストーブの上が一番らしい。

我が家の柿も吊るしてみるかなあ。でも、我が柿は甘柿である。むしろ薪ストーブの効用かも。ちょっと燻製ぽくなるかも(笑)。

※この薪ストーブから部屋に煙は洩れていません。

2023/11/01

切り株の上の生態系・巨木編

多分、誰も覚えていないだろうが本ブログでは不定期に「切り株の上の生態系」シリーズをやっている。

木を伐った後の残る切り株の上は、先行生物のいないフロンティアで、そこにどんな生き物が姿を現し、その後遷移していくか、新たな生命が育まれているか、という高尚なテーマなのだが(^^;)、千差万別である。生えるのか草か樹木の稚樹か、キノコなど菌類か。

今回は、奈良県の南端に近い山まで走って、撮ってきた。これまでで最大だろう。

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スギの木だと思うが、直径が1メートルを越して樹齢300年生の大木である。おそらく7年ほど前に台風で倒れたと聞くので、その時に伐採したのか。根が起きていないので途中で折れたのかもしれない。
どちらにしても内部は空洞だったから材としては使えないはず。その代わりに草類が生えていた。なんだか噴火口のようである。

その空洞の部分に草が生えている。後継樹にならないが、たくましてよろしい。思ったほど植物の種類は多くない。切り口がなめらかなので、7年は経っていず、放置していたのを最近根元から切り揃えたのかもしれない。

その周辺にもたくさん切り株がある。ざっと20本ばかり。根から倒れたらしいが、幹だけ運び出して、切り株はワイヤーロープで止めて、これ以上崩れないようにしている。

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